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願望成就
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パンッ! パンッ! と肌と肌がぶつかる音がし、よこしまな妄想で目を覚ます。だが期待とは裏腹に、いや、期待以上なことに、メメたんが俺氏に跨り無表情で俺氏の頬をビンタをしていた。どうやら俺氏はまだ裏庭に倒れているようだ。
こんなメメたんもアリだな……と新たな性癖を開花させていると、メメたんは言葉を発した。
「私の言葉ガ分かりマスカ?」
「……! メメたん! メメたん!」
メメたんはふぅ、と小さく溜息を吐くと「失敗カ?」と呟いた。するとメメたんのツインテールの毛先が宙に浮き、その先が容易に想像できた俺氏は小さな抵抗を試みたが、抵抗むなしく髪の束が耳に入ってきた。
「はしゅーんはちゅーんぱっぴらぷっぷー」
また脳みそを弄られている感覚がし、意味不明な言葉の羅列が勝手に口からこぼれる。動くことも出来ず、不愉快な感覚を堪能しているとようやく耳から髪を抜かれた。
「……この世界デ、一番の知的生命体ハ?」
「ぼぼぼ僕たち人間だよ! メメたん!」
「……知的要素ガ全く感じられナイ……」
俺氏の上に跨るメメたんは、ふぅとまた小さな溜息を吐いた。同時に俺氏はフルパワーでその溜息を吸い込み、メメたんの息を堪能する。決して変態ではない。紳士の嗜みだ。
おずおずとメメたんを見上げると、どこか一点を見つめていたので俺氏もそちらに視線を動かした。そこには、俺氏がたまに気まぐれでエサをやる野良猫のメザシ(命名俺氏)がいた。
メザシは今にも逃げそうな体勢だったが、それよりも早くメメたんの髪が動いた。胸元までの髪が瞬時に伸び、左側の髪でメザシを拘束すると、右側の髪が二手に分かれてメザシの耳へと入って行った。
「にぃやぉふみーぎっぎっ」
メザシまで変な声を出している。きっと脳内を触られているのだろう。だがすぐにメザシは解放された。俺氏よりも圧倒的に早い。
「……信じられナイ……コノ生物の方が知的デス」
「え? ぼぼぼ僕、野良猫のメザシよりバカなの?」
俺氏の発言により、メメたんはこちらに視線を向けた。まるで汚い物を見るような目で俺氏を見下ろすメメたんに、さらに新しい性癖を開花する寸前の俺氏がいる。
「コノ子の名前はチョビ。三軒隣ノ飼い猫ダそうデス」
メザシ……お前はメザシでもなく、野良猫でもなかったのか……。軽くショックを受けてしまう。見上げる先には、未だ汚物を見るような目をしたメメたんがいる。
「……メメたん……一回降りてもらっていいかな?」
俺氏の腹の上にメメたんのヌクモリティを感じすぎ、危険が危なくなり欲望が爆発してしまいそうだったので紳士的に声をかけた。するとメメたんはおとなしく無言で降りてくれた。
「……アナタの警戒心を解く為ニ、アナタが一番強く想うコノ姿になったのデスガ」
なんの脈絡もなくメメたんは言葉を発した。俺氏はなんとか立ち上がりながら返事を返す。
「うん! メメたんに会えて嬉しいよ!」
「……メメたんと言うノハ、コノ姿の名前デスカ?」
「美神愛愛《ミカミメメ》! 僕が考えた女の子だよ! あ、まだ僕の名前を言ってなかったね」
「……川上修二《かわかみしゅうじ》、三十歳」
「え!? なんで知ってるの!? 僕に会いに……「脳カラ直接情報収集しまシタ」」
俺氏の話しをぶった切るメメたんは無表情だ。そうか。あの気色悪い感触の、脳内のシワとシワの間をまさぐるアレで色々分かってしまうのか。
「メメたんは……宇宙人……? どこから来たの? 何しに来たの……?」
恐怖心が薄れてきた俺氏は興味の方が勝り始め、おずおずとメメたんに問いかけた。
「アナタの知的レベルが低すぎル為、話してモ理解出来まセン。話すダケ無駄デス」
メメたんは俺氏の質問をバッサリと切り捨てる。そんなメメたんもまた良い! というか、俺氏はそんなにバカなのか!? いや、自覚はそれとなくあるが。ほんの少しだけショックを受けて俯くとメメたんは口を開いた。
「ただ一つ言えルことハ、アル目的の為ニ来まシタ。ココにいれバ、いつか目的ハ達成出来そうデス」
