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メメたんとご飯
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画像が復活したことで精神的にも復活した俺氏だが、あれだけ泣いた後なので小腹が空いてきた。ふと時計を見ると午前四時過ぎであった。
「メメたん、お腹空かない? 何か食べる?」
俺氏はメメたんに紳士的に優しく話しかけた。だがメメたんに俺氏の気持ちは届かない。
「いエ」
バッサリと切り捨てられたが、俺氏はめげない。メメたんはツンデレさんなのだ。むしろご褒美だと思おう。……なんて悲しい男の性なんだ。そんなことを考えながら俺氏は湯を沸かし普通のカップラーメンを作り、メメたんにはミニサイズのカップラーメンを作った。
メメたんが「地球にはこんな素晴らしい技術が? こんなに美味しい物が?」と驚いてくれるのを期待して、水と一緒にカップラーメンをメメたんに献上した。
「いラなイと言っているノニ……」
無表情でフゥと溜め息を吐くメメたんだが、俺氏が食べ始めるのを見ると恐る恐るといった感じで、コップを手にして水を飲んだ。
「……うワ……これ……美味しイ……」
メメたんは驚いた表情でコップを目線の高さまで持っていき見つめている。なんてカワイイのだろう。
「お……美味しいでしょ? うちは井戸水だから……地下水って分かる……?」
田舎にあるこの家は、水道水ではなく井戸水を利用している。メメたんは井戸水と言った辺りでは小首を傾げていたが、地下水と言うと目を輝かせウンウンと頷いてくれた。
会話が続かないので俺氏はまたカップラーメンを啜り始める。するとメメたんも食べ始めた。上目遣いでメメたんを盗み見ると、意外なことにメメたんは普通に箸を使っている。俺氏の脳かネットで使い方の情報を得たのだろう。そんなことを思った矢先だった。
「……ブハッ!!」
メメたんは盛大に口から麺を吹き出した。俺氏の顔にも数本の麺が飛んできた。ご褒美だろうか? なんて思う間もなくメメたんは一気にコップの水を飲み干し、足りないとばかりにキッチンへと走って行く。
心配から、ティッシュで自分の顔を拭きながら俺氏もメメたんの後を着いて行くと、昔ながらの捻る蛇口の使い方が分からないのか蛇口を叩いたりしている。
呆然と見ていると飲み物……というか液体を探しているようで、蛇口の近くにあった台所用洗剤を手に取った。
「メメたん! それはダメ……!」
俺氏の注意など聞こえていないようで、メメたんはキャップを捻り迷わず洗剤を口にした。
「……マズい……」
それはそうだろうとツッコミを入れる前に、次々と口に入れていくメメたん。そして料理をほぼしないのにも関わらず、無駄に数種類も置いてある台所のオブジェとなっている油にまで手を出そうとしていた。
さすがに危険を感じメメたんの腕を掴むが、振り払われバランスを崩した。ヨロヨロとしている間にメメたんはサラダ油を口に含んだ。
「………………オいシ」
え!? メメたん今、美味しいって言った!? 嘘だろうと思っていると、サラダ油の隣のゴマ油も口に含んだ。
「……コれハ! ……鼻ニ抜ける風味が香ばシい! オいシ!」
更にはオリーブオイルや紅花油も同様に口に含み歓喜の声をあげていた。
どうやら宇宙人は油が好きなようだ。油を飲んで口直しをしたメメたんに「アンなにマズい物を二度ト出すナ!」とそれはもう激しく怒られた。宇宙人にはカップラーメンはお口に合わないようだ。
俺氏はカップラーメンを平らげ、メメたんは口直しも終わり、テーブルを挟んで向かい合って座っている。まともに女性と話したこともなければ、あの憧れのメメたんが目の前に座っているのだ。
俺氏は緊張からメメたんを見ることも出来ずに、ただただ俯く。不意にメメたんに話しかけられた。
「今日かラ住まわセてもラウ訳でスし、アナタ……ト呼ぶノモ変ですヨネ? 何ト呼べバ良いデスか?」
アナタ……貴方……嫁が旦那を呼ぶ憧れのセリフじゃないか! だがしかし! 何かしっくり来ない。俺氏は普段使わない脳みそをフルパワーで稼働させる。俺氏の名前は修二……メメたんはメイド風の衣装だ……ハッ!!
