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魔法使いとの出会い
5話 デート
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「おはよ~」
目を擦りながら階段を降りてきたロボに、アーロンが声を掛ける。
ロボは寝不足と書いてある顔で食卓に着くと、暫くぼんやりと天井付近を眺めていた。
「朝ご飯食べたいのなら自分で取りに来ないとありませんよ」
椅子から動こうとしないロボの背をルイスが軽く叩く。
「う、ん……」
未だに働かない頭で生返事を返すと、ゆらゆらと立ち上がりキッチンに出来ている短い列に並んだ。
朝食を持って再び食卓に着き直し食べ始めた時、階段を降りてくる足音が聞こえた。
「おはよう~」
キッチンに立って朝食を配っていたアーロンが、振り返り足音の主に挨拶をする。
二階から降りてきたナタリーは既に身支度を整え、服も着替えていた。
「この服、どうかな?」
そう聞いてきたナタリーの服は、黒色のロングワンピースで太腿の辺りからスリットの入っている服を着ていた。
「とても似合ってるよ。いつものシンプルな服装も似合ってるけど、シックな感じも似合うね」
慣れた口ぶりで完璧な褒め方をするアーロンをよそに、ナタリーはロボにも同様の質問をした。
「この服、どうかな?」
朝食を少し食べた事で頭が動いて来たロボは、ナタリーの服を上から下までじっくりと観察し、少し考えて言った。
「まあ、別にそ」
「ストーップ!」
ロボの言葉をアーロンが遮った。
「ロボお腹減ってるって言ってたよね? なら余った分全部食べなよ!」
アーロンはどこか焦った様子で、鍋の中に入っているスープを全てロボの皿へと入れた。
「ちょっ、俺はそんなこと一言も」
「いやいや、降りてきたときに言ってたじゃないか。沢山食べないと大きくなれないよ!」
「さっきからなんなんだ」
ロボとアーロンが言い争いをしていると、ナタリーは呆れたような顔をして上へと戻って行った。
「……ふう」
ナタリーが完全に2階に行ってしまったのを確認して、アーロンは息を吐く。
そしてロボの方を向くと𠮟るような声で言った。
「女の子が服や化粧を見せてきたら、褒める言葉以外言っちゃいけないんだよ。さっきはなんて言おうとしてたの?」
「まあ、別にそれなりだろって」
「やっぱり……。止めて正解だったよ」
アーロンは額の汗を拭う。
「昔ね、僕の元にいた女の子はお洒落が大好きな子で、毎日可愛い服を着て出掛けていたんだよ。当時よく薬なんかを卸に行ってた村に同じ歳ぐらいの男の子が居てね、僕のお手伝いなんかで一緒に来ていたその子に一目惚れしたらしくて、好意の裏返しでよくちょっかいを掛けられていたんだよ。ある日一番のお気に入りの服を着て村に行った時に、多分素直に褒めるのが恥ずかしかったんだと思うんだけど、本心とは全く真逆の、貶すような言葉を男の子は言ってしまったんだよ。それ以来その子はその村に行くのを嫌がって、仕方がなく付いてきてくれた時も、その男の子の事を完全に無視するようになったんだよ。あれは凄かったなぁ。大人になって反省したのか、向こうの子が誠心誠意謝ってきたから、表面上は和解してたけどそれ以上は関わることはなかったもんなあ……」
昔を懐かしむ顔で浸っていたアーロンは、はっと我に返って本題に戻った。
「つまり何が言いたいかって言うと、女の子のお洒落には口出ししてはいけないってこと! この事に限らず、自分にあまり知識のない分野の事にはあまり口を出してはいけないよ」
説教を終えて、ロボにきちんと理解したのか尋ねていると、再び2階からナタリーが降りてきた。
今度はヘアメイクまで終わらせて、靴を2足手に持っていた。
「この靴とこの靴、今着ている服にはどっちの方が似合うと思う?」
ナタリーは足元に靴を2足並べて聞いた。
「どちらかといえば右の靴かな。どっちも似合ってるけどね」
「ミアは左の方が好き~。キラキラして可愛いもん」
フォークでスクランブルエッグを食べていたミアが言う。
「うーん、そっか。ありがとう」
ナタリーは2足の靴を手に持ち、見比べた。
「そう言えばどこか出掛けるの? 今日はお手伝いに行く日でもなかったよね?」
「あー、今日一緒に出掛けないかって誘われたの」
「へー、そうなんだ。なんて言う子?」
「ダレンって子。よくお店に来てくれるの」
「へー……。ん?」
ニコニコしながらナタリーの話を聞いていたアーロンは、なにか引っ掛かるものがあったようだった。
「ダレンって男の子?」
「そうだけど」
「何人で会うの?」
「2人」
根掘り葉掘り聞いて来るアーロンに少し引きながら、ナタリーは答える。
「え、男の子と2人だけで遊ぶの⁉」
アーロンは驚いたように大きい声で言う。
「それってデートじゃないか!」
「別に、ショッピングに付き合て欲しいって言われただけだし。そんなんじゃないでしょ」
「いやいや、2人きりで出掛けるのならそれはデートだよ! え、デートに行くの?」
「だから、一緒に出掛けるだけだって言ってるでしょ」
「ま、まだ早くない? まだ生まれて十数年しか経ってないし、まだ子供なんだし」
「獣人種からしたらもう大人に近い歳なんだけど」
ナタリーが呆れたように言う。
「まって、だったらその服はやめよう? もうちょっと露出の少ない服にしない?」
「でも、この服でコーディネートしちゃったし」
「そ、そうだ! 前に買ってた黒色の裾がレースのワンピースがあったでしょ。それにしようよ!」
「今更コーディネート変える時間ないんだけど」
「お願い! いざとなったら向こうの人には僕が謝るから!」
「お父さんが急に出てきたらビックリするでしょ!」
土下座する勢いで懇願するアーロンと、それを突っぱねるナタリーの攻防は暫く続いた。
目を擦りながら階段を降りてきたロボに、アーロンが声を掛ける。
ロボは寝不足と書いてある顔で食卓に着くと、暫くぼんやりと天井付近を眺めていた。
「朝ご飯食べたいのなら自分で取りに来ないとありませんよ」
椅子から動こうとしないロボの背をルイスが軽く叩く。
「う、ん……」
未だに働かない頭で生返事を返すと、ゆらゆらと立ち上がりキッチンに出来ている短い列に並んだ。
朝食を持って再び食卓に着き直し食べ始めた時、階段を降りてくる足音が聞こえた。
「おはよう~」
キッチンに立って朝食を配っていたアーロンが、振り返り足音の主に挨拶をする。
二階から降りてきたナタリーは既に身支度を整え、服も着替えていた。
「この服、どうかな?」
そう聞いてきたナタリーの服は、黒色のロングワンピースで太腿の辺りからスリットの入っている服を着ていた。
「とても似合ってるよ。いつものシンプルな服装も似合ってるけど、シックな感じも似合うね」
慣れた口ぶりで完璧な褒め方をするアーロンをよそに、ナタリーはロボにも同様の質問をした。
「この服、どうかな?」
朝食を少し食べた事で頭が動いて来たロボは、ナタリーの服を上から下までじっくりと観察し、少し考えて言った。
「まあ、別にそ」
「ストーップ!」
ロボの言葉をアーロンが遮った。
「ロボお腹減ってるって言ってたよね? なら余った分全部食べなよ!」
アーロンはどこか焦った様子で、鍋の中に入っているスープを全てロボの皿へと入れた。
「ちょっ、俺はそんなこと一言も」
「いやいや、降りてきたときに言ってたじゃないか。沢山食べないと大きくなれないよ!」
「さっきからなんなんだ」
ロボとアーロンが言い争いをしていると、ナタリーは呆れたような顔をして上へと戻って行った。
「……ふう」
ナタリーが完全に2階に行ってしまったのを確認して、アーロンは息を吐く。
そしてロボの方を向くと𠮟るような声で言った。
「女の子が服や化粧を見せてきたら、褒める言葉以外言っちゃいけないんだよ。さっきはなんて言おうとしてたの?」
「まあ、別にそれなりだろって」
「やっぱり……。止めて正解だったよ」
アーロンは額の汗を拭う。
「昔ね、僕の元にいた女の子はお洒落が大好きな子で、毎日可愛い服を着て出掛けていたんだよ。当時よく薬なんかを卸に行ってた村に同じ歳ぐらいの男の子が居てね、僕のお手伝いなんかで一緒に来ていたその子に一目惚れしたらしくて、好意の裏返しでよくちょっかいを掛けられていたんだよ。ある日一番のお気に入りの服を着て村に行った時に、多分素直に褒めるのが恥ずかしかったんだと思うんだけど、本心とは全く真逆の、貶すような言葉を男の子は言ってしまったんだよ。それ以来その子はその村に行くのを嫌がって、仕方がなく付いてきてくれた時も、その男の子の事を完全に無視するようになったんだよ。あれは凄かったなぁ。大人になって反省したのか、向こうの子が誠心誠意謝ってきたから、表面上は和解してたけどそれ以上は関わることはなかったもんなあ……」
昔を懐かしむ顔で浸っていたアーロンは、はっと我に返って本題に戻った。
「つまり何が言いたいかって言うと、女の子のお洒落には口出ししてはいけないってこと! この事に限らず、自分にあまり知識のない分野の事にはあまり口を出してはいけないよ」
説教を終えて、ロボにきちんと理解したのか尋ねていると、再び2階からナタリーが降りてきた。
今度はヘアメイクまで終わらせて、靴を2足手に持っていた。
「この靴とこの靴、今着ている服にはどっちの方が似合うと思う?」
ナタリーは足元に靴を2足並べて聞いた。
「どちらかといえば右の靴かな。どっちも似合ってるけどね」
「ミアは左の方が好き~。キラキラして可愛いもん」
フォークでスクランブルエッグを食べていたミアが言う。
「うーん、そっか。ありがとう」
ナタリーは2足の靴を手に持ち、見比べた。
「そう言えばどこか出掛けるの? 今日はお手伝いに行く日でもなかったよね?」
「あー、今日一緒に出掛けないかって誘われたの」
「へー、そうなんだ。なんて言う子?」
「ダレンって子。よくお店に来てくれるの」
「へー……。ん?」
ニコニコしながらナタリーの話を聞いていたアーロンは、なにか引っ掛かるものがあったようだった。
「ダレンって男の子?」
「そうだけど」
「何人で会うの?」
「2人」
根掘り葉掘り聞いて来るアーロンに少し引きながら、ナタリーは答える。
「え、男の子と2人だけで遊ぶの⁉」
アーロンは驚いたように大きい声で言う。
「それってデートじゃないか!」
「別に、ショッピングに付き合て欲しいって言われただけだし。そんなんじゃないでしょ」
「いやいや、2人きりで出掛けるのならそれはデートだよ! え、デートに行くの?」
「だから、一緒に出掛けるだけだって言ってるでしょ」
「ま、まだ早くない? まだ生まれて十数年しか経ってないし、まだ子供なんだし」
「獣人種からしたらもう大人に近い歳なんだけど」
ナタリーが呆れたように言う。
「まって、だったらその服はやめよう? もうちょっと露出の少ない服にしない?」
「でも、この服でコーディネートしちゃったし」
「そ、そうだ! 前に買ってた黒色の裾がレースのワンピースがあったでしょ。それにしようよ!」
「今更コーディネート変える時間ないんだけど」
「お願い! いざとなったら向こうの人には僕が謝るから!」
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