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第五章
ヨミの世界
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大洞穴に入りナイトエルフの居住地ヨミケへ向かう行程は、言葉通り黄泉の道の様に暗鬱とした旅路だった。何故かと言うとナイトエルフの少女たち曰く『ヨミケ最強の両刀使い』のリストさんと影の様に寄り添う従者クエンさん、そして我らがステフとスワッグという凄腕の護衛がついてなお、それは危険な道のりだからだ。
理由は二つある。一つはその少女たち及び俺といった戦闘力が低い集団を、前述の数人で守りながらだから。そしてもう一つは大洞穴もまた、ステフのいた『狭間の世界』と同じく余所の世界から様々な物や化け物が漂着する予想不可能な場所だからだ。
この世界の理を外れた生物がまるで闇そのものから産まれるかのように突如、現れる。『狭間の世界』との違いはその漂着物がゾンビ、悪魔、エイリアンといった『暗闇が似合う物』がメインという所だ。
ゴルルグ族の秘密主義やナイトエルフの特殊な性質は、それらの戦いで育まれ(てしまっ)たものだという。むしろ前者に至ってはゴルルグ族そのものが、こことは違う異世界から漂着して定着した種族という説もあるという。
そしてリストさんがスラスラと日本の漫画の題名をあげた理由もそれだ。彼女たちもステフと同じく別世界の商品を楽しんでいる。そしてサッカードウが伝わる前からサッカーを知っていた。だから彼女は俺の事を『サッカーの監督』と呼んだのだ。ショーキチとは呼んでくれないけど。
話しがずれた。ともかく、先に語った理由によりベラベラと楽しくお喋りしながらヨミケへ向かう、という訳にはいかなかった。俺たちは口をつぐみ足音を控えながら、なんとか静かにヨミケまで歩いた。
着いてしまえばヨミケの街は予想に反して明るく美しい場所だった。と言っても暗い事には違いない。地下の居住地は永遠の夜の街だ。だがナイトエルフさんたちはその街路や建築物を鮮やかなガス灯と色とりどりのネオンで飾っていた。
空間に限度があるので高い建物はあまりない。街は横に、隙間無く家屋を並べながら広がっており、間を縫うように石を削った通路が走っている。俺たちは店から音楽が漏れ聞こえる街路を通って、ある場所へ向かっていた。
「思ったよりご機嫌な街ぴよ」
尊み略奪隊の皆をトモダチ手帳に加えたスワッグが上機嫌で言った。なおチラッと見せて貰ったが、ナイトエルフのお嬢さんたちの書き込みはもれなくイラスト付きだった……なんか懐かしいな。
「アホウがラスベガスならここはニューオリンズだな~」
ステフが俺にだけ分かるような例えを持ち出して言う。
「確かに。同じ歓楽街でも少し大人な感じするなあ」
聞こえる音楽もアイドルミュージックからジャズやスカになった気がする。
「私たちとは随分、違った文化を育んでいるんですね」
ナリンさんは興味津々、といった風で街並みや行き交うナイトエルフさんたちを眺める。
「左様。我々は追われてここへ流れ着いたが、今では築き上げたこの街を誇りに思っているでござる」
リストさんが誇らしげに言った。
「追われて……ですか」
ナリンさんが暗い顔で呟いた。
「ああ、すまぬ! そんなつもりで言ったのではないのだ。ナリス殿、そう深刻にならんでくれ」
リストさんが慌ててフォローする。豪快そうに見えて意外と繊細な気遣いもできるんだな。ナリス殿じゃなくてナリンさんだけどな!
「でも正直、その部分は気になりますね。いや部外者の俺が聞いて良いものか分かりませんが」
そうなのだ。俺は希望としては、ナイトエルフさんの中にも良い選手がいればアローズに加えたいと思っている。だが彼女たちの方に何か精神的なしこりがあるとすれば、それも叶わないだろう。
「うむ……。確かに関心を持たれても当然だ。だがそれは長の口から直接、聞いて頂きたい。ほれ、もう着いたぞ」
リストさんは俺の言葉に少し考え込んだが、すぐに前を見ていった。そこには秘密基地めいた建物が鎮座していた。
「ただいまでござる!」
門番らしきナイトエルフに挨拶するリストさんに続いて中へ入ろうとする。が、隣を通る際に気づいたが「それ」はナイトエルフではなく、特撮ヒーローの等身大フィギュアだった。
「ほっほ! これは宝の山だぞ~」
ステフは嬉しそうにはしゃいだ。実際、建物はこの街でお馴染みのネオンや看板で飾られていたが、中の通路を進むにつれて並べられている物はジョークグッズめいたものや分厚い本から、アニメグッズや漫画本等へ変わっていった。
ヴィレッチバ○カードからとら○あなやま○だらけへのグラデーションと言えば通じるだろうか? ともかく、その最中で略奪隊の少女たちは何人かづつ思い思いの場所で離脱して行き、最奥まで俺たちを案内するのはリストさんだけになっていた。クエンさんは? と言うと街へ入った際に一人先行して俺たちの面会をとりつけに消えていた。
「ようこそっす。長も楽しみにお待ちっす」
