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第4章の6・二大格闘王と呼ばれ…の ぷち話し
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七月は空手着に着替える為、女子空手部の部室に急いでいた。
〝早くしないと学美が……あっ!〟
先に空手部にいる友達の所に行けば良かったのだが、焦っていたのか部室に来てしまった七月。これでは部室に入る為の鍵も無い。
「…扉、壊そうかな。」
おいおい。
「あー、七月ちゃんだっ。」
「本当に居た。」
「え?亜子ちゃん?それに優里。」
女子空手部にいる友達、亜子(あこ)と優里(ゆうり)が現れたので驚く七月。
「どうして?」
友達の多い七月だが、亜子と優里は女子空手部部員の中でも特に仲が良い二人だ。
「そんな事より、空手着がいるんでしょ?」
「不破さんを助ける為に。」
優里が部室の鍵を見せる。
「な、何で分かったの?!」
「私もビックリしたんだけど、誰かがこれを私の手に握らせて…」
そう言いながら七月にメモを見せる亜子。その間に優里は部室の扉を開けた。
そのメモには『部室へ。北神七月に空手着を渡せ』と書かれていた。
「私はこれ。しかもメモに部室の鍵が包まれてた。」
優里もメモを見せた。そこには『鍵を持って部室へ。北神七月が待つ』と書かれている。
「な、何これ?」
「とにかく…はいっ。」
亜子が自分のロッカーから空手着を出した。
「私のは朝練で鼻血付いたから。亜子の方で。」
「七月ちゃん、早く不破さんを助けてあげてっ。」
「…うん!」
こうして七月は空手着に着替え、学美のピンチを救ったのだった。
そして試合後、戦いを終えた七月と、七月に肩を借りた学美が亜子と優里の元へ。
「亜子ちゃん、優里、ありがと!」
笑顔の七月。
「もうスイッチ切れてる。」
「つまんなーいっ。」
「ちょっとちょっと。」
格闘王スイッチが入った状態の七月を期待していた二人に対し、苦笑いの七月。
「それにしても妙な話しだよね。」
理由を聞いた学美も話しに入った。
「おかげで助かったけど、そのメモって一体誰が…」
学美の言葉に三人とも首を傾げるが…。
「ま、まぁいいじゃない。私達の味方なのは間違いないみたいだし。結果良ければ全て良し!」
「そ、そりゃそうだけど…気になるだろ、普通。」
「深く考えない七月ちゃんと、深く考える不破さんっ。」
「良いコンビ。さすが二大格闘王。」
亜子と優里にそう言われ、意義があるのは七月。
「いやいや、学美の方が深く考えないよ。いい加減だし。」
「はぁ?どう考えてもあんたの方が適当だろーが。」
「学美なんて靴下を裏返しに履いてた事あるし。」
「ばっ!…そ、それ今関係ないだろ?!痛ててっ。」
猪野岡にやられた背中が痛い学美だが、ここは引けない。
「だ、だいたい七月なんか、箸の持ち方おかしいのに直さないだろーが!」
「あ、あれは子どもの頃ポンポンキッズでお箸の持ち方をやってて…それ観て覚えたんだからね!」
『ポンポンキッズ』とは、子ども向けの教育番組である。
「だからポンポンキッズが悪いのよ!」
「んな訳あるか!七月が間違えただけだろーが!でないとポンポンキッズ観てた子がみんな変な箸の持ち方してるわ!ウチョポンに謝れ!」
『ウチョポン』とは、『ポンポンキッズ』のマスコットキャラである。
「ごめん!でも学美だって鉛筆の持ち方間違ってたよね?!おばさんに怒られて必死で直したって言ってたでしょ!」
「あ、あれはウチョポンが…!」
「ま、学美もか!」
ここでついに二人の意見が一致した。
「も、もしかして本当に…」
「ウチョポンが悪い…」
真剣な顔で納得し合う七月と学美を見て、『いや、違うだろ』と心の中でツッコむ亜子と優里であった。
「えーと…七月ちゃん達って…」
「やはり良いコンビ。」
その頃、亜子と優里の手にメモを握らせた男は…物陰からある女性を見ていた。
「…なるほどね。」
掲示板に書かれている文言を確かめに来た流香。
第一試合の空手対決の部分に小さく『二対二の同時勝負』と書かれていた。
そして自分が出る剣道対決の部分にも、これまた小さい字で『防具は無し』と書かれている事も確認。
