D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十二章

イカない天

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『スター発見! いかすバード天国』
 画面には派手に装飾されたそんな文字が踊っていた。ちなみに文字はエルフ語での表記で、俺が書いた原稿をシャマーさんの魔法翻訳機で変換したものだ。ステフはもちろんだがスワッグもノゾノゾさんもエルフ語がいけるのだ。意外とインテリ博識なんだよな……。
「なんだこれ?」
「いわゆる素人オーディション企画なんですが」
 俺の操作で画面が代わり、審査員たちの前で歌手が歌っているイメージ図が現れると三者はパァ、と表情を明るくした。
「ふっふっふ! アタシに原石を見つけてくれって事か!」
「『WillU』みたいなアイドルグループでも育成するぴよ?」
「『大丈夫! 穿いてますよぉ?』みたいな芸をするんでしょ?」
 ステフは不敵に微笑みスワッグが応援するグループの名を挙げ質問しノゾノゾさんが立ち上がり短いズボンの前を開けて中の下着をチラッと見せた。ごめんスワッグ、ちょっと待ってね!
「ノゾノゾさんそれじゃただのストリップです! 閉まって仕舞って!」 
 俺は必死に目を逸らしつつノゾノゾさんに注意する。
「監督、そんなに慌てなくてもこれ見せパンだから」
「だとしても見せ方がいやらしいんですよ!」
 とにかく明るいノゾノゾさんはやたらと露出するがそれには訳がある。彼女の片親は嵐の巨人、もう片方は炎の巨人なのだ。風と熱を自在に操れるので寒さを感じないらしい。
 やっかいな性質だがそういった能力の一端を利用して、声を風で飛ばし拡声器なしのマイクパフォーマンスを行って貰っているので文句も言いづらい。ある程度は受け入れなくてはならないだろう。
「そんなに時間をかけて言い訳することじゃないだろ?」
「ノゾノゾの下着になんて価値はないぴい!」
 例によって俺の心を読んでステフがからかい、スワッグが侮蔑するように言った。
「ひどーい! あるかもしれないじゃん!」
「皆無だぴよ!」
「じゃあ試そうよ!」
「どうやってぴよ!?」
「アレだ、ショーキチのショーキチの先に鈴でもつけてさ、ノゾノゾちゃんが目の前でセクシーに踊って鈴の音が鳴ったら……」
「はい、そこまで!」
 リンリンとした、いや凛とした態度で俺は言い切り、脱線する演出部を止めた。
「ノゾノゾさんは踊る側ではなくてそれを観る側です。ステフもスワッグも!」
 俺は再び操作を行い画面を切り替える。そこには点数札を上げる審査員と喜ぶ歌手のイメージ図があった。
「出場者をふるいにかけて予選を行い、決勝はハーピィ戦の当日に行います。試合前とハーフタイムにね」
 試合の日にスタジアムで行うコンサートやイベントとは意外とセンシティブなモノで、内容によっては芝生を荒らしてしまう。だがここは異世界で会場の管理者はエルフ。仮に芝が痛んでも自然魔法で――そういう場合はドラゴンさんも魔法無効化のフィールドを切ってくれる――ささっと治してしまう。そこは地球よりも便利なところだな。
「ほうほう。そこでもっとも優れた演奏歌唱を行ったバードを優勝者として選ぶ、ってことか! 決勝はアレだな。アタシたちプロだけじゃなく、オーディエンス観衆たちを味方につける事が肝心だな」
 ステフが少し真剣な顔になって言った。何事にもふざけたエルフだが、芸事に関してはまあまあ真面目だ。それだけに今回は罪悪感があるのだが……。
「それが、ちょっと事情が違うんだ」
「なになに? 水着審査もするの? 私も参加する?」
 いやノゾノゾさんそれは自分が脱ぎたいだけやろ!
「選ばれるのは、まあ決勝に限らず予選からそういう方針なんですが、優れたパフォーマンスをするバードじゃないんです」
「音楽性じゃなく見た目重視ぴよ? それとも将来性ぴい?」
 オーディション番組に詳しいグリフォンが当然の予想を口にする。
「実はそっちでもなくてですね。今回、決勝に呼びたいのは歌の名手ではなく、最高の音痴なんです!」


 俺の宣言を、三者とも簡単には飲み込めずしばらく顔を見合わせていた。
「音痴を!? なんで?」
「そこから叩き上げて成長して行くというドキュメンタリーぴよ?」
 ノゾノゾさんとスワッグが同時に口を開く。タイミングばっちりだ。なんだかんだで幼なじみなんだな。
「ショーキチおまえまさか……サイタ○政財界人チャリティ歌謡祭のような風景を観る趣味があるとか?」
 ステフが浦和レッズのお膝元で行われる奇祭の名を出した。お前、芸能方面にはトコトン詳しいな!
「いや、権力者のアレっぷりとか部下の動員とかじゃなくてさ。てかアレにはまあまあ上手い人もいるし。今回はね、純粋な歌唱力……の低さが大事なんだ」
 もしそんなのを行ったら絶対にレブロン王が出場して、ダリオさんや臣下のみなさんが駆り出され死んだ目になるんだろうな、と思いながら続ける。
「今この国で集められる最高の音痴の歌声を、スタジアムに大音量で流したいんだよ」
「何の為に?」
「もちろん、接待の為だよ」
 いや接待じゃなくて歓迎か。どうもチャリティ歌謡祭の地獄絵図にイメージや言葉が引っ張られてしまうな。
「そんなので接待にならないよー」
 常にサービス精神が旺盛なノゾノゾさんが首をプルプルと横に振り、豊かな胸もそれに遅れて動く。鈴が無くて良かった。
「なる相手が18名前後いるんですよ。いや、18羽と言った方が良いかな?」
 俺はそう言ってスワッグの方へウインクを送った。
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