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第十六章

人妻とボーイッシュ巨乳と

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「まあ! 監督って夫よりわたくしを良く見てますのね……」
「ガニア! あなた……」
 何やらナリンさんとガニアさんが話しているが、ニャイアーコーチと目が合ったので俺もボールを要求する。
「あとですね、と! さっきのと逆に駄目なのがFWを外さず、しかもこっちにトラップするケースです。これだと、FWからプレッシャーを受けるのでGKへのバックパスかカットされる危険が高いパスをあとのDFに渡すしか選択肢がない……」
 俺はボールを自陣ゴール方向へトラップし、駄目な実例を演じる。ってこういう実演なら俺もできるんだけどな!
「なるほど! インセクターのFWはそこまで守備をしませんが、もしわたくしならこうやって……」
 そう言うとガニアさんは胸からガツっと俺の背中に当たり、バランスを崩させる。
「え、ちょっと服引っ張るのは反則……!」
 更にガニアさんは俺のズボンを下に引っ張りながらボールを奪おうとする。俺は必死に片足を振ってせめてボールを後ろに蹴ろうとするが、足がボールに届く直前で完全に後ろの方へ、ガニアさんを巻き込んで倒れてしまった。
「で、こうしてフォローにきた味方にパス、と」
 倒れたのは彼女も同じ。しかしリーチと状況判断が圧倒的に違う。ガニアさんは余裕綽々で倒れたまま左足を伸ばし、ボールをちょんと蹴ってナリンさんの方へ転がした。
「いやユニフォームを掴むのは反則ですってー」
 俺は完全にしてやられた悔しさを必死で隠しながらガニアさんに抗議をする。
「でも監督もわたくしの掴んでますわ」
「い? うわあ!」
 気づくと、共に転んだ時のどさくさで俺の右手は彼女の胸の上に鎮座していた。今までこんなトラブルが無かった訳ではないが、相手がエルフ妻人妻となると更にバツが悪い。俺は慌てて謝罪を口にする。
「わわっ、ごめんなさい! どきま……」
 退きます、と言いたい所だが、背後から俺を引き倒したガニアさんの右足が俺の足に巻き付き立ち上がる事を許さない。なるほど、これなら仮に相手選手がすぐに立ち上がってボールを追いかけようとしても動けない。彼女もまたプロ……!
「まあ、大胆ね。もう少し、こうしています?」
「はい、そこまでー!」
 と、そんな声がして、ガニアさんの足は俺の足からすっと解かれた。
「今のはふつうに反則ー。もっと上手くやろうねー」
 シャマーさんだ。俺達の隣にしゃがみ込み、指先を複雑に動かしている所を見ると魔法で引き離してくれたらしい。
「ショーキチ殿、お怪我はないですか?」
 こちらはナリンさんだ。俺は彼女の差し出してくれた手を握り、礼を言いながら立ち上がった。
「お二人ともありがとうございます。えっと何だっけ……? あ、システム変形時のポジションとパスですね。どちらもシャマーさんがコーチングしてくれるので、ガニアさんは彼女の言うことをよく聞いて下さい」
「はーい。指導、宜しくねキャプテン」
 ガニアさんはクスクスと笑いながら返事をした。
「いえいえ。こちらも参考になるしー」
 何がだろう……? 良く分からないけど、ここからは当エルフ同士で詰めて貰おう。
「そういうことで宜しく」
 とりあえず、他にやることがある。俺は奇妙な空気が流れているDF陣を残し、全体の指導へ戻った。


「あれ、今回はあっちの回想に戻らないの?」
「ノゾノゾさん何を言ってるんすか?」
 その日の練習後。会議室まで俺に呼び出されたノゾノゾさんが発した第一声は、そんな意味不明なものだった。
「いや、僕は良いんだけどさ」
「おーショートカット僕っこ巨乳ちゃん! 何気に初絡みじゃね?」
「おいおいオタ君じつは彼女、幼馴染みだったりしない?」
 スタジアムDJの巨人より更に意味不明な事を言ってきたのはオーク代表から引き抜いたコックの二人、ナギサさんとホノカさんだ。彼女たちも会議室に呼ばれ、例の露出度が高い衣装で椅子に座っている。
「違いますよ。俺、この世界に『前からの知り合い』なんていませんし。いやあちらにだって幼少期の知り合いは殆どいませんが」
 こちとら悲しい引っ越し連発組である。まあ高校以上ならそこそこ付き合いの永い友人はいるが、みんな野郎おとこだ。
「そっかー。コンプリートしたらNTRまっしぐらだったのにな」
「信じて送り出した彼女がまさか……ヤバのヤバヤバ」
 ブヒキュアのイヤラシく唇を舐めながら笑い合っている。どうせくだらない事だろうが。
「送り出されるのはノゾノゾさんだけじゃなくてここにいるみなさんもですよ」
 俺は残りの――という呼び方も失礼だが――面々にも聞こえるように言った。それを聞いて集められた選手たちもこちらを見る。
「えっと……だいたい揃ったようなので、ここから2週間の普及部活動について説明します!」
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