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悪が舞い降りた日

9話目 間一髪

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『イイコねぇえ…ほら、タカいタカいぃ…』

異形の女はビアンカを持ち上げ、腰を両手で包み込むように持ったまま締め付けるように上下に揺さぶり続ける。

『っ!う、あっ…うぅ』

ビアンカは腰を掴まれている異形の女の手を剥がそうと抵抗するも背中に負った傷と腰を掴まれ力を加え続けられていて思うように抵抗出来ないでいた。ビアンカの真下の影に背中から出ている血が滴り落ちている。

『ビアンカサマ…!』

ビアンカが召喚した優民達がビアンカを助ける為に一斉に異形の女に攻撃を仕掛けた。

『はぁい、髪隠し』

そう言うと異形の女の髪の毛が広がると優民達を全身包み込み一気に締め付ける。締め付けられた優民達は草となって散って行った。

『っ?!そんなっ…!』

ビアンカは目の前で一瞬で起こった出来事で消滅した優民に絶望する。

(またホイッスルを吹けば優民達は蘇る…。でも…。うっ!ゆ、揺さぶられてホイッスルは動いていて…。か、身体が痛くて上手くホイッスルを取れないっ…!)

『さぁ、おツギはぁあアナタねぇええ』

異形の女はビアンカを高く持ち上げ地面に叩きつけようとしていた。ビアンカのツインテールが宙を舞う。

『くっ!嫌…』

ビアンカは傷を負った中で抵抗を見せるも覚悟して叩きつけられる地面に視線を合わせ歯を食いしばって叩きつけられるであろう衝撃に耐えようとしている。


その時


異形の女の後方にある髪の毛の塊からリリムが突き破って異形の女にめがけて突進して来る。

『闇鬼夜行』

リリムは一瞬にして異形の女の目の前に背中を見せ棍棒を振り抜いたような格好で立っていた。

『えぇ?ナニぃ?ナンなのよぉぉ』

目の前にいるリリムに気がついた異形の女はビアンカを叩きつけようとした手を止めリリムを見る。

『リ、リリム?!よかっ…』

ビアンカは目の前にリリムが現れ驚きと嬉しそうに反応した次の瞬間


ドドドドドドドガガッ!!!


異形の女の背中から無数の白い衝撃が生まれた。

『ギィヤヤヤャー!!!!』

異形の女は痛さで仰け反り、天を仰ぎそして倒れ込みビアンカをその場に落とす。

『痛!リ、リリム?!』

『おいおい、大丈夫かぁ?』

リリムは棍棒を担ぎ鼻をほじりながら倒れているビアンカにニヤニヤしながら声をかける。

『ちょっと!危ないじゃないの!加減しても良かったよね?!』

『うるせぇな。助けたのにブヒブヒ言うんじゃねぇよ』

その言葉を聞いてビアンカは怒ろうとしたものの

(く、くく悔しいけど確かにその通りだわ!)

『…くっ!…あなた、ケガは大丈夫なの?』

『あぁ?あの時叩きつけられた地面が草だったからな。でもあばら骨にヒビが入ったぜ』

(ふぅー。奴がビアンカに夢中になっていてよかったぜ。闇鬼夜行は速度よりも打撃中心の技。後ろからでも奴が反応するかと思ってたらあのクソ長え髪が視界を遮っていて背後を良く見れてなかったのとビアンカに夢中だったからな。バカで良かったぜ)

暫く倒れていた異形の女がゆっくり起き上がる

『ウゥ、ウッ、ウウゥゥゥアアアアア!よくもぉぉぉおお!!ワルイコォねぇぇえええ!』

激昂した異形の女は髪の毛が地面に這うように広範囲に広げ

『髪の領域ぃぃ!』

2人が反応する前にあっという間にリリム、ビアンカの足元まで広がり地面は髪の毛の黒色一色に染まった。

『な、何よコレ!気味が悪いわっ…!』

ビアンカはオドオドしながら四つん這いで逃げまわる。

『さぁてさぁて、何が始まるのやら』

リリムは髪の毛で黒色に染まった地面に向けて鼻クソを投げ捨てた。

二人は黒色の地面から異形の女に視線を向けるとそこには異形の女はいない。

『えっ?いないの?!どこに?』

ビアンカは辺りを見渡す。ひと通り見渡し安堵したのも束の間、背後に異形の女が髪の毛の地面から出てきて細長い腕の爪で引っ掻こうとする。

ガキィン!!!

