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第十四章
Dは何のD
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『でぃーふぇん! でーふぇんす!』
その様な劣勢の中、しかしアローズは良く耐えていた。一つにはゾーンでのDFまでは破られておらず、守備ブロックで的確に攻撃を跳ね返し続けられた事。もう一つはサポーター達の声援である。
『守護神、ボナザ! 鉄壁ボナザ!』
ノゾノゾさんのコールを受けすぐにサクラが唱和を始め、他の一般のお客様も追従する。なにせオークの攻撃は毎回、かなりの間があるロングスローだ。チャントを呼びかけるタイミングもとり易い。
「ありがたいもんだな」
何度も飛び跳ねて空中戦をするのはかなりの疲労だ。だがアローズDF陣はサポーターの声を背に決して足を止めなかった。
「ピッピー!」
その姿に業を煮やし流石に投げる所に迷い始めたペイトーン選手が助走を取り直した所で、審判さんが笛を吹いた。
「やった! 遅延行為でありますか!?」
ナリンさんが珍しくはしゃいだ声でベンチから飛び出す。しかし、副審のリザードマンさんが素早くボールを回収しピッチ内へ入った。
「あ……前半終了でありま……すぅ」
その光景で気づいたナリンさんが顔を真っ赤にしながら振り返った。そう、オークが放ったロングスローは手元の集計で9本! 実に5分に1回のペースで喰らいながらもなんとか前半を1失点で乗り越えたのだ。
「あはは。大丈夫、今のは日本語だったので俺しか分かってませんよ」
俺はこちらへ歩み寄ってきたナリンさんの肩を抱き寄せ叩きながら慰めた。ついでに手元のメモを渡しつつ真っ赤な彼女の耳元に囁く。
「先にロッカールームへ言ってこの対策方法を説明しておいて下さい。俺は俺で、ちょっと小細工をしてから向かいます」
リーシャさんやグランドキーパーさん達にジェスチャーでちょっとした指示を与え、俺がロッカールームに着いた頃にはみんなの着替えもナリンさんによる説明も終わって準備万端だった。
「みんな前半はよく頑張ってくれた。それに比べてこちらは後手を踏んでしまって本当に申し訳ない。後半はナリンさんが伝えてくれた通りで対処できるだろうし、別の対策も俺の方でやるから心配しないで欲しい」
俺がそう言うと何名かがニヤニヤと笑いながらこちらを見てきた。
「なんだよ?」
「本当に後手を踏んだでござるか~?」
「実は子種流出の為に、わざと負けようとしたんじゃねえか?」
「せんわ!」
リストさんティアさんの言葉に思わず声がでかくなる。畜生、こいつらまだまだぜんぜん元気だな!
「そもそも負けたら君たちもセンシャを……」
「じゃあみんな円陣くも~」
説教しようとした俺を遮って、シャマーさんが全員を集めた。
「開幕戦にたくさんのお客さんが来てる所で無様な姿は見せられない。後半、点を取って勝つよ?」
「「おう!」」
おお、流石キャプテン良い事を言う。いや、変な流れになってなければ俺もそんな感じの激励をしようとしてたからね?
「あとショーちゃんは軽く考えてるけど、もしあんな女性と結婚して夫婦喧嘩になったら、投げつけられた花瓶とかで頭割って死ぬよ?」
「ははっ、そうだそうだ!」
「DV反対!」
キャプテンの言葉を聞いて何名かが悪ノリする。てかシャマーさんに感心した俺が馬鹿でした……。これで何度めだ?
「なんの心配しとんねん!」
「3、2、1、DV反対でいくよ? 3、2、1……」
「「DV反対!!」」
俺は思わずつっこんだが、選手達は軽くスルーし端から聞いていたらウーマンリブ運動集会のかけ声のような唱和をして更衣室を出て行く。
「いや君たちね……あ、マイラさん待って下さい!」
誰もまともに取り合ってくれないのに傷つきながらも、俺はマイラさん――リザーブ選手で出て行くのが最後の方だった――を呼び止めた。
「どうしたの監督にゃん? マイラ、まだ乙女だから結婚生活の秘訣とか分からないの!」
嘘つけあんた、孫までおるやろ! しかもその言い分だと何かいい感じの心得とか知ってるやろ!
