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国王ヴァルター・フォン・アザイラムの困惑

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「ヘンリー! ヘンリー・ノイマン! どこに行った」

 その声に応えるものは、もうこの国にはいない。

 我が国の宰相に取り立ててやったあの小うるさい侯爵にうるさいからしばらく休めと言ったのはいいが無断欠勤が続いている。

「陛下、ノイマン宰相は夜逃げしたではありませんか」

 なに? 無断欠勤どころか夜逃げだと?

「そうなのか!? クソあの恩知らずめ……草の根分けても見つけ出せ、国家反逆罪で火あぶりにしてくれようぞ」
「それが……捜索をさせようにも兵が数日前から登城しておらず……宿直兵までも宿舎に姿がないのです」
「なんだと? なぜだ? なぜそのようなことになっておるのだ」
「なんでもダンテミリオン家が関わっているようでございます、先日のパトリシア嬢の一件が伝わるたびに人が減っているようなのです」
「あの伯爵家か……忌々しい、兵がおらんのであれば仕方がない、冒険者にでも緊急以来として仕事を出せ! 宰相とダンテミリオン家一族郎党を生け捕りにして来い、捜索隊の隊長にはルーカスを据える、そろそろあやつにも箔を付けさせねばならんからな」
「畏まりました、取り計らいます」

 まったくこんな奴らが国に巣食っていたのでは国の将来が危ういからな、徹底的に見せしめにしてやるわ。

「父上! 私があのパトリシアを見つけ出す隊の隊長になると伺いました!」
「来たかルーカス、あの売国奴どもを公衆の面前で見せしめに処刑することにしたのだ、その隊の指揮をお前が取れば、お前の成果になる、期待しておるぞ」
「ありがとうございます父上、期待に答えてみせます!」
「あぁさすが私の王子様、私もついて行っていーい?」
「そうだな、私とともに行動し、国のために働く聖女として歴史に名を残すが良い」
「きゃー! さすが私の王子さまー!」

 二人を見送った国王は明るい未来を夢見ながら天を見る。

 しかし北の空にはまるでこの国の将来を反映するかのような、分厚い暗雲が立ち込めていたのだった。
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