久遠の魔法使いの弟子

つるしぎ

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魔法使いとの出会い

2人の監視人

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「お父さんのせいで遅刻ギリギリだよ」

 結局アーロンの熱意に負けて、アーロンの指定した服に着替えたナタリーが怒ったように言う。

「ご、ごめんなさい……」

「まあ、いいや。一応間に合ったんだし」

 忘れ物がないかバッグの中を確認し髪型を軽く整えると、ナタリーは服の下からネックレスを出してアーロンに見せた。

「魔石の残り魔力も大丈夫そう?」

「うん。大丈夫。夜までは保つと思うよ」

「ありがとう」

 そう言うと、ナタリーはネックレスを服の中にしまった。

「そういえば、なんでロボも付いて来たの?」

「アーロンの監視役だ」

「ふーん?」

 不思議そうな顔でナタリーはロボを見た。

「じゃあ、行ってくるね」

「帰りは何時ぐらいになりそうなの?」

「魔石が切れる前に帰りたいから、夕方ぐらいかな」

「帰りも迎えに来るから、呼び出しベルを使うんだよ」

 心配そうな顔でアーロンが言う。

「うん、わかった。行ってきまーす」

 黒色のレースのワンピースをはためかせ、綺麗な金色の髪を持つ人間の女の子の姿でナタリーは歩いて行った。




 
 噴水広場の前に立っていた男性に、ナタリーは近付いていき声を掛けた。

 「ダレン、お待たせ」

 声を掛けられたダレンはナタリーが声を掛けるまで気が付かなかったのか、ビクリッと身体を震わせるとナタリーの方を向いた。
 ナタリーの姿を見るとダレンは固まり、瞬きもせずにその姿を見続けていた。

「ごめん、ちょっと遅れちゃって」

「うえっ⁉」

 ナタリーの声にハッと我に返ると、慌てたように手をブンブンと横に振った。

「あ、いやいや! お、俺もさっき来た所だし! 全然大丈夫!」

「そう? なら良かった」

 ダレンの仕草にナタリーはクスリと笑った。

「じゃあ、行こうか。 服選んで欲しいんでしょ?」

「あ! う、うん!」

 ナタリーが先に歩き始めると、ダレンはその後を付いて行った。

 そしてその後を追うように物陰からアーロンとロボが出て来た。

「ねえ、今の見た? あんなにガチガチに緊張しちゃって、相手は絶対ナタリーの事意識してるでしょ。だって、すっごいフォーマルな服着てたもん。これから結婚式でも行くのかってぐらいカッチリした服着てたもん。割とカジュアルな服着てたナタリーの隣に立ったらちぐはぐじゃん! 服を買いに行くんだよね⁉」

 アーロンが取り乱したように大きな声を出す。

 それを冷めた目で見ながら、冷静な声でロボが言う。

「っていうか、なに覗き見してんだよ。ナタリーに怒られるだろ。オラッ、帰るぞ」

 アーロンのローブの端を掴むと、ロボは乱暴に引っ張った。

「ちょっ、脱げる! フードが脱げる!」

 変装をしていないアーロンは、慌ててフードを手で掴んで抵抗した。

「も、もうちょっとだけ後を追わせて! 人の恋路に干渉しちゃいけないのは分かってるけど、やっぱり心配なんだよお! 変な男に付き纏われたりとかしたらどうするんだよ!」

「もしそんな事になっても、ナタリーなら一蹴りで相手をワンパンに出来るだろ」

 アーロンの抗言を無視して、ロボはアーロンを引っ張り続けた。

 自分の意見を聞く気のないロボの様子を見て、アーロンは決心したような顔をしてロボの前に回り込んで肩を掴んだ。

「わかった。前にロボが欲しがってた魔動食器洗い機、買ってあげるから」

 アーロンの言葉に、ロボはピクリと反応する。

 そしてゆっくりと顔を上げてアーロンをじっと見た。
 そのロボの様子を暫く見ていたアーロンは、情けない顔をすると言葉を付け足した。

「わかった! 自宅用のプラネタリウムも付ける!」

「よしっ」

 ロボは言葉を発すると、アーロンの前に手を出した。

「契約成立だ。約束破るなよ」

「はい……」

 そう言って、ロボはアーロンと握手を交わした。

「じゃあ、早く行かないと! 見失っちゃうよ」

 アーロンはそう言うと、ロボを促して走って2人の後を追いかけた。
 アーロン達と入れ替わるように、物陰から人影が出て来ていた。
 
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