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第十三章
嵐を呼ぶ女
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「ストーム・ジャイアント?」
いや前者の普通のファイヤー・ジャイアントというのもなかなかにインパクトのあるワードだけど。それ以上に後者が気になる。
「えっとね。父さんたちって巨人は巨人なんだけどみんな空の上の、嵐の中に住んでいる種族なんだ」
嵐の中に住む? そんな事ができるのか?
「だから巨人と言うよりも風の精霊に近い存在でさ。僕のその血を引いているから、声を遠くまで飛ばしたり音で他者を振るわせたりできるんだよ!」
ほほう。それを聞くと巨人というか雲の魔神みたいだな。
「なるほど。スワッグもそんなもんだしな……」
「えっ!?」
俺が脳裏に浮かんだ風の精霊の一羽? の名を呟くと、彼女は目を大きく見開いて言った。
「君、スワッグの事を知っているの!?」
「ええ。彼とも雇用契約関係にあります。そちらも彼の事を?」
と更に訪ねようとした所で、こちらを気遣わしげに見るノームの親方の顔が目に入った。
「いや、すみません。詳しく聞きたい事は双方にまだまだあるみたいなんですが、お仕事の邪魔ですよね? 上がりは何時ですか? もし宜しければ改めてその頃にお伺いしますが?」
俺にそう言われてやっと、彼女も気づいたようだった。彼女――最後にやっと名前を聞けた。ノゾノゾというらしい――は俺の案に同意すると作業終了時刻を俺に告げると、ノームの親方の方へ戻った。
例によって凄い地響きを立てて。
ノゾノゾさんを伴ってエルヴィレッジへ帰った時には、もうとっくに夜になっていた。遅くなってしまったが彼女と互いの身の上話などを行い城に寄り用事を済ませ、船で帰ってきたにしては早い方だろう。ストーム・ジャイアントの力がモノをいったおかげだな。
「この先が食堂です。今の時間だと連中もいる筈だからちょうど良かったかもしれませんね」
俺はノゾノゾさんに施設の案内をしながらも耳を澄ませた。前方の空間から騒がしい笑い声が聞こえる。目当ての対象はおおよそ揃っている様だ。
「関係者は無料で使える様になっていますので、自由に食事を取って下さい。ただできればその姿でお願いしたいですが」
俺が苦笑混じりにそう告げると、彼女は耳の横あたりでシャカサイン――ロナウジーニョがやっていた、親指と小指を立てて振る手つきだ。地球のハワイアンやサーファーでは一般的らしいが、まさか巨人からそのサインを見せられるとは思わなかったな――をしながらウインクを送ってきた。その腕には王城で借りた身長伸縮の魔法がかかったシュリンク・ブレスレットが揺れている。
そう、ノゾノゾさんは今は標準的な人間サイズになって俺と一緒に歩いている。と言ってもまだまだ大きく身長は180cmを越えているし、学校の制服に着替えた事によって発覚したその健康的でセクシーな身体のラインは気になる部分もかなり大きくて存在感抜群であった。
「おう、ショーキチこーんばーんわー! うわまた新しいエロい子連れて……何を喰ったらそんなにデカくなるんだ!?」
食堂の中で一際騒がしく夕食を取っていたステフが、その大好きな食事をいったん止めて口を錦鯉のようにパクパクさせて言った。
「声が大きいぴい! ……ぴ!? げえっノゾノゾ!?」
優しくステフに関わる羽もちの相棒であったが、スワッグは俺の背後の巨人を見て悲鳴を上げた。
「やっほー、スワッグ! 久しぶり!」
逆にノゾノゾさんは嬉しそうな声を出して一気に駆け寄り、スワッグの首に抱きつく。グリフォンの表情は分かり難いがその顔は恐怖に震え、全身に鳥肌が立っている筈だ。
いや最初から鳥肌だけど。
「なんだスワッグ、既にトモダチ?」
「ショーキチにいさん! どないしたん? もう一人クラスメイトをみつけてくれたん?」
目ざとく俺たちを見つけたレイさんが近寄って訪ねてきた。まあ自分たちと同じ制服を来た知らない子を見たら気になるよな。
「立ち話もアレなんで食事でもしながら説明しますよ」
俺は食堂にいる全員に伝わるようそう宣言して、一番真ん中の大きいテーブルに関係者を誘った。
昼間の出来事を吟味し、そしてノゾノゾさんの経歴を聞いた俺は即座に彼女をスタジアムDJとして採用する事を思いついた。
マイクスキルが非常に高く、見た目も派手だ。種族としての能力を用いればアンプなども要らないし、スタジアム演出部長補佐とも面識がある。そして何より性格が明るい。いわゆる陽キャ、パリピである。
そこで軽く話を持ちかけてみたのだが、そこは陽キャ。ノゾノゾさんは即決した。そうなったら後は早い。俺たちはそのまま王城へ向かいエルフサッカードウ協会で仮契約を締結、そのままの大きさや服装では何かと不便なので小さくなれる魔法の腕輪とダリオさんが何故か持っていた――本当に何で持っていたんでしょうね?――学校の制服を借りてここまで帰ってきた……という現状だ。
あとはスタジアム演出部や選手たちと面談して問題がなければ採用となる算段である。
いや前者の普通のファイヤー・ジャイアントというのもなかなかにインパクトのあるワードだけど。それ以上に後者が気になる。
「えっとね。父さんたちって巨人は巨人なんだけどみんな空の上の、嵐の中に住んでいる種族なんだ」
嵐の中に住む? そんな事ができるのか?
