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謹んで、お受けいたします
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フレディの作戦通り、洪水を恐れた王侯貴族は逃げ出し、逃げ出さなかったとしてもその警備能力は格段に下がった。
そしてフレディの準備していた通り洪水は街へは入ってこず……でもないですわね、秘密裏に建築していた上下水道へと安全に流れ込みました。
「汚臭がだいぶ和らぎましたね、民も洪水の危険が去っと気が付くや否や、ほぼ空っぽの貴族家に押しかけて、ほぼ誰の犠牲も出さないままに、貴族を無力化したようです、闇取引の証文も多数抑えたようですし取り潰しは確実、不正に略取した金銭は復興に回させていただきましょう」
「パトリシア!」
駆け寄ってくるのは……フレディですわね、まるで尻尾をぶんぶん振っている子犬のように駆け寄ってきます。
「フレディ君、大きな声ははしたないですよ?」
「『君』はやめてよ、とにかくこれでこの国がいろんな意味で綺麗になったのと北の平原が栄養豊かな土地になったのはわかるよね」
「そうですね、大水が山の栄養……なるものでしたか? を地面に与えてくれるという話でしたか」
「うん、それそれ、これであそこには麦や芋に代わる新しい主食の『米』を作る第一歩が踏み出せたんだ、人手はかかるけど保存が効く素晴らしい食べ物だよ」
「それは楽しみですが、貴族やアザイラム王家が戻ってきたら振り出しなのではないでしょうか?」
「もちろん対策済み、北から洪水が来るんだから南方面に逃げるのは分かってから、最初から網は張ってたよ、北に行ってたらご愁傷様だけどね」
「さすがですわね」
「そりゃもう頑張ったよ、今日という日を楽しみにしていたんだ、何重にも考え抜いたよ」
「はて? 本日なにか御座いましたか?」
なんでしょうか? 本当に心当たりが……。
「確認だけどパトリシアは誰の婚約者だったっけ?」
「私はこの街の領主……つまり王となる者の婚約者だと占いで定められたので、数日前まででしたらルーカス殿下でしたが……いなくなってしまいました! この場合どうすればよいのでしょうか? また占い師様に占っていただかなければいけないですわね」
「パトリシア、落ち着いて」
「はい」
「それは占いであって定めじゃないよ」
「……はい?」
「あくまで『あの国の王と結婚すると幸せになれる』って占いが出ただけで定めじゃないよ、小さいころだったから覚えてないかもしれないけど、女の子だから結婚とか憧れがあったんだろうけど、浮かれすぎたね」
「では私は……幻想を見ていただけ、嘘を、夢幻を追い続けていたのですか……」
「そうなんだけどね、その嘘や夢が嘘じゃなくなって夢じゃなく現実になったら素敵だと思わないか?」
「それはもちろん素敵だと思いますが、現実的にすでに不可能なのでは」
「それは大丈夫、君が婚約したあの日、君のお父さんと僕は賭けをしていたんだ」
「それは……どのようなものなのでしょうか?」
「僕が王になる」
「……」
ボッと顔に火が付いたかのように赤くなるのが自分でもわかります、そうでしたいつも彼が私を支えてくれていたのですわ、夢に侵されて彼の存在が希薄になっていたのでしょうか……。
「賭けの内容は簡単に言うとここをいろんな意味で綺麗にして、住みやすい土地にすること」
「あわわ、あわわ」
「パトリシア落ち着いて」
「……はい」
「それが出来たらここの王になって良いって約束していたんだ、君のお父さんバルド・フォン・ダンテミリオン帝王陛下とね」
「……! はいっ」
不意にフレディが私に向かって跪き胸に手を当てました。
「パトリシア」
「はい」
「このフレデリック・ハイデマンは時の剣となり目の前の敵を打ち滅ぼし、時に盾となり目の前の敵から君を守り、生涯をパトリシア・フォン・ダンテミリオンと共にすると誓います……! 私と結婚していただけませんか?」
「謹んで、お受けいたします」
◇ ◇
その後フレデリックの知略やそれを献身的に支えたパトリシアが築き上げた国は繁栄を重ねダンテミリオン領の中でも有数の富める都となったのだそうだ。
特に食文化は目覚ましい発展を遂げ、ブドウ以外から作られた酒が生まれ、米料理や酢を用いた保存食など様々な食文化が生まれた。
米文化が根付いたことで特に評価されているのが疫病だ、麦に疫病が出たときにも米は採れる、その逆の場合もそうだが、主食になる作物が複数種類存在するというのは大きな強みだったと言われている。
国王自ら地勢を確認しに遠征する際には王妃パトリシアが手ずから作った『おにぎり』なる携帯食をいつも嬉しそうに食べていたのだと伝記には残されているが、王妃が本当に自分で料理をしたのだろうかと考古学者はいつも首をひねっている。
