D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十一章

老公と交渉

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「少なくとも過半数はデイエルフの選手を起用しろ、と。この場合過半数とはスタメン11名の事ですか? それとも控えサブも入れて?」
 5分後。デニス老公会の主張を傾聴し布に記した俺は、さっそく質問を口にした。
「もちろん、スターティングライナップ11名の事だ。栄えある試合開始の瞬間を我らの子たちが……」
「と、言うことは11の過半数なので6名ですね。選手交代は5名可能なので1名変えるだけでもその比率は変わってしまいますが、それでもOK?」
「え、あ、た、たぶん」
「俺の知る限りでもデイエルフとドーンエルフの父母を持つ選手が1名いますが、それは0.5として数えても良いのですか? つまり2名いたら足して1と数えても良いと? そうなると望む望まないに関わらず、選手の出生調査をする必要がありますが」
「それはどうだろう……」
「あと先程の話ですが選手交代で変わっても良いと言うことは、開始1分でも良いという事ですよね? 昨シーズンでも最初のプレーで痛んだ選手を下げた例が……」
「ええい、五月蠅い!」
 俺の矢継ぎ早の質問で、早々にデニス老公会の皆さんが切れた。
「我らはその様な事を言っているのではない!」
「そうだ! 大事なのはデイエルフへの敬意と誇りが感じられる代表チームかどうかだ!」
「お主はいちいち細かくて面倒くさい!」
 ジャバさんを除くエルフたちが次々とクレームを入れてきた。
「ええ、そうですよ。サッカードウのチーム運営と言うのは、つくづく面倒くさい」
 俺は書き込みで真っ黒になった布を彼らへ見せながら続ける。
「相手チームと自チームを出来るだけ客観的に分析し、自分たちの勝っている部分を押し出し劣っている部分を隠し、プランを建て有効さと実現性で絞り込んでメインとバックアップを決めて練習で落とし込みながら習熟度とコンディションを見る」
 俺は布と同じくらい黒くなった手を指折りながら言った。
「そういう面倒くさいことを一週間積み重ねても、皆さんが目にするのは90分です。90分に全てをかけて必死に戦って、終わったら勝ってるかもしれないし負けているかもしれない」
 そこまで言って俺は一息つき、自虐的に笑った。
「好きでやってますけど難儀な仕事ですよ。ですがあなた方はその上に、さっき言ったような枷を更に付け足そうとする」
「いや、それは……」
「敬意と誇り、ですか。それを説くあなた方は、代表チームにそれを持ってくれているんですか? 足を引っ張るような事を押しつけようとしているのに? とてもじゃないが受け入れられませんね」
 俺は自然と笑みを失っていた。その雰囲気に呑まれてか、何名かの老公たちも考え込んだりやや顔を赤らめたりしている。バートさんは分かるよ、と言うようにそっと手を拭く用の濡れた手拭きを渡してくれた。
「我らを足手まとい扱いするか! 50年も生きられぬ人間ぶぜいが!」
 一方で、まだ戦意ファイティングスピリットを失っていないエルフもいた。使い走りをさせられた例のイケメンだ。
「何年生きようが試合時間は90分で準備できる時間も一週間です。それは誰にとっても平等です。誰がどんな種族かなんて関係ないでしょ」
 ゲームや小説でたまに見かける人間を見下すエルフ、てのがついに来たな。しかし50年って織田信長のアレかよ! 倍とは言わないけれど80年位は生きるぞ!? ってそうか。保健衛生的にこの世界の人間の寿命はそんなものか。
「関係ある! 自らの出自に誇りを持ってこそ、雄々しく戦えるのだ。出生調査? ああ、すれば良い。隠す必要が無ければ問題はない筈だ。それとも何か? お前は表に出せない恥ずべき一族の生まれか?」
 表に出せる出せないではなく、他者のプライバシーに踏み込む権利は誰にも、監督にだってないからですよ? と言うつもりだったが、俺の口から出たのは別の台詞だった。
「俺の家族が何だと! もう一度、言ってみろ、お前を窓から放り出して誇らしいご先祖の面々にすぐ会わせてやるぞ?」
 すぐ後でバートさんが息を呑む音が聞こえて、俺は初めて自分が低い声で相手を脅している事に気づいた。
「何ぃ!?」
「どちらとも待て!」
 一触即発な雰囲気の俺たちの間に、ジャバさんが割って入った。立った彼を初めて映像ではなく生で見たがかなりの長身で、しかもその長身が音もなくスムーズに動いてきたので驚いた。
「互いに少し熱くなってしまった様だ。ウォジーよ、お前は自室へ帰れ。バート、ショーキチ殿を絶情木へお連れするのが良かろう」
「ジャバ! 本当にそれで良いの?」
「ああ。一周ほど、散歩して貰うがよい」
 ふーん、あいつウォジーっていう名前なのか。覚えたぞ、と呟く俺の横でジャバさんとバートさんも何か言い合ってたが、最後には彼女が折れたようで優しく俺の手を取った。
「じゃあショーキチさん、行こうか」
「あ、はい。あ、でも」
 拭いたとは言え手はまだ炭で汚れている。俺は咄嗟に彼女の手を離そうとしたが、バートさんは見かけによらぬ力で俺を掴んだまま、先へ進んだ。
「ふん、後で思い知るが良い」
 そんなウォジーの捨て台詞が微かに聞こえた。
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