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第二十六章
蛇に飲み込まれるな
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「……とりあえずポイントはそんな感じです。当日、俺はベンチ入りできなくてスタンドにいるので、後の現場での微調整はコーチ陣から聞いて貰うことになりますが」
カペラ選手を止める手段を伝えた最後に、俺はそう付け足していったん説明を終えた。
「ウップス! そうかショーはまたベンチにいないんだ!」
「ええ。出場停止処分で」
「寂しいな。アイミスユー……」
その言葉を聞いたツンカさんは大袈裟にそう言うと、そっと俺の肩に頭を載せ腕を抱き込んだ。うっぷず! じゃなくてふわふわっす!
「いやいや、今回は何処かへ行ったりする訳じゃないですから」
「でもベンチの特等席で、指揮するショーの後ろ姿をウォッチングできないんだよ? それがベンチ入りした時の最大の楽しみなのに!」
そう説明してもツンカさんの落ち込んだ空気は変わらなかった。むしろより潤んだ目で俺を見つめ、抱き込んだ腕の先の指と指を絡めてくる。
これは不味いですよ!
「ベンチ入りした時の楽しみって……そんなモノ見ずに試合に集中して下さい! というかスタメンを目指して下さいよ! ツンカさんにはそのポテンシャルがありますから!」
ホントだよ俺なんか見ても楽しくないだろ! あと真面目な話、選手がベンチに座っている時の態度というのも意外と重要な判断基準なんだからね!
いやマジでね。例えば2002年日韓W杯、代表入りのボーダーにいたある選手はスタメンを外されると露骨に不貞腐れる傾向があり、ベンチ入りの際に試合も見ず仲間に声援も送らず自分の髪をイジっていた……のを監督に見られて落選した、という逸話もある。
まあツンカさんがたまに俺の方を視ているのはうすうす感じていた事で、仮にそうであっても彼女の貢献度とチームを想う気持ちに疵をつける程でもないんだけど。
「だったら……何かやる気になるのギブミー」
なんとかサッカードウの話へ持って行く監督に対し、選手は俺の指一本をぐいぐいと握ったりさすったりしながらそう応える。俺の耳元に熱い息で囁かれた『やる気になるの』という言葉の前方には『性的な』という形容詞が密かに付け足されているような気がする。
こ、こんな監督と選手の関係は良くない!
「だったら……条件つけて良いですか?」
「どんな? どんなプレイでもツンカはオーケーだけど?」
『プレイ』という言葉の前方には『性的な』という形容詞が密かに付け足されているような気が以下略!
「良いプレイをして下さい。具体的に言えば得点に絡むか、カペラ選手を零封するか」
俺がそう告げるとツンカさんは何だサッカードウの話か、という表情になった。
「アハン? それが条件?」
が、一瞬考えた後に挑戦的に片方の眉を上げた。
「はい。あ、もちろんゲームの流れ的に出場が無かったら次回持ち越しとかでも良いですから」
彼女の強気な顔に少し不安になったものの、俺はそう補足する。うん、フェアに行きたいしな。
「オーケー。じゃあちょっと練習してくる!」
ツンカさんは俺の言葉を聞くと気合い一閃、立ち上がって宣言した。
「もう夜ですよ? ほどほどにね!」
デイエルフの面々は本当に体育会系だなあ、と思いつつ注意だけしておく。
「ドンウォリー! いつもの連中と同じくらいにするから」
ツンカさんはそう言ってウインクをし、部屋から出ていこうとする。因みに彼女の言う『いつもの連中』とはリーシャさんやポリンさんといった練習の虫みたいな選手たちだ。彼女たちは真っ暗になっても平気で自主練を続ける。
「あ、ドントフォーゲット!」
そんな選手たちの事を思い浮かべていた俺の隙をついて、ツンカさんが戻って来て隣に座り手を取った。
「はい?」
「ん……」
これはまた強引にキスされる流れか!? そう毎回はやられんぞ! と顔を伏せて防御する俺の手を自分の口元へ持って行き、ツンカさんは指をパクっと銜えた。
「なっ!?」
「ん……んふ」
思わず顔を上げた俺を上目遣いで見ながら、人差し指や中指といった長い方のを舐め上げる。
「あわわ……」
「ちゅ。前のリザーブ返しだよ! じゃあ!」
ツンカさんは俺の真っ赤になった顔を満足げに見やると、立ち上がって今度こそ部屋を出て行った。
前の、なんだって!? あ、そう言えばグレートワームのホテルで別れ際、ツンカさんの手にキスをした事はあったけど! あれは紳士的な『別れ際に手の甲にキス』だったじゃないか! 今回のはまるで……。
「ツンカさんが条件を満たしたら……俺は何をされてしまうんだ?
俺は思わず声に出して呟く。ツンカさんは陽キャだからハグやキスも挨拶程度の感じで、いやらしい雰囲気にはならない! と考えたのは俺の思い違いだったようだ。
「『なーんでもペローリー!』」
モニターの中では依然として番組が進行しており、いつの間にか紹介され演奏を始めたゴルルグ族の二人組が『ゴロゴロ蛇がやってくる』という曲を歌っていた。
が、俺の頭にはちっともその内容が入ってこなかった。後に分かったがそのゴルルグ族は落ちた。代わりにレイさんの学院のクラスメイト、テルとビッドのコンビが勝ってスタジアムで演奏するのが決まり、試合へ招待される生徒たちは更に盛り上がる事となった……。
カペラ選手を止める手段を伝えた最後に、俺はそう付け足していったん説明を終えた。
「ウップス! そうかショーはまたベンチにいないんだ!」
「ええ。出場停止処分で」
「寂しいな。アイミスユー……」
その言葉を聞いたツンカさんは大袈裟にそう言うと、そっと俺の肩に頭を載せ腕を抱き込んだ。うっぷず! じゃなくてふわふわっす!