と、最後にはそのクエンさんが待機する扉の前についた。場所から言ってもその言葉からしても、ここが「長」とやらの居場所だろう。
「ありがとうございます。それでは……」
俺たちは少し身なりを整え、長との面会へ向かった。
理由は二つある。一つはその少女たち及び俺といった戦闘力が低い集団を、前述の数人で守りながらだから。そしてもう一つは大洞穴もまた、ステフのいた『狭間の世界』と同じく余所の世界から様々な物や化け物が漂着する予想不可能な場所だからだ。
この世界の理を外れた生物がまるで闇そのものから産まれるかのように突如、現れる。『狭間の世界』との違いはその漂着物がゾンビ、悪魔、エイリアンといった『暗闇が似合う物』がメインという所だ。
ゴルルグ族の秘密主義やナイトエルフの特殊な性質は、それらの戦いで育まれ(てしまっ)たものだという。むしろ前者に至ってはゴルルグ族そのものが、こことは違う異世界から漂着して定着した種族という説もあるという。
そしてリストさんがスラスラと日本の漫画の題名をあげた理由もそれだ。彼女たちもステフと同じく別世界の商品を楽しんでいる。そしてサッカードウが伝わる前からサッカーを知っていた。だから彼女は俺の事を『サッカーの監督』と呼んだのだ。ショーキチとは呼んでくれないけど。
話しがずれた。ともかく、先に語った理由によりベラベラと楽しくお喋りしながらヨミケへ向かう、という訳にはいかなかった。俺たちは口をつぐみ足音を控えながら、なんとか静かにヨミケまで歩いた。
着いてしまえばヨミケの街は予想に反して明るく美しい場所だった。と言っても暗い事には違いない。地下の居住地は永遠の夜の街だ。だがナイトエルフさんたちはその街路や建築物を鮮やかなガス灯と色とりどりのネオンで飾っていた。
空間に限度があるので高い建物はあまりない。街は横に、隙間無く家屋を並べながら広がっており、間を縫うように石を削った通路が走っている。俺たちは店から音楽が漏れ聞こえる街路を通って、ある場所へ向かっていた。
「思ったよりご機嫌な街ぴよ」
尊み略奪隊の皆をトモダチ手帳に加えたスワッグが上機嫌で言った。なおチラッと見せて貰ったが、ナイトエルフのお嬢さんたちの書き込みはもれなくイラスト付きだった……なんか懐かしいな。
「アホウがラスベガスならここはニューオリンズだな~」
ステフが俺にだけ分かるような例えを持ち出して言う。
「確かに。同じ歓楽街でも少し大人な感じするなあ」
聞こえる音楽もアイドルミュージックからジャズやスカになった気がする。
「私たちとは随分、違った文化を育んでいるんですね」
ナリンさんは興味津々、といった風で街並みや行き交うナイトエルフさんたちを眺める。
「左様。我々は追われてここへ流れ着いたが、今では築き上げたこの街を誇りに思っているでござる」
リストさんが誇らしげに言った。
「追われて……ですか」
ナリンさんが暗い顔で呟いた。
「ああ、すまぬ! そんなつもりで言ったのではないのだ。ナリス殿、そう深刻にならんでくれ」
リストさんが慌ててフォローする。豪快そうに見えて意外と繊細な気遣いもできるんだな。ナリス殿じゃなくてナリンさんだけどな!
「でも正直、その部分は気になりますね。いや部外者の俺が聞いて良いものか分かりませんが」
そうなのだ。俺は希望としては、ナイトエルフさんの中にも良い選手がいればアローズに加えたいと思っている。だが彼女たちの方に何か精神的なしこりがあるとすれば、それも叶わないだろう。
「うむ……。確かに関心を持たれても当然だ。だがそれは長の口から直接、聞いて頂きたい。ほれ、もう着いたぞ」
リストさんは俺の言葉に少し考え込んだが、すぐに前を見ていった。そこには秘密基地めいた建物が鎮座していた。
「ただいまでござる!」
門番らしきナイトエルフに挨拶するリストさんに続いて中へ入ろうとする。が、隣を通る際に気づいたが「それ」はナイトエルフではなく、特撮ヒーローの等身大フィギュアだった。
「ほっほ! これは宝の山だぞ~」
ステフは嬉しそうにはしゃいだ。実際、建物はこの街でお馴染みのネオンや看板で飾られていたが、中の通路を進むにつれて並べられている物はジョークグッズめいたものや分厚い本から、アニメグッズや漫画本等へ変わっていった。
ヴィレッチバ○カードからとら○あなやま○だらけへのグラデーションと言えば通じるだろうか? ともかく、その最中で略奪隊の少女たちは何人かづつ思い思いの場所で離脱して行き、最奥まで俺たちを案内するのはリストさんだけになっていた。クエンさんは? と言うと街へ入った際に一人先行して俺たちの面会をとりつけに消えていた。
「ようこそっす。長も楽しみにお待ちっす」
と、最後にはそのクエンさんが待機する扉の前についた。場所から言ってもその言葉からしても、ここが「長」とやらの居場所だろう。
「ありがとうございます。それでは……」
俺たちは少し身なりを整え、長との面会へ向かった。
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