64 / 65
テンの怒り
しおりを挟む
「みんな聞いたー!?」
「はい! 聞きました!」
あたしが過去最高の笑顔で聞くと、負けないくらいの笑顔で答えてくれたのはゴンザレスさんだけだった。
普段はマックと一緒にアホなことで盛り上がるけど、今はゴンザレスさんとキャッキャウフフと楽しんでる。
「……シンディ、どうした……?」
そんなアホな子マックが真剣な表情で心配している。マックだけじゃなくて、他のみんなも心配そうにあたしを見てた。
「シンとハンがね、『好き』って言ってくれたの!」
「そうなんですか!」
あたしの言葉に反応したのはもちろんゴンザレスさんだ。だけどなんか会話が噛み合ってないっぽい。
それをゴンザレスさんに聞いてみたら、テンは自分が話したいと思った人としか話さない……つーか言葉をかけないっていうツンデレだった。やろうと思えばこの場の全員にも聞こえるようにできたっぽい。
あとショックだったのは、あたしの魔力がテンと同じかそれ以上にならないと、テンはあたしと簡単に話さないってゴンザレスさんに言ったらしい。
テンが魔力を開放したからあたしに声が届いたけど、普段からテンは人語を理解して話してるみたい。この場のあたしたちの魔力が低いから、その言葉が聞こえないだけなんだとか。難しくてよく分かんないけど。
「……テン~……話してくれないの……?」
「そう宣言したのに話してくれたんですよ! むしろ感謝しましょう!」
ゴンザレスさんに謎の励ましを受けたけど、それでもしょんぼりしてると、テンが尻尾であたしの頭を撫でてくれた。本っ当にツンデレなんだけど。
「えぇと……良いかな? 状況を確認したいんだが……こちらのレアモンスターが喋ったと?」
置いてけぼりチーム代表として理事長が話し始めた。あたしが説明をしようとすると逆に分からなくなりそうだったから、ゴンザレスさんに説明を丸投げした。
「……いやいや、その話がもし本当だったら、私たちよりもこのレアモンスターのほうが強いということになってしまうが……」
理事長が呆れ笑いをしながらそう言うと、テンはカチンと来たのか唸り始めた。
そして姿勢を低くしたと思ったら、目では追えないスピードで走り出して、あたしとゴンザレスさん以外の全員の耳元で吠えたり唸ったり、歯をガキンッと鳴らしたりと脅しのようなことをした。
『誰も反応出来なかったではないか。お前たちなど簡単に始末できる。主が困るのでやらないだけだ。思い上がるな!』
テンが思いっきり吠えると同時に、この場の全員にテンの言葉が聞こえたみたい。話さないって言ったのに話すってことは、よっぽどイラついたんだね。
「テン、落ち着いて。よーしよしイイ子イイ子」
落ち着かせようとテンを撫でると、テンはそっぽを向いてお座りをして「……フンッ」といつものように鼻を鳴らした。
チラリとみんなの方を見ると、硬直状態だった理事長たちは土下座をして「テン様!」と崇め奉ってるし。手のひら返しすごくね?
「リールさん! 本当に何もかにもが初めてのことでして……申し訳ありません……」
ビクビクしつつシュンとした理事長が、あたしになのかテンになのか分かんないけど謝った。それにもテンは「……フンッ!」としか反応してないけど。
「そういえばさぁ、何も悪いことしてないし、ただ卵を産もうとした鳥をさっき倒したでしょ?」
あたしの言葉を聞いた魔法協会メンバーが青ざめる。いきなり攻撃したのは事実だもんね。
「テンがね、さっきの鳥からこの子たちを託されたんだって。そのテンが、あたしにこの子たちを育ててもらいたいんだって」
レアモンスターでも鳥の習性があるのか、ピヨピヨ鳴きながらあたしにくっついて離れない。なんだっけ? すり込みって言うんだっけ?
こんなにちっちゃい生き物に頼られるなんて、微笑ましくて笑顔になっちゃう。普通にカワイイし。その顔のままみんなを見ると、恒例の鳩が豆鉄砲を食らった顔をしてるし。
「だから理事長さぁ、この子たちもペット認定してくれない?」
呆然としてた魔法協会メンバーは、この場で緊急会議を始めたんだけど、ゴンザレスさんの説得とイライラし始めたテンの唸り声で鳥たちもペット認定された。
「えぇと……リールさん……こちらのレアモンスターの雛? もペット認定させていただきます……。名前はお決まりですか?」
なんだか疲れた様子の理事長に聞かれたあたしは、足元でピヨピヨと鳴く鳥たちを見つめる。……ん~……名前ねぇ……。
「……ホウとオウ……」
相変わらずネーミングセンスないな、と自分で思ってると、ホウとオウが光り始めた。そして光の玉になって消えた。デジャヴ! 超デジャヴなんだけど!
みんなが「何が!?」とか「どこへ!?」とか騒ぐ中、武装モードに変身して魔徹を抜いてみた。
「シンディ……それ……」
いつの間にかあたしの隣に来てたマックが呟いた。うん、やっぱりか。
「ホウとオウはここに納まりました」
魔徹を持って理事長に見せた。魔徹の鞘の龍の彫刻に、いつもテンたちは納まってる。テンは龍の口、シンとハンは龍の手の中だ。
新しくペットになったホウとオウは、龍の目の部分にはまってる。
「リールさん! 定期的にペットたちを観察させていただいてよろしいですか!?」
ゴンザレスさんは大興奮だ。チラッとテンを見ると、嫌がる素振りはない。
「うん、いーよー」
理事長を置いてけぼりに、話はまとまった。新ペット、ゲットだぜ!
「はい! 聞きました!」
あたしが過去最高の笑顔で聞くと、負けないくらいの笑顔で答えてくれたのはゴンザレスさんだけだった。
普段はマックと一緒にアホなことで盛り上がるけど、今はゴンザレスさんとキャッキャウフフと楽しんでる。
「……シンディ、どうした……?」
そんなアホな子マックが真剣な表情で心配している。マックだけじゃなくて、他のみんなも心配そうにあたしを見てた。
「シンとハンがね、『好き』って言ってくれたの!」
「そうなんですか!」
あたしの言葉に反応したのはもちろんゴンザレスさんだ。だけどなんか会話が噛み合ってないっぽい。
それをゴンザレスさんに聞いてみたら、テンは自分が話したいと思った人としか話さない……つーか言葉をかけないっていうツンデレだった。やろうと思えばこの場の全員にも聞こえるようにできたっぽい。
あとショックだったのは、あたしの魔力がテンと同じかそれ以上にならないと、テンはあたしと簡単に話さないってゴンザレスさんに言ったらしい。
テンが魔力を開放したからあたしに声が届いたけど、普段からテンは人語を理解して話してるみたい。この場のあたしたちの魔力が低いから、その言葉が聞こえないだけなんだとか。難しくてよく分かんないけど。
「……テン~……話してくれないの……?」
「そう宣言したのに話してくれたんですよ! むしろ感謝しましょう!」
ゴンザレスさんに謎の励ましを受けたけど、それでもしょんぼりしてると、テンが尻尾であたしの頭を撫でてくれた。本っ当にツンデレなんだけど。
「えぇと……良いかな? 状況を確認したいんだが……こちらのレアモンスターが喋ったと?」
置いてけぼりチーム代表として理事長が話し始めた。あたしが説明をしようとすると逆に分からなくなりそうだったから、ゴンザレスさんに説明を丸投げした。
「……いやいや、その話がもし本当だったら、私たちよりもこのレアモンスターのほうが強いということになってしまうが……」
理事長が呆れ笑いをしながらそう言うと、テンはカチンと来たのか唸り始めた。
そして姿勢を低くしたと思ったら、目では追えないスピードで走り出して、あたしとゴンザレスさん以外の全員の耳元で吠えたり唸ったり、歯をガキンッと鳴らしたりと脅しのようなことをした。
『誰も反応出来なかったではないか。お前たちなど簡単に始末できる。主が困るのでやらないだけだ。思い上がるな!』
テンが思いっきり吠えると同時に、この場の全員にテンの言葉が聞こえたみたい。話さないって言ったのに話すってことは、よっぽどイラついたんだね。
「テン、落ち着いて。よーしよしイイ子イイ子」
落ち着かせようとテンを撫でると、テンはそっぽを向いてお座りをして「……フンッ」といつものように鼻を鳴らした。
チラリとみんなの方を見ると、硬直状態だった理事長たちは土下座をして「テン様!」と崇め奉ってるし。手のひら返しすごくね?
「リールさん! 本当に何もかにもが初めてのことでして……申し訳ありません……」
ビクビクしつつシュンとした理事長が、あたしになのかテンになのか分かんないけど謝った。それにもテンは「……フンッ!」としか反応してないけど。
「そういえばさぁ、何も悪いことしてないし、ただ卵を産もうとした鳥をさっき倒したでしょ?」
あたしの言葉を聞いた魔法協会メンバーが青ざめる。いきなり攻撃したのは事実だもんね。
「テンがね、さっきの鳥からこの子たちを託されたんだって。そのテンが、あたしにこの子たちを育ててもらいたいんだって」
レアモンスターでも鳥の習性があるのか、ピヨピヨ鳴きながらあたしにくっついて離れない。なんだっけ? すり込みって言うんだっけ?
こんなにちっちゃい生き物に頼られるなんて、微笑ましくて笑顔になっちゃう。普通にカワイイし。その顔のままみんなを見ると、恒例の鳩が豆鉄砲を食らった顔をしてるし。
「だから理事長さぁ、この子たちもペット認定してくれない?」
呆然としてた魔法協会メンバーは、この場で緊急会議を始めたんだけど、ゴンザレスさんの説得とイライラし始めたテンの唸り声で鳥たちもペット認定された。
「えぇと……リールさん……こちらのレアモンスターの雛? もペット認定させていただきます……。名前はお決まりですか?」
なんだか疲れた様子の理事長に聞かれたあたしは、足元でピヨピヨと鳴く鳥たちを見つめる。……ん~……名前ねぇ……。
「……ホウとオウ……」
相変わらずネーミングセンスないな、と自分で思ってると、ホウとオウが光り始めた。そして光の玉になって消えた。デジャヴ! 超デジャヴなんだけど!
みんなが「何が!?」とか「どこへ!?」とか騒ぐ中、武装モードに変身して魔徹を抜いてみた。
「シンディ……それ……」
いつの間にかあたしの隣に来てたマックが呟いた。うん、やっぱりか。
「ホウとオウはここに納まりました」
魔徹を持って理事長に見せた。魔徹の鞘の龍の彫刻に、いつもテンたちは納まってる。テンは龍の口、シンとハンは龍の手の中だ。
新しくペットになったホウとオウは、龍の目の部分にはまってる。
「リールさん! 定期的にペットたちを観察させていただいてよろしいですか!?」
ゴンザレスさんは大興奮だ。チラッとテンを見ると、嫌がる素振りはない。
「うん、いーよー」
理事長を置いてけぼりに、話はまとまった。新ペット、ゲットだぜ!
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる