14 / 28
魔法使いとの出会い
3話 魔法の授業
しおりを挟む
家に戻ってきてから1週間。
それほど酷くなかった怪我はほぼ完治し、ここで世話になる事を改めて皆に許してもらったロボは、なにかすることはないかと言った結果、皿洗いを任されている。
先ずは使う食器の場所や、調理器具の場所などを把握して欲しい、という事らしい。
毎食後の皿洗いをこなし、ロボに魔法の才があることを知ったアーロンは、文字の勉強の時間の他に、魔法の勉強も教えるようになった。
その時気が付いた事なのだが、文字の勉強はアーロンとロボの一対一だったが、魔法の勉強の時間は生徒が2人いた。
初めて指定された部屋に入ると、そこにはノアが座っていて、ロボの顔を見ると怖がるような表情を浮かべた。
「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
最後に部屋に入って来たアーロンは、汗を軽く拭くと、ロボ達の机と向かい合うように置かれた少し大きめの机の前に立った。
「初めてこの授業に参加する子がいるから、今日は少し初心に戻って基礎的な授業にするよ。ノアにとっては簡単な授業になっちゃうかもしれないけど、今日だけいいかな?」
ノアは小さく頷いた。
「それじゃあ、授業を始めるよ。紙とペンは渡しているものがあると思うから、もしメモを取りたい時はそれを使ってね」
アーロンに促され、ロボは事前に貰っていた紙と羽ペンを机の上に出した。
「じゃあまず、なんとなくわかるかもしれないけど、魔法というのは、魔力を持つ人がそれを使用することで発現する現象のことを言うよ。魔力の量はその人の生まれ持った資質も少しあったりするけど、大抵はその後の努力次第で増減するよ。剣術を鍛えようとした時、体力や筋力をつける為に走り込みしたりトレーニングをしたりするだろう? それと同じだよ。まずは詠唱を勉強して覚えて、使ってみることから始めていこう。きちんと詠唱が出来ないと魔法が発現しなかったり不完全だったりするからね。人によって得意、不得意な分野もあるんだけど、それは追々かな。後は、詠唱を省略しようと思ったら、予め詠唱を書いておいた魔法道具を使うっていう手もあるよ」
そう言うとアーロンは懐から鉄の棒のような物を取り出し、その側面に触れた。
すると、魔法陣のような模様が浮き上がり、その先端から炎が噴き出した。
「魔法石のはめ込まれた魔法道具を使えば、魔力を持たない人でもこんな風に魔法を使うことが出来るよ。でもまずは、詠唱をして魔法を使う事から覚えて行こうね」
アーロンは手に持っていた魔法道具をすぐに仕舞った。
「今僕が使える魔法は、かつての魔法使いが発見して作り出したものが大半なんだ。前にロボ君が使っていた魔法も、昔街に行った時に教えて貰った魔法なんだ」
そう言うとアーロンは自身の手の平に、見覚えのある透明な正方形の箱を作り出した。
それを触れずに手の平の上で回転させ、小さくしたり大きくしたりして見せた。
「何度も使用して練習していけば、詠唱をしなくてもこの程度であれば魔法を発現することが出来るようになるよ。実践で使おうと思ったら、詠唱が必要だけどね。多分前回は詠唱が不完全だったから、歪に形を変えていたんだろうね。正しい詠唱は『トランスペアレント・ミニチュアガーデン』唱えてみてごらん」
アーロンに促され、手の平にそれが出てくるように想像しながら、ロボは教えられた言葉を唱えてみた。
すると手にすっぽり収まるサイズの正方形の透明な箱が出て来た。
しかしいくら念じてみたりしても、それは回転したり大きさを変えたりすることはなく、ただ手の平の上でふよふよと浮かんでいるだけだった。
「最初はそんなもんだよ。きちんと形に出来ているだけでも凄い方だよ。この魔法はかつてある街を救った英雄が使用していた魔法なんだ。元々の詠唱は違う言葉で、作り出せる物体の形も違う物だったそうだけど、英雄の伝説から言葉を取り、魔法を再現したそうだよ。かつてのその英雄は魔物に襲撃を受けた街の人々を救う為に、街1つをすっぽり覆う程の大きな防御壁を張って、それを透明化させて街を隠したんだ。魔物が街の人間を求めて探し回ったけど見つからず、その後応援にやって来た城の騎士や兵たちと魔物を追い払ったそうだよ。その応援が来るまでの間、街の中は外の殺伐とした空気を感じない、穏やかな時間が流れていた、という伝説からきているんだ」
