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第一章 開店
じゃがいも
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「ううううう。」
ぱりぱり
さくさく
もしゅもしゅ
「止まらないよう。」
ぱりぱり
さくさく
もしゅもしゅ
「殿の意地悪うぅ。」
ぱりぱり
さくさく
もしゅもしゅ
スライスしたじゃがいも。
ステック状にカットしたじゃがいも。
皮付き乱切りじゃがいも。
じゃがいもじゃがいもじゃがいも。
朝、下拵えしておいたじゃがいもを高温の油でざっと揚げて塩を振っただけの、お手軽ポテチと手抜きフライドポテト。
ドリンクは、コーラにバニラアイスを浮かべただけの、簡単コーラフロート。
何一つまともに手を加えてないし、レシピも確認してません。ついでに、僕にはファストフードのバイト歴もありません。厨房のバイト歴もありません。
こんなもんだろうと、適当に切って揚げただけ。適当に塩を振っただけ。
味見もしてない熱々のポテチを玉の口に突っ込んだら、玉さんこんなんなっちゃった。
玉もたぬきちも、中身は丸々おんなじですな。
「助けて、止まりませ~ん。」
芋・油もの・塩・コーラ・アイス。
さっきの魚肉ソーセージを越える不健康の塊だ。耐性が無い玉にはひとたまりも無かろう。
(またまた交通事故駄洒落)
そんなこんなで本当に1日、読書やらタブレットで古い映画見たりやら、ダラダラ過ごしちゃいました。
晩御飯の前にちょっと。お菓子を作ってみたらこの騒ぎです。
市販のポテチやファストフードの方が美味しいと思うけどなぁ、
「何を仰います。殿のご飯ほど玉の口に合うご飯はありません!」
ご飯じゃなくて、軽食とかおやつの類いなんだけど。
まぁじゃがいもだから、食事にも出来るけどね。
さて、晩御飯はこのじゃがいもをメインにします。創作料理というか、郷(妹)から送られてきた大量のじゃがいもを処分する為に編み出した料理です。
じゃがいもというのは、単品でも甘味を出すけど、どこにでも出掛けて行って、主役にも脇役にもなれる万能食材です。
~麻婆じゃがいも~
材料:じゃがいも、挽肉、ピーマン、玉葱
1.じゃがいもは5ミリ角くらいのステック状にカットします
2.中華鍋で炒めます(火の通り難いじゃがいもから)
3.じゃがいもがしんなりしてきたら、◯美屋の(伏せ字になっていない)麻婆豆腐の素を加えます(黒い一番辛い味を推奨)
独身男が色々面倒くさくなって、適当にごちゃごちゃフライパンに放り込んで作ったら、以外と美味しかったインチキ中華の出来上がり。
★ ★ ★
「殿は狡いです!」
「なにが?」
「こんな料理を隠してました。今まで行った事のある“れすとらん“じゃ見た事ありません!」
そりゃ、味が濃いからご飯が進むだけのお下品メニューだもん、金取っちゃいけないだろう。
「うう。お芋さん、お芋さん。辛くて美味しいお芋さん。」
因みに汁物は、お昼に作った豚汁に青々としたインゲン豆とわざと崩した木綿豆腐を足して煮直した物。隠し味にラー油を追加。
煮崩れて来た具材がこれまた美味しいのよ。
じゃがいもでも里芋でも、文字通り物理的にも味覚的にも角が取れた、2回目以降が美味しいんだよね。
辛い辛い尽くしなので、茄子のお漬物にも和芥子をたっぷりつけて口に運ぶ。
へにゃ。
ん?歯応えがへにゃ?
