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魔法使いとの出会い
子供扱い
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ここに来て2週間程が経った。
薬のおかげか身体は大分回復して、家の中を歩きまわれる程にまでなった。
走ることや過度な運動はまだ出来ないが、日常生活を送る分には困らなくなった。
家を自由に歩くことが出来るようになったことで、ここでの生活が少しずつ分かってきた。
食事の支度は主にルイスが担当し、洗濯はアーロンが、掃除はナタリーがとそれぞれ家事の役割が大まかに決まっているが、それぞれ手の空いている者が柔軟に役割をこなしているようだった。
アーロンはロボとの授業の他に、ルイスとの授業と双子の授業も受け持っており意外と忙しく、洗濯は殆ど魔法で行っていた。
またロボが歩けるまでに回復したからか、たまに家を空ける事もあるようになった。
家の中をある程度散策し、久し振りに外へ出ようとしてる見かけると、アーロンはロボを呼び留めた。
「ロボ君、外に出るの?」
「まあ、そうだな」
「じゃあ、はいこれ」
そう言ってアーロンはブレスレットを手渡してくる。
たくさんの鈴が付けられ、少し手を動かすだけで鈴の音が鳴るようになっていた。
アーロンは外に出る際はこれを必ず付けるように、と念を押してきた。
「こんなものを付けて歩いたら、自分の居場所を教えているようなものだろうが」
「だから良いんだよ。これを付けていれば余計な」
「先生~、この後の授業で必要な物ってこれであってますか?」
ルイスに声を掛けられ、アーロンはすぐに振り返った。
「あ、ごめん。今行くよ」
そう言うとまたロボに向き直った。
「とにかく、外に出るのなら必ずこれを付けて出てね。必ずだよ」
それだけ言うと、ルイスの方に小走りで向かった。
それほどまでに俺の居場所を把握しておきたいのかと、ロボは多少不満を感じたが、少し外の空気を吸いたいだけだったので、従っておく事にした。
外に出ると、ここは思っていたよりも森の奥深くなのだと感じた。
周りは大きな木々ばかりで、近くに街や村があるようには感じられない。
家の横には薪の束が沢山置いてあり、定期的に薪を取りに行っているようだった。
少し歩いたところには小さな畑があり、家庭菜園も行っているようだ。
見覚えのある野菜と、見たことのない草が生えており、恐らく薬に使う物もここで栽培しているのだろうとロボは感じる。
畑とは反対方向に歩けば、そこには子供用の遊具らしき物が沢山置いてあった。
木に吊るされたブランコ、木の上に作られたツリーハウス、手作りらしい砂場まで。
その全てに年季が入っており、何年も前に作られたことが伺える。
また、真新しいおもちゃが落ちている事から、今も尚使われている場所なのだろう。
なんとなく、うずうずしてロボはブランコに座った。
腰を降ろすと痛んだ木が不気味な音を上げたが、壊れることはなかった。
初めて乗るブランコは、不思議な爽快感があった。
ただ椅子が大きく揺れているだけだと分かっているのに、風を切る音が、乱れる髪が、目まぐるしく変わる景色がとても清々しい。
その後も、人目がないのを逐一確認してそこらに散らばるおもちゃに触れた。
梯子を使って登るツリーハウスには、価値のなさそうなガラクタが大切そうに保管され、壁には幾つもの落書きがされていた。
砂場を掘ってみると中から忘れ去られたバケツが出て来た。
普通の子供はこんなことをして遊ぶものなのかと、新しい発見をした気持ちだった。
それから迷わない程度に散策をしてみたが、ここが森のどの辺りなのか、森を出るにはどの方向に進めばいいのか、などは全くわからなかった。
