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魔法使いとの出会い
罪悪感とわだかまりの解消
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鼻水を啜る音が止んだ時、アーロンはゆっくりとロボを離した。
なにもなかったような顔をしていたが、その目は少し赤く、涙の跡が残っている。
咳払いをすると、アーロンは話始める。
「それで、ロボ君はこの家を出たいんだよね。それを止める気はないし、寧ろ応援するけど、お願いだから何も言わずに勝手に出て行こうとするのだけはやめてくれないかな」
真剣な顔で懇願するアーロンに、罪悪感からロボは素直に了承した。
「でも、どうして急に家を出て行こうと思ったの? そんなにあそこは居心地が悪かった?」
「いや、そんなことは」
「じゃあ、どうして?」
言葉に詰まったロボは口を噤み、なんて返答しようかと頭を巡らせたが、なにも良い返答が思い浮かばず、ため息をついて答えた。
「居心地が良すぎて、ここにずっといたらもう前のような生活には戻れないと思ったんだ」
ロボの返答にアーロンは首を傾げた。
「それならずっとここにいればいいんじゃない? きっとみんな歓迎してくれるよ」
「いや、だから、そうじゃなくて!」
アーロンは首を傾けながら、ロボの目を真剣に見た。
ロボは目を逸らすように俯きながら言った。
「こんなに無条件に愛された経験がないから、どうしていいかわからないんだ。俺には何も返せる物なんてないのに。居心地が良すぎて、手放したくないと思ってしまう」
「ロボ君はよく無報酬でとか、返せる物とか口にするけど、僕はロボ君からもう沢山の物を貰っているんだよ。今だから白状するけど、僕がこうして誰かを世話したりするのは、僕が過去に犯したことへの贖罪なんだ。だから気に病む必要は全くないよ。これは僕がやりたくてやっている事だし、寧ろ僕の我儘に付き合わせてしまって本当に申し訳ないと思っているよ」
アーロンはロボの腕を引いて立たせた。
「怪我は派手だけど、それほど深い傷ではないみたいだね。さ、じゃあ家に帰ろうか。また治療をしなきゃいけないからね」
アーロンはロボの手を握り、立ち上がった。
「あ、そういえばこれ、忘れ物だよ」
そう言うと、アーロンは鈴の付いたブレスレットをロボの腕にはめた。
「これ、一体なんの意味があるんだ?」
ロボは腕のブレスレットを見ながら言う。
「魔除けの魔法をかけてあるんだ。これを付けている時は魔物に遭遇しなかっただろう?」
アーロンの言葉に、ロボは納得をしたような顔をする。
「これを付けて出ていれば、こんな目には合わなかったわけか」
「まあ、そうとも言えるけど。でも魔除けの魔法って言っても家から遠く離れると効果が薄れるから、結局は僕に相談した方がいいと思うんだけどな」
アーロンは苦笑いをしながら、ロボの手を引いて歩き出した。
ロボもその手を払いのける事はなかった。
家に着き、扉を開けようと手を掛けると勢いよく開かれた。
扉を開けたルイスはロボの姿を上から下まで見ると、深い息を吐いて中へと戻って行った。
「あ、ルイス。調合した消毒液持ってきてくれるかな。あと包帯とガーゼも」
「わかりました」
「ロボ君はこっちに座ってね」
アーロンに誘導され、指定された椅子に座る。
「じゃあ怪我の具合をみるからね。はい、バンザーイしようか」
明らかに子供扱いをされている事にロボは不満を抱いたが、まだ罪悪感が残っていたロボは素直に従った。
「先生、持ってきましたよ」
「ありがとう」
ルイスが持って来た物を受け取ると、ガラスの瓶の中に入っている透明な液体を布に付けてロボの傷に当てた。
「いっ」
傷の所に激痛が走り、思わず顔を歪ませる。
「あの魔物は毒を持っている種ではないけど、傷から雑菌が入る可能性があるからね。染みるだろうけど我慢してね」
そういうことは付ける前に言えよ、とロボは抗議したかったがなんとか堪えた。
「思っていたより怪我は軽そうですね。良かった」
隣で手当てを見守っていたルイスが呟いた。
その言葉に少し意外性を感じ、ルイスの顔を見る。
「あれ、2人ってそんなに仲良くなかった感じなの?」
「別に、そういう訳じゃないですよ」
「あれでしょ、またルイスが辛辣な態度を取ってたんじゃないの?」
「先生が誰に対しても友好的に接するから、俺が警戒していたんじゃないですか。昔、子供に有り金全部擦られた事があるって聞きましたよ」
「げっ、何で知ってるの」
「代々語り継ぐ教訓ですから」
「確かにこいつ何処か抜けてそうだもんな」
2人の会話につい口を挟んでしまい、ロボはハッとして口を手で覆った。
一応師として敬っている相手を馬鹿にするなんて気分を害するかと思い、ルイスの顔をチラリと見る。
しかしルイスの顔は、怒っているような顔には見えなかった。
寧ろ共感をしているような、そんな顔をしているように見える。
「わかります? 薬学と魔法学の知識に関しては右に出る者がいないぐらい優秀なんですけど、それ以外はてんでポンコツなんですよ。特に疑うってことをしない所は最悪です」
