D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十二章

仕事の成果とやり易さ

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 朝食後、シャマーさんと分かれてエルヴィレッジへ着いた俺は軽くウエイトトレーニングをしてから監督室で資料を拾い、作戦室の方へ向かった。途中、選手とすれ違う事は殆どなく――会計のムルトさんが事務室で静かに計算をしている姿だけが見えた。俺の不在時に仕事が増えたせいで次のゴルルグ族戦も出場しない予定だ。彼女もデニス老公会絡みの事件の被害者だな――館内は静かだ。だがそれでも『監督としての日常』が帰ってきたみたいで嬉しい。
「ブヒキュアのレポート、意外としっかりしてんな……」
 広い作戦室で机に広げた普及部の活動報告を見て俺は呟いた。その書類にはチームの遠征中、主に予定が空いている選手たちで行われたサッカードウ教室等の実施内容、地域ごとの参加人数やフィードバックが丁寧にまとめられている。
 作成者は前述の通り、ブヒキュアの二人だ。俺がオーク代表との賭に勝利し引き抜いたコック兼メイド兼普及部、黒ギャルのナギサさんと白ギャルのホノカさん。その実体はハーフオークの魔法少女で、普段はオークらしいムキムキの身体をメイド服に包んでいるものの、魔法の変身を解くと金髪褐色肌と黒髪色白肌の美女になるお姉さんズだ。
 彼女たちはオーク姿の時は食堂で逞しく働きコック長のラビンさんを助け、美女姿の時はフレンドリーに来客や子供の接待をしている。あとたまに俺の子種を狙って誘惑してくる。
 そんなお役立ちでありながら困ったギャルたちだが、『書類の作成』というまた新しい才能を見せつけてくれていた。
「なんだろう……。料理が上手な奴は段取りも上手だから、文書を作らせても理路整然としている、ってパターンかな?」
 オークのクッキング、と言えば
「はい、ここでリンゴのすり下ろしを入れます……ヤァーッ!」
と言っておもむろに握力で握り潰す……みたいなイメージがあるが、実際はそんな事はなく食材の仕込みから調理までかなり丁寧らしいし。クラブハウスで少なからず働いている男性スタッフの何名かは、胃袋と心を掴まれているらしいし。他の袋まで掴まれていたら……ぶるぶる!
「あ、こんな遠くまで? ルーク聖林しょうりんまでもう少しじゃん」
 恐ろしい想像を振り払うように地図を見て、俺は驚きの声を上げた。ブヒキュアの作る書類は文章が簡潔かつ的確なだけでなく図解や地図も使われて非常にグラフィカルで分かり易かった。
「そこへ行ってたのは……ナギサさんとノゾノゾさんか。でも次に行くのはナイトエルフのどっちかにして貰うべきかなあ」
「私がどうしたって?」
 誰を手配するか悩む俺に、部屋の入り口から声がかかった。

「あ、ノゾノゾさん! ステフにスワッグも。ご足労ありがとうございます」
 俺は作戦室に呼びつけた三名、巨人族とダスクエルフとグリフォンに感謝の言葉を投げた。
「良いってこと」
「まあ、仕方ないぴよ」
「なーにスワッグ、偉そうに!」
 三者は三様に返事をし、俺の薦めた椅子へ座った。快活に返事するステフと違いスワッグはやや渋い顔だ。いつの間にか俺もかなりグリフォンの表情を読めるようになったな。
「まあまあ。スワッグにはそれくらいでいて貰う必要があるかもしれません」
 いつも楽しげなスワッグがそんな状態なのには訳がある。さっきは巨人族とグリフォン、と簡単に言ったがその実ノゾノゾさんは嵐の巨人の眷属でスワッグは風のエレメンタルの眷属だ。そして種族として近しいだけでなく個人的? にも幼なじみらしい。故にいろいろ知られていて、スワッグはノゾノゾさんに苦手意識があるのだ。
「へえ~。この子に? どういう事か聞かせて?」
 ノゾノゾさんは興味深げに机の上へ乗り出し、豊かな胸がテーブルの上に載って激しく主張してきた。この気さくなお姉さん、今は身体縮小の腕輪で小さくなっているがそれでも身長はたぶん180cmを越えており、胸囲もかなりのものだ。
 しかも普段から見せブラにショートパンツといった姿で健康的なお色気を振りまいており、ラップにトークにとスタジアムDJとしてもかなり優秀。サッカードウに興味は無いが子供の付き添いや友人とのつき合いでしぶしぶスタジアム観戦へ来たお父さんエルフ、などを次々と魅了している。
「へいノゾノゾ! あまりサービスし過ぎるとすけべなショーキチが説明に集中できないYO!」
「そんな事ないわい!」
 ステフが俺の視線に気づき余計な事を言い、俺は反論した。しかしまあ胸をチラチラ見ていたのは事実で、俺は彼女の視野の広さに感嘆した。
 ノゾノゾさんがスタジアムDJ、スワッグがその補佐、そしてステフが総括責任者としてその他全体をまとめる。その体制でスタジアム演出部は上手く機能しており、来場者数は順調にのびていた。
 だが実のところ俺はそれに満足せず、更なる集客増と試合にも有利になる一石二鳥の策を実施しようとしているのだ。
「別に好きなだけ観れば良いよ?」
「はい観ます! じゃなくて言いますので聞いて下さい!」
 思わず漏れ出た本音と感謝の気持ちを打ち消し、俺は近くのコンソールを操作し魔法のスクリーンにある画面を映し出した。
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