異世界をつなぐ契約者

楓和

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第1章・第5話「ジュウビとエデン」

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 ジュウビがカウムの神子となって六年が経った。

 「ジュウビ、こらっ。」

ジュウビが勉学に励まず、窓から外に飛び出すところを見付けたサクヤ。

 「やべっ。」

慌てて一階に飛び降りたジュウビは、玄関の庇で少し顔を擦った。着地して直ぐに走り出すジュウビ。
一部始終を見ていたエデンはジュウビの後を追って走り出す。
だがエデンは急に立ち止まった。なぜなら…

 「またか、ジュウビ。」

ジュートが見えたからだ。
物凄い速さで走り去ろうとするジュウビを、軽く走り出したジュートが前に回り込んで止める。

 「うぇぇ?!」
 「ジュウビ、勉学は大事だぞ。」
 「くそー。」

父親を前に、しゃがみ込むジュウビ。エデンは二本の尾を振ってジュートの足元にすり寄る。
ジュートに見付かっては仕方ない。逃げようとしてもいつも振り切れず、必ず捕まってしまうのだ。
ジュウビは観念した…ように見せかけ、ジュートの気が緩んだ一瞬のスキをついてダッシュした。

 「やれやれ。往生際の悪い…うおわっ?!」

ジュートは、後を追おうとした次の瞬間、その場にズッコケた。ジュウビは先刻しゃがんだ際にジュートの靴紐の左右を結び付けていたのだ。
エデンもジュウビの後に続く。エデンはジュウビが靴紐を結ぶ仕草を隠す為に、ジュートの足元に寄ったのだ。

 「あ、あいつら…」
 「ちょっと、何コケてるのジュート。」

苦笑いのジュートは、家から出てきたサクヤにボヤかれた。

 「いや面目ない。でも…あいつら良いコンビだな。それに…成長してるなー。」
 「何で感動してるのよ。」

息子達の成長に感動しながら靴紐を解くジュートと、呆れているサクヤ。

 「ま、行く所はあそこだから心配ない。エデンもついてるし。…今日のところは僕の負けだ。」
 「ほほぅ?じゃあ…代わりにあなたが家の手伝いしてね。」
 「え?!」
 「勉学の後、ジュウビとエデンには掃除と晩御飯の買物をお願いしてたの。だからジュート、お願いね。」

ニッコリするサクヤに、引きつった笑顔のジュートであった。


 マウバウ山。

 「やってやった。」
 《嬉しそうだな》

ドヤ顔のジュウビ。

 「これもカウムのおかげだな。」
 《いや、何でだ》
 「相手のスキを突くこと、教えてくれたろ?」
 《うーむ…間違ってはいないが》

カウムはエデンの方を見た。

 《エデン。こいつ捻くれてないか?》
 《…ばう》
 《そうか、やはり性格悪いか》
 「いや、言ってねーだろ!」
 《…》
 「エデン?」

ジュウビの顔の傷を舐めるエデン。ジュウビは家の二階から飛び下りた時に、顔にかすり傷を負っていたのだ。エデンが舐めると、ジュウビの顔の傷が消えた。

 「ありがとう、エデン。」

ジュウビとエデンは一緒に暮らしていた数年、ずっとこうして傷を治しあっていた。
今回の様なかすり傷なら、エデンがひと舐めすれば不思議と治るのだ。
逆に、エデンが顔や足に怪我をした時、ジュウビが傷を舐めると、これも不思議と治る。

 《いい相棒だな》

カウムが呟く。

 「母さんがこの現象を『相棒ミラクル』って名付けて、いつも笑うんだよなー。」
 《相変わらず豪快な奴だ》

サクヤに対して呆れるカウムだった。
こんな感じで、ジュウビ、カウム、エデンの関係は良好。三人(?)はいつもとりとめのない話しをして楽しんでいた。


そんな平和が大きく崩れる、その時が来る。


それは突然やって来た。
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