D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第五章

イエス、尊み。ノー、タッチ

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『イエス、尊み。ノー、タッチ』
という格言(?)がナイトエルフにはあるらしい。これは例の「尊み略奪隊」のポリシーにもなっている言葉で、尊みを浴びること及びそれを受けて二次創作三次創作四次創作(そんなのあるのか!?)に勤しむことはイエス許可するであるが、その対象に触れるのはノー禁止という意味だ。
 しかし噂によるとレイさんの母親――『フィー』という名前で、リストさんとは別の尊み略奪隊の隊長だったらしい――はそれを破ってしまった。俺たちも補給で立ち寄ったイリスの村に住む男性と接触してしまったのだ。
 しかもそれが発覚したきっかけは、レイさんの父親でありフィーさんの夫でもある『フェル』さんが、自宅に隠された大量のラブレターらしきものを見つけた事だったという。
 そこからはその文書についてフェルさんが略奪隊の副隊長に相談、副隊長が憲兵と共にフィーさんを尾行、イリスの村で決定的瞬間を押さえて逮捕、という流れだ。
 フィーさんはその件については一切弁明を行わず略奪隊の隊長を解任され、フェルさんとは離縁しないまでも別居。レイさんの兄と弟をつれて家を離れてはや5年……と。
 その件で最もとばっちりを受けたのはレイさんだ。もともと将来を有望されていた若手だったが、両親が別居して以来チームで孤立。それでも試合に出れば圧巻のプレーで点を取りチームに勝利をもたらし続けていたが、負けが込むとプレーが荒れチーム仲間との関係も悪化。三ヶ月ほど前には試合中に乱闘騒ぎを起こし、所属する若手チームにも参加しなくなっているという。
 今日のイベントはそんな彼女が久しぶりにフィールドに姿を表し、ボールを蹴った時間だったのだ。

「だからレイさんについては口が悪い連中は『消えた』とか『都市伝説』とか呼んでいたっす」
 クエンさんはそんな言葉で説明を閉め切った。
「驚いた」
 メモを取りながら聞いていた俺は思わず呟いた。
「クエンさん結構、説明上手ですね」
「そこかよ!」
 ベッドの上で携帯ゲームをやっていたステフが突っ込む。お前、聞いてないようで聞いていたな?
「いや、よく喋るのはリストさんの方だったから」
「そうなんでござるよ~。拙者、『喋り過ぎるタイプ空気が読めないのコミュ障』でたくさん喋る割に伝わらなくて。その点、クエンは要点をまとめるのも上手くて尊敬するのでござる」
「そんな、照れるっす」
 リストさんが肩をツンツンするととクエンさんが照れる。なかなか和む風景だ。……は! これが『尊い』てやつか!? 知らんけど。
「しかしそうなると、そういう選手をチームに迎えるべきか、迎えるとしたらどうやって説得するかが問題になるっすね。ナリンさんはどう思うっすか?」
 俺に褒められて気を良くしたクエンさんが進行役を買って出てナリンさんに話を振った。
「うぅ……」
 当のナリンさんはタオルの様なもので顔を押さえて明後日の方向を見ていた。
「どうしたでござるナリス殿!?」
「ナリンでず。だびじょうぶでずので……。ぞぢらでばなじをづづげでぐだざぃ……」 
 ひたすらに顔を背けなんとか声を振り絞るが、どうも彼女は泣いているようであった。ってあのナリンさんが!?
「ああ、これはデイエルフの弱点だから気にしてやんな」
 ステフが新しい布をナリンさんの頭から被せ隠した所で、俺もある事に思い当たった。
「ああ、家族別居の件かー」
「なんでござるか!?」
「ちょ、リストパイセン! ナリンさんの家庭の事情だったら聞いたら悪いっすよ!」
 事情が分からないナイトエルフのコンビに、俺はデイエルフの弱点――家族間の可哀想な話に弱い――を説明した。
「ほほう、デイエルフのみなさんの性癖はそちら……と」
 リストさんは関心するように頷きながら何かにメモを書き残す。
「リストさん勉強熱心ですね~。ってそっちは良いから! 今はレイさんの話です!」
「はっ! 確かにそうでござる」
「レイさんは本来は良い子っす。どんなサッカーをするにしても輝く選手っす。でも今の状態状況ではどうなるか分からないっすよ」
 二名がそう言い一同が腕を組んで考え込むと、ステフがベッドの上に立って言った。
「アタシはサッカードウ知らんけどさ。結局、監督のショーキチがどうしたいか? じゃないのか?」
 その言葉を聞いて全員の目が俺に集まる。
「俺は……俺はレイさんを諦めると心残りがずっと消えないと思う」
 クエンさんのように上手く言えるか分からないが、話ながら考える。
「一つには違和感がある。今、聞いた背景とさっき見た楽しそうにボールを蹴る姿。それが一致しないんだ。あの子がチームメイトに当たるとか試合で乱闘するとかそんな風景が想像できない」
 俺の目には、レイさんがボールと戯れる姿が天使に見えた。『ファンタジスタの背中には見えない羽根がある』という表現があるが、まさにそれだ。
 もっとも、天使と悪魔が共存しているようなファンタジスタも、サッカーの歴史上にはたくさんいたが。
「もう一つには、そんな境遇で消えてしまいそうな選手を助けたい。全てのそんな選手を救うなんて不可能だし傲慢だけど、知ってしまった以上は放ってはおけない。だから……」
 俺は全員の顔を見渡して言った。
「俺のワガママに少しだけ付き合って欲しい。二日だ。もう少し背景を詳しく調査して説得を試みる。それで駄目なら諦めてここを去り、次の目的地へ向かう。どうかな?」
 そう訊ねてみたが、返答は聞くまでもなかった。
「そう言うと思ったぴい」
「だな!」
「いくらでもおづぎあいじまず!」
「拙者も将来性のある後輩を救いたいでござる」
「さっそく、役割分担をしないとっすね!」
 帰って来たのは心強い言葉だった。ありがとう、と礼を言いながら俺は自分の考えを改めた。今日は何をやっても裏目に出る日、などではなかったのだ。
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