「ん?これ糠漬けじゃないなぁ。」
「えへへわかりました?お婆ちゃんにお漬物の作り方を教えて貰っているんです。ほら、殿ってお野菜は“さらだ“よりお漬物を沢山頂いているじゃないですか。だから糠漬け以外のお漬物が、玉にも作れないかなぁって。」
「僕が漬物を食べるのは、玉の漬物が美味しいからだけなんだけどね。」
「やた!殿に美味いって言わせました!」
「これは浅漬けかな?」
「はい、お野菜と麺つゆを''びにーる袋“に入れて、揉み揉みしただけです。」
さすがは大家さんだな。伊達にご家庭の主婦を長い事してないなぁ。美味しいや。
そんなふうに、(なんだか今日の食事は手抜きジャンクばかりだった気もするけど)本当に何もしない、でも結局なんだかいつもと同じく騒がしい1日が終わって行きました。
★ ★ ★
数日後。
大体、毎日触れざるを得ない事件が乱立するんだけど、珍しくここ数日はルーティンワークだけで過ぎて行ったので。
即ち、朝は庭からの玉と大家さんの声で起こされて、3人で朝食を頂き(玉特製ジャムが大家さんに思わぬ高評価を貰ったのでパン食が続き、お年寄り的に、トースト、サラダ、ハムもしくはベーコンエッグというのはどうなのかと思うけど、ご本人が毎朝目をハートマークにしてるからいいか)、食後は聖域に行って玉は祝詞をあげるお勤め、僕は野菜や果物の手入れや収穫をしながら、2人でたぬきちと遊び、とりあえず荼枳尼天は出て来なかったり、終わったらもう一つの水晶玉に潜って、玉の家と浅葱の実家を掃除して、あとは玉にせがまれてスーパーまで食材探し。
早口で言いましたけど、そんなこんなで週末です。
★ ★ ★
「やは!おはやう。」
「おはようございます。佳奈さん。」
「………男が寝てる部屋に、嫁入り前の娘がドカドカ入って来るもんじゃないぞう?」
目を覚ましたら、青木さんが右手をたかだかと上げて挨拶してんだけど。
「玉ちゃんに連れ込まれました。」
「連れ込みました。」
「じゃあ、私達庭に行くね。大家さんが待ってるから。」
「殿は朝ご飯の支度をお願いしますね。」
僕のプライベート空間と時間がなくなっていくなぁ。家族の玉だけならともかく、青木さんも大家さんも割と気軽に上がってくるし、菅原さんはさすがに上がってはこないけど、玄関やら庭やらから顔を出して話かけられる事が増えた。
玉がいるから最低限の身だしなみは整えているけど、前はパンツ一丁とか当たり前だったぞ。1人暮らしの男だもん。
★ ★ ★
「たぬちゃんおいで。◯ゅ~るあげるよ!」
「??わ、わん!」
最近の傾向として、玉は社だけでなく茶店の方まで掃き掃除をする様になったので、時間を持て余すと予測していたのだろう。青木さんは◯ゅ~るを自分で買って来てた。
勿論、たぬきちも◯ゅ~るが大好き。今日はお姉ちゃんに甘える日、と決めた様で。
たぬきちが心底リラックスしてる顔の時は、玉もたぬきちの心情を大切にするから、ヤキモチも妬かずニコニコ笑っているだけだ。
青木さんに無防備にもお腹を見せて◯ゅ~るを啜るたぬきちの姿が嬉しくて止まらない。だって、玉は青木さんもたぬきちも大好きだから。どんどん仲良くなっていく事が嬉しくて嬉しくて止まらない。
★ ★ ★
ところで今日は土曜日なのだけど。
今日って青木さんが来る日だっけ?
