異世界をつなぐ契約者

楓和

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第2章・第7話「心臓飛び出しそう」

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 ロックさんとネネコ様が元気になったので、私達はある山に向かってます。
チュウガン村はジュウビ達が行って色々な情報を集めてくれたので、もう寄る必要がなくなったし、ザンジーさんとパウヒュ様との結合を解除する方法は、ミズリ様が自分に任せてくれと言うので…あとはザンジーさんを見付けるだけ。

 「パウヒュが飛べないとすれば、ガイカンとチュウガン村との境にある、そのカンサン山という所にいる可能性は高いな。」

みんなで話し合い、カンサン山に目標を定めました。
そうそう、私が寝てる間にミズリ様の身に起こった出来事がビックリ。
どうやら神獣様の力を得たようで…

 《光の記憶を頂いた》

ミズリ様はそう言って、私達に話してくれました。


 《われら精獣を作った神獣・コーヌ様…》

神獣・コーヌ様の記憶の一部と思われる光の球は、突如ミズリ様の眼前に現れて頭の中に入り込んだんだって。
『言葉では無く映像の様に記憶が流れ混んで来た』とミズリ様は言ってました。私がミズリ様と契約して、ミズリ様と私の思いがつながってる時と似てるって。
そしてその記憶は、まるで元からあった記憶の様に感じるそうです。不思議な事ですね。
そしてミズリ様は知ったんですよ。ミズリ様達精獣を作った光の精獣であり神獣でもあるコーヌ様は、今いるこの世界の人間じゃない異世界って所から来た人間が作った生き物なんだって事を。
ミズリ様達は神獣様が作り、異世界から来た人が神獣様を作った…何か巡り巡ってるって感じ。
でも、その異世界って所から来た人は、一体どんな人だったんでしょうか?
生き物を作るって…何なんでしょうか?

 《それでも私はコーヌ様に感謝する》

ミズリ様はそう言ってました。
自分が紛い物だとしても、そのおかげで私に会えたって…嬉しくて泣きそう。例によって鼻水出ました。
そうそう。それとはまた別で、ジュウビ達がザンジーさんの家で見付けた書物やアイテムが、これまた凄い!…らしい。まぁそれはまた追々。

 「精獣はこの世界に十三存在する。全てがそろった時…異世界の扉が開く。」

カウム様達が文献を解読して得た情報。ミズリ様の話しと重なる所があります。
異世界が実在してて、そこから来た人も実在する。だから神獣様を作ったというのも真実味があるでしょ?あと…

 「ただし神獣が認めない場合はその限りではない。」

つまり精獣様全てがそろっても、神獣様が許さなければ異世界の扉は開かない。
まぁそうだよね…って言うか、異世界に行ってどうするんですかね?

まだまだ驚く情報はたくさんあるけど…中でも私が気になったのは、その神獣様についての記述で…

 「神獣は全ての精獣を服従させる事は出来ない。何故なら神獣が違えた時、誰かが止めねばならぬからだ。」

やっぱりこの記述をしたのって…神獣様を作った異世界の人かな?色々考えてたんだろうな、きっと。
それにしてもザンジーさん、よくそれだけの本を集めましたよね。尊敬します。
ただこの事をロックさんは知らなかったんだって。多分だけど、ザンジーさんは読めなかったんじゃないかな。カウム様達じゃないと解読できなかったみたいだから。
けど、ネネコ様が一緒に居たのに、何で解読を頼まなかったんでしょう?そこ謎です。
でも本当にザンジーさんは凄いっ。えっと…それに比べて愛弟子さん…

 「ジュウビ~、イオンちゃ~ん、疲れたよ~。」

また泣き言ですね。

 「ロック、日が暮れるぞ。最低でもこの川の上流まで行こうと決めただろ。」

呆れるようにジュウビが言ってる。まぁ確かにロックさん…情けない。

 「飛ぼうよー、飛べば早いよー。」
 《アンタ、ジュウビ達の話しを聞いてなかったの?》

ネネコ様が言ってる事…それは『長時間の獣甲は契約者の命を削る』という記述があった事です。
逆に言えば、短時間なら何の問題もない…って事になる訳だけど。

 「みんなが疲れているなら、俺は別に構わないが…」

ジュウビがこっち見た?

 《ジュウビはお前を気遣っているんだ》

え?そうなんですか?

