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第二十六章
骨まで食べたい
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「良いの!? うん、トゥギャザーする!」
ツンカさんは格が違う笑顔で――ここまでのは俺を励ます為の作り笑顔だったようだ――返事して、俺の斜め前に座った。
斜め前? そう、斜め前。監督室には俺専用の立派な椅子と、面談用の複数人がけのゆったりしたソファ、そしてその間に大きなテーブルがある。俺の隣には椅子も座るスペースもない。
そこでツンカさんはぐるっと回ってこちら側に来て、机の上に腰を降ろしたのだ。
「あの……あ、まあいいか」
机の上、しかも食事が載ったヤツの上に尻を降ろすことを無礼とか躾がなってないとか思うのはまあ、一般的日本人である。一方、そういう態度をリラックスしたもの、と考える文化圏もある。
エルフはどちらかと言うと後者に近い。特にデイエルフはそうだ。森や原野で狩猟生活を送る彼ら彼女らは一般的日本人の感覚からすればかなりワイルドで、衛生面や礼儀など細かい部分をあまり気にしない。ユイノさんなんか地面に落ちた食べ物を平気で口にするし。
いやこれは彼女が食い意地はってるだけか?
「あ、これ美味しい! ショー、レッツトライ?」
ツンカさんは手に取った肉を一口かじって驚きの声を上げ、それを俺に突き出してきた。恐らくなんとか鳥の手羽先みたいな部位だ。
「どうも」
俺は軽く頷いてその先端を口に入れる。ね? 雑でしょ? 逞しいのは良いが気にしなさ過ぎである。
しかしまあ、これはサッカードウでも似たところがありキックの精度やドリブルの美しさには拘る癖に、ボールを受ける前の身体の向きや相手FWと相対した時のスタンス、足の幅や重心については無頓着なのだ。
「どんな形であれトラップして前へ運べば良いじゃん? 相手を止めさえ出来れば良いじゃん?」
みたいな感覚がエルフ全体にはある。
そういう部分を改善していかなければ次――ゾーンプレスが一定の基準へ行けば、次はポゼッションを重視したサッカーへ移行する予定だ――には行けない。まあ、今シーズンではないが。
「ショー、トゥマッチ! 終わり!」
ツンカさんは笑いながら俺の口から鶏肉を取り上げた。見れば、手羽先は殆ど皮と肉がとれて骨だけになっている。
「おっとすみません」
考え事をしてたら思ったより食べ過ぎた。俺は慌ててちょっと頭を下げたが視線がミニスカートから伸びるツンカさんの太股に直撃してしまい、今度は焦って上を向く。
因みにチラ見してしまった彼女の膝付近は俺の胸の位置くらいにあり、ニーソに包まれた引き締まった脚が楽しそうにブラブラと揺らされていた。
「んーまだ残ってはいるかな?」
ツンカさんはそう言って骨を口に入れ、唇を窄めて吸い出した。
「んっ、んん……。んふ」
そして、ちゅっちゅと音を立てて吸ったかと思うと口から出してレロレロと舐めたりもする。
あのーツンカさん? それってイヤらしく過ぎじゃありませんか? いや俺だって某チェーンのフライドチキンを喰う時はそんなだったけど! てか懐かしいな!
「うーおっほん!」
俺は白髭のお爺さんのような咳払いをして雑念を払おうとしたが難しかった。だって上を視たら骨を――海綿体も骨だよな、など余計な事を思い出さないように!――吸っている顔、下を見たらニーソの太股。どこを視れば良いんだ!?
あ、番組か!
「定規ー巻き尺、試験管ー」
画面では次の演奏者、猫人族であるフェリダエたちが歌い踊っていた。彼ら彼女らは猫の身体に人間のような顔がついており、いわゆる獣度がやや低めのケモミミである。
しかしその割合がサッカードウでは有利に働く。ライオンやトラといった大型肉食獣が持つ筋肉と柔軟性と反射神経。霊長類の長、人類が持つ知性や起用さ。はっきり言ってサッカードウをやる為に産まれてきたと言っても過言ではない種族だ。
それは音楽にも役立つ筈なのだが……。
「測定器、体重計ー」
猫たちは歌い踊りながら目盛りがあるものを並べている。どうやら何かストーリー性があるミュージカルの様なモノらしい。見事なダンスだ。そして恐ろしい程に音程を外した歌だ。まあそういう奴等を集めたんだけれども。
「ショー、どうしてこんな企画したのホワイ? あ! それともこれもサッカードウに関係するサムシング?」
ツンカさんはあきれ顔で最初くちを開いたが、途中で身を屈め秘密の話をする体勢になった。
「あの、その、ですね」
当然、俺の目の前に彼女の柔らかそうな胸の谷間が迫ってくる。その上は鶏肉の油が残ってぬらりと光る唇。下はスカートの奥が見えてしまいそな太股だ。
「ええと……あ! そうそう、フォーメーションがね!」
俺は必死に顔を上に上げてモニターを視る。今やステージもクライマックスなキャッツ、猫人族の群は時に円に、時に一本の線にと変幻自在に隊列を変えて舞い踊っていた。
「ハーピィのサッカードウは決まった形があって無いようなモノです。血縁者の多さとアイドルグループとしての活動が産んだ阿吽の呼吸で、アドリブで攻めてきます。それでも法則みたいなモノはあるので」
そう続ける事で、なんとか血と意識をサッカードウの方へ向けようとする。
「ふーん。ツンカは興味ナッシングだけど」
ツンカさんはつまらなそうにため息をついて言う。いや持ってくれ。
「まあその辺は俺たちが考えますからね。でも今回、ツンカさんにお願いしたい事があるんですよ!」
いいぞ、サッカードウ方面で言うことを思い出した! 俺は椅子から中腰で立ってボードを取り彼女に説明する事にした。
ツンカさんは格が違う笑顔で――ここまでのは俺を励ます為の作り笑顔だったようだ――返事して、俺の斜め前に座った。
斜め前? そう、斜め前。監督室には俺専用の立派な椅子と、面談用の複数人がけのゆったりしたソファ、そしてその間に大きなテーブルがある。俺の隣には椅子も座るスペースもない。
そこでツンカさんはぐるっと回ってこちら側に来て、机の上に腰を降ろしたのだ。
「あの……あ、まあいいか」
机の上、しかも食事が載ったヤツの上に尻を降ろすことを無礼とか躾がなってないとか思うのはまあ、一般的日本人である。一方、そういう態度をリラックスしたもの、と考える文化圏もある。
エルフはどちらかと言うと後者に近い。特にデイエルフはそうだ。森や原野で狩猟生活を送る彼ら彼女らは一般的日本人の感覚からすればかなりワイルドで、衛生面や礼儀など細かい部分をあまり気にしない。ユイノさんなんか地面に落ちた食べ物を平気で口にするし。
いやこれは彼女が食い意地はってるだけか?
「あ、これ美味しい! ショー、レッツトライ?」
ツンカさんは手に取った肉を一口かじって驚きの声を上げ、それを俺に突き出してきた。恐らくなんとか鳥の手羽先みたいな部位だ。
「どうも」
俺は軽く頷いてその先端を口に入れる。ね? 雑でしょ? 逞しいのは良いが気にしなさ過ぎである。
しかしまあ、これはサッカードウでも似たところがありキックの精度やドリブルの美しさには拘る癖に、ボールを受ける前の身体の向きや相手FWと相対した時のスタンス、足の幅や重心については無頓着なのだ。
「どんな形であれトラップして前へ運べば良いじゃん? 相手を止めさえ出来れば良いじゃん?」
みたいな感覚がエルフ全体にはある。
そういう部分を改善していかなければ次――ゾーンプレスが一定の基準へ行けば、次はポゼッションを重視したサッカーへ移行する予定だ――には行けない。まあ、今シーズンではないが。
「ショー、トゥマッチ! 終わり!」
ツンカさんは笑いながら俺の口から鶏肉を取り上げた。見れば、手羽先は殆ど皮と肉がとれて骨だけになっている。
「おっとすみません」
考え事をしてたら思ったより食べ過ぎた。俺は慌ててちょっと頭を下げたが視線がミニスカートから伸びるツンカさんの太股に直撃してしまい、今度は焦って上を向く。
因みにチラ見してしまった彼女の膝付近は俺の胸の位置くらいにあり、ニーソに包まれた引き締まった脚が楽しそうにブラブラと揺らされていた。
「んーまだ残ってはいるかな?」
ツンカさんはそう言って骨を口に入れ、唇を窄めて吸い出した。
「んっ、んん……。んふ」
そして、ちゅっちゅと音を立てて吸ったかと思うと口から出してレロレロと舐めたりもする。
あのーツンカさん? それってイヤらしく過ぎじゃありませんか? いや俺だって某チェーンのフライドチキンを喰う時はそんなだったけど! てか懐かしいな!
「うーおっほん!」
俺は白髭のお爺さんのような咳払いをして雑念を払おうとしたが難しかった。だって上を視たら骨を――海綿体も骨だよな、など余計な事を思い出さないように!――吸っている顔、下を見たらニーソの太股。どこを視れば良いんだ!?
あ、番組か!
「定規ー巻き尺、試験管ー」
画面では次の演奏者、猫人族であるフェリダエたちが歌い踊っていた。彼ら彼女らは猫の身体に人間のような顔がついており、いわゆる獣度がやや低めのケモミミである。
しかしその割合がサッカードウでは有利に働く。ライオンやトラといった大型肉食獣が持つ筋肉と柔軟性と反射神経。霊長類の長、人類が持つ知性や起用さ。はっきり言ってサッカードウをやる為に産まれてきたと言っても過言ではない種族だ。
それは音楽にも役立つ筈なのだが……。
「測定器、体重計ー」
猫たちは歌い踊りながら目盛りがあるものを並べている。どうやら何かストーリー性があるミュージカルの様なモノらしい。見事なダンスだ。そして恐ろしい程に音程を外した歌だ。まあそういう奴等を集めたんだけれども。
「ショー、どうしてこんな企画したのホワイ? あ! それともこれもサッカードウに関係するサムシング?」
ツンカさんはあきれ顔で最初くちを開いたが、途中で身を屈め秘密の話をする体勢になった。
「あの、その、ですね」
当然、俺の目の前に彼女の柔らかそうな胸の谷間が迫ってくる。その上は鶏肉の油が残ってぬらりと光る唇。下はスカートの奥が見えてしまいそな太股だ。
「ええと……あ! そうそう、フォーメーションがね!」
俺は必死に顔を上に上げてモニターを視る。今やステージもクライマックスなキャッツ、猫人族の群は時に円に、時に一本の線にと変幻自在に隊列を変えて舞い踊っていた。
「ハーピィのサッカードウは決まった形があって無いようなモノです。血縁者の多さとアイドルグループとしての活動が産んだ阿吽の呼吸で、アドリブで攻めてきます。それでも法則みたいなモノはあるので」
そう続ける事で、なんとか血と意識をサッカードウの方へ向けようとする。
「ふーん。ツンカは興味ナッシングだけど」
ツンカさんはつまらなそうにため息をついて言う。いや持ってくれ。
「まあその辺は俺たちが考えますからね。でも今回、ツンカさんにお願いしたい事があるんですよ!」
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