「……ご主人様と……」
「……ハ?」
本当は『修二♡』と語尾にハートマークをつけて呼んでもらいたいが、無理だと思い『ご主人様』と提案したが、間髪入れずにメメたんは眉間に皺をよせ、もの凄~く嫌そうに聞き返して来た。
考えるんだ俺氏! メメたんを納得させる決め台詞を!
そして数秒のうちにメメたんが納得のいくような答えを奇跡的に導き出した。
「……じいちゃんやばあちゃんの知り合いがよく様子を見に来るんだ。今まで居なかった女の子がここにいたら怪しまれるかもしれない……。幸いなことにメメたんはメイド服だし言葉も片言だから、外国から家政婦として働きに来たってことにしよう……」
「……」
メメたんは顎に手を添え考え込んでいる。ダメか!? ダメなのか!? 俺氏はメメたんにどうしてもご主人様と呼ばれたい! 神様仏様! じいちゃんばあちゃんお願いします!
実際にはただ座っているだけだが、俺氏の脳内では白装束で天を仰ぎ祈りまくっている俺氏がいた。するとメメたんが手を下ろし俺氏を真っ直ぐに見つめて言った。
「ソうデスね……ソの理由でアレば怪しマレずに居られソうデス。よろシクお願いシマす……ご主人様……」
最後の「ご主人様」のところは猛烈に嫌そうではあったが、俺氏は何とかメメたんに「ご主人様」と呼ばせることに成功した。さすが俺氏! やれば出来る子なんだ!
「何ヲしてイルんデスかご主人様? 気持チ悪イ」
ゴミ虫を見るような目でそんなことを言われた。どうやら俺氏は無意識に天に向かってバンザイをしていたようだ。いくらでも罵られよう。俺氏は猛烈にハッピーだ! なんて言い返せるはずもない。
「……何でもないよ……ごめんねメメたん……」
そう言ってシューンと小さくなるのだった。メメたんの下僕となることを決めた俺氏はご主人様であるにも拘わらず、そしてこの家の家主なのにメメたんに頭が上がらないのだった。
「メメたん、お腹空かない? 何か食べる?」
俺氏はメメたんに紳士的に優しく話しかけた。だがメメたんに俺氏の気持ちは届かない。
「いエ」
バッサリと切り捨てられたが、俺氏はめげない。メメたんはツンデレさんなのだ。むしろご褒美だと思おう。……なんて悲しい男の性なんだ。そんなことを考えながら俺氏は湯を沸かし普通のカップラーメンを作り、メメたんにはミニサイズのカップラーメンを作った。
メメたんが「地球にはこんな素晴らしい技術が? こんなに美味しい物が?」と驚いてくれるのを期待して、水と一緒にカップラーメンをメメたんに献上した。
「いラなイと言っているノニ……」
無表情でフゥと溜め息を吐くメメたんだが、俺氏が食べ始めるのを見ると恐る恐るといった感じで、コップを手にして水を飲んだ。
「……うワ……これ……美味しイ……」
メメたんは驚いた表情でコップを目線の高さまで持っていき見つめている。なんてカワイイのだろう。
「お……美味しいでしょ? うちは井戸水だから……地下水って分かる……?」
田舎にあるこの家は、水道水ではなく井戸水を利用している。メメたんは井戸水と言った辺りでは小首を傾げていたが、地下水と言うと目を輝かせウンウンと頷いてくれた。
会話が続かないので俺氏はまたカップラーメンを啜り始める。するとメメたんも食べ始めた。上目遣いでメメたんを盗み見ると、意外なことにメメたんは普通に箸を使っている。俺氏の脳かネットで使い方の情報を得たのだろう。そんなことを思った矢先だった。
「……ブハッ!!」
メメたんは盛大に口から麺を吹き出した。俺氏の顔にも数本の麺が飛んできた。ご褒美だろうか? なんて思う間もなくメメたんは一気にコップの水を飲み干し、足りないとばかりにキッチンへと走って行く。
心配から、ティッシュで自分の顔を拭きながら俺氏もメメたんの後を着いて行くと、昔ながらの捻る蛇口の使い方が分からないのか蛇口を叩いたりしている。