人っ子一人いなければ、魔物の類もいない不思議な森だ。
そろそろ日が傾いて来たのに気付き、ロボは家の方向に足を向けた。
家に帰ると、家中に食欲をそそるような美味しそうな匂いがしていた。
キッチンに向かうと、鍋の中を覗き込んで目を輝かせる双子と、鍋を混ぜながら危ないからもっと離れるように注意するルイスがいて、食卓にスプーンやフォークを並べるナタリーがいて。
昼過ぎ辺りから出掛けていたアーロンが、籠の中から丁寧にホールケーキを取り出して、いそいそと食卓の真ん中に置いていた。
その光景を見て、ロボは何故か胸が締め付けられるような感覚がした。
アーロンは帰宅したロボに気が付くと、声を掛けた。
「あ、おかえりー。久し振りの外の空気はどうだった?」
胸の辺りを触り、小首を傾げながらロボはコクリと頷く。
その俺の姿を少し不思議そうな顔で見ながら、アーロンはロボを側へと呼んだ。
「ロボ君も大分回復してきたみたいだから、今までは部屋で食べて貰っていたけど、今日から一緒の食卓に着くのはどうかなと思って。初めて一緒にご飯を食べる記念日だから、ルイスに頼んで食事を豪華にしてもらったんだ。街に行ってケーキも買ってきたんだけど、ケーキ嫌いだったりする? 嫌いな食べ物とかあったら言ってね。あ、席はこの位置でいいかな? 端っこの方が良かったりする?」
興奮しているのか、アーロンは矢継ぎ早に言葉を発した。
その勢いにロボは少し引き気味に、頭を縦に何度も動かしながら返答した。
食卓の真ん中に置かれたケーキは真っ白で、上には綺麗な花びらが散りばめられ、チョコレートが幾つか添えられていた。
それを見て双子はまた目を輝かせた。
食事の支度が終わり、ロボは指定された席に着いた。
ロボの席の右隣にはアーロンが、左隣にはルイスが、向かいの席にはノアが座っていた。
今日の献立は、野菜のスープにソーセージ、側には小麦がふんだんに使われた白いパンに、真ん中にはサラダが置かれ、目立つ場所に今日のメインだろう赤く染まった大きなロブスターが鎮座していた。
魚介類などはすぐに痛んでしまうので、海辺の町に行かなければ食べられない筈なのに当たり前のように食卓に並んでいて、ロボは驚いた。
前に見た移動の魔法で海辺の町まで行ってきたのだろうか。
「じゃあ、食べようか」
アーロンの言葉を合図に皆一斉に食事へと手を伸ばし始めた。
ミアは真っ先にケーキへと手を伸ばそうとしてルイスに止められ、アーロンはノアの皿にロブスターを取り分けていた。
誰かと食事を共にするという経験に乏しかったロボは、どう動けばいいのかわからず皆の動向を探っていると、上から声が降ってきた。
「ロボ君もいるよね?」
名前を呼ばれその方へ顔を向けると、アーロンが切り分けたロブスターを手に、ロボの皿を指さしていた。
「あ、ああ」
流されるまま皿をアーロンに差し出すと、ロブスターを乗せられて返ってきた。
真っ2つにされたロブスターを注視していると、アーロンに声を掛けられた。
「食べ方分からない? 殻から身を出してあげた方が良かったかな」
そう言いながら一度皿を取ろうとするアーロンを止めた。
「あ、いや、大丈夫」
尚も世話を焼こうとするアーロンをその度に止め、ロボは食事に手を付けた。
野菜のスープは噛む必要のない程野菜が柔らかく煮込まれ、白いパンは今まで食べてきたパンより柔らかく、初めて食べるロブスターは弾力があって感じた事のない味がして美味しかった。
食事をしている間、周りからは会話をする声や食器の当たる音がしていた。
時折、話を振られるのでロボはそれに答え、ロブスターを大口で齧れば、右横から腕が伸びてきて口元を布巾で拭われる。
手を滑らせてパンを落とせば、すぐに左隣の者に拾い上げられ代わりの物を渡される。
赤の他人なのに、さも当たり前のように両隣に座る二人はこなしていた。
