ご飯を食べて異世界に行こう

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第二章 戦

あらまぁ2

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「行きましょう。行きますよ。行かいでか。」

金曜日の午後の事。
「辛子蓮根の料理ってなんですか?」
と、玉から質問を受けたので、手取り足取り教えていたら、昼過ぎに青木さんが帰って来ました。
帰って早々賑やかだ。

「お主また早退しやがったか。」
「あっまぁぁい!朝イチでデカい契約取って来たから、今日は外訪・直帰扱いなのだ。」
「稟議書なり報告書なりを…」
「とっくに煮詰め終わってたから、すだれハゲの印鑑貰って完了!佳奈ちゃん凄い!佳奈ちゃん偉い!」

まぁ、結果さえ出せば時間がわりかし自由になるのは、営業職の醍醐味なのは間違いない。
ましてやこの人の営業成績は、社内報奨ものらしいからなぁ。
商品はグルメカードだったらしいけど。
(KFCご馳走様でした。)

「チーズ焼き、マヨネーズサラダ、肉挟み揚げとかかなぁ。基本は辛子蓮根とマヨネーズだから、あとはその辛味と甘味を利用するんだ。」
「殿が普段作っていた料理ってなんですか?」
「僕か?僕は大体肉で辛子蓮根を挟んでたな。ハンバーグとか薄切りソーセージとか、餃子の皮とか。」
「なになに?辛子蓮根料理?菊地家の料理なら、私も習いたいです。」

今、君、なんか騒いでなかったか?

「そっちと同じくらい、“我が家の味“は重要でしょ。私達に何が待っているのかは知らないけど、それを乗り越えた先に待っているのは、私と玉ちゃんが、貴方のお嫁さんになる未来でしょ。」
「……早まったかなぁ。余計な事言わなきゃ良かった。」
「殿!結婚詐欺ですか?詐欺っちゃうんですか?」

誰だ!玉に変な言葉を教える奴は。
しまった!心当たりが山ほどある。

「僕は玉から詐欺る様な物を、何か貰ったっけ?」
「玉との甘い生活を差し上げました。」
「どたばたどたばた。」
「たしかに毎日どたばたでしたけど!」

「なんだろ。玉ちゃんみたいにテンション上げると、私が損しそうな気がするの。」
一応、婚約と言う事になっている筈の、僕と玉の「いつも」を見て、青木さんが嘆き始めた。
「僕からすると、逃げ場を失ったなぁって感じですが。」
「逃しませんからね、殿。」
「だそうです。」
「玉ちゃん強いなぁ。」

何はともあれ、とりあえず明日の土曜日に出かけると言う事に決まりました。
我が家には緊張感と言うものは、存在しちゃいけないらしい。

………


それから、まぁいつも通りと言うか。
まだ晩御飯には時間があると言うのに、僕らは辛子蓮根料理を始めちゃいました。

妹の野郎、余計な事ばかり2人に教えやがって。
え?なんでわかったかって?
夕べ遅く、妹からメールが来やがりましたよ。
私のお嫁さんを心配させるな!ってお叱りメールが。
玉と青木さんは、お前のお嫁さんだったのか。

2人が寒い寒い庭で何やらやってたのは、電話で参加の妹を含めて「''僕''対策会議」を開いていたんだと。
仲良いな、お前ら。

で、僕が作った物は、その妹にも散々作ってあげたメニューの中から、いくつものワンタンで包んで小麦粉塗して、油で炒めたもの。
ワンタンの皮のモチモチ感と、中の挽肉と蓮根の辛味が面白美味しい。
それと、永◯園の炒飯の素で作ったお手軽焼き飯が、我が家の簡単お昼ごはんの定番だった。


隣であれこれむいむい言ってる玉はと言うと。
七輪に乗せた卵焼きフライパンで作った薄焼き卵で蓮根を包んでいた。
器用なもんだ。

「中はお楽しみですよ。」

お楽しみにしてますけど、それはハムと白菜と金平牛蒡の入ったタッパーを片付けてから言って下さい。


青木さんはと言うと、あらまぁ。
我が家定番(玉が大好き)、林檎と蜂蜜がトロリ溶けてるカレールーを薄切りにして辛子蓮根を挟んで、パン粉を付けている。
それをバットに寝かしつけて落ち着かせている傍らで、油を温めている。
つまり。彼女が作っているものは。

「辛子蓮根のカレーパンです。」
「君の頭の何処を捻ねくり出せば、そんな発想が出てくるんですかね。」
「私と暮らし始めると、もっと驚きますよ。我が夫となるものは…。」
「更に悍ましきものを見るだろう?」
「女子のご飯を悍ましいとか言うなぁ。」
「ふった(ボケた)のは君だぞ。」
「?」

ト◯メキア公国の第四皇女を知らない玉さんだけわからないみたい。

「見た事ないの?見せた事ないの?」
「ジ◯リは配信サイトにないからなぁ。」
あと、玉はDVDとか見ないからなぁ。
僕が見てるアマ◯ラの動画を一緒に見てれば満足だそうだし。
「玉にとっては、何を見るかより誰と見るかの方が大切なのです。」
と、可愛い事を言ってくれるのです。
最近は、「殿と巫女さん」の執筆も好調快調。

DVDと言えばしずさんだけど。
しずさんは、宇宙戦艦ヤ◯トをヘビーローテーションらしい。
なんなんだろう。
あのお母さんは。
本当に昭和の小学3年生男子だ。
その内、本当にお義母さんになるんだなぁ。
何か不思議。


僕の浅葱の力で作った辛子蓮根料理に流れる時間を停止する。
これで腐敗も変質も温度低下もない「熱々」のまんま蠅張に入れておける。

今晩のおかずにしよう。
もっと言えば、一度食べちゃっても、僕の力で現物が再生出来るのだけど。
だったら3人が作った「実物」を食べたいよね。  

女子2人が今食べたそうに指を咥えているので、さつまいものお菓子をご馳走しました。
芋けんぴと干し芋は前から作っていたけど、さつまいもスナックの開発に成功したので。
いや、単に炒めたさつまいもを乾燥させてミルミキサーで粉砕しただけですけど。

ちょうどしずさんにお願い事があったので、相談しぃしぃ小麦粉と混ぜて揚げてみました。
カ◯ビーの定番商品とは違うベクトルのスナックになりましたが、塩をほんの少し振ると芋の甘味が引き立ってイケる!

「揚げ物だから、ぽん子さん達に沢山はあげられないけど、おやつくらいならちょうど良いですね。畑で全部材料が調達出来るのも素敵。」
「ミルミキサーは台所に置いておきますから、自由に使って下さい。」
「ありがとう婿殿。玉とは違う知識をくれて楽しいですよ。」
「その玉の姿が見えませんが。」
「モーちゃん達を連れて栗拾いに行ってます。」

そんな事もありまして。
まぁ、何があろうとも我が家は基本我が家ですよ。

 
………

「お父さんこれ美味しい!辛子蓮根って初めて食べたけど、これ私の好きな味ですよう!」

翌朝。
残り物をまとめてお皿に盛って、食卓の隅っこに置いといたら、大家さんに食いつかれました。
 
「お父さんとこのご飯は何食べても美味しいから、見慣れない物は真っ先に箸をつけたいの!」
「そうですか。」

ガーデニングの師匠として、楽しく優しく厳しく玉を指導してくれる大家さんですが、ご飯の時は相変わらず㒒らより下の目線になっちゃう、後期高齢者の少女でした。

★  ★  ★

「あれ?今日は私の番じゃないの?」
「何があるかわからないからね。」

いつもなら交互にお互いの車を出す約束で、今回は青木車の番だったのだけど、僕が自分の鍵を取って外に出ようとしたので話しかけられた。

青木さんは皿洗い。玉は洗濯物を干している。
そろそろコートの時期じゃないなぁ。
MA-◯かなんか… 。
あれ?裸のハンガーしか無いよ?
無いと思ったら玉が着てるな。
ブカブカじゃないか。
可愛い服を買ってあげても、僕の服をサイズも気にせず着たがるんだよなあ、あの子。

仕方ない。
厚手のパーカーを重ね着しよう。

「何があるかわからないからね。前回、鹿島神宮に行った時は、車が空飛んだから。」
「…今更驚きませんけどね。貴方何してんの?」
「僕のせいじゃないなぁ。」

あれはキクヱさんの仕業だったし。

「暖機運転してるから、適当に切り上げて玉と一緒に来てくれ。」
「はぁい。」


………


さて、香取神宮へは。
うん。前回と同じルートでいいか。
今日は天気も良いし、利根川沿いの道でのんびり行こう。

のんびりと言っても、信号は利根川を渡る橋の所くらいしか無いし、成田を過ぎると車が殆ど走らなくなるから、東関道行くより早く着くだろう。

香取市内に入ってからの為にナビをセットするけど、多分看板を辿って行けば着くだろう。

『大丈夫。』 
…………。
あれまぁ。

「何故、僕のナビの画面にあなたが写っているんですか?キクヱさん?」 
『貴方とも竜脈は繋がっているって言ったでしょ。貴方が貴方である限り、例え地球の果てまで行っても私は追いつくのです。』
「すとー
『カーじゃありませんよ!私は貴方と言うよりも玉佳奈ちゃんの味方です。」

僕の嫁達(笑)を、一昔前の双子タレントみたいに言うな!

『何にせよお待ち申し上げております。お約束の物はお持ちになりましたか?』
「本体で無くても良いんだね?」
『魂入が必要な部分は違いますから。』
「うん。しずさんに作ってもらったよ。」 
『ありがとうございます。多分それが、佳奈ちゃんとしずさんを救います。』
「はぁ。」
『あと、参道の草団子がイケますよ。玉ちゃんが大喜びしそうです。ではお待ちしてますねぇ。』

-ルート案内を開始します-

言いたいだけ言うと、キクヱさんはさっさと消えてしまい、通常のナビ画面が映る。
って、あれまぁ。忘れ物が一つ。
車内に白い羽根が一つ。
白鳥だろうな。
持って来いって事だろうなぁ。

「あとで種屋さんに寄ってもらいますよ。」
「私も◯ックオフに行こうかなぁ。」

あぁ2人がやって来た。
玉は相変わらず僕のMA-◯を着たままだ。
青木さんはスカジャン?いや刺繍のないシンプルなジャンパーだからスタジャンか。同じくシンプルなキャップをかぶっている。

2人とも神社に参拝に行く格好じゃないなぁ。 
まぁいいか。

「では行きますよ。」
「殿。こんびに寄って行きましょう
「はいはい。」
「はいは一回ですよ、殿。」
「……はい。」
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