「だから巨人と言うよりも風の精霊に近い存在でさ。僕のその血を引いているから、声を遠くまで飛ばしたり音で他者を振るわせたりできるんだよ!」
ほほう。それを聞くと巨人というか雲の魔神みたいだな。
「なるほど。スワッグもそんなもんだしな……」
「えっ!?」
俺が脳裏に浮かんだ風の精霊の一羽? の名を呟くと、彼女は目を大きく見開いて言った。
「君、スワッグの事を知っているの!?」
「ええ。彼とも雇用契約関係にあります。そちらも彼の事を?」
と更に訪ねようとした所で、こちらを気遣わしげに見るノームの親方の顔が目に入った。
「いや、すみません。詳しく聞きたい事は双方にまだまだあるみたいなんですが、お仕事の邪魔ですよね? 上がりは何時ですか? もし宜しければ改めてその頃にお伺いしますが?」
俺にそう言われてやっと、彼女も気づいたようだった。彼女――最後にやっと名前を聞けた。ノゾノゾというらしい――は俺の案に同意すると作業終了時刻を俺に告げると、ノームの親方の方へ戻った。
例によって凄い地響きを立てて。
ノゾノゾさんを伴ってエルヴィレッジへ帰った時には、もうとっくに夜になっていた。遅くなってしまったが彼女と互いの身の上話などを行い城に寄り用事を済ませ、船で帰ってきたにしては早い方だろう。ストーム・ジャイアントの力がモノをいったおかげだな。
「この先が食堂です。今の時間だと連中もいる筈だからちょうど良かったかもしれませんね」
俺はノゾノゾさんに施設の案内をしながらも耳を澄ませた。前方の空間から騒がしい笑い声が聞こえる。目当ての対象はおおよそ揃っている様だ。
「関係者は無料で使える様になっていますので、自由に食事を取って下さい。ただできればその姿でお願いしたいですが」
俺が苦笑混じりにそう告げると、彼女は耳の横あたりでシャカサイン――ロナウジーニョがやっていた、親指と小指を立てて振る手つきだ。地球のハワイアンやサーファーでは一般的らしいが、まさか巨人からそのサインを見せられるとは思わなかったな――をしながらウインクを送ってきた。その腕には王城で借りた身長伸縮の魔法がかかったシュリンク・ブレスレットが揺れている。
そう、ノゾノゾさんは今は標準的な人間サイズになって俺と一緒に歩いている。と言ってもまだまだ大きく身長は180cmを越えているし、学校の制服に着替えた事によって発覚したその健康的でセクシーな身体のラインは気になる部分もかなり大きくて存在感抜群であった。
「おう、ショーキチこーんばーんわー! うわまた新しいエロい子連れて……何を喰ったらそんなにデカくなるんだ!?」
食堂の中で一際騒がしく夕食を取っていたステフが、その大好きな食事をいったん止めて口を錦鯉のようにパクパクさせて言った。
「声が大きいぴい! ……ぴ!? げえっノゾノゾ!?」
優しくステフに関わる羽もちの相棒であったが、スワッグは俺の背後の巨人を見て悲鳴を上げた。
「やっほー、スワッグ! 久しぶり!」
逆にノゾノゾさんは嬉しそうな声を出して一気に駆け寄り、スワッグの首に抱きつく。グリフォンの表情は分かり難いがその顔は恐怖に震え、全身に鳥肌が立っている筈だ。
いや最初から鳥肌だけど。
「なんだスワッグ、既にトモダチ?」
「ショーキチにいさん! どないしたん? もう一人クラスメイトをみつけてくれたん?」
目ざとく俺たちを見つけたレイさんが近寄って訪ねてきた。まあ自分たちと同じ制服を来た知らない子を見たら気になるよな。
「立ち話もアレなんで食事でもしながら説明しますよ」
俺は食堂にいる全員に伝わるようそう宣言して、一番真ん中の大きいテーブルに関係者を誘った。
昼間の出来事を吟味し、そしてノゾノゾさんの経歴を聞いた俺は即座に彼女をスタジアムDJとして採用する事を思いついた。
マイクスキルが非常に高く、見た目も派手だ。種族としての能力を用いればアンプなども要らないし、スタジアム演出部長補佐とも面識がある。そして何より性格が明るい。いわゆる陽キャ、パリピである。
そこで軽く話を持ちかけてみたのだが、そこは陽キャ。ノゾノゾさんは即決した。そうなったら後は早い。俺たちはそのまま王城へ向かいエルフサッカードウ協会で仮契約を締結、そのままの大きさや服装では何かと不便なので小さくなれる魔法の腕輪とダリオさんが何故か持っていた――本当に何で持っていたんでしょうね?――学校の制服を借りてここまで帰ってきた……という現状だ。
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