晩年、長男に譲位をしたフレデリック・ハイデマンはたくさんの子や孫に囲まれながら息を引き取とり、その翌年には妻パトリシアも晴れ晴れとした表情で旅立ったと記録に残っている。
そしてフレディの準備していた通り洪水は街へは入ってこず……でもないですわね、秘密裏に建築していた上下水道へと安全に流れ込みました。
「汚臭がだいぶ和らぎましたね、民も洪水の危険が去っと気が付くや否や、ほぼ空っぽの貴族家に押しかけて、ほぼ誰の犠牲も出さないままに、貴族を無力化したようです、闇取引の証文も多数抑えたようですし取り潰しは確実、不正に略取した金銭は復興に回させていただきましょう」
「パトリシア!」
駆け寄ってくるのは……フレディですわね、まるで尻尾をぶんぶん振っている子犬のように駆け寄ってきます。
「フレディ君、大きな声ははしたないですよ?」
「『君』はやめてよ、とにかくこれでこの国がいろんな意味で綺麗になったのと北の平原が栄養豊かな土地になったのはわかるよね」
「そうですね、大水が山の栄養……なるものでしたか? を地面に与えてくれるという話でしたか」
「うん、それそれ、これであそこには麦や芋に代わる新しい主食の『米』を作る第一歩が踏み出せたんだ、人手はかかるけど保存が効く素晴らしい食べ物だよ」
「それは楽しみですが、貴族やアザイラム王家が戻ってきたら振り出しなのではないでしょうか?」
「もちろん対策済み、北から洪水が来るんだから南方面に逃げるのは分かってから、最初から網は張ってたよ、北に行ってたらご愁傷様だけどね」
「さすがですわね」
「そりゃもう頑張ったよ、今日という日を楽しみにしていたんだ、何重にも考え抜いたよ」
「はて? 本日なにか御座いましたか?」
なんでしょうか? 本当に心当たりが……。
「確認だけどパトリシアは誰の婚約者だったっけ?」
「私はこの街の領主……つまり王となる者の婚約者だと占いで定められたので、数日前まででしたらルーカス殿下でしたが……いなくなってしまいました! この場合どうすればよいのでしょうか? また占い師様に占っていただかなければいけないですわね」
「パトリシア、落ち着いて」
「はい」
「それは占いであって定めじゃないよ」
「……はい?」
「あくまで『あの国の王と結婚すると幸せになれる』って占いが出ただけで定めじゃないよ、小さいころだったから覚えてないかもしれないけど、女の子だから結婚とか憧れがあったんだろうけど、浮かれすぎたね」
「では私は……幻想を見ていただけ、嘘を、夢幻を追い続けていたのですか……」
「そうなんだけどね、その嘘や夢が嘘じゃなくなって夢じゃなく現実になったら素敵だと思わないか?」
「それはもちろん素敵だと思いますが、現実的にすでに不可能なのでは」
「それは大丈夫、君が婚約したあの日、君のお父さんと僕は賭けをしていたんだ」
「それは……どのようなものなのでしょうか?」
「僕が王になる」
「……」
ボッと顔に火が付いたかのように赤くなるのが自分でもわかります、そうでしたいつも彼が私を支えてくれていたのですわ、夢に侵されて彼の存在が希薄になっていたのでしょうか……。
「賭けの内容は簡単に言うとここをいろんな意味で綺麗にして、住みやすい土地にすること」
「あわわ、あわわ」
「パトリシア落ち着いて」
「……はい」
「それが出来たらここの王になって良いって約束していたんだ、君のお父さんバルド・フォン・ダンテミリオン帝王陛下とね」
「……! はいっ」
不意にフレディが私に向かって跪き胸に手を当てました。
「パトリシア」
「はい」
「このフレデリック・ハイデマンは時の剣となり目の前の敵を打ち滅ぼし、時に盾となり目の前の敵から君を守り、生涯をパトリシア・フォン・ダンテミリオンと共にすると誓います……! 私と結婚していただけませんか?」
「謹んで、お受けいたします」
◇ ◇
その後フレデリックの知略やそれを献身的に支えたパトリシアが築き上げた国は繁栄を重ねダンテミリオン領の中でも有数の富める都となったのだそうだ。
特に食文化は目覚ましい発展を遂げ、ブドウ以外から作られた酒が生まれ、米料理や酢を用いた保存食など様々な食文化が生まれた。
米文化が根付いたことで特に評価されているのが疫病だ、麦に疫病が出たときにも米は採れる、その逆の場合もそうだが、主食になる作物が複数種類存在するというのは大きな強みだったと言われている。
国王自ら地勢を確認しに遠征する際には王妃パトリシアが手ずから作った『おにぎり』なる携帯食をいつも嬉しそうに食べていたのだと伝記には残されているが、王妃が本当に自分で料理をしたのだろうかと考古学者はいつも首をひねっている。
晩年、長男に譲位をしたフレデリック・ハイデマンはたくさんの子や孫に囲まれながら息を引き取とり、その翌年には妻パトリシアも晴れ晴れとした表情で旅立ったと記録に残っている。
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