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第七章
罰と対面
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「うぅ~ん! あまーい! 美味しい~」
ラビンさん特製の生クリーム(と言うと一瞬、怪しい想像が浮かぶが決してラビンさんの身体から出たものではない)たっぷりケーキを頬張りながらユイノさんは言った。
「何よ、露骨に」
「だって一週間くらいお預けだったんだも~ん」
「ユイノちゃん、ほっぺにクリームが付いてますよ?」
やや苛立つリーシャさんに満面の笑みのユイノさん。その頬についたクリームをポリンちゃんがナプキンで拭った。
時刻はまだ宵の口。リーシャさんとユイノさんの森林警護官の勤務期間は昨日で終了し、いよいよ本格的にサッカードウ選手として再始動する時期に突入していた。故に練習もいつもより早くに終了し、今日はもうこんな時間に夕食にありつけていたのである。
逆にポリンちゃんの方は今日一日をかけて、ご足労頂いた親御さんに説明会をしたり契約書を交わしたり、と練習には参加しない日になった。明日は明日で学校見学がありそれで問題なければまもなく入学。練習に参加するのは授業が終わった後や学校の休日の日、という事になるので会える時間も減る。
ちょっとしたすれ違いになってしまうが仕方ない。どうしようもない事を悔やむよりも今を大事にしよう。俺はそんな気分で目の前の光景を眺めていた。
「何よ、ニヤニヤして。監督もユイノに何か言ってよ」
「え? 俺からユイノさんに言うこと? うーん」
そう言って睨みつけてくるリーシャさんだが特に何も思い浮かばないなあ……いや、あった!
「そうだ、ユイノさん。あ、他の二人も」
「なに~?」
「悩み事の相談は基本的に何時でもオッケーだけど、流石に寝室のベッドにダイブしてくるのはナシだよ。と言うかあの家に来るのがナシ」
「ええっ!? ユイノ、何をやってんの!」
リーシャさんは大声を出して立ち上がり、ユイノさんの肩を揺すった。その衝撃でケーキが喉に詰まったらしく、ユイノさんが目を白黒させる。
「もが! リーシャ、もぐ!」
「あわわ、ユイノちゃん、お茶!」
慌ててポリンちゃんがお茶の入ったコップを手渡し飲ませる。
「監督、それでユイノとは……」
「まあその時、俺は自分のベッドにいなかったので押し潰される事もなかったんだけど。犠牲になったのはあそこの二人さ」
そう言って俺は窓際のテーブルで食事をしているアイラさんマイラさんの姉妹を指さした。
「そうなんだ。って今度は何であのエルフたちが監督の家に!?」
リーシャさん突っ込みが忙しいな。試合でもその調子でスペースに突っ込みまくってくれる事を期待しよう。
「シャマーさんに教えて貰ったのがクラブハウスじゃなくて俺の家の住所だったらしいんだよ」
「はあそれで。シャマーらしいわ」
とそこでリーシャさんは納得のため息を漏らし座った。シャマーさんのオチをつける力は凄まじい。確かに『困った時のシャマーさん』だな。
「でもあそこの姉妹、可愛いよね~もぐもぐ」
ケーキによる窒息死の危険から生還したユイノさんが懲りずに食べ続けながら言った。
「そうだよね! マイラちゃん、だっけ? はポリンと同じくらいに見えるよ。ショーキチお兄ちゃん、マイラちゃんって何歳なの?」
ポリンちゃんてばなんてセンシティブな事を! 君と彼女は恐らくチームで最も年齢差のある二名だぞ!?
「さ、さあ? 幾つだっけな~」
俺は確かに見た。マイラさんの長い耳が微かにこちらへ向くのを。その状態ではそう応えるしかない。
「さあ、じゃないわよ。監督なのに把握してないの?」
リーシャさん今は追求の手を緩めて欲しい。
「そういうフィジカルのデータはザックコーチに任せているからさあ。でもポリン、君と同い年くらいの子が一名いるよ。レイさんって言うナイトエルフなんだけど」
「ウチのこと呼んだあ?」
話を逸らそうとポリンちゃんに話を振った俺の耳元で、話題の本エルフの声がした。
「わあ! レイさん!?」
「拙者たちもいるでござるよ」
「いるっす!」
そこにはナイトエルフ三娘がいた。地上のエルフ達が好むような緑の衣服にエルフ細工のアクセサリーと、三者ともすっかりあか抜けた格好になっている。
「あ、来たんだ! なんかみんなすっかりと……」
「地上のエルフっぽくなった? ショーキチ兄さん好み?」
「王城やら劇場やら見学して完全にエルフを理解したでござる」
「お登りさんしてきたっす!」
この三娘のテンポの良い喋り、僅か数日だが懐かしく感じるな。
「ショーキチおにいちゃん……」
ふと、遠い目で三者を見つめる俺の袖をそっと引っ張る存在がいた。
ラビンさん特製の生クリーム(と言うと一瞬、怪しい想像が浮かぶが決してラビンさんの身体から出たものではない)たっぷりケーキを頬張りながらユイノさんは言った。
「何よ、露骨に」
「だって一週間くらいお預けだったんだも~ん」
「ユイノちゃん、ほっぺにクリームが付いてますよ?」
やや苛立つリーシャさんに満面の笑みのユイノさん。その頬についたクリームをポリンちゃんがナプキンで拭った。
時刻はまだ宵の口。リーシャさんとユイノさんの森林警護官の勤務期間は昨日で終了し、いよいよ本格的にサッカードウ選手として再始動する時期に突入していた。故に練習もいつもより早くに終了し、今日はもうこんな時間に夕食にありつけていたのである。
逆にポリンちゃんの方は今日一日をかけて、ご足労頂いた親御さんに説明会をしたり契約書を交わしたり、と練習には参加しない日になった。明日は明日で学校見学がありそれで問題なければまもなく入学。練習に参加するのは授業が終わった後や学校の休日の日、という事になるので会える時間も減る。
ちょっとしたすれ違いになってしまうが仕方ない。どうしようもない事を悔やむよりも今を大事にしよう。俺はそんな気分で目の前の光景を眺めていた。
「何よ、ニヤニヤして。監督もユイノに何か言ってよ」
「え? 俺からユイノさんに言うこと? うーん」
そう言って睨みつけてくるリーシャさんだが特に何も思い浮かばないなあ……いや、あった!
「そうだ、ユイノさん。あ、他の二人も」
「なに~?」
「悩み事の相談は基本的に何時でもオッケーだけど、流石に寝室のベッドにダイブしてくるのはナシだよ。と言うかあの家に来るのがナシ」
「ええっ!? ユイノ、何をやってんの!」
リーシャさんは大声を出して立ち上がり、ユイノさんの肩を揺すった。その衝撃でケーキが喉に詰まったらしく、ユイノさんが目を白黒させる。
「もが! リーシャ、もぐ!」
「あわわ、ユイノちゃん、お茶!」
慌ててポリンちゃんがお茶の入ったコップを手渡し飲ませる。
「監督、それでユイノとは……」
「まあその時、俺は自分のベッドにいなかったので押し潰される事もなかったんだけど。犠牲になったのはあそこの二人さ」
そう言って俺は窓際のテーブルで食事をしているアイラさんマイラさんの姉妹を指さした。
「そうなんだ。って今度は何であのエルフたちが監督の家に!?」
リーシャさん突っ込みが忙しいな。試合でもその調子でスペースに突っ込みまくってくれる事を期待しよう。
「シャマーさんに教えて貰ったのがクラブハウスじゃなくて俺の家の住所だったらしいんだよ」
「はあそれで。シャマーらしいわ」
とそこでリーシャさんは納得のため息を漏らし座った。シャマーさんのオチをつける力は凄まじい。確かに『困った時のシャマーさん』だな。
「でもあそこの姉妹、可愛いよね~もぐもぐ」
ケーキによる窒息死の危険から生還したユイノさんが懲りずに食べ続けながら言った。
「そうだよね! マイラちゃん、だっけ? はポリンと同じくらいに見えるよ。ショーキチお兄ちゃん、マイラちゃんって何歳なの?」
ポリンちゃんてばなんてセンシティブな事を! 君と彼女は恐らくチームで最も年齢差のある二名だぞ!?
「さ、さあ? 幾つだっけな~」
俺は確かに見た。マイラさんの長い耳が微かにこちらへ向くのを。その状態ではそう応えるしかない。
「さあ、じゃないわよ。監督なのに把握してないの?」
リーシャさん今は追求の手を緩めて欲しい。
「そういうフィジカルのデータはザックコーチに任せているからさあ。でもポリン、君と同い年くらいの子が一名いるよ。レイさんって言うナイトエルフなんだけど」
「ウチのこと呼んだあ?」
話を逸らそうとポリンちゃんに話を振った俺の耳元で、話題の本エルフの声がした。
「わあ! レイさん!?」
「拙者たちもいるでござるよ」
「いるっす!」
そこにはナイトエルフ三娘がいた。地上のエルフ達が好むような緑の衣服にエルフ細工のアクセサリーと、三者ともすっかりあか抜けた格好になっている。
「あ、来たんだ! なんかみんなすっかりと……」
「地上のエルフっぽくなった? ショーキチ兄さん好み?」
「王城やら劇場やら見学して完全にエルフを理解したでござる」
「お登りさんしてきたっす!」
この三娘のテンポの良い喋り、僅か数日だが懐かしく感じるな。
「ショーキチおにいちゃん……」
ふと、遠い目で三者を見つめる俺の袖をそっと引っ張る存在がいた。
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