「何ようその、通い妻みたいな言い方。」
「いや、週末に3人で出掛けたいとさ言っていたから、色々調べたけど。まさか土日共とかなのかな?」
「土曜日は週末。日曜日も週末!私は別に期日指定も曜日指定もしていない。」
「いや、あのですね?」
仕事の疲れを取る日とか、体調管理は大丈夫なの?新米社会人さん。
「明日は明日の風が吹く。今日は狸の風が吹く。私がこんなに狸好きになった責任を取って貰おうと。」
「つまり、好きになってので責任を取って私を貰えと。」
「玉ちゃん?私の言葉を大胆過ぎる程大胆に省略しないで。」
つまり、動物園に連れて行って、ぽん子を紹介しろと。
「はい!」
今まで見たことない神々しい笑顔だ。
「わん?」
「たぬちゃんにも、いつかお嫁さんが来ると良いねえ。」
「わん?」
たぬきちには、まだそんな気無いみたいだよ。
ぱりぱり
さくさく
もしゅもしゅ
「止まらないよう。」
ぱりぱり
さくさく
もしゅもしゅ
「殿の意地悪うぅ。」
ぱりぱり
さくさく
もしゅもしゅ
スライスしたじゃがいも。
ステック状にカットしたじゃがいも。
皮付き乱切りじゃがいも。
じゃがいもじゃがいもじゃがいも。
朝、下拵えしておいたじゃがいもを高温の油でざっと揚げて塩を振っただけの、お手軽ポテチと手抜きフライドポテト。
ドリンクは、コーラにバニラアイスを浮かべただけの、簡単コーラフロート。
何一つまともに手を加えてないし、レシピも確認してません。ついでに、僕にはファストフードのバイト歴もありません。厨房のバイト歴もありません。
こんなもんだろうと、適当に切って揚げただけ。適当に塩を振っただけ。
味見もしてない熱々のポテチを玉の口に突っ込んだら、玉さんこんなんなっちゃった。
玉もたぬきちも、中身は丸々おんなじですな。
「助けて、止まりませ~ん。」
芋・油もの・塩・コーラ・アイス。
さっきの魚肉ソーセージを越える不健康の塊だ。耐性が無い玉にはひとたまりも無かろう。
(またまた交通事故駄洒落)
そんなこんなで本当に1日、読書やらタブレットで古い映画見たりやら、ダラダラ過ごしちゃいました。
晩御飯の前にちょっと。お菓子を作ってみたらこの騒ぎです。
市販のポテチやファストフードの方が美味しいと思うけどなぁ、
「何を仰います。殿のご飯ほど玉の口に合うご飯はありません!」
ご飯じゃなくて、軽食とかおやつの類いなんだけど。
まぁじゃがいもだから、食事にも出来るけどね。
さて、晩御飯はこのじゃがいもをメインにします。創作料理というか、郷(妹)から送られてきた大量のじゃがいもを処分する為に編み出した料理です。
じゃがいもというのは、単品でも甘味を出すけど、どこにでも出掛けて行って、主役にも脇役にもなれる万能食材です。
~麻婆じゃがいも~
材料:じゃがいも、挽肉、ピーマン、玉葱
1.じゃがいもは5ミリ角くらいのステック状にカットします
2.中華鍋で炒めます(火の通り難いじゃがいもから)
3.じゃがいもがしんなりしてきたら、◯美屋の(伏せ字になっていない)麻婆豆腐の素を加えます(黒い一番辛い味を推奨)
独身男が色々面倒くさくなって、適当にごちゃごちゃフライパンに放り込んで作ったら、以外と美味しかったインチキ中華の出来上がり。
★ ★ ★
「殿は狡いです!」
「なにが?」
「こんな料理を隠してました。今まで行った事のある“れすとらん“じゃ見た事ありません!」
そりゃ、味が濃いからご飯が進むだけのお下品メニューだもん、金取っちゃいけないだろう。
「うう。お芋さん、お芋さん。辛くて美味しいお芋さん。」
因みに汁物は、お昼に作った豚汁に青々としたインゲン豆とわざと崩した木綿豆腐を足して煮直した物。隠し味にラー油を追加。
煮崩れて来た具材がこれまた美味しいのよ。
じゃがいもでも里芋でも、文字通り物理的にも味覚的にも角が取れた、2回目以降が美味しいんだよね。
辛い辛い尽くしなので、茄子のお漬物にも和芥子をたっぷりつけて口に運ぶ。
へにゃ。
ん?歯応えがへにゃ?
