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第五章【魔女の指輪】
第五章 その②
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「もういい、私が出る」
そう言って僕の手からスマホをひったくろうとしたので、僕は反射で、スマホを高く掲げた。
「僕が出るよ」
「だったらそうしなさいよ」
「ごめんって」
お願いします。こうやって、親指で「応答」ボタンを押す前に、耳に押し当てる前に、着信よ切れてください…。
そう願いながら、僕は親指で「応答」と押し、恐る恐る、スマホを耳に押し当てた。
「…もし、もし」
『お電話失礼いたします。私、ジュエル工房威武火東店の宮地です』
願いも虚しく、マイクの向こうから、四十代くらいだろう枯れた男の声が聴こえた。
森の中で熊に遭遇した時のような気分になる。思わず息を止めたのだが、電話の向こうの相手は、一方的に続けた。
『もしもし? こちら、ジュエル工房の宮地ですけども』
ジュエル工房?
聞き覚えのある名前に、僕は薄目を開ける。そこには呆れた顔をした皆月が立っていて、瞬間、彼女は僕の脛を蹴りつけた。激痛に声が出そうになるが、そこは飲みこむ。そして、直ぐにスマホに向かって言った。
「え、ええ…、何の用で?」
『何の用でって…』
電話の向こうで、男の声が震えるのがわかった。
『あの、先日、うちにネックレスの修理に来てくれたお客様のお電話番号で宜しいですかね? いや実は、お名前が読めなくて…』
「あ……」
そこで思い出す。
皆月にも聞こえていたようで、彼女は「ああ…」と声を洩らし、手を叩いていた。
そう言えば、僕の生徒手帳に、ネックレスの修理を依頼したと思われるレシートが挟まっているを見つけた。皆月と、「後で確認しに行こう」と言い合っていたのだ。
「すっかり忘れてた…」
僕は自分の額を叩いた。
電話の向こうの男は、何処か安堵したような声で続ける。
『もう五か月も取りに来られていないので…。半年過ぎても取りに来られないようでしたら、処分…ということになりますが…、どうします?』
「ああ、取りに行きます。取りに行きます」
落ちたものを掴むように言った。
そう言って僕の手からスマホをひったくろうとしたので、僕は反射で、スマホを高く掲げた。
「僕が出るよ」
「だったらそうしなさいよ」
「ごめんって」
お願いします。こうやって、親指で「応答」ボタンを押す前に、耳に押し当てる前に、着信よ切れてください…。
そう願いながら、僕は親指で「応答」と押し、恐る恐る、スマホを耳に押し当てた。
「…もし、もし」
『お電話失礼いたします。私、ジュエル工房威武火東店の宮地です』
願いも虚しく、マイクの向こうから、四十代くらいだろう枯れた男の声が聴こえた。
森の中で熊に遭遇した時のような気分になる。思わず息を止めたのだが、電話の向こうの相手は、一方的に続けた。
『もしもし? こちら、ジュエル工房の宮地ですけども』
ジュエル工房?
聞き覚えのある名前に、僕は薄目を開ける。そこには呆れた顔をした皆月が立っていて、瞬間、彼女は僕の脛を蹴りつけた。激痛に声が出そうになるが、そこは飲みこむ。そして、直ぐにスマホに向かって言った。
「え、ええ…、何の用で?」
『何の用でって…』
電話の向こうで、男の声が震えるのがわかった。
『あの、先日、うちにネックレスの修理に来てくれたお客様のお電話番号で宜しいですかね? いや実は、お名前が読めなくて…』
「あ……」
そこで思い出す。
皆月にも聞こえていたようで、彼女は「ああ…」と声を洩らし、手を叩いていた。
そう言えば、僕の生徒手帳に、ネックレスの修理を依頼したと思われるレシートが挟まっているを見つけた。皆月と、「後で確認しに行こう」と言い合っていたのだ。
「すっかり忘れてた…」
僕は自分の額を叩いた。
電話の向こうの男は、何処か安堵したような声で続ける。
『もう五か月も取りに来られていないので…。半年過ぎても取りに来られないようでしたら、処分…ということになりますが…、どうします?』
「ああ、取りに行きます。取りに行きます」
落ちたものを掴むように言った。
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