 「私は全然大丈夫っ。それに獣甲して飛ぶのは駄目だと思うよ。ここまで来ると、どこにガイカン兵の目があるか分からないでしょ?」
 「そうだな。ふぅ…イオンの方がしっかりしてる。」

ジュウビ、今度はロックさんを見た。かなり冷たい目で。

 「わ、分かったよー。」

ロックさん、やっぱり情けない。

 「ったく。仕方ない、少しだけだ。少しだけ休もう。」

何だかんだ言って、ジュウビって優しいんだよねぇ。


 「ミズリ様、お願いします。」
 《うむ》

ミズリ様は空間に水を発生させてくれます。私はそれを器に入れて、皆に配る役。
この器、実はザンジーさんの隠し部屋からジュウビが持って来たアイテムのひとつで、普段はペッタンコになってるんだけど、指先でちょっと捻ると広がって器になるの。凄いよね、どうなってんだろ?

 「くぅ~…うまい!」

ロックさん、まるでお酒飲んでるおじさんのよう。

 「ロックはおっさんっぽいよな。そういや何歳なんだ?」

私もそれ聞きたかった。

 「うるせー。まぁ、お前さんらよりは上だがな。」
 《こう見えてまだ十七よ》
 「早っ!もうちょっと引き延ばそうよー。」
 《ふぅ》

ネネコ様…ロックさんのお相手、ご苦労様です。

 「何だ、まだ十七か。もっといってるかと…。」
 「その割に敬語じゃねぇのは何でだ?!」
 「いや…あんまり敬意を払えないというか…」
 「酷くねっ?!」

うーん、私に言われても…。

 「それで…レイチはどうなんだ。」
 「あ、ああ。うーん……まだ目覚めてねぇみたいだぜ。」

ロックさんはベルト部分に付いてる、黄色い宝石に触れながら言いました。
レイチ様はミズリ様の力で正気を取り戻した。でも、ダメージがかなり大きかったみたいで、あれからずっと眠りについたまま。

 「ネネコさんの話しじゃ、深い精神の中では話せるとこまで回復してるんだと。」
 《アンタの精神力を栄養にして回復に向かってる。アンタはよく食べてよく寝る事ね》
 「それだよ!だから俺は疲れやすくなってる訳だ。分かるか?」

なるほど、そうきましたか。

 《でもそれならジュウビは常に疲れやすいはずだけどね》
 「う。」

ネネコ様、上げて下げる天才です。ミズリ様もそんなとこあるなー。

 《おい》

いや、ホントに。
そう言えばミズリ様、そろそろ宙に浮くコツを教えてほしいんですが。

 《そうだな………こんな感じだ》

最近言葉じゃなくて、画像を脳内に送り込んできますよね。これちょっと混乱するんですけど…。

 《だが慣れた方がいい。言葉より分かり易い事もある》

うー、分かりました。
で、肝心の宙に浮くコツですが…何となく分かりましたよ。まぁ要は念じる力ですよね?信じる力というか。

 「けど、少し疑問があります。強く念じれば宙に浮けるのなら、パウヒュ様でも飛べるんじゃないかと思うんだけど…。」
 《うーん、ちょっと違うんだよイオンちゃん》
 「リクウ様?」
 《基本の形というか、元になる能力があって、それ以上の事は念じようと信じようと無理なんだよねー。例えば私の身体は軽くて柔らかい。どれだけ念じても重くならないし、硬くもならないんだよー》
 「つまり元々の能力以上の事は念じても信じても無理って事ですか。」
 《そゆことー》

なるほど、納得。
それにしても色々な情報を得る事が出来ました。かなりの前進。
この調子でザンジーさんとパウヒュ様を見付け、二人を分けて、残りの精獣様を探しに行かないとね。

あれ?そう言えば何で全ての精獣様を見付けないと駄目なんだろ?こんなに居ればゾルドとかいう奴にも簡単に勝てるんじゃない?

 《実際に相対したカウムが全精獣の力が必要だと言う…それならそうなんだろう。恐らくゾルドという男は、神獣・コーヌ様と関係がある》

そ、そうなりますか。何かもう、大事過ぎて心臓飛び出しそう…。

 《何?!心臓が飛び出る?!そんな生物は見た事が無い。凄いな、イオン》

カウム様…今迄ずーっと黙っててそれですか…。ていうか、そんなキャラでしたっけ。
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