『キャッ?!!』

ビアンカは背後からの異形の女の攻撃に驚いたのではく何か硬いもの同士がぶつかって発生した音に驚き振り向いた。

そこにはリリムがビアンカを攻撃しようとした異形の女の爪を棍棒で受け止めていた。

『おいっ…早く、助けろよな…』

『ワルいコォね…オモチャをトリアゲェないとぉおおお』

異形の女はリリムに攻撃を防がれた手でそのままリリムの持っている棍棒を握りしめ体格差を利用して覆いかぶさるようにして体重をかける

『チィッ!無理ゲーだぜ!こんなの!!このままだとゲーしてオーバーになっちまう!』

(あ、あばら骨が痛ぇ…!ビキビキあばら骨が鳴ってるのが分かる…。このままこの体制で潰されちまうと腰の骨が折れちまってジ・エンドだな…チッ!こいつ…力がバカ強くて、押し返せねぇっ…)

ビアンカはリリムが不利な状況を見て助けようと必死に考えていた。

(ど、どどどうしましょ!中途半端な距離で素早く使える攻撃……。っ!あったわ!攻撃というか……初めて使うけど、とりあえず怯んでくれるだけで良い!当たるだけで良い!!)

ビアンカは素魔法の中にあるアプリを起動し、剣先を異形の女の脚に向け

ビリビリビリ!

剣先から小さな電流を出した。そして電流は一瞬で狙った異形の女の脚に当たり

『ギャッ?!』

『痛ぇ?!』

異形の女はよろめき、感電したリリムもよろめいた。

『リリムッ!今よっ!!』

ビアンカは間髪いれずに叫ぶ。

『チッ、おまっ…!…ワーッてるよ!!』

リリムは背後のビアンカを一瞬睨んだが状況を理解し、よろめいている異形の女に攻撃を仕掛ける。

ガキィン!!

『あっ?』

しかしリリムと異形の女の間に地面から髪の毛が出てきて盾となって攻撃を防いだ。

その間に異形の女は体制を立て直し足元から出てきた髪の毛に全身を包み込むように巻かれ引っ張られて地面に潜る。

『チッ!!クソがっ!』

リリムは攻撃を防がれ悔しがり地面を武器で叩いて唾を吐いた。

『リリムッ!大丈夫なの?!』

四つん這いになっていたビアンカが何とか立ち上がりリリムに近寄る。

『おい、後で覚悟しとけよ。……お前一体何を使ったんだ?電気何か使わねぇだろ?』

『あれはね、素魔法の中にある常用生活アプリよ。火、水、風、電気が使えるアプリ。火、水でお料理とか出来るし、風なら洗濯物を乾かせる、電気なら点灯、消灯とか。起点を聞かせて電気を攻撃に使ったの。小さな力でも使えるかなと思って』

『な~るへそね。流石だな。普通は思いつかないぜ。お前、そのアプリの☓で☓☓☓☓したんだろ。だから転用思いついたんだよな。ありがとよ』

リリムは満面の笑顔で言った。

その言葉と笑顔を受けっとたビアンカは真っ赤になり

(なななな何よ!何この感じ…その笑顔は…!!嬉しいけど……今サラッととんでもない事も暴露されちゃったんだけどっ!!!)

嬉しい感情と暴露されて焦る感情が複雑な感情となってその場でビアンカはあたふたしていた。

 
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