ルイスはロボの方に向き直ると「貴方とは意外と意見が合いそうですね」
と言い、手をさしだした。
ロボはそれをおずおずと握り返した。
なにもなかったような顔をしていたが、その目は少し赤く、涙の跡が残っている。
咳払いをすると、アーロンは話始める。
「それで、ロボ君はこの家を出たいんだよね。それを止める気はないし、寧ろ応援するけど、お願いだから何も言わずに勝手に出て行こうとするのだけはやめてくれないかな」
真剣な顔で懇願するアーロンに、罪悪感からロボは素直に了承した。
「でも、どうして急に家を出て行こうと思ったの? そんなにあそこは居心地が悪かった?」
「いや、そんなことは」
「じゃあ、どうして?」
言葉に詰まったロボは口を噤み、なんて返答しようかと頭を巡らせたが、なにも良い返答が思い浮かばず、ため息をついて答えた。
「居心地が良すぎて、ここにずっといたらもう前のような生活には戻れないと思ったんだ」
ロボの返答にアーロンは首を傾げた。
「それならずっとここにいればいいんじゃない? きっとみんな歓迎してくれるよ」
「いや、だから、そうじゃなくて!」
アーロンは首を傾けながら、ロボの目を真剣に見た。
ロボは目を逸らすように俯きながら言った。
「こんなに無条件に愛された経験がないから、どうしていいかわからないんだ。俺には何も返せる物なんてないのに。居心地が良すぎて、手放したくないと思ってしまう」
「ロボ君はよく無報酬でとか、返せる物とか口にするけど、僕はロボ君からもう沢山の物を貰っているんだよ。今だから白状するけど、僕がこうして誰かを世話したりするのは、僕が過去に犯したことへの贖罪なんだ。だから気に病む必要は全くないよ。これは僕がやりたくてやっている事だし、寧ろ僕の我儘に付き合わせてしまって本当に申し訳ないと思っているよ」
アーロンはロボの腕を引いて立たせた。
「怪我は派手だけど、それほど深い傷ではないみたいだね。さ、じゃあ家に帰ろうか。また治療をしなきゃいけないからね」
アーロンはロボの手を握り、立ち上がった。
「あ、そういえばこれ、忘れ物だよ」
そう言うと、アーロンは鈴の付いたブレスレットをロボの腕にはめた。
「これ、一体なんの意味があるんだ?」
ロボは腕のブレスレットを見ながら言う。
「魔除けの魔法をかけてあるんだ。これを付けている時は魔物に遭遇しなかっただろう?」
アーロンの言葉に、ロボは納得をしたような顔をする。
「これを付けて出ていれば、こんな目には合わなかったわけか」
「まあ、そうとも言えるけど。でも魔除けの魔法って言っても家から遠く離れると効果が薄れるから、結局は僕に相談した方がいいと思うんだけどな」
アーロンは苦笑いをしながら、ロボの手を引いて歩き出した。
ロボもその手を払いのける事はなかった。
家に着き、扉を開けようと手を掛けると勢いよく開かれた。
扉を開けたルイスはロボの姿を上から下まで見ると、深い息を吐いて中へと戻って行った。
「あ、ルイス。調合した消毒液持ってきてくれるかな。あと包帯とガーゼも」
「わかりました」
「ロボ君はこっちに座ってね」
アーロンに誘導され、指定された椅子に座る。
「じゃあ怪我の具合をみるからね。はい、バンザーイしようか」
明らかに子供扱いをされている事にロボは不満を抱いたが、まだ罪悪感が残っていたロボは素直に従った。
「先生、持ってきましたよ」
「ありがとう」
ルイスが持って来た物を受け取ると、ガラスの瓶の中に入っている透明な液体を布に付けてロボの傷に当てた。
「いっ」
傷の所に激痛が走り、思わず顔を歪ませる。
「あの魔物は毒を持っている種ではないけど、傷から雑菌が入る可能性があるからね。染みるだろうけど我慢してね」
そういうことは付ける前に言えよ、とロボは抗議したかったがなんとか堪えた。
「思っていたより怪我は軽そうですね。良かった」
隣で手当てを見守っていたルイスが呟いた。
その言葉に少し意外性を感じ、ルイスの顔を見る。
「あれ、2人ってそんなに仲良くなかった感じなの?」
「別に、そういう訳じゃないですよ」
「あれでしょ、またルイスが辛辣な態度を取ってたんじゃないの?」
「先生が誰に対しても友好的に接するから、俺が警戒していたんじゃないですか。昔、子供に有り金全部擦られた事があるって聞きましたよ」
「げっ、何で知ってるの」
「代々語り継ぐ教訓ですから」
「確かにこいつ何処か抜けてそうだもんな」
2人の会話につい口を挟んでしまい、ロボはハッとして口を手で覆った。
一応師として敬っている相手を馬鹿にするなんて気分を害するかと思い、ルイスの顔をチラリと見る。
しかしルイスの顔は、怒っているような顔には見えなかった。
寧ろ共感をしているような、そんな顔をしているように見える。
「わかります? 薬学と魔法学の知識に関しては右に出る者がいないぐらい優秀なんですけど、それ以外はてんでポンコツなんですよ。特に疑うってことをしない所は最悪です」
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