D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
上 下
461 / 700
第二十六章

守備陣のメンタル

しおりを挟む
「……という訳で俺が投げて貰ったパスを頭上で手で受け取っているのはそれの再現。んで君たちはそれに負けないスピードでポジションを修正してプレスをかけれるように練習しているわけ」
 俺はそこまで語ってエルエルの表情を見る。どうやら理解はしているがまだ納得できない部分があるようだ。
「実は違う選択肢もある。今までのアローズがハーピィチーム相手にやって勝ってきた様に、引いて固く守ってカウンターとか。でも今のチームには君がいる」
 俺はヒエピタモドキをエルエルの額にぴしり! と貼り付け言った。
「えっ!? 私ですか?」
「そう。驚異の運動量とスピードでボールを追い回すリトル・リーシャ。君がいるからこそ、古いやり方じゃなくて新しい手段でハーピィチームをぶちのめそうと思ったんだ。リーシャさんと君は新生アローズの象徴だからね!」
 依怙贔屓は厳禁、と決めてはいるが俺は全員の前ではっきりとそう言った。まあ聞かれてもベテランの多い守備陣だけだし、エルエルは乗せた方が活躍してくれそうだし。
「そうか! よーっし!」
 どうやら効き目はあったようだ。エルエルは両手で自分の顔を軽くはたくと、まだ休憩中の攻撃陣の方まで走って行った。
「わっ! どうしたのエルエル?」
「リーシャねえさま、一対一付き合って下さい!」
 そしてリーシャさんを引きずり出しドリブル勝負を始める。
「ははは……。まあ実際はムルトさんがラインコントロールできて、クエンさんがDF前で門番してくれているから出来る事なんだけどね」
 俺は呆れた顔でエルエル達の様子を見ながら言う。DFの統率についてはムルトさんプラス、シャマーさん――俺がミノタウロス戦でやったように、今回はキャプテンがピッチ際でコントロールする。まああそこまで極端ではないが――で問題ない。
 クエンさんは色々と動いた前回と違い、次はDFの前に鎮座してエルエルを上手く操る側だ。ここまでクエンさん1名だけ、マイラさんと組んで自分が働き蜂になる形、リベロと中盤でマイラさんと入れ替わる形……とやってきてまた新しい役割だ。だが彼女なら上手くやってくれるだろう。
「まあ……声を出すのは慣れませんが、努力はしますわ」
「エルエルちゃんとのコンビ、頑張るっす!」
 ムルトさんとクエンさんは俺の言葉にそれぞれの反応を返す。
「はい、宜しくお願いします」
「んで、私らはどうなんだ?」
 と、頭を下げる俺に横から声がかかった。
「はい?」
「おいおい、このティアさんほか数名に何か言うことは無いのか?」
 発言者はティアさんだった。やや焦れた様な顔で右SBが付け足し、来い来い、とばかりに両手を手前に引く。
「何か?」
「(ショーキチ殿! これであります!)」
 まだ首を傾げる俺に、少し離れた場所からナリンさんが左手のひらを上にしその上で右手を回しながら何か囁いている。
「ん? ニャブリ選手のゴールセレブレーション?」
 その動きはドイツ代表のFWがゴールを決めた時にやるパフォーマンスに非常に似ていた。確か料理の仕草を真似たモノであり
「敵を料理してやったぜ!」
という意味を込めているんだっけ? 元はNBAのハーデン選手のヤツだったよな?
「(あれ? こうでありますか?)」
 次にナリンさんは左手をそのまま、右手で何かをぱらぱらと撒いた。もしかしてセクシーに塩をかけるシェフ!? 懐かしい! てかクラマさんそんな事まで教えていたの!?
「仕方ないな……。ショーキチ、これ」
 驚く俺に淡々と声をかけ、今度はルーナさんが似たような仕草をする。但しクラマさんの娘の左手は受け皿を担当せず、両手で何かを掴んで回していた。
 大鍋で料理? 学校給食的な? そう言えば給食の業者さんって大変なんだよな……いや、もっと小さい動きだ。
「ごりごり」
 遂に擬音がついた。何かを擦り潰しているような感じか。
「あ! ごますりか!」
「え? いや、別にゴマをすれって訳じゃねえんだけどよ! ただ、なんだ。エルエルとムルトとクエンだけ褒めて他はしない、となりゃ不公平だし可哀想じゃないかな? 主に他数名がよ!」
 ようやく合点いって大声で叫んだ俺に、ティアさんはやや照れたような口調で告げる。さっきは『ティアさんほか数名』って言ってなかったか? 実際に責任を負う段階になると他者を盾にとるのか。狡いが、そ,の心意気やよし。
「なるほど。そりゃそうですよね」
 さっきは
「ベテランの多い守備陣だし大丈夫だ」
と、別に嫉妬しないだろうと思ったが、やはりこういう集団で依怙贔屓は厳禁だ。公平に言及しなければ。
「だろ?」
「じゃあほか数名の筆頭ことルーナさんから」
「えっ!?」
 そう言った時のティアさんの顔はなかなかに見物だった。
「私からか」
「ええ。左サイドから順番にいって、最後に右SBで締める形で良いですよね。まあ時間足らないかもだけど」
 俺はルーナさん、ティアさんと順に顔を眺めて言った。
「あー」
「ですよね?」
「お、おう……」
 ティアさんは悔しそうに地面を蹴る。そこへニヤニヤと笑いながらシャマーさんが寄ってきて肩を叩いた。
「残念だったねー、ティア。でもそういう周囲を都合良く使おうとする所、リベロ向きかもー」
「おめーに褒められても嬉しくないわっ! 待っておいてやるから早くしろ!」
「へいへい。じゃあルーナさん、君は昭和のジェスチャーも知ってて偉いよね……」
 怒鳴るティアさんを笑いつつ、俺はルーナさんの、ほんの些細な所から初めて行った。

 当然、この休憩時間にティアさんまで回る筈も無かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...