D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十一章

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「ううむ……」
 バートさんからデニス老公会の意図、つまり
「アレだけ言ったのに何でデイエルフをもっと使わへんのや!」
とヤキを入れられる、というのを歩きながら聞いて俺は思わず唸った。
 特に『アレだけ言って』の部分だが、俺が実際にナリンさんから件の抗議文を見せて貰ったのはゴブリン戦の数日前だ。で試合後に拉致ってエルフのお年寄り気が短過ぎませんか? これが切れる老年ってやつ?
「不幸なすれ違い、しちゃったねー!」
 悩む俺を見てバートさんは申し訳なさそうに笑い、説明した。
「ドワーフ戦で注目が集まって、キックオフセレモニーで期待がさらに膨らんで、でもオーク戦にリーの若芽が出場しなかった事で遺憾の意を表明するのが決まっていた、みたい。でも手紙が付く頃には貴男はもうチャプターの方へ行ってて」
 そっか、向こう的にはオーク戦後に手紙を出して、もう伝えているつもりだったのか。この異世界の郵便事情――デイエルフさんは得意の自然魔法で森の小鳥を強化し、伝書鳩的な使い方をしているらしい。ドーンエルフの魔術なら超自然の存在を飛ばして早いのに。皮肉な話だ――が産んだ悲劇だな。と言うか俺を追ってあちこち飛んだ鳥に同情するわ。
「なるほど。所で『リーの若芽』ってなんすか?」
 ワカメと言えばバートさんの髪型がややサザエさんのワカメちゃんっぽいが。
「リベリーノ一族の娘さん、リーシャちゃんのことだよ。リックさんがオークの所へ婿へ行ったいま、彼女があの家族の大事な期待の星なの」
 ほうほう、リベリーノ一族の期待の若手でリーの若芽か。ホープならぬホップ毬花って事だね! って一人で受けている場合じゃない!
「それは何か……申し訳ない」
 全ての事情をバートさんに言える訳もなく、俺はただ謝った。キックオフセレモニーからオーク戦にかけては、ペイトーン選手の意気や相手の狙いを挫く為にリーシャさんを囮に使った『逆アジジ作戦』で彼女に注目を集めた上で、サブにすら入れないという奇策を使った。
 しかしその反動がこんな形で返ってくるとは。
「ちょっと過保護だと思うけどね。あ、こんにちは!」
 バートさんは俺を庇うかのように呟いた後、すれ違う知り合いに挨拶をして軽く抱き合った。
「こんにちはバート! こんにちは、お客人。足下、お気をつけて!」
「あ、どうも……」
 もう一つ、俺を悩みで唸らせているのがこういった風景だった。人を拉致しレイシズムエルフ種差別的な要求を飲ませようとするロクデナシの集団……。当初、俺がデニス老公会に抱いたイメージは悪く言えばそんな感じだった。 
 しかしこのルーク聖林で出会うデイエルフの村民達の姿はその印象を悉く覆した。すれ違うエルフ同士が明るく声を掛け合い身体に振れる。特にバートさんは人気者らしく――このルックスと気さくな性格だもんな。当然だ――お決まりのルーチンを毎回、行うので俺の案内は遅々として進まない。いや、彼女に対してだけではない。俺にも優しい声をかけてくる。特に高く細い吊り橋を渡る際、情けないほどのへっぴり腰になった時などは、手を引き肩を抱いて俺を手伝ってくれた。
 こんな素朴で愛に溢れたエルフ達の敬愛を集めるデニス老公会の老エルフ達が、果たして俺が先に想像した通りの下衆の集まりなんだろうか? なかなか進まなくて俺と恐らく老公会の皆さんをやきもきさせた後、バートさんと悩める虜囚は会談の木へと着いた。

「ここで俺のリーシャがささっと突破してだな」
「いや、シノメさんなら奪えなくても足止めはできるね!」
「そこにガニア君がタックルを……」
 俺たちが着いたのは周囲のものと比べて一段と大きな巨木だった。中はきっと俺の軟禁部屋と同じく空洞で、大きな空間が広がっているに違いない。だから声を響くし遊ぶ事もできるのだろ。
 そう。遊び。内側から、ルールは定かではないが――というかルールが定かでないから揉めてそうともとれる――何かのゲームをやっている声と気配が、外の廊下に立つ俺たちまでビンビンに伝わってきていた。
「(なんか取り込み中っぽいですね? 日を改めますか?)」
「(いえ、それには及ばないよ)」
 俺が小声でそう提案するとバートさんは目を閉じ首を横に振り、それから大きく息を吸う。
「そこへ意外な事に、サポートにレ……」
「みなさん!! ショーキチさんをお連れしましたよ!!」
「「うわぁ!!」」
 びっくりした! 俺も、たぶん中のお爺さんたちも。大声で呼びかけたバートさんへの返答は、ドタバタした物音と慌てた声だった。
「待て! ちょっとだけ……待て!」
「ああ言ってますし、この木の外周を一周くらいします?」
「いえ、入りましょ、ショーキチさん」
 俺の気遣いを一周ならぬ一蹴して、バートさんは中へ歩みを進める。今更だがこの街に、木の家に扉はない。俺はどういう顔と心構えで挑むべきか見失いながら先を行くツリーメイトさんに続いた。
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