呆然と見ていると飲み物……というか液体を探しているようで、蛇口の近くにあった台所用洗剤を手に取った。
「メメたん! それはダメ……!」
俺氏の注意など聞こえていないようで、メメたんはキャップを捻り迷わず洗剤を口にした。
「……マズい……」
それはそうだろうとツッコミを入れる前に、次々と口に入れていくメメたん。そして料理をほぼしないのにも関わらず、無駄に数種類も置いてある台所のオブジェとなっている油にまで手を出そうとしていた。
さすがに危険を感じメメたんの腕を掴むが、振り払われバランスを崩した。ヨロヨロとしている間にメメたんはサラダ油を口に含んだ。
「………………オいシ」
え!? メメたん今、美味しいって言った!? 嘘だろうと思っていると、サラダ油の隣のゴマ油も口に含んだ。
「……コれハ! ……鼻ニ抜ける風味が香ばシい! オいシ!」
更にはオリーブオイルや紅花油も同様に口に含み歓喜の声をあげていた。
どうやら宇宙人は油が好きなようだ。油を飲んで口直しをしたメメたんに「アンなにマズい物を二度ト出すナ!」とそれはもう激しく怒られた。宇宙人にはカップラーメンはお口に合わないようだ。
俺氏はカップラーメンを平らげ、メメたんは口直しも終わり、テーブルを挟んで向かい合って座っている。まともに女性と話したこともなければ、あの憧れのメメたんが目の前に座っているのだ。
俺氏は緊張からメメたんを見ることも出来ずに、ただただ俯く。不意にメメたんに話しかけられた。
「今日かラ住まわセてもラウ訳でスし、アナタ……ト呼ぶノモ変ですヨネ? 何ト呼べバ良いデスか?」
アナタ……貴方……嫁が旦那を呼ぶ憧れのセリフじゃないか! だがしかし! 何かしっくり来ない。俺氏は普段使わない脳みそをフルパワーで稼働させる。俺氏の名前は修二……メメたんはメイド風の衣装だ……ハッ!!
「……ご主人様と……」
「……ハ?」
本当は『修二♡』と語尾にハートマークをつけて呼んでもらいたいが、無理だと思い『ご主人様』と提案したが、間髪入れずにメメたんは眉間に皺をよせ、もの凄~く嫌そうに聞き返して来た。
考えるんだ俺氏! メメたんを納得させる決め台詞を!
そして数秒のうちにメメたんが納得のいくような答えを奇跡的に導き出した。
「……じいちゃんやばあちゃんの知り合いがよく様子を見に来るんだ。今まで居なかった女の子がここにいたら怪しまれるかもしれない……。幸いなことにメメたんはメイド服だし言葉も片言だから、外国から家政婦として働きに来たってことにしよう……」
「……」
メメたんは顎に手を添え考え込んでいる。ダメか!? ダメなのか!? 俺氏はメメたんにどうしてもご主人様と呼ばれたい! 神様仏様! じいちゃんばあちゃんお願いします!
実際にはただ座っているだけだが、俺氏の脳内では白装束で天を仰ぎ祈りまくっている俺氏がいた。するとメメたんが手を下ろし俺氏を真っ直ぐに見つめて言った。
「ソうデスね……ソの理由でアレば怪しマレずに居られソうデス。よろシクお願いシマす……ご主人様……」
最後の「ご主人様」のところは猛烈に嫌そうではあったが、俺氏は何とかメメたんに「ご主人様」と呼ばせることに成功した。さすが俺氏! やれば出来る子なんだ!
「何ヲしてイルんデスかご主人様? 気持チ悪イ」
ゴミ虫を見るような目でそんなことを言われた。どうやら俺氏は無意識に天に向かってバンザイをしていたようだ。いくらでも罵られよう。俺氏は猛烈にハッピーだ! なんて言い返せるはずもない。
「……何でもないよ……ごめんねメメたん……」
そう言ってシューンと小さくなるのだった。メメたんの下僕となることを決めた俺氏はご主人様であるにも拘わらず、そしてこの家の家主なのにメメたんに頭が上がらないのだった。
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