「ふぅ~…そっちがその気なら、とことん付き合ってあげる。」
口の端を吊り上げてニヤリとする流香を見て、男は自分の胸を押さえた。
〝ええ女は悪そうな顔してても…ええなぁ〟
そう、亜子と優里にメモを握らせたのはこの男、高瀬であった。
「はぁ、はぁ…」
「…高瀬くん?」
「はっ!…はは。」
物陰から出て来る高瀬。
〝さすが流香殿、我が気配に気付くとは…〟
いや、単に流香見て『はぁはぁ』興奮してたから見付かっただけだ。
「さっきはご苦労様。」
「お安い御用ですだ。」
流香は、空手着が一刻も早く七月の手に渡るよう高瀬に依頼したのだった。
高瀬にしてみれば、七月が空手部の亜子、優里と仲が良い事はとっくの昔に調査済みだったし、七月のサイズも把握していた。
あとはメモを書き、忍び足で亜子と優里、それぞれの手にメモを握らせるだけであった。
もはや一介の学生ではない。一流の忍びである。
「それにしても流香様は、学美さんと七月さんの試合を見とりませんでしたが…やはりそんだけお二人を信じとるって事でげすか?」
「う、ん…まぁ、ね。」
何とも歯切れの悪い流香を見て高瀬は思考した。
〝流香姫はこの後の剣道対決に出なあかん。学美どんのピンチに自分が入れん事が、歯痒かったんどすな。七月はんに全てを任さなあかん気持ち…複雑でんな。せめて一刻も早く助けに行って欲しかった…そうなんですな?流香殿…〟
高瀬は流香の心情を読み、深々と頭を垂れた。
〝女神〟
熱いものがこみ上がり、涙する高瀬。
しかし、流香の脳裏にあったものは…
〝あのタコとイノシシの脳天に真・花柳を叩き込んで頭の形変えてやりたい!……この怒り、ドッヂボール対決の時に思い知らせてやるわ。鏡くんと甲くんの打ったボールで…地獄を見せてあげる〟
とても凶悪な思いだった。単に試合を見てたらこの怒りを抑えきれないと判断したからである。
これ、女神?
ちなみに北神七月、龍青学園内に留まらず、他校にもファンクラブあり。天野流香、龍青学園内では七月を越えるファン数を持つ。不破学美、徐々にファン数を増やしており、男女合わせたファン数では七月や流香を抜く勢いである。
しかし…
「ウチョポンめぇ!」
「番組に抗議だな!」
「地獄見せてあげる」
ファン泣くで。
〝早くしないと学美が……あっ!〟
先に空手部にいる友達の所に行けば良かったのだが、焦っていたのか部室に来てしまった七月。これでは部室に入る為の鍵も無い。
「…扉、壊そうかな。」
おいおい。
「あー、七月ちゃんだっ。」
「本当に居た。」
「え?亜子ちゃん?それに優里。」
女子空手部にいる友達、亜子(あこ)と優里(ゆうり)が現れたので驚く七月。
「どうして?」
友達の多い七月だが、亜子と優里は女子空手部部員の中でも特に仲が良い二人だ。
「そんな事より、空手着がいるんでしょ?」
「不破さんを助ける為に。」
優里が部室の鍵を見せる。
「な、何で分かったの?!」
「私もビックリしたんだけど、誰かがこれを私の手に握らせて…」
そう言いながら七月にメモを見せる亜子。その間に優里は部室の扉を開けた。
そのメモには『部室へ。北神七月に空手着を渡せ』と書かれていた。
「私はこれ。しかもメモに部室の鍵が包まれてた。」
優里もメモを見せた。そこには『鍵を持って部室へ。北神七月が待つ』と書かれている。
「な、何これ?」
「とにかく…はいっ。」
亜子が自分のロッカーから空手着を出した。
「私のは朝練で鼻血付いたから。亜子の方で。」
「七月ちゃん、早く不破さんを助けてあげてっ。」
「…うん!」
こうして七月は空手着に着替え、学美のピンチを救ったのだった。
そして試合後、戦いを終えた七月と、七月に肩を借りた学美が亜子と優里の元へ。
「亜子ちゃん、優里、ありがと!」
笑顔の七月。
「もうスイッチ切れてる。」
「つまんなーいっ。」
「ちょっとちょっと。」
格闘王スイッチが入った状態の七月を期待していた二人に対し、苦笑いの七月。
「それにしても妙な話しだよね。」
理由を聞いた学美も話しに入った。
「おかげで助かったけど、そのメモって一体誰が…」
学美の言葉に三人とも首を傾げるが…。
「ま、まぁいいじゃない。私達の味方なのは間違いないみたいだし。結果良ければ全て良し!」
