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第1章・第13話「あるかもしれないですね」
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凄まじいロックさんの過去…いえ、過去じゃなくて現在。
ロックさんはまだザンジーさんの事で気持ちが揺らいでる。きっと、後悔してるんです。あの時、無理矢理にでも城に行くのを止めれば良かったって…自分を責めてるんです。
「お、おい…」
え?…ジュウビ、なんで手拭いを?もしかして…
《イオン、鼻》
「ひぃいいい?!」
またですか。また鼻水ですか。きっとジュウビは心の中で私の事を『鼻水女』と名付けている事でしょうね。
《カウムがそう言ってたな》
ミズリ様…その反応は余計です。
「それにしても…分からない事がいくつかある。」
ジュウビがロックさんに聞こうとしてる事…それは多分…
「何故ザンジーは精獣と契約できた?しかも複数。」
うん、そう。それと…
「それと、お前はさっき『獣になった人間を知ってる』と言った。今迄の話しだと、ザンジーは獣になった訳じゃない…」
それ。ロックさんの話しだと、ザンジーさんは精獣の暴走で死んだ…って事よね。獣になったって表現はおかしいです。
「…さっきの話しには続きがある。」
ロックさんの表情がまた険しく…
「師匠は死んだ…ネネコさんの思考から、契約者が死ねば自動的に解約になり精獣は自由になる事が分かった。逆に言えば、解呪の儀以外で精獣が契約者から離れて行くのは契約者が死んだ時だけだ。」
そ、そうなんですね、ミズリ様。
《うむ、そうだな》
「あの時、レイチさんは離れて行った。その後パウヒュさんも出て来たんだが…そのままの姿じゃなかったんだ。」
「…それはどういう意味だ?」
「ネネコさんの推測だと、パウヒュさんは…師匠と混ざった。」
「それは獣甲…じゃないんだな。」
「違うぜ。あれは…生身が混ざり合ってたんだ。」
い、今なん…て…?
「なんだと?精獣と人が…混ざり合ったっていうのか?!」
「ああ…俺は見たんだ。レイチさんが離れた後しばらくして、城内が更にザワつき出した…そして城の壁をぶち抜いて出て来た獣…あれは………」
ロックさんの言葉が詰まりました。多分、大好きなザンジーさんの面影を残した何かが、出て来たんですね。
「体毛の色、手足の長さ…ネネコさんの記憶にあるパウヒュさんそのものだった。けどその顔は…師匠の顔に見えた。いや、俺が感じたんだ。間違いなく師匠さ。師匠の身体を乗っ取った寄生者がどうなったか知らねぇ。ただ、あれは師匠の身体とパウヒュさんが混ざった獣だったと…それが俺とネネコさんの見解だぜ。」
…酷過ぎるよ、こんなの。
「…それでロック、お前はそいつをどうする気なんだ?」
え?いきなり何を聞くの、ジュウビ?
「…師匠を、楽にしてやりてぇんだ。」
え…えと、それって…
《命を絶つ…そういう事だな》
ミ、ミズリ様?!
「あれはもう師匠じゃねぇ。パウヒュさんでもねぇ。あれは…居ちゃいけない者…だぜ。」
「そんな?!じゃあロックさんは師匠とパウヒュ様を倒すんですか?!」
あ。思わず立ち上っちゃった。
「倒す?いや…殺すんだよ。」
「だ、駄目ですっ!」
めっちゃくちゃでっかい声出ちゃった…。
《ふー、デカいな、声》
いや、念を押さなくても分かってますよ、ミズリ様。でも…
「お嬢ちゃん…イオンちゃんだっけ?」
「あ、はい。」
「あんたの気持ち…俺にだって分かるぜ。けど、それ以外ねぇんだよ。」
ロックさん…
「師匠が集めた本の中に、複数の精獣と契約した人間が、獣甲した後に体の一部が戻らなかった記述はあった…けど、今迄精獣と人間があそこまで混ざった記述はねぇ。」
「………無いんだ。」
「え?何だって、イオンちゃん?」
「じゃあ…あるかもしれないですね、混ざった獣様と人を戻せる方法が。」
「出たよ…。」
あれ?ジュウビ…少し笑ってる?
《まぁそうなるな。お前らしい》
えーと、ミズリ様…それは褒めてるんですよね?
《………もちろんだ》
間が少し気になりましたが…ま、当然ですよね!私、おかしな事は言ってないですもん!
「お…あ…」
ロックさん、あまりの嬉しさに目を回してますね。
《違うな、それは》
そうなんですか?まぁそんな事はいいです!とにかく…
「だから…一緒に探しましょう!ザンジーさんとパウヒュ様と、それと…二人を元に戻す方法を!」
「あ…え………っと…」
頭をかいてうつむくロックさん…何か少し、嬉しそう?なんじゃないですか?
