D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十七章

裏の貢献者

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 真昼と夕方の間くらいの時間に俺たちはクラブハウスを出立し、スタジアムへ入った。何時もの様に選手とスタッフは準備へ走り、俺はナリンさんを連れてピッチコンディションの確認へ向かう。
「おお、めっちゃ入ってますね!」
 コンコースを抜けスタンド席を見た俺は、驚きの声を漏らした。今日の試合はマンデーナイトフットボールだ。平日一発目の夜、仕事後の皆さんが帰宅して魔法中継で観戦するのを狙っての開催である。注目度と視聴率の向上が見込まれる一方、来場者の減少も予想される仕様ではあった。
 で、あるのに。観客席の8割は既に埋まりスタジアムDJのノゾノゾさんと一緒に踊ったり、上空を舞い飛ぶスワッグに手を振ったりしていた。
「やはり相手がドワーフでありますから!」
 ナリンさんがそう叫ぶ。場内はやや大声を出さないと聞き取りにくい程だ。彼女の説明によると、仕事の後に駆けつけるだけでなく休みをとったエルフも多数いるだろうとの事だった。流石エルドワクラシコ!
「これ以上、ウルサくなる前に行きましょう!」
 時間が経てばお客様は増える一方だ。俺はナリンさんを促し、仕事をしているか分からないエルフの方へ向かった。

「監督、お疲れさまです!」
「いえ、そちらこそ! いろいろとありがとうございました!」
 ゴール裏に着いた俺は開口一番に先日の礼を言う。
「別に! 大したことしてないですよ!」
 サポーター集団のリーダーにしてニコルさんの息子、ジャックスさんはそう言って笑顔で手を振った。
「本当に助かりました。お父さんとはお会いできましたが、ジャックスさんとも個別にどこかで」
 ジャックスさんの揺れる手を握り、そう告げる。俺が言っているのはアリスさんとのスキャンダルのもみ消しに、ニコルさんが動いてくれた件についてだ。
 そもそもアレはニコルさんの発案ではない。彼はアローズの熱心なファンではあるが、忙しい身でもある。誰か他にアローズの熱烈サポーターで、アリスさんとも面識があり、芸能界の大物を動かして芸能記者に圧力をかける事ができるエルフがいた筈である。
 それはジャックスさんに他ならない。更に言えば前節のフェリダエ戦の前に、彼とナリンさんが何か少し相談していた。それはきっとアリスさんの件を何とかする、という事なのだろう。
「ナリンさんもね」
「はて? 何の事でありますか?」
 俺が話を向けると案の定、ナリンさんは笑いながらそっぽを向いた。ううっ、事情が許せば後ろから抱きしめたい!
「それを言えばこちらこそありがとう、ですよ! オバカサンのこと!」 
 ジャックスさんはそう言って形の良い鼻の頭を掻く。一方の俺は唐突な悪口に戸惑った。おバカさん? まあ俺を始め該当者はたくさんいるが……。
「ジャックスさん! オバカサンではなくオバサンだと思うであります!」
「ああ、それね!」
 ナリンさんが助け船を出し、ジャックスさんがパチンと指を鳴らす。だが俺は首を傾げる。オバサン?
『ほ、本日はたいへん混ざひゅが予想されまひゅ! お席の方は、詰めてごりゅようをお願いします!』
 そんなタイミングでエルフ語の場内アナウンスが流れた。言葉の中身は分からないが、分からないなりに噛みかみなのは分かる。これはミガサさんだな?
「あ、ミガサさんの事ですか?」
 それで思い当たることがあって俺は訊ねた。
「そう! オバサンを雇ってくれてありがとーね!」
 ジャックスさんは照れくさそうに笑う。ミガサさんは美形揃いのエルフにおいても絶世の美女で若々しいが、彼からすれば父親の姉、つまり伯母さんに他ならないのだ。
「スタジアムで声を聞くとやっぱり共感性羞……恥ずかしいものですか?」
「まあねー」
 俺は難しい言葉を途中で辞め、シンプルに聞いた。ジャックスさんの回答もシンプルなものだった。
「最終的には慣れですよ。それじゃあまた!」
 親戚ではないが俺も自分の声の録音をコールセンターで聞かされ、結構恥ずかしかった。だが最終的には慣れるものだ。
 俺はその辺りの説明は省略し、軽く彼の肩を叩いてベンチの方へ向かった。


 その後のピッチ上ウォーミングアップも何事もなく終わり、俺は更衣室の外でザックコーチと準備が整うのを待っていた。
「まだ試合は終わってませんが、今週来週とご苦労かけます」
「いやいや! ショーキチ監督の方こそ疲れてないか?」
 俺とザックコーチは互いに互いを労った。まず俺が言っているのはコンディショニングと次のミノタウロス戦の事だ。
 フェリダエ戦の後からセンシャがありマンデーナイトがあり、この先はザックコーチの故郷でアウェイマッチである。かつての所属チームとの対戦はただでも気を使うのに、この変則スケジュールである。ミノタウロスのフィジカルコーチである彼の心労はいかほどのものか。
「ちょっと肌が荒れているようだぞ?」
 一方、彼が気にしているのは俺の体調面の様だ。確かに俺も変則スケジュールで移動も多いし、ちゃんとした所で寝たり寝なかったりで万全とは言い難い。
「ははは。見抜かれちゃいましたか。でもまあ、ミノタウロス戦が終わればカップ戦の抽選などで少し間隔が開きますし、あと一踏ん張りですよ!」
 下手に否定するよりも認めた方が心配かけないだろう。俺は素直に白状しつつ、スケジュールを指摘する。
「確かにそれはそうだな」
 ザックコーチも頷く。彼に告げた通り、ミノタウロス戦が終わればリーグ戦の半分が終了した事になり、リーグ戦は一時中断しカップ戦の準備が始まる。選手コーチだけでなく、俺も休養をとれる筈だ。
「準備できました! どうぞ!」
 そこへ中からナリンさんの声が聞こえた。
「あと二つ、頑張りましょう!」
「おう!」
 俺とザックコーチはそう言って拳をぶつけ合い、ドアを開けて更衣室の中へ入った。
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