「あーそちらも機会があれば聞きたいですけど。急ぎでお願いしたいことがあるんですよ」
俺はツッコミと好奇心を抑えて真面目な話をする。
「なんですの?」
「マイラさんが作った味噌汁をね、飲みたいって奴がいるんですよ」
その様な劣勢の中、しかしアローズは良く耐えていた。一つにはゾーンでのDFまでは破られておらず、守備ブロックで的確に攻撃を跳ね返し続けられた事。もう一つはサポーター達の声援である。
『守護神、ボナザ! 鉄壁ボナザ!』
ノゾノゾさんのコールを受けすぐにサクラが唱和を始め、他の一般のお客様も追従する。なにせオークの攻撃は毎回、かなりの間があるロングスローだ。チャントを呼びかけるタイミングもとり易い。
「ありがたいもんだな」
何度も飛び跳ねて空中戦をするのはかなりの疲労だ。だがアローズDF陣はサポーターの声を背に決して足を止めなかった。
「ピッピー!」
その姿に業を煮やし流石に投げる所に迷い始めたペイトーン選手が助走を取り直した所で、審判さんが笛を吹いた。
「やった! 遅延行為でありますか!?」
ナリンさんが珍しくはしゃいだ声でベンチから飛び出す。しかし、副審のリザードマンさんが素早くボールを回収しピッチ内へ入った。
「あ……前半終了でありま……すぅ」
その光景で気づいたナリンさんが顔を真っ赤にしながら振り返った。そう、オークが放ったロングスローは手元の集計で9本! 実に5分に1回のペースで喰らいながらもなんとか前半を1失点で乗り越えたのだ。
「あはは。大丈夫、今のは日本語だったので俺しか分かってませんよ」
俺はこちらへ歩み寄ってきたナリンさんの肩を抱き寄せ叩きながら慰めた。ついでに手元のメモを渡しつつ真っ赤な彼女の耳元に囁く。
「先にロッカールームへ言ってこの対策方法を説明しておいて下さい。俺は俺で、ちょっと小細工をしてから向かいます」
リーシャさんやグランドキーパーさん達にジェスチャーでちょっとした指示を与え、俺がロッカールームに着いた頃にはみんなの着替えもナリンさんによる説明も終わって準備万端だった。
「みんな前半はよく頑張ってくれた。それに比べてこちらは後手を踏んでしまって本当に申し訳ない。後半はナリンさんが伝えてくれた通りで対処できるだろうし、別の対策も俺の方でやるから心配しないで欲しい」
俺がそう言うと何名かがニヤニヤと笑いながらこちらを見てきた。
「なんだよ?」
「本当に後手を踏んだでござるか~?」
「実は子種流出の為に、わざと負けようとしたんじゃねえか?」
「せんわ!」
リストさんティアさんの言葉に思わず声がでかくなる。畜生、こいつらまだまだぜんぜん元気だな!
「そもそも負けたら君たちもセンシャを……」
「じゃあみんな円陣くも~」
説教しようとした俺を遮って、シャマーさんが全員を集めた。
「開幕戦にたくさんのお客さんが来てる所で無様な姿は見せられない。後半、点を取って勝つよ?」
「「おう!」」
おお、流石キャプテン良い事を言う。いや、変な流れになってなければ俺もそんな感じの激励をしようとしてたからね?
「あとショーちゃんは軽く考えてるけど、もしあんな女性と結婚して夫婦喧嘩になったら、投げつけられた花瓶とかで頭割って死ぬよ?」
「ははっ、そうだそうだ!」
「DV反対!」
キャプテンの言葉を聞いて何名かが悪ノリする。てかシャマーさんに感心した俺が馬鹿でした……。これで何度めだ?
「なんの心配しとんねん!」
「3、2、1、DV反対でいくよ? 3、2、1……」
「「DV反対!!」」
俺は思わずつっこんだが、選手達は軽くスルーし端から聞いていたらウーマンリブ運動集会のかけ声のような唱和をして更衣室を出て行く。
「いや君たちね……あ、マイラさん待って下さい!」
誰もまともに取り合ってくれないのに傷つきながらも、俺はマイラさん――リザーブ選手で出て行くのが最後の方だった――を呼び止めた。
「どうしたの監督にゃん? マイラ、まだ乙女だから結婚生活の秘訣とか分からないの!」
嘘つけあんた、孫までおるやろ! しかもその言い分だと何かいい感じの心得とか知ってるやろ!
「あーそちらも機会があれば聞きたいですけど。急ぎでお願いしたいことがあるんですよ」
俺はツッコミと好奇心を抑えて真面目な話をする。
「なんですの?」
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