D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第九章

監督会議その3

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 幾つかの議題が話された後、エルフ代表のターン発言順が来た。俺は予定通りシャマーさんに手綱を渡し、サポートに回る。
「まずエルフとしてはですね~」
 シャマーさんが話し出す。但し順番だけは指示していた。
「アクリルスタンドの販売」
「センシャの廃止」
「マンデーナイトとオールスターの提案」
という順だ。全種族、DSDKの収入になり最も受け入れ易いをオファーを飲ませ、その後に抵抗が予想される提案を行い、後で補充の意味がある施策を提示する。
 先に簡単な提案を飲むと次のを断り難い……フットインザドアとか言う手段で、セールスマンさんから詐欺師まで様々な人種が多用するやつだ。この世界の種族の皆さんに通じるかは分からないが、別に失うモノは無い。やってみる価値はあるだろう。
「こちらの商品を提案します。題して『ア・クリスタルスタンド』!」
 シャマーさんは鞄から例の商品を取り出しサンプルとして各種族監督の前に置いていった。
「我が王国特産のクリスタルに、魔法で選手の姿を投影している物です。ボタン1つで3パターンの姿に変更可。軽くて小さくて持ち運ぶにも飾るにも簡単! 撮影時に少し選手に協力頂きますが、それ以外は生産管理出荷全てエルフが担います。皆さんの負担はほぼありません!」
 地球で言うアクリルスタンドの様な品だが、シャマーさんの言う通り魔法で作られボタン操作でポージングや衣装の変更ができる逸品だ。
 試供品のモデルに選んだのは……もちろんダリオ姫。せっかくなので凛々しいユニフォーム姿、艶やかなドレス姿、フェミニンな私服姿を収録しておいた。なおダリオさん、撮影に最初は照れていたが段々とノリノリになっていった事を俺は知っている。
「にゃふふ! これは良いものだにゃあ!」
 フェリダエ族、オーク族、ミノタウロス族等が鼻の下を伸ばしながらクリスタルに移るダリオさんの姿を眺める。
「ちなみに逆さまにしても見えませんので~」
 シャマーさんがそう説明するとどこかから舌打ちの音が聞こえた。俺の口じゃないよ!?
「ほほう、これはなかなか……」
「ヨイデキデス」
 意外な事にドワーフやインセクター、トロール族も称賛の声を上げる。というかその付近の方々は純粋に「キラキラした物が好き」てマーケティングで知ってたけどな。
「しかし、眺めるだけの物がそんなに売れますかな?」
 ガンス族のケビン監督が反論と言う程ではないが、呟いた。俺はすかさず鞄から別の物を取り出す。
「別売りでこちらのマットも企画しております! 並べて飾ると臨場感たっぷり!」
 シャマーさんがノリノリでそう紹介したのは、サッカーのフィールドを模した敷物だった。何て事無い緑の布だが、きちんとラインは引いてあり実物のジオラマのように見える。
「マット上でプレイもできちゃう! やん、えっち!」
 シャマーさん言い方! と思ったが俺は淡々とスタンドを並べる。片方にはダリオさん11人。片方には同じくモデルを努めて貰ったリストさん――こちらは言うまでもなく最初から撮影にノリノリだった――11名だ。
「これはイメージし易いゾ! 燃えてきタ!」
 ゴブリン族のカー監督が叫ぶ。彼女はリーグでは監督だが、例のゴブリン族独自の大会では現役選手らしい。試合っぽい風景を見るだけで滾るものがあるのだろう。
「なるほど。で、分配はどうお考えで?」
 皆の反応を眺めていたストックトンさんが冷静な声で訊ねた。
「はい。エルフは材料費手間賃全て込みで売り上げの15%。DSDKが50%でその選手が所属しているチームが35%を考えています」
 まあまあ太っ腹な提案だがDSDKの認可を獲るのが一番だし、自分所の売り上げだと50取れるしね。
「なるほど。数字の細部は後ほど財務部で検討しますが、皆さんの反応を見た感じでは採用で異論ないようですね」
 ストックトンさんはそう結論づけて頷いた。確かドラゴンもキラキラした物が好きだよな? そう考えればここは順当という事か。
「では次の議題ですが」
 シャマーさんが勢いそのままに口を開いた。さあ、次は荒れるぞ。

「センシャの廃止だと!?」
 予想通り、シャマーさんが二つ目の提案を発表するなり反対の声が上がった。先鋒を切ったのはミノタウロス代表の新しい監督、オークリーさんだ。
「はい。選手はサッカードウでファンを楽しませるのが本道。センシャはプレイの中身とは関係しませんし、水着で馬車を洗う行為は身体を冷やし選手への負担にもなります」
「しかし……アレは長く続いた伝統で、大事なファンサービスでもありますからなあ」
 そう言ったのはノートリアスの監督、ライリーさんだ。人間の女性で、年の頃は40前といったところか。軍人さんにしては珍しく髪をオールバックでまとめたハンサムなお姉さんだ。
「クラマ殿から伝えられた儀式を、簡単には廃止したくない」
 ライリーさんは言いながら首を左右に振った。ノトジアの人々は他の地方の種族以上に、クラマさんを神格化しているのだろう。
「良く休養し体調を整え、次の試合で全力を尽くすこそが真のファンサービスと言えるでしょう。それに古い因襲に囚われて進化しない事を、クラマ殿は望んでらっしゃらないのでは?」
 シャマーさんがそう反論すると、ポビッチ監督が話の途中から鼻で笑いながら反応した。
「なるほど。選手のシャマー君が言うと説得力があるのう。エルフチームは特に、センシャの機会が多かったからな!」
 はっはっは! と何名の監督たちから嘲笑が起こった。フェリダエ、トロール、ミノタウロスといった主に上位のチームが主体だ。
「まあ、エルフ代表が特に恩恵を受けられるのは確かですね……」
 ガンス族のケビン監督が申し訳なさそうに言う。ちなみにガンス族はその性質が犬に近いらしく、濡れたり働いたりが嫌いではないらしい。だから廃止案には賛同しないと予想はしていた。
「まあまあ! アタイらも割とオーク、もとい多く洗ったけどよ? 別に苦労とは思っちゃいないぜ? やりたくないなら勝ちゃ良いんだし!」
 そう言って豪快に笑ったのはオークチームを率いるサンダー監督だ。顔では判断つかないが資料によると女性。声も身体もでかい。
 その大声にそうだそうだ、との輪唱が重なる。それはもっとも恐れていた事態だった。
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