「そ、そりゃそうだけど…気になるだろ、普通。」
「深く考えない七月ちゃんと、深く考える不破さんっ。」
「良いコンビ。さすが二大格闘王。」
亜子と優里にそう言われ、意義があるのは七月。
「いやいや、学美の方が深く考えないよ。いい加減だし。」
「はぁ?どう考えてもあんたの方が適当だろーが。」
「学美なんて靴下を裏返しに履いてた事あるし。」
「ばっ!…そ、それ今関係ないだろ?!痛ててっ。」
猪野岡にやられた背中が痛い学美だが、ここは引けない。
「だ、だいたい七月なんか、箸の持ち方おかしいのに直さないだろーが!」
「あ、あれは子どもの頃ポンポンキッズでお箸の持ち方をやってて…それ観て覚えたんだからね!」
『ポンポンキッズ』とは、子ども向けの教育番組である。
「だからポンポンキッズが悪いのよ!」
「んな訳あるか!七月が間違えただけだろーが!でないとポンポンキッズ観てた子がみんな変な箸の持ち方してるわ!ウチョポンに謝れ!」
『ウチョポン』とは、『ポンポンキッズ』のマスコットキャラである。
「ごめん!でも学美だって鉛筆の持ち方間違ってたよね?!おばさんに怒られて必死で直したって言ってたでしょ!」
「あ、あれはウチョポンが…!」
「ま、学美もか!」
ここでついに二人の意見が一致した。
「も、もしかして本当に…」
「ウチョポンが悪い…」
真剣な顔で納得し合う七月と学美を見て、『いや、違うだろ』と心の中でツッコむ亜子と優里であった。
「えーと…七月ちゃん達って…」
「やはり良いコンビ。」
その頃、亜子と優里の手にメモを握らせた男は…物陰からある女性を見ていた。
「…なるほどね。」
掲示板に書かれている文言を確かめに来た流香。
第一試合の空手対決の部分に小さく『二対二の同時勝負』と書かれていた。
そして自分が出る剣道対決の部分にも、これまた小さい字で『防具は無し』と書かれている事も確認。
「ふぅ~…そっちがその気なら、とことん付き合ってあげる。」
口の端を吊り上げてニヤリとする流香を見て、男は自分の胸を押さえた。
〝ええ女は悪そうな顔してても…ええなぁ〟
そう、亜子と優里にメモを握らせたのはこの男、高瀬であった。
「はぁ、はぁ…」
「…高瀬くん?」
「はっ!…はは。」
物陰から出て来る高瀬。
〝さすが流香殿、我が気配に気付くとは…〟
いや、単に流香見て『はぁはぁ』興奮してたから見付かっただけだ。
「さっきはご苦労様。」
「お安い御用ですだ。」
流香は、空手着が一刻も早く七月の手に渡るよう高瀬に依頼したのだった。
高瀬にしてみれば、七月が空手部の亜子、優里と仲が良い事はとっくの昔に調査済みだったし、七月のサイズも把握していた。
あとはメモを書き、忍び足で亜子と優里、それぞれの手にメモを握らせるだけであった。
もはや一介の学生ではない。一流の忍びである。
「それにしても流香様は、学美さんと七月さんの試合を見とりませんでしたが…やはりそんだけお二人を信じとるって事でげすか?」
「う、ん…まぁ、ね。」
何とも歯切れの悪い流香を見て高瀬は思考した。
〝流香姫はこの後の剣道対決に出なあかん。学美どんのピンチに自分が入れん事が、歯痒かったんどすな。七月はんに全てを任さなあかん気持ち…複雑でんな。せめて一刻も早く助けに行って欲しかった…そうなんですな?流香殿…〟
高瀬は流香の心情を読み、深々と頭を垂れた。
〝女神〟
熱いものがこみ上がり、涙する高瀬。
しかし、流香の脳裏にあったものは…
〝あのタコとイノシシの脳天に真・花柳を叩き込んで頭の形変えてやりたい!……この怒り、ドッヂボール対決の時に思い知らせてやるわ。鏡くんと甲くんの打ったボールで…地獄を見せてあげる〟
とても凶悪な思いだった。単に試合を見てたらこの怒りを抑えきれないと判断したからである。
これ、女神?
ちなみに北神七月、龍青学園内に留まらず、他校にもファンクラブあり。天野流香、龍青学園内では七月を越えるファン数を持つ。不破学美、徐々にファン数を増やしており、男女合わせたファン数では七月や流香を抜く勢いである。
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