「ん?これ糠漬けじゃないなぁ。」
「えへへわかりました?お婆ちゃんにお漬物の作り方を教えて貰っているんです。ほら、殿ってお野菜は“さらだ“よりお漬物を沢山頂いているじゃないですか。だから糠漬け以外のお漬物が、玉にも作れないかなぁって。」
「僕が漬物を食べるのは、玉の漬物が美味しいからだけなんだけどね。」
「やた!殿に美味いって言わせました!」
「これは浅漬けかな?」
「はい、お野菜と麺つゆを''びにーる袋“に入れて、揉み揉みしただけです。」
さすがは大家さんだな。伊達にご家庭の主婦を長い事してないなぁ。美味しいや。
そんなふうに、(なんだか今日の食事は手抜きジャンクばかりだった気もするけど)本当に何もしない、でも結局なんだかいつもと同じく騒がしい1日が終わって行きました。
★ ★ ★
数日後。
大体、毎日触れざるを得ない事件が乱立するんだけど、珍しくここ数日はルーティンワークだけで過ぎて行ったので。
即ち、朝は庭からの玉と大家さんの声で起こされて、3人で朝食を頂き(玉特製ジャムが大家さんに思わぬ高評価を貰ったのでパン食が続き、お年寄り的に、トースト、サラダ、ハムもしくはベーコンエッグというのはどうなのかと思うけど、ご本人が毎朝目をハートマークにしてるからいいか)、食後は聖域に行って玉は祝詞をあげるお勤め、僕は野菜や果物の手入れや収穫をしながら、2人でたぬきちと遊び、とりあえず荼枳尼天は出て来なかったり、終わったらもう一つの水晶玉に潜って、玉の家と浅葱の実家を掃除して、あとは玉にせがまれてスーパーまで食材探し。
早口で言いましたけど、そんなこんなで週末です。
★ ★ ★
「やは!おはやう。」
「おはようございます。佳奈さん。」
「………男が寝てる部屋に、嫁入り前の娘がドカドカ入って来るもんじゃないぞう?」
目を覚ましたら、青木さんが右手をたかだかと上げて挨拶してんだけど。
「玉ちゃんに連れ込まれました。」
「連れ込みました。」
「じゃあ、私達庭に行くね。大家さんが待ってるから。」
「殿は朝ご飯の支度をお願いしますね。」
僕のプライベート空間と時間がなくなっていくなぁ。家族の玉だけならともかく、青木さんも大家さんも割と気軽に上がってくるし、菅原さんはさすがに上がってはこないけど、玄関やら庭やらから顔を出して話かけられる事が増えた。
玉がいるから最低限の身だしなみは整えているけど、前はパンツ一丁とか当たり前だったぞ。1人暮らしの男だもん。
★ ★ ★
「たぬちゃんおいで。◯ゅ~るあげるよ!」
「??わ、わん!」
最近の傾向として、玉は社だけでなく茶店の方まで掃き掃除をする様になったので、時間を持て余すと予測していたのだろう。青木さんは◯ゅ~るを自分で買って来てた。
勿論、たぬきちも◯ゅ~るが大好き。今日はお姉ちゃんに甘える日、と決めた様で。
たぬきちが心底リラックスしてる顔の時は、玉もたぬきちの心情を大切にするから、ヤキモチも妬かずニコニコ笑っているだけだ。
青木さんに無防備にもお腹を見せて◯ゅ~るを啜るたぬきちの姿が嬉しくて止まらない。だって、玉は青木さんもたぬきちも大好きだから。どんどん仲良くなっていく事が嬉しくて嬉しくて止まらない。
★ ★ ★
ところで今日は土曜日なのだけど。
今日って青木さんが来る日だっけ?
「何ようその、通い妻みたいな言い方。」
「いや、週末に3人で出掛けたいとさ言っていたから、色々調べたけど。まさか土日共とかなのかな?」
「土曜日は週末。日曜日も週末!私は別に期日指定も曜日指定もしていない。」
「いや、あのですね?」
仕事の疲れを取る日とか、体調管理は大丈夫なの?新米社会人さん。
「明日は明日の風が吹く。今日は狸の風が吹く。私がこんなに狸好きになった責任を取って貰おうと。」
「つまり、好きになってので責任を取って私を貰えと。」
「玉ちゃん?私の言葉を大胆過ぎる程大胆に省略しないで。」
つまり、動物園に連れて行って、ぽん子を紹介しろと。
「はい!」
今まで見たことない神々しい笑顔だ。
「わん?」
「たぬちゃんにも、いつかお嫁さんが来ると良いねえ。」
「わん?」
たぬきちには、まだそんな気無いみたいだよ。
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