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第七章

さらば旅の仲間

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「『こんなにね、こんなに大きな魚が!』ってダリオ? どうした?」
「(どうした? じゃありません! ステファニー、私アーロンで『ショウキチ殿に余計な気苦労をさせないように』って言いましたよね?)」
「(あー言ってたかな)」
「(言いました! じゃあ聞きますがあの娘は何なんです!?)」
「(あの娘はレイちゃんだが何か?)」
「(少しばかり、ショウキチ殿といちゃい……いまいち手を煩わせ過ぎじゃないかしら?)」
「(そうかあ?)」
「(横入りごめん。アレはね、余計な気苦労ではなくてショーキチが男として一皮剥けるのに必要な苦労だよ。まあ剥く方かもしれないけど)」
「(何を言っているのルーナ!?)」
 何を言っているんだろう? 小声なので分からないが、レイさんの為に文面を説明しながら聞き耳を立てるのは無理だ。
「サインしたでショーキチにいさん。あ、こっちにも今しとく?」
 そう言いつつ契約を締結したレイさんの手には、以前スワッグから貰った婚姻届があった。
「しません!」
 俺はそう強く言い放ちつつレイさんの署名を確認する。うん、ふざけていた割に抜けなく書けている。見ると、ナリンさん指導の元でリストさんとクエンさんも無事に終わっているようだ。
「ダリオさん、終わりました」
「あ、そうですか。ではこれで正式にアローズの仲間ですね。ようこそ地上エルフの王国に! そしてチームに!」
 何やらステフやルーナさんと揉めていたダリオさんだが、俺が声をかけると一瞬で会長の顔に戻りナイトエルフ三娘と力強い握手を交わした。この切り換えの早さをみんなに見習って欲しい……。
「じゃあ、ここからは別行動となる」
 俺はダリオさんに続いて三娘の前に立ち告げた。途端に三者三様で不安気な表情になるが続ける。
「大丈夫、お三方の地上での生活をサポートする特別なコーディネーターと契約して連れてきてるから。ではどうぞ」
「うっす! あたしはステフ、こいつはスワッグだ。宜しくな!」
「今後ともよろしくぴよ」
 ステフとスワッグが明るく挨拶をした。
「え? お二人がでござるか!?」
「おうよ。ショーキチとナリンのガイド兼護衛は今日ここで終わり。今からはおまえらの地上生活アドバイザーだ。大船に乗ったつもりでいいぞ~」
 ステフが無い胸を張って大口を叩く。だがそれだけの実力があるのは確かだ。プラス彼女たちとすっかり仲良くなっている事も考慮して、俺は密かにナイトエルフ三娘のガイドとして契約し直したのだ。
「マジっすか?」
「マジだぴい」
「あれ? ショーキチにいさんとナリンさんのガイド兼護衛なんかしてたっけ?」 
 レイさんの疑問にステフが古典的なズッコケポーズで応えた。
「してたわい! ガイド兼護衛でなければ何だと思ってたんだ?」
「旅の無聊を慰める為に雇われた芸人とか」
「或いは愛玩動物的な?」
 本気を出したナイトエルフってなかなかに容赦がないな。
「ちょっとショーキチ! 何とか言ってやってくれ!」
「じゃ、俺達急ぐんで。ナリンさんルーナさん行きましょう」
「おーい!」
 ステフが助けを求めているが、むしろステフに助けを求めて新たな契約を結びナイトエルフ三娘を託したのは俺だ。受けた以上は仕事を全う苦難を引き受けてして貰おう。
 俺は最後に軽くダリオさんに会釈し、会長室を後にした。

 俺とナリンさんの家は湖の東の森、ルーナさんは寮……はまだ全部は未完成だが出来ている部屋があれば泊まりたい、と希望したので三人揃って森へ帰る事にした。
 スワッグの馬車も俺のボートもこちらには無いので適当な船に渡し賃を払って同乗させて貰う。積み荷の間に何とか三人分の座るスペースを見つけると同時に船が静かに動き出した。
 車輪の音もステフが奏でる音楽もナイトエルフ達のお喋りも聞こえない静かな移動だ。湖を渡る風と故郷の空気に安心し切ったか、ナリンさんがやがてうつらうつらし始め最後には俺の肩に頭を預けて眠ってしまった。 その光景に、向かい側に座ったルーナさんが……どんな表情をしているか分からない。また長い前髪で顔を隠すようになったからだ。ただ髪の隙間から視線を感じる。もの凄く感じる。
 だが何を言ってもナリンさんを起こしてしまいそうだ。俺は黙って水面を眺め続けた。
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