「…うん…そうだな。そうかな。…うん、あるかも…な。そうだと…いい、な…。」
そう呟やいて何度もうなずいたロックさんの目から何か出てるのは…私の気のせいにしておきます。
ロックさんはまだザンジーさんの事で気持ちが揺らいでる。きっと、後悔してるんです。あの時、無理矢理にでも城に行くのを止めれば良かったって…自分を責めてるんです。
「お、おい…」
え?…ジュウビ、なんで手拭いを?もしかして…
《イオン、鼻》
「ひぃいいい?!」
またですか。また鼻水ですか。きっとジュウビは心の中で私の事を『鼻水女』と名付けている事でしょうね。
《カウムがそう言ってたな》
ミズリ様…その反応は余計です。
「それにしても…分からない事がいくつかある。」
ジュウビがロックさんに聞こうとしてる事…それは多分…
「何故ザンジーは精獣と契約できた?しかも複数。」
うん、そう。それと…
「それと、お前はさっき『獣になった人間を知ってる』と言った。今迄の話しだと、ザンジーは獣になった訳じゃない…」
それ。ロックさんの話しだと、ザンジーさんは精獣の暴走で死んだ…って事よね。獣になったって表現はおかしいです。
「…さっきの話しには続きがある。」
ロックさんの表情がまた険しく…
「師匠は死んだ…ネネコさんの思考から、契約者が死ねば自動的に解約になり精獣は自由になる事が分かった。逆に言えば、解呪の儀以外で精獣が契約者から離れて行くのは契約者が死んだ時だけだ。」
そ、そうなんですね、ミズリ様。
《うむ、そうだな》
「あの時、レイチさんは離れて行った。その後パウヒュさんも出て来たんだが…そのままの姿じゃなかったんだ。」
「…それはどういう意味だ?」
「ネネコさんの推測だと、パウヒュさんは…師匠と混ざった。」
「それは獣甲…じゃないんだな。」
「違うぜ。あれは…生身が混ざり合ってたんだ。」
い、今なん…て…?
「なんだと?精獣と人が…混ざり合ったっていうのか?!」
「ああ…俺は見たんだ。レイチさんが離れた後しばらくして、城内が更にザワつき出した…そして城の壁をぶち抜いて出て来た獣…あれは………」
ロックさんの言葉が詰まりました。多分、大好きなザンジーさんの面影を残した何かが、出て来たんですね。
「体毛の色、手足の長さ…ネネコさんの記憶にあるパウヒュさんそのものだった。けどその顔は…師匠の顔に見えた。いや、俺が感じたんだ。間違いなく師匠さ。師匠の身体を乗っ取った寄生者がどうなったか知らねぇ。ただ、あれは師匠の身体とパウヒュさんが混ざった獣だったと…それが俺とネネコさんの見解だぜ。」
…酷過ぎるよ、こんなの。
「…それでロック、お前はそいつをどうする気なんだ?」
え?いきなり何を聞くの、ジュウビ?
「…師匠を、楽にしてやりてぇんだ。」
え…えと、それって…
《命を絶つ…そういう事だな》
ミ、ミズリ様?!
「あれはもう師匠じゃねぇ。パウヒュさんでもねぇ。あれは…居ちゃいけない者…だぜ。」
「そんな?!じゃあロックさんは師匠とパウヒュ様を倒すんですか?!」
あ。思わず立ち上っちゃった。
「倒す?いや…殺すんだよ。」
「だ、駄目ですっ!」
めっちゃくちゃでっかい声出ちゃった…。
《ふー、デカいな、声》
いや、念を押さなくても分かってますよ、ミズリ様。でも…
「お嬢ちゃん…イオンちゃんだっけ?」
「あ、はい。」
「あんたの気持ち…俺にだって分かるぜ。けど、それ以外ねぇんだよ。」
ロックさん…
「師匠が集めた本の中に、複数の精獣と契約した人間が、獣甲した後に体の一部が戻らなかった記述はあった…けど、今迄精獣と人間があそこまで混ざった記述はねぇ。」
「………無いんだ。」
「え?何だって、イオンちゃん?」
「じゃあ…あるかもしれないですね、混ざった獣様と人を戻せる方法が。」
「出たよ…。」
あれ?ジュウビ…少し笑ってる?
《まぁそうなるな。お前らしい》
えーと、ミズリ様…それは褒めてるんですよね?
《………もちろんだ》
間が少し気になりましたが…ま、当然ですよね!私、おかしな事は言ってないですもん!
「お…あ…」
ロックさん、あまりの嬉しさに目を回してますね。
《違うな、それは》
そうなんですか?まぁそんな事はいいです!とにかく…
「だから…一緒に探しましょう!ザンジーさんとパウヒュ様と、それと…二人を元に戻す方法を!」
「あ…え………っと…」
頭をかいてうつむくロックさん…何か少し、嬉しそう?なんじゃないですか?
「…うん…そうだな。そうかな。…うん、あるかも…な。そうだと…いい、な…。」
そう呟やいて何度もうなずいたロックさんの目から何か出てるのは…私の気のせいにしておきます。
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