「いやいや、今回は何処かへ行ったりする訳じゃないですから」
「でもベンチの特等席で、指揮するショーの後ろ姿をウォッチングできないんだよ? それがベンチ入りした時の最大の楽しみなのに!」
そう説明してもツンカさんの落ち込んだ空気は変わらなかった。むしろより潤んだ目で俺を見つめ、抱き込んだ腕の先の指と指を絡めてくる。
これは不味いですよ!
「ベンチ入りした時の楽しみって……そんなモノ見ずに試合に集中して下さい! というかスタメンを目指して下さいよ! ツンカさんにはそのポテンシャルがありますから!」
ホントだよ俺なんか見ても楽しくないだろ! あと真面目な話、選手がベンチに座っている時の態度というのも意外と重要な判断基準なんだからね!
いやマジでね。例えば2002年日韓W杯、代表入りのボーダーにいたある選手はスタメンを外されると露骨に不貞腐れる傾向があり、ベンチ入りの際に試合も見ず仲間に声援も送らず自分の髪をイジっていた……のを監督に見られて落選した、という逸話もある。
まあツンカさんがたまに俺の方を視ているのはうすうす感じていた事で、仮にそうであっても彼女の貢献度とチームを想う気持ちに疵をつける程でもないんだけど。
「だったら……何かやる気になるのギブミー」
なんとかサッカードウの話へ持って行く監督に対し、選手は俺の指一本をぐいぐいと握ったりさすったりしながらそう応える。俺の耳元に熱い息で囁かれた『やる気になるの』という言葉の前方には『性的な』という形容詞が密かに付け足されているような気がする。
こ、こんな監督と選手の関係は良くない!
「だったら……条件つけて良いですか?」
「どんな? どんなプレイでもツンカはオーケーだけど?」
『プレイ』という言葉の前方には『性的な』という形容詞が密かに付け足されているような気が以下略!
「良いプレイをして下さい。具体的に言えば得点に絡むか、カペラ選手を零封するか」
俺がそう告げるとツンカさんは何だサッカードウの話か、という表情になった。
「アハン? それが条件?」
が、一瞬考えた後に挑戦的に片方の眉を上げた。
「はい。あ、もちろんゲームの流れ的に出場が無かったら次回持ち越しとかでも良いですから」
彼女の強気な顔に少し不安になったものの、俺はそう補足する。うん、フェアに行きたいしな。
「オーケー。じゃあちょっと練習してくる!」
ツンカさんは俺の言葉を聞くと気合い一閃、立ち上がって宣言した。
「もう夜ですよ? ほどほどにね!」
デイエルフの面々は本当に体育会系だなあ、と思いつつ注意だけしておく。
「ドンウォリー! いつもの連中と同じくらいにするから」
ツンカさんはそう言ってウインクをし、部屋から出ていこうとする。因みに彼女の言う『いつもの連中』とはリーシャさんやポリンさんといった練習の虫みたいな選手たちだ。彼女たちは真っ暗になっても平気で自主練を続ける。
「あ、ドントフォーゲット!」
そんな選手たちの事を思い浮かべていた俺の隙をついて、ツンカさんが戻って来て隣に座り手を取った。
「はい?」
「ん……」
これはまた強引にキスされる流れか!? そう毎回はやられんぞ! と顔を伏せて防御する俺の手を自分の口元へ持って行き、ツンカさんは指をパクっと銜えた。
「なっ!?」
「ん……んふ」
思わず顔を上げた俺を上目遣いで見ながら、人差し指や中指といった長い方のを舐め上げる。
「あわわ……」
「ちゅ。前のリザーブ返しだよ! じゃあ!」
ツンカさんは俺の真っ赤になった顔を満足げに見やると、立ち上がって今度こそ部屋を出て行った。
前の、なんだって!? あ、そう言えばグレートワームのホテルで別れ際、ツンカさんの手にキスをした事はあったけど! あれは紳士的な『別れ際に手の甲にキス』だったじゃないか! 今回のはまるで……。
「ツンカさんが条件を満たしたら……俺は何をされてしまうんだ?
俺は思わず声に出して呟く。ツンカさんは陽キャだからハグやキスも挨拶程度の感じで、いやらしい雰囲気にはならない! と考えたのは俺の思い違いだったようだ。
「『なーんでもペローリー!』」
モニターの中では依然として番組が進行しており、いつの間にか紹介され演奏を始めたゴルルグ族の二人組が『ゴロゴロ蛇がやってくる』という曲を歌っていた。
が、俺の頭にはちっともその内容が入ってこなかった。後に分かったがそのゴルルグ族は落ちた。代わりにレイさんの学院のクラスメイト、テルとビッドのコンビが勝ってスタジアムで演奏するのが決まり、試合へ招待される生徒たちは更に盛り上がる事となった……。
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