それを見ていて先程までの胸の痛みがなんだったのか、ロボは分かった気がした。
薬のおかげか身体は大分回復して、家の中を歩きまわれる程にまでなった。
走ることや過度な運動はまだ出来ないが、日常生活を送る分には困らなくなった。
家を自由に歩くことが出来るようになったことで、ここでの生活が少しずつ分かってきた。
食事の支度は主にルイスが担当し、洗濯はアーロンが、掃除はナタリーがとそれぞれ家事の役割が大まかに決まっているが、それぞれ手の空いている者が柔軟に役割をこなしているようだった。
アーロンはロボとの授業の他に、ルイスとの授業と双子の授業も受け持っており意外と忙しく、洗濯は殆ど魔法で行っていた。
またロボが歩けるまでに回復したからか、たまに家を空ける事もあるようになった。
家の中をある程度散策し、久し振りに外へ出ようとしてる見かけると、アーロンはロボを呼び留めた。
「ロボ君、外に出るの?」
「まあ、そうだな」
「じゃあ、はいこれ」
そう言ってアーロンはブレスレットを手渡してくる。
たくさんの鈴が付けられ、少し手を動かすだけで鈴の音が鳴るようになっていた。
アーロンは外に出る際はこれを必ず付けるように、と念を押してきた。
「こんなものを付けて歩いたら、自分の居場所を教えているようなものだろうが」
「だから良いんだよ。これを付けていれば余計な」
「先生~、この後の授業で必要な物ってこれであってますか?」
ルイスに声を掛けられ、アーロンはすぐに振り返った。
「あ、ごめん。今行くよ」
そう言うとまたロボに向き直った。
「とにかく、外に出るのなら必ずこれを付けて出てね。必ずだよ」
それだけ言うと、ルイスの方に小走りで向かった。
それほどまでに俺の居場所を把握しておきたいのかと、ロボは多少不満を感じたが、少し外の空気を吸いたいだけだったので、従っておく事にした。
外に出ると、ここは思っていたよりも森の奥深くなのだと感じた。
周りは大きな木々ばかりで、近くに街や村があるようには感じられない。
家の横には薪の束が沢山置いてあり、定期的に薪を取りに行っているようだった。
少し歩いたところには小さな畑があり、家庭菜園も行っているようだ。
見覚えのある野菜と、見たことのない草が生えており、恐らく薬に使う物もここで栽培しているのだろうとロボは感じる。
畑とは反対方向に歩けば、そこには子供用の遊具らしき物が沢山置いてあった。
木に吊るされたブランコ、木の上に作られたツリーハウス、手作りらしい砂場まで。
その全てに年季が入っており、何年も前に作られたことが伺える。
また、真新しいおもちゃが落ちている事から、今も尚使われている場所なのだろう。
なんとなく、うずうずしてロボはブランコに座った。
腰を降ろすと痛んだ木が不気味な音を上げたが、壊れることはなかった。
初めて乗るブランコは、不思議な爽快感があった。
ただ椅子が大きく揺れているだけだと分かっているのに、風を切る音が、乱れる髪が、目まぐるしく変わる景色がとても清々しい。
その後も、人目がないのを逐一確認してそこらに散らばるおもちゃに触れた。
梯子を使って登るツリーハウスには、価値のなさそうなガラクタが大切そうに保管され、壁には幾つもの落書きがされていた。
砂場を掘ってみると中から忘れ去られたバケツが出て来た。
普通の子供はこんなことをして遊ぶものなのかと、新しい発見をした気持ちだった。
それから迷わない程度に散策をしてみたが、ここが森のどの辺りなのか、森を出るにはどの方向に進めばいいのか、などは全くわからなかった。
人っ子一人いなければ、魔物の類もいない不思議な森だ。
そろそろ日が傾いて来たのに気付き、ロボは家の方向に足を向けた。
家に帰ると、家中に食欲をそそるような美味しそうな匂いがしていた。
キッチンに向かうと、鍋の中を覗き込んで目を輝かせる双子と、鍋を混ぜながら危ないからもっと離れるように注意するルイスがいて、食卓にスプーンやフォークを並べるナタリーがいて。
昼過ぎ辺りから出掛けていたアーロンが、籠の中から丁寧にホールケーキを取り出して、いそいそと食卓の真ん中に置いていた。
その光景を見て、ロボは何故か胸が締め付けられるような感覚がした。
アーロンは帰宅したロボに気が付くと、声を掛けた。
「あ、おかえりー。久し振りの外の空気はどうだった?」
胸の辺りを触り、小首を傾げながらロボはコクリと頷く。
その俺の姿を少し不思議そうな顔で見ながら、アーロンはロボを側へと呼んだ。
「ロボ君も大分回復してきたみたいだから、今までは部屋で食べて貰っていたけど、今日から一緒の食卓に着くのはどうかなと思って。初めて一緒にご飯を食べる記念日だから、ルイスに頼んで食事を豪華にしてもらったんだ。街に行ってケーキも買ってきたんだけど、ケーキ嫌いだったりする? 嫌いな食べ物とかあったら言ってね。あ、席はこの位置でいいかな? 端っこの方が良かったりする?」
興奮しているのか、アーロンは矢継ぎ早に言葉を発した。
その勢いにロボは少し引き気味に、頭を縦に何度も動かしながら返答した。
食卓の真ん中に置かれたケーキは真っ白で、上には綺麗な花びらが散りばめられ、チョコレートが幾つか添えられていた。
それを見て双子はまた目を輝かせた。
食事の支度が終わり、ロボは指定された席に着いた。
ロボの席の右隣にはアーロンが、左隣にはルイスが、向かいの席にはノアが座っていた。
今日の献立は、野菜のスープにソーセージ、側には小麦がふんだんに使われた白いパンに、真ん中にはサラダが置かれ、目立つ場所に今日のメインだろう赤く染まった大きなロブスターが鎮座していた。
魚介類などはすぐに痛んでしまうので、海辺の町に行かなければ食べられない筈なのに当たり前のように食卓に並んでいて、ロボは驚いた。
前に見た移動の魔法で海辺の町まで行ってきたのだろうか。
「じゃあ、食べようか」
アーロンの言葉を合図に皆一斉に食事へと手を伸ばし始めた。
ミアは真っ先にケーキへと手を伸ばそうとしてルイスに止められ、アーロンはノアの皿にロブスターを取り分けていた。
誰かと食事を共にするという経験に乏しかったロボは、どう動けばいいのかわからず皆の動向を探っていると、上から声が降ってきた。
「ロボ君もいるよね?」
名前を呼ばれその方へ顔を向けると、アーロンが切り分けたロブスターを手に、ロボの皿を指さしていた。
「あ、ああ」
流されるまま皿をアーロンに差し出すと、ロブスターを乗せられて返ってきた。
真っ2つにされたロブスターを注視していると、アーロンに声を掛けられた。
「食べ方分からない? 殻から身を出してあげた方が良かったかな」
そう言いながら一度皿を取ろうとするアーロンを止めた。
「あ、いや、大丈夫」
尚も世話を焼こうとするアーロンをその度に止め、ロボは食事に手を付けた。
野菜のスープは噛む必要のない程野菜が柔らかく煮込まれ、白いパンは今まで食べてきたパンより柔らかく、初めて食べるロブスターは弾力があって感じた事のない味がして美味しかった。
食事をしている間、周りからは会話をする声や食器の当たる音がしていた。
時折、話を振られるのでロボはそれに答え、ロブスターを大口で齧れば、右横から腕が伸びてきて口元を布巾で拭われる。
手を滑らせてパンを落とせば、すぐに左隣の者に拾い上げられ代わりの物を渡される。
赤の他人なのに、さも当たり前のように両隣に座る二人はこなしていた。
それを見ていて先程までの胸の痛みがなんだったのか、ロボは分かった気がした。
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