俯いていた顔を上げると、真っ直ぐに俺氏を見つめていたメメたんと視線と視線が絡まる。メメたんが何を言わんとしているか全く分からないが、ここにいたいというのは分かった。なら言えるセリフはただ一つ。
「じゃあメメたん! 一緒に暮らそう!」
今までの俺氏だったら、そしてこのまま生きていったら絶対に言うことのないセリフを、一生分の勇気を振り絞って言った。それは相手がメメたんだったからこそだ。
メメたんは直立不動でしばらく考えたあと、「分かりまシタ」とOKしてくれた。そして「メメたんト呼ぶのヲ許可しテあげまショウ」とお許しまで出た。
メメたんと……あのメメたんと暮らせる。歓喜の涙を流している俺氏の横で、メメたんは淡々と作業をしている。
あの光る洗濯機(仮)にメメたんが触れるとどんどんと小さくなり、手の平サイズになったところでメメたんが手に乗せると光るのを止め、メメたんの手に吸収されたように見えた。
「あの……メメたん? あのUFO? はどこに……?」
「……体ノ中ニ保管していマス」
この一言でメメたんはやっぱり宇宙人なんだと確信した。
「と……とりあえず立ち話もなんだし、家に入らない?」
俺氏はそう言いながら暗闇の中で自宅を指さした。
「家? アナタの家なんでスカ? コレは動物ノ家ではナク?」
初めて表情を変えたメメたんは、驚愕の表情で俺氏と自宅を交互に見た。ごく普通の一軒家だが、メメたんの認識では小動物の家に見えたようだ……。どれだけデカい星から来たんだろうか。ショックを隠しきれないまま暗闇の中を玄関まで歩く。
「あ、メメたん足元に気を付けてね」
「全部見えてイルので心配ありまセン」
俺氏の紳士的な心配は無駄だったようだ。そしてなぜかメザシも着いて来ている。
「おいメザシ。お前はここでお別れだ。気を付けて帰れよ」
玄関前でメザシに声をかけると、「ニャー」と返事が返ってきた。
「『一人で狩りも出来ナイお前に心配される謂れはナイ。お前のジーサンとバーサンに頼まれたカラ様子を見に来ているだケダ。人間ラシイ生活をシロ』とチョビは言ってイマス」
「メメたんメザシの言葉が分かるの!?」
「チョビでス。私よりモ高度な知的生命体デなければ思考ガ分かるノデスが……チョビより知的レベルの低いアナタの考えハ何故か分かりマセン」
一応俺氏も高度な知的生命体の人間なんだが……。メメたん辛辣……。
こんなメメたんもアリだな……と新たな性癖を開花させていると、メメたんは言葉を発した。
「私の言葉ガ分かりマスカ?」
「……! メメたん! メメたん!」
メメたんはふぅ、と小さく溜息を吐くと「失敗カ?」と呟いた。するとメメたんのツインテールの毛先が宙に浮き、その先が容易に想像できた俺氏は小さな抵抗を試みたが、抵抗むなしく髪の束が耳に入ってきた。
「はしゅーんはちゅーんぱっぴらぷっぷー」
また脳みそを弄られている感覚がし、意味不明な言葉の羅列が勝手に口からこぼれる。動くことも出来ず、不愉快な感覚を堪能しているとようやく耳から髪を抜かれた。
「……この世界デ、一番の知的生命体ハ?」
「ぼぼぼ僕たち人間だよ! メメたん!」
「……知的要素ガ全く感じられナイ……」
俺氏の上に跨るメメたんは、ふぅとまた小さな溜息を吐いた。同時に俺氏はフルパワーでその溜息を吸い込み、メメたんの息を堪能する。決して変態ではない。紳士の嗜みだ。
おずおずとメメたんを見上げると、どこか一点を見つめていたので俺氏もそちらに視線を動かした。そこには、俺氏がたまに気まぐれでエサをやる野良猫のメザシ(命名俺氏)がいた。
メザシは今にも逃げそうな体勢だったが、それよりも早くメメたんの髪が動いた。胸元までの髪が瞬時に伸び、左側の髪でメザシを拘束すると、右側の髪が二手に分かれてメザシの耳へと入って行った。
「にぃやぉふみーぎっぎっ」
メザシまで変な声を出している。きっと脳内を触られているのだろう。だがすぐにメザシは解放された。俺氏よりも圧倒的に早い。
「……信じられナイ……コノ生物の方が知的デス」
「え? ぼぼぼ僕、野良猫のメザシよりバカなの?」
俺氏の発言により、メメたんはこちらに視線を向けた。まるで汚い物を見るような目で俺氏を見下ろすメメたんに、さらに新しい性癖を開花する寸前の俺氏がいる。
「コノ子の名前はチョビ。三軒隣ノ飼い猫ダそうデス」
メザシ……お前はメザシでもなく、野良猫でもなかったのか……。軽くショックを受けてしまう。見上げる先には、未だ汚物を見るような目をしたメメたんがいる。
「……メメたん……一回降りてもらっていいかな?」
俺氏の腹の上にメメたんのヌクモリティを感じすぎ、危険が危なくなり欲望が爆発してしまいそうだったので紳士的に声をかけた。するとメメたんはおとなしく無言で降りてくれた。
「……アナタの警戒心を解く為ニ、アナタが一番強く想うコノ姿になったのデスガ」
なんの脈絡もなくメメたんは言葉を発した。俺氏はなんとか立ち上がりながら返事を返す。
「うん! メメたんに会えて嬉しいよ!」
「……メメたんと言うノハ、コノ姿の名前デスカ?」
「美神愛愛《ミカミメメ》! 僕が考えた女の子だよ! あ、まだ僕の名前を言ってなかったね」
「……川上修二《かわかみしゅうじ》、三十歳」
「え!? なんで知ってるの!? 僕に会いに……「脳カラ直接情報収集しまシタ」」
俺氏の話しをぶった切るメメたんは無表情だ。そうか。あの気色悪い感触の、脳内のシワとシワの間をまさぐるアレで色々分かってしまうのか。
「メメたんは……宇宙人……? どこから来たの? 何しに来たの……?」
恐怖心が薄れてきた俺氏は興味の方が勝り始め、おずおずとメメたんに問いかけた。
「アナタの知的レベルが低すぎル為、話してモ理解出来まセン。話すダケ無駄デス」
メメたんは俺氏の質問をバッサリと切り捨てる。そんなメメたんもまた良い! というか、俺氏はそんなにバカなのか!? いや、自覚はそれとなくあるが。ほんの少しだけショックを受けて俯くとメメたんは口を開いた。
「ただ一つ言えルことハ、アル目的の為ニ来まシタ。ココにいれバ、いつか目的ハ達成出来そうデス」
俯いていた顔を上げると、真っ直ぐに俺氏を見つめていたメメたんと視線と視線が絡まる。メメたんが何を言わんとしているか全く分からないが、ここにいたいというのは分かった。なら言えるセリフはただ一つ。
「じゃあメメたん! 一緒に暮らそう!」
今までの俺氏だったら、そしてこのまま生きていったら絶対に言うことのないセリフを、一生分の勇気を振り絞って言った。それは相手がメメたんだったからこそだ。
メメたんは直立不動でしばらく考えたあと、「分かりまシタ」とOKしてくれた。そして「メメたんト呼ぶのヲ許可しテあげまショウ」とお許しまで出た。
メメたんと……あのメメたんと暮らせる。歓喜の涙を流している俺氏の横で、メメたんは淡々と作業をしている。
あの光る洗濯機(仮)にメメたんが触れるとどんどんと小さくなり、手の平サイズになったところでメメたんが手に乗せると光るのを止め、メメたんの手に吸収されたように見えた。
「あの……メメたん? あのUFO? はどこに……?」
「……体ノ中ニ保管していマス」
この一言でメメたんはやっぱり宇宙人なんだと確信した。
「と……とりあえず立ち話もなんだし、家に入らない?」
俺氏はそう言いながら暗闇の中で自宅を指さした。
「家? アナタの家なんでスカ? コレは動物ノ家ではナク?」
初めて表情を変えたメメたんは、驚愕の表情で俺氏と自宅を交互に見た。ごく普通の一軒家だが、メメたんの認識では小動物の家に見えたようだ……。どれだけデカい星から来たんだろうか。ショックを隠しきれないまま暗闇の中を玄関まで歩く。
「あ、メメたん足元に気を付けてね」
「全部見えてイルので心配ありまセン」
俺氏の紳士的な心配は無駄だったようだ。そしてなぜかメザシも着いて来ている。
「おいメザシ。お前はここでお別れだ。気を付けて帰れよ」
玄関前でメザシに声をかけると、「ニャー」と返事が返ってきた。
「『一人で狩りも出来ナイお前に心配される謂れはナイ。お前のジーサンとバーサンに頼まれたカラ様子を見に来ているだケダ。人間ラシイ生活をシロ』とチョビは言ってイマス」
「メメたんメザシの言葉が分かるの!?」
「チョビでス。私よりモ高度な知的生命体デなければ思考ガ分かるノデスが……チョビより知的レベルの低いアナタの考えハ何故か分かりマセン」
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