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第一章 開店
夜空と花火
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「森伊蔵は確かに菊地さんとこにあったけど……シンクの下に味醂やサラダ油と一緒に無造作に。オマケに洗剤と一緒に。」
まぁねぇ。どうせ普段飲まないし、調理酒として最適かどうかもわからないし。ほったらかしですな。
「他に仕舞うとこ無いもん。我が家は最近、玉の糠味噌が増殖して、冷暗所は壺と甕だらけ。冷蔵庫で見慣れないタッパーを開けると胡瓜が入ってたりするよ。」
「ふひひひ。殿とお婆ちゃんが美味しいって言ってくれるから、どんどん増えるです。増やすのです。」
「玉、悪い顔してますよ。」
「森伊蔵より糠味噌が上位のご家庭ってなんなのかしらね。」
今後もうちに出入りする気なら、さっさと慣れなさい。
それにね。
今、無職な僕は、居酒屋に行くような知り合いは近所に居ないし(玉を連れて行けば、居酒屋メニューに喜ぶだろうけど、世間の目ってものがあるからね)、晩酌と言う習慣もないから。
「こんなお高いお酒、飲んだ事ないし、1人じゃ飲む機会なんかないよ。」
と、瓶を「へーほー」としげしげ眺める青木さん。
どうでもいいけど、森伊蔵は焼酎だぞ。
接待の御相伴に預かった事があるから、お陰様で浅葱の力の対象内になっているけど、僕自身は貧乏舌なので、実はワンカップとの違いもわからなかったりする。
「そう言えば、こんなお酒も呑んだ事あるなぁ。青木さん、ほいっと。」
「うわ、わ、わ、わ。」
食卓に並ぶ鍋の邪魔にならない様に(もはやキャンプ飯の画には見えないけど)青木さんの手元に現れる白木の木箱。
「……。ねぇ、この長細い木箱に“越乃寒梅''って書いてあるんだけど。」
「昔、部内に来た御歳暮にあったんだ。興味がなかったから争奪戦には参加しなかったけど、運ぶ為に触った経験がある。それだけの経験で出せた。青木さん、自由に呑んでいいよ。」
「私も別に呑兵衛って訳じゃないから、高いお酒って聞いてるだけだよう。」
高い、と言うよりは、量が作れないから出荷数が限られている方が強いかな。
「殿、との。お燗をしましょうお燗。夜は寒いですよ。冷えますよ。」
「はいはい。」
何故か玉がウキウキしているので、徳利を4本お猪口を2つを出すと、玉はそれこそ無造作に越乃寒梅の箱を開けて、包みの白紙を破った。
「あ、あ、あ、あ、あ。」
物の価値を知らない玉がぺりぺり剥がして行くのに、青木さんは口の中だけで悲鳴を上げているけど、自分に所有権ないし、僕が知らん顔してるから、それ以上の手出しはしない。出来ない。
青木さんにも、世間的にはどんなに貴重品であろうと、我が家的にはこんな程度な事もわかっているからね。
僕が出した徳利とお猪口は、亡き親父が亡きお袋に酌をされていた、小さい頃の記憶をトレースしたもの。
食事を終えた僕はテレビに夢中になり、好き嫌いにあった妹は、人参に四苦八苦。
そんな夕食の風景が思い出される。
少し表面を凸凹させただけの白いシンプルな徳利と、同じく、ただ白いだけのお猪口。よくある中に青い◯がぐるぐる書いてあるものじゃなく、円錐形のお猪口と言えばこれ、と言う程よくある奴。
なんでも、旅先の陶芸体験で作ったものだそうだ。
…本当に器用で、仲睦まじい両親だったなぁ。
★ ★ ★
「殿。殿。お酌を。」
ウキウキと玉が徳利を差し出してくる。
まぁたまにはね。
僕は別に下戸ではないし。
「玉ね、ずっと殿にお酌したいなって思ってたんです。殿と直接触れ合えないけど、こうやれば、殿と繋がれますから。」
玉が、誰に言う訳で無い声量でポツリと言った。
それを受けて、青木さんが似た声量でポツリと漏らす。
「なんかいいなぁ。玉ちゃんと菊地さん。」
「ん?何が?」
「距離感が。なんて言っていいかわからないけど、玉ちゃんは菊地さんが本当に大好きで、菊地さんも玉ちゃんを信頼してる。しきってる。…私は男の人でも、女の人でも、多分家族にも、そんな信頼を寄せた事も寄せられた事が無いもん。」
「そんなモンかねぇ。」
「かねぇ。」
「(くすっ)………本当、羨ましいなぁ。」
★ ★ ★
食事が終わって、一休み。
結局、僕も青木さんも、顔を赤くする程お酒も呑まず。
玉が燗をしてくれた4合でお終い。
寒い分、酔いも大して回らないみたい。
夢雀は開けてもいないよ。
この家に引かれている水道なんてものはとうの昔に解約しているので、ガロンのポリ容器で用意してあるのだけど。
「殿。お水はいくらあっても困りません。」
て事で、汚れ物が洗えない。
直ぐそこに川が流れているんだけど、暗いから危険。
と言う事で、キッチンペーパーを湿らせて、軽く拭いて終わり。
いや、僕は出せるよ。なんとかの美味しい水的な水を。
でもまぁ。2人して仲良く片付け始めちゃったから、野暮な事は言いません。
…ていうか、“家族“の玉は気が付けよ。
★ ★ ★
「夜空。」
全ての片付けを終えて、僕たちは焚き火を囲んでいた。焚き火と、キャンプストーブで暖かいから、みんな防寒着を脱いでいる。
「こんな綺麗な星空。私、見た事無い。」
青木さんは、普段は知らないけれど、僕と玉の前では、時々、相当、気の抜けた顔を見せてくれる。
今も、前歯の裏どころか喉ちんこが丸見えになる程大きな口を開けて、空を眺めている。
「殿。佳奈さん。」
逆に玉の方は、気が張った顔なんか、なかなか見せてくれない。
いつでも、ほにゃら~とでも言うしか無いのんびり顔をしている。でも今は。
「玉は。玉はね、こんな空をいつも眺めてました。あの3つ並んだ星とか、そうそう、夏は空に星の川がかかるんです。お母さんが教えてくれました。」
「天の川って奴だ。簡単に言うと、星がアッチに集まっているから、密度が高くて川に見えるんだ。」
「でも、いつのまにかお母さんがいなくなって、玉は1人で見上げていたんです。あの、祠に囚われるまでは。」
「……。」
「……。」
「でも、殿に救われて。今は。今は、殿と佳奈さんと一緒に見てます。玉の大切な人と。」
「……。」
「……。」
「そして、またお母さんと、この星を見られる様に頑張らないと。…その時、その時も、殿と佳奈さんが居ると、嬉しいな。わぁあああ。」
「大丈夫。私は玉ちゃんの隣に居るよ。」
あぁ、感極まった青木さんの必殺抱っこ攻撃が始まった。青木さんに、うちの御狐様みたいな尻尾があれば、さぞかしぶるんぶるん振っているんだろうな。
玉がタップしてるのに、気が付いているかなぁ。
★ ★ ★
そうそう。
2人が落ち着いた頃合いを見計らって、バックからあるものを取り出す事にした。
「玉、実はこれを持って来たんだ。」
「花火!殿!花火!」
そう。あの日、市川の梨園のハズレで2人きりで楽しんだ花火です。
あの時は、近所に家があったので静かな線香花火しかしなかったけれど、今日ここならば打ち上げ系はともかく、手持ち系花火はなんでも出来るでしょ。
あれから変には忙しくて、花火が出来なかったし。
「もうすぐ真冬になるよ。なのに花火?」
「佳奈さん。これね、多分、玉が一番最初に殿に言った我儘で買って貰ったんです。そして、殿と花火をしたんです。」
「…なんかズルいなぁ。私の居ない所で2人きりで思い出を積み重ねてるんだ…。」
「何君は突然我儘を言い始めたんだ。」
「我儘なのかな?私ね、玉ちゃんと菊地さんが羨ましくなっただけです。今は3人一緒だけど、明日の晩は、また私1人になるんだなぁって、何か突然思っちゃったの。」
それは、それだけ君が僕らに近づいたと言う事だよ。
君が本当に隣に越してくるなら、それはもう、僕も何かを認める必要が出る…んだろうなぁ。
そんな事言い出したくせに、ご本人は花火をあれこれ選ぶ事には夢中だ。
「ねぇ玉ちゃん。前は何やったの?」
「線香花火です。殿と、どちらが長持ちするか、競争したんですよ。」
「じゃあ最初にそれやろ。私も玉ちゃん達に追いつきたい。」
「良いですよ。殿、3人でやりましょう。」
「はいはい。今、行くよ。」
こうして、僕らはのんびりと冬の花火を楽しんだ。
聖域でやろうと言ったけど、何しろ陽が沈まない特殊空間とは思わなんだし。
……………。
「ねぇ玉ちゃん、菊地さん。私、多分。この夜の事は忘れない。ううん、絶対忘れちゃダメだよね。」
「うん。」
なんか2人で盛り上がっているから、まぁいいか。
★ ★ ★
気がつくと、僕の隣に大小の茶色いものが並んでお座りをしていた。
またか。
ええと。何か残っていたかな。
あぁ、蒲鉾が残っている。
食うか?
「きゅう」
一番小さい茶色が鳴いて、諾の意思を表した。一番大きな茶色は、僕の靴に頭を乗せて焚き火に暖まっている。
食わせるけど良いんか?
「くぅ」
そっか。お前も食え。
「くぅ」
「ねぇ玉ちゃん。ちょっと目を離したら、あの男、何かに囲まれているわよ。」
「イタチかなぁ。可愛いなぁ。」
という訳で、僕は今、テンの親子に囲まれて、というか。
親は僕の靴に顎を乗せて蒲鉾をもしゃもしゃ食べてるし、子テンたちは、僕の膝の上でもしゃもしゃ食べてる。
房総に、こんな動物居たんだなぁ。
「そう言う問題?」
「わぁ、一匹玉のところにも来てくれました。」
「そう言う問題?って言うか、何故この2人の前に来ると、み~んな野生がどっか行っちゃうの?」
まぁ、何処へ行っても、うちはうちなので。
まぁねぇ。どうせ普段飲まないし、調理酒として最適かどうかもわからないし。ほったらかしですな。
「他に仕舞うとこ無いもん。我が家は最近、玉の糠味噌が増殖して、冷暗所は壺と甕だらけ。冷蔵庫で見慣れないタッパーを開けると胡瓜が入ってたりするよ。」
「ふひひひ。殿とお婆ちゃんが美味しいって言ってくれるから、どんどん増えるです。増やすのです。」
「玉、悪い顔してますよ。」
「森伊蔵より糠味噌が上位のご家庭ってなんなのかしらね。」
今後もうちに出入りする気なら、さっさと慣れなさい。
それにね。
今、無職な僕は、居酒屋に行くような知り合いは近所に居ないし(玉を連れて行けば、居酒屋メニューに喜ぶだろうけど、世間の目ってものがあるからね)、晩酌と言う習慣もないから。
「こんなお高いお酒、飲んだ事ないし、1人じゃ飲む機会なんかないよ。」
と、瓶を「へーほー」としげしげ眺める青木さん。
どうでもいいけど、森伊蔵は焼酎だぞ。
接待の御相伴に預かった事があるから、お陰様で浅葱の力の対象内になっているけど、僕自身は貧乏舌なので、実はワンカップとの違いもわからなかったりする。
「そう言えば、こんなお酒も呑んだ事あるなぁ。青木さん、ほいっと。」
「うわ、わ、わ、わ。」
食卓に並ぶ鍋の邪魔にならない様に(もはやキャンプ飯の画には見えないけど)青木さんの手元に現れる白木の木箱。
「……。ねぇ、この長細い木箱に“越乃寒梅''って書いてあるんだけど。」
「昔、部内に来た御歳暮にあったんだ。興味がなかったから争奪戦には参加しなかったけど、運ぶ為に触った経験がある。それだけの経験で出せた。青木さん、自由に呑んでいいよ。」
「私も別に呑兵衛って訳じゃないから、高いお酒って聞いてるだけだよう。」
高い、と言うよりは、量が作れないから出荷数が限られている方が強いかな。
「殿、との。お燗をしましょうお燗。夜は寒いですよ。冷えますよ。」
「はいはい。」
何故か玉がウキウキしているので、徳利を4本お猪口を2つを出すと、玉はそれこそ無造作に越乃寒梅の箱を開けて、包みの白紙を破った。
「あ、あ、あ、あ、あ。」
物の価値を知らない玉がぺりぺり剥がして行くのに、青木さんは口の中だけで悲鳴を上げているけど、自分に所有権ないし、僕が知らん顔してるから、それ以上の手出しはしない。出来ない。
青木さんにも、世間的にはどんなに貴重品であろうと、我が家的にはこんな程度な事もわかっているからね。
僕が出した徳利とお猪口は、亡き親父が亡きお袋に酌をされていた、小さい頃の記憶をトレースしたもの。
食事を終えた僕はテレビに夢中になり、好き嫌いにあった妹は、人参に四苦八苦。
そんな夕食の風景が思い出される。
少し表面を凸凹させただけの白いシンプルな徳利と、同じく、ただ白いだけのお猪口。よくある中に青い◯がぐるぐる書いてあるものじゃなく、円錐形のお猪口と言えばこれ、と言う程よくある奴。
なんでも、旅先の陶芸体験で作ったものだそうだ。
…本当に器用で、仲睦まじい両親だったなぁ。
★ ★ ★
「殿。殿。お酌を。」
ウキウキと玉が徳利を差し出してくる。
まぁたまにはね。
僕は別に下戸ではないし。
「玉ね、ずっと殿にお酌したいなって思ってたんです。殿と直接触れ合えないけど、こうやれば、殿と繋がれますから。」
玉が、誰に言う訳で無い声量でポツリと言った。
それを受けて、青木さんが似た声量でポツリと漏らす。
「なんかいいなぁ。玉ちゃんと菊地さん。」
「ん?何が?」
「距離感が。なんて言っていいかわからないけど、玉ちゃんは菊地さんが本当に大好きで、菊地さんも玉ちゃんを信頼してる。しきってる。…私は男の人でも、女の人でも、多分家族にも、そんな信頼を寄せた事も寄せられた事が無いもん。」
「そんなモンかねぇ。」
「かねぇ。」
「(くすっ)………本当、羨ましいなぁ。」
★ ★ ★
食事が終わって、一休み。
結局、僕も青木さんも、顔を赤くする程お酒も呑まず。
玉が燗をしてくれた4合でお終い。
寒い分、酔いも大して回らないみたい。
夢雀は開けてもいないよ。
この家に引かれている水道なんてものはとうの昔に解約しているので、ガロンのポリ容器で用意してあるのだけど。
「殿。お水はいくらあっても困りません。」
て事で、汚れ物が洗えない。
直ぐそこに川が流れているんだけど、暗いから危険。
と言う事で、キッチンペーパーを湿らせて、軽く拭いて終わり。
いや、僕は出せるよ。なんとかの美味しい水的な水を。
でもまぁ。2人して仲良く片付け始めちゃったから、野暮な事は言いません。
…ていうか、“家族“の玉は気が付けよ。
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「夜空。」
全ての片付けを終えて、僕たちは焚き火を囲んでいた。焚き火と、キャンプストーブで暖かいから、みんな防寒着を脱いでいる。
「こんな綺麗な星空。私、見た事無い。」
青木さんは、普段は知らないけれど、僕と玉の前では、時々、相当、気の抜けた顔を見せてくれる。
今も、前歯の裏どころか喉ちんこが丸見えになる程大きな口を開けて、空を眺めている。
「殿。佳奈さん。」
逆に玉の方は、気が張った顔なんか、なかなか見せてくれない。
いつでも、ほにゃら~とでも言うしか無いのんびり顔をしている。でも今は。
「玉は。玉はね、こんな空をいつも眺めてました。あの3つ並んだ星とか、そうそう、夏は空に星の川がかかるんです。お母さんが教えてくれました。」
「天の川って奴だ。簡単に言うと、星がアッチに集まっているから、密度が高くて川に見えるんだ。」
「でも、いつのまにかお母さんがいなくなって、玉は1人で見上げていたんです。あの、祠に囚われるまでは。」
「……。」
「……。」
「でも、殿に救われて。今は。今は、殿と佳奈さんと一緒に見てます。玉の大切な人と。」
「……。」
「……。」
「そして、またお母さんと、この星を見られる様に頑張らないと。…その時、その時も、殿と佳奈さんが居ると、嬉しいな。わぁあああ。」
「大丈夫。私は玉ちゃんの隣に居るよ。」
あぁ、感極まった青木さんの必殺抱っこ攻撃が始まった。青木さんに、うちの御狐様みたいな尻尾があれば、さぞかしぶるんぶるん振っているんだろうな。
玉がタップしてるのに、気が付いているかなぁ。
★ ★ ★
そうそう。
2人が落ち着いた頃合いを見計らって、バックからあるものを取り出す事にした。
「玉、実はこれを持って来たんだ。」
「花火!殿!花火!」
そう。あの日、市川の梨園のハズレで2人きりで楽しんだ花火です。
あの時は、近所に家があったので静かな線香花火しかしなかったけれど、今日ここならば打ち上げ系はともかく、手持ち系花火はなんでも出来るでしょ。
あれから変には忙しくて、花火が出来なかったし。
「もうすぐ真冬になるよ。なのに花火?」
「佳奈さん。これね、多分、玉が一番最初に殿に言った我儘で買って貰ったんです。そして、殿と花火をしたんです。」
「…なんかズルいなぁ。私の居ない所で2人きりで思い出を積み重ねてるんだ…。」
「何君は突然我儘を言い始めたんだ。」
「我儘なのかな?私ね、玉ちゃんと菊地さんが羨ましくなっただけです。今は3人一緒だけど、明日の晩は、また私1人になるんだなぁって、何か突然思っちゃったの。」
それは、それだけ君が僕らに近づいたと言う事だよ。
君が本当に隣に越してくるなら、それはもう、僕も何かを認める必要が出る…んだろうなぁ。
そんな事言い出したくせに、ご本人は花火をあれこれ選ぶ事には夢中だ。
「ねぇ玉ちゃん。前は何やったの?」
「線香花火です。殿と、どちらが長持ちするか、競争したんですよ。」
「じゃあ最初にそれやろ。私も玉ちゃん達に追いつきたい。」
「良いですよ。殿、3人でやりましょう。」
「はいはい。今、行くよ。」
こうして、僕らはのんびりと冬の花火を楽しんだ。
聖域でやろうと言ったけど、何しろ陽が沈まない特殊空間とは思わなんだし。
……………。
「ねぇ玉ちゃん、菊地さん。私、多分。この夜の事は忘れない。ううん、絶対忘れちゃダメだよね。」
「うん。」
なんか2人で盛り上がっているから、まぁいいか。
★ ★ ★
気がつくと、僕の隣に大小の茶色いものが並んでお座りをしていた。
またか。
ええと。何か残っていたかな。
あぁ、蒲鉾が残っている。
食うか?
「きゅう」
一番小さい茶色が鳴いて、諾の意思を表した。一番大きな茶色は、僕の靴に頭を乗せて焚き火に暖まっている。
食わせるけど良いんか?
「くぅ」
そっか。お前も食え。
「くぅ」
「ねぇ玉ちゃん。ちょっと目を離したら、あの男、何かに囲まれているわよ。」
「イタチかなぁ。可愛いなぁ。」
という訳で、僕は今、テンの親子に囲まれて、というか。
親は僕の靴に顎を乗せて蒲鉾をもしゃもしゃ食べてるし、子テンたちは、僕の膝の上でもしゃもしゃ食べてる。
房総に、こんな動物居たんだなぁ。
「そう言う問題?」
「わぁ、一匹玉のところにも来てくれました。」
「そう言う問題?って言うか、何故この2人の前に来ると、み~んな野生がどっか行っちゃうの?」
まぁ、何処へ行っても、うちはうちなので。
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