そう言うとアーロンは手の平に浮かぶ透明な箱を、何処か懐かしそうな顔で見た。
「これ以外にも魔法の製作者が、自らの名前を付けた詠唱や、発現した魔法の見た目なんかから来ている詠唱もあったりするよ。魔法書にも沢山の魔法が載っているから、読んでみてね。あ、因みにこれは僕が出版した本だから、是非読んでみてね!」
アーロンは始めから用意していたのか、机の中から一冊の本を取り出して自慢げに見せてきた。
その姿をロボは冷めた目で見る。
「という訳で、今日は浮遊の魔法です」
アーロンは持っていた本から手を離し、そのまま浮遊させて見せた。
「前に一度見せた事あるよね。最初は軽い物から浮かばせていって、最終的には自分を浮かばせる事が目標だよ。まずはこの辺りからやってみようか」
アーロンは机の中から木でできた箱取り出した。
「フロートプレイ」
アーロンがそう呟くと、手で持てるサイズの木のブロック5~6個が箱から出て来て宙に浮かび、そのまま正確に積み上がった。
「積み木だよ。まずは1つを浮かせることから初めて見て、2つ3つと積み上げられるようにやっていこう」
ブロックを1つ手渡され、ロボはそれを受け取り、アーロンを真似るように言葉を唱える。
机の上に置いてあったブロックは1~2㎝程浮かび上がり、すぐに机の上に戻って来た。
つい先日初めて魔法を使用した時は、不完全ではあったもののなんの苦労もなく発現出来ていたロボは、自分の実力を目の当たりにして、驚愕の表情をする。
「ま、まあ、この間は危機的状況だったし、ね。これから練習していけばすぐに上達するよ!」
ロボの表情を見て、アーロンは励ますように言った。
それほど酷くなかった怪我はほぼ完治し、ここで世話になる事を改めて皆に許してもらったロボは、なにかすることはないかと言った結果、皿洗いを任されている。
先ずは使う食器の場所や、調理器具の場所などを把握して欲しい、という事らしい。
毎食後の皿洗いをこなし、ロボに魔法の才があることを知ったアーロンは、文字の勉強の時間の他に、魔法の勉強も教えるようになった。
その時気が付いた事なのだが、文字の勉強はアーロンとロボの一対一だったが、魔法の勉強の時間は生徒が2人いた。
初めて指定された部屋に入ると、そこにはノアが座っていて、ロボの顔を見ると怖がるような表情を浮かべた。
「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
最後に部屋に入って来たアーロンは、汗を軽く拭くと、ロボ達の机と向かい合うように置かれた少し大きめの机の前に立った。
「初めてこの授業に参加する子がいるから、今日は少し初心に戻って基礎的な授業にするよ。ノアにとっては簡単な授業になっちゃうかもしれないけど、今日だけいいかな?」
ノアは小さく頷いた。
「それじゃあ、授業を始めるよ。紙とペンは渡しているものがあると思うから、もしメモを取りたい時はそれを使ってね」
アーロンに促され、ロボは事前に貰っていた紙と羽ペンを机の上に出した。
「じゃあまず、なんとなくわかるかもしれないけど、魔法というのは、魔力を持つ人がそれを使用することで発現する現象のことを言うよ。魔力の量はその人の生まれ持った資質も少しあったりするけど、大抵はその後の努力次第で増減するよ。剣術を鍛えようとした時、体力や筋力をつける為に走り込みしたりトレーニングをしたりするだろう? それと同じだよ。まずは詠唱を勉強して覚えて、使ってみることから始めていこう。きちんと詠唱が出来ないと魔法が発現しなかったり不完全だったりするからね。人によって得意、不得意な分野もあるんだけど、それは追々かな。後は、詠唱を省略しようと思ったら、予め詠唱を書いておいた魔法道具を使うっていう手もあるよ」
そう言うとアーロンは懐から鉄の棒のような物を取り出し、その側面に触れた。
すると、魔法陣のような模様が浮き上がり、その先端から炎が噴き出した。
「魔法石のはめ込まれた魔法道具を使えば、魔力を持たない人でもこんな風に魔法を使うことが出来るよ。でもまずは、詠唱をして魔法を使う事から覚えて行こうね」
アーロンは手に持っていた魔法道具をすぐに仕舞った。
「今僕が使える魔法は、かつての魔法使いが発見して作り出したものが大半なんだ。前にロボ君が使っていた魔法も、昔街に行った時に教えて貰った魔法なんだ」
そう言うとアーロンは自身の手の平に、見覚えのある透明な正方形の箱を作り出した。
それを触れずに手の平の上で回転させ、小さくしたり大きくしたりして見せた。
「何度も使用して練習していけば、詠唱をしなくてもこの程度であれば魔法を発現することが出来るようになるよ。実践で使おうと思ったら、詠唱が必要だけどね。多分前回は詠唱が不完全だったから、歪に形を変えていたんだろうね。正しい詠唱は『トランスペアレント・ミニチュアガーデン』唱えてみてごらん」
アーロンに促され、手の平にそれが出てくるように想像しながら、ロボは教えられた言葉を唱えてみた。
すると手にすっぽり収まるサイズの正方形の透明な箱が出て来た。
しかしいくら念じてみたりしても、それは回転したり大きさを変えたりすることはなく、ただ手の平の上でふよふよと浮かんでいるだけだった。
「最初はそんなもんだよ。きちんと形に出来ているだけでも凄い方だよ。この魔法はかつてある街を救った英雄が使用していた魔法なんだ。元々の詠唱は違う言葉で、作り出せる物体の形も違う物だったそうだけど、英雄の伝説から言葉を取り、魔法を再現したそうだよ。かつてのその英雄は魔物に襲撃を受けた街の人々を救う為に、街1つをすっぽり覆う程の大きな防御壁を張って、それを透明化させて街を隠したんだ。魔物が街の人間を求めて探し回ったけど見つからず、その後応援にやって来た城の騎士や兵たちと魔物を追い払ったそうだよ。その応援が来るまでの間、街の中は外の殺伐とした空気を感じない、穏やかな時間が流れていた、という伝説からきているんだ」
そう言うとアーロンは手の平に浮かぶ透明な箱を、何処か懐かしそうな顔で見た。
「これ以外にも魔法の製作者が、自らの名前を付けた詠唱や、発現した魔法の見た目なんかから来ている詠唱もあったりするよ。魔法書にも沢山の魔法が載っているから、読んでみてね。あ、因みにこれは僕が出版した本だから、是非読んでみてね!」
アーロンは始めから用意していたのか、机の中から一冊の本を取り出して自慢げに見せてきた。
その姿をロボは冷めた目で見る。
「という訳で、今日は浮遊の魔法です」
アーロンは持っていた本から手を離し、そのまま浮遊させて見せた。
「前に一度見せた事あるよね。最初は軽い物から浮かばせていって、最終的には自分を浮かばせる事が目標だよ。まずはこの辺りからやってみようか」
アーロンは机の中から木でできた箱取り出した。
「フロートプレイ」
アーロンがそう呟くと、手で持てるサイズの木のブロック5~6個が箱から出て来て宙に浮かび、そのまま正確に積み上がった。
「積み木だよ。まずは1つを浮かせることから初めて見て、2つ3つと積み上げられるようにやっていこう」
ブロックを1つ手渡され、ロボはそれを受け取り、アーロンを真似るように言葉を唱える。
机の上に置いてあったブロックは1~2㎝程浮かび上がり、すぐに机の上に戻って来た。
つい先日初めて魔法を使用した時は、不完全ではあったもののなんの苦労もなく発現出来ていたロボは、自分の実力を目の当たりにして、驚愕の表情をする。
「ま、まあ、この間は危機的状況だったし、ね。これから練習していけばすぐに上達するよ!」
ロボの表情を見て、アーロンは励ますように言った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる