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シンディの計画
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まだ固まっているみんなに思っていることを話す。
「最初はさ、ただ漠然とみんなを雇いたいなぁ……くらいの気持ちだったの。でもさ面接をしてみたら『牧畜をやっていました』とか『農業が得意です』とか『裁縫は任せてください』とか、仕事さえ与えたら人力でやれる感じでしょ? ちなみにその辺って魔法でどうなってるの?」
疑問に思ったことを聞いてみると、牧畜だと餌やりや掃除、屠殺などを魔法で行っていて、農業も水やりや収穫を魔法でやっていて、裁縫も魔法……ってほとんど全部じゃん! 牧畜や農業はお金のある主たちが魔法を使っているから、人力でやっている場所に人が集まって空きがないんだとか。どの業界もいろんなことに魔法を使ってるけど、魔力の質で出来上がりに差が出てしまうらしい。だけど今はどんなものもほとんど魔法製のものばかりらしい。
「出来るかどうかは別として、大きな土地を買って牧畜と農業をやってもらって、そこで生産されたものをレストランで使うってどうよ? 『魔法を使わず手作業で育てました』とか言ってさ。お裁縫が得意な人たちには制服を作ってもらいたいし。余った布だって売ればいいわけでしょ」
みんなは口を開けたまま呆然としているけど、やっぱ無謀かなぁ。
「それでさ、何にしても魔法で作ったものよりも、チマチマと手作業で作った方が良いものを作ったらカッコイイと思わない?」
あたしの言葉を聞いたみんなは「そんなことを考えたこともなかった」なんて言う。当然だよね、魔法がある世界でみんなは魔法を使えるのが当たり前だから。元々魔法なんて無縁のただの日本人だったあたしは魔法に憧れはあったけど、この世界の実際の現状を見ちゃうと一般の庶民層や貧困層のほうに気持ちが偏っちゃう。
「けど何をするにしてもお金だよね」
少し困り顔のアルはとっても現実的なことを言う。やっぱりお金がなきゃ何も出来ないのはリアルでもゲームの世界でも変わらないか。
「頼ってよ、俺のこと。あげるって言っても受け取らないだろうから、貸すよ? いくらでも」
カータスが階段を昇って来ながらそんなことを言う。あれ? いつの間に下に行ってたんだろ?
「さっきのオッサン、見ててイライラしたからお仕置きしてきた」
眩しいほどの笑顔でカータスは話すけど、待って……。
「え? カータス? お仕置きって……え?」
この部屋の全員が呆気にとられてたけど、カータスは元暗殺者だ。物騒で良からぬことを考えてしまい、みんな顔に出てたんだと思う。
「大丈夫、命は取ってない。ただ話をしただけ。なんかね、引っ越しするって言って街から出て行ったよ」
ニコニコ顔のカータスが逆に怖い。話をしただけであの手のタイプは街から出て行かないでしょ……。相当追い込みをかけたんだね……。あたしはなんとなくそれに気付いちゃったけど、気付かないフリをした。
さらにカータスは何番目に並んでたこういう人と、何番目に並んでたこういう特徴の人と指定した上で「あのオッサンほどじゃないけど、やめたほうがいい」なんて言う。さすが元暗殺者だよ。人の並びとか簡単に覚えちゃうし、見た目では分かんないヤバさとか分かっちゃうんだね。
「……ありがとカータス、その人たちは雇わない。あとさ、仮にお金を借りてもそんな簡単に土地を買えるかなぁ……」
問題は山積みで途方もない。
「土地なら俺の家の近くにいっぱいあるぞ? 郊外だから買い手がつかないって聞いたけど。な、じーちゃん?」
今までおとなしかったマックがマーズニさんに同意を求めた。話を振られたマーズニさんが頷きながら話し始めた。
「そうですね。街の中心部から離れていますから土地は安いですよ? 土地の持ち主も知っておりますし交渉いたしますか?」
マ? マーズニさん! そしてこのガバガバゆるゆる設定のゲームに感謝だよ!
「何とぞよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げるとみんなから笑われちゃった。あたし真面目に言ってるのにな。
「では早速行って参ります。金額さえ分かればお嬢様も動きやすいでしょうし」
マーズニさんマジ感謝! 超頼りになる! マックも地主さんと面識があるらしくて、「久しぶりに顔を出すか」と言ってマーズニさんと一緒に向かって行った。
なんかさ、少しずつ良き方向に進んでるんじゃね? 家のあの親子を追い出すって問題もあるけどあっちはストレスいっぱい、こっちの仕事関係は楽しい感じ。家でのストレスを仕事で発散しつつ稼ごうじゃない!
「シンディ、明後日のことなんだけどさいつも郊外の魔石洞窟に行ってるんでしょ? 魔法学校の方に行かない? そっちの方が馴染み深くて」
そういえば魔法学校の生徒はその魔石洞窟に入るって言ってたもんね。
「いいけど夜しか入れないんじゃないの?」
「正確には朝までだよ。学校が始まるまでの時間なら大丈夫だし、中にいても門番が知らせてくれるからね」
わー! シンディも授業で行ってみたかっただろうなぁ! うん、行くよ!
「まだ日が昇らないうちからいつも行ってるんでしょ? 当日はここで待ち合わせってことでいい?」
あたしは大きく頷いた。初めての魔石洞窟も、初めてのアルとの採掘も楽しみだなー!
「最初はさ、ただ漠然とみんなを雇いたいなぁ……くらいの気持ちだったの。でもさ面接をしてみたら『牧畜をやっていました』とか『農業が得意です』とか『裁縫は任せてください』とか、仕事さえ与えたら人力でやれる感じでしょ? ちなみにその辺って魔法でどうなってるの?」
疑問に思ったことを聞いてみると、牧畜だと餌やりや掃除、屠殺などを魔法で行っていて、農業も水やりや収穫を魔法でやっていて、裁縫も魔法……ってほとんど全部じゃん! 牧畜や農業はお金のある主たちが魔法を使っているから、人力でやっている場所に人が集まって空きがないんだとか。どの業界もいろんなことに魔法を使ってるけど、魔力の質で出来上がりに差が出てしまうらしい。だけど今はどんなものもほとんど魔法製のものばかりらしい。
「出来るかどうかは別として、大きな土地を買って牧畜と農業をやってもらって、そこで生産されたものをレストランで使うってどうよ? 『魔法を使わず手作業で育てました』とか言ってさ。お裁縫が得意な人たちには制服を作ってもらいたいし。余った布だって売ればいいわけでしょ」
みんなは口を開けたまま呆然としているけど、やっぱ無謀かなぁ。
「それでさ、何にしても魔法で作ったものよりも、チマチマと手作業で作った方が良いものを作ったらカッコイイと思わない?」
あたしの言葉を聞いたみんなは「そんなことを考えたこともなかった」なんて言う。当然だよね、魔法がある世界でみんなは魔法を使えるのが当たり前だから。元々魔法なんて無縁のただの日本人だったあたしは魔法に憧れはあったけど、この世界の実際の現状を見ちゃうと一般の庶民層や貧困層のほうに気持ちが偏っちゃう。
「けど何をするにしてもお金だよね」
少し困り顔のアルはとっても現実的なことを言う。やっぱりお金がなきゃ何も出来ないのはリアルでもゲームの世界でも変わらないか。
「頼ってよ、俺のこと。あげるって言っても受け取らないだろうから、貸すよ? いくらでも」
カータスが階段を昇って来ながらそんなことを言う。あれ? いつの間に下に行ってたんだろ?
「さっきのオッサン、見ててイライラしたからお仕置きしてきた」
眩しいほどの笑顔でカータスは話すけど、待って……。
「え? カータス? お仕置きって……え?」
この部屋の全員が呆気にとられてたけど、カータスは元暗殺者だ。物騒で良からぬことを考えてしまい、みんな顔に出てたんだと思う。
「大丈夫、命は取ってない。ただ話をしただけ。なんかね、引っ越しするって言って街から出て行ったよ」
ニコニコ顔のカータスが逆に怖い。話をしただけであの手のタイプは街から出て行かないでしょ……。相当追い込みをかけたんだね……。あたしはなんとなくそれに気付いちゃったけど、気付かないフリをした。
さらにカータスは何番目に並んでたこういう人と、何番目に並んでたこういう特徴の人と指定した上で「あのオッサンほどじゃないけど、やめたほうがいい」なんて言う。さすが元暗殺者だよ。人の並びとか簡単に覚えちゃうし、見た目では分かんないヤバさとか分かっちゃうんだね。
「……ありがとカータス、その人たちは雇わない。あとさ、仮にお金を借りてもそんな簡単に土地を買えるかなぁ……」
問題は山積みで途方もない。
「土地なら俺の家の近くにいっぱいあるぞ? 郊外だから買い手がつかないって聞いたけど。な、じーちゃん?」
今までおとなしかったマックがマーズニさんに同意を求めた。話を振られたマーズニさんが頷きながら話し始めた。
「そうですね。街の中心部から離れていますから土地は安いですよ? 土地の持ち主も知っておりますし交渉いたしますか?」
マ? マーズニさん! そしてこのガバガバゆるゆる設定のゲームに感謝だよ!
「何とぞよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げるとみんなから笑われちゃった。あたし真面目に言ってるのにな。
「では早速行って参ります。金額さえ分かればお嬢様も動きやすいでしょうし」
マーズニさんマジ感謝! 超頼りになる! マックも地主さんと面識があるらしくて、「久しぶりに顔を出すか」と言ってマーズニさんと一緒に向かって行った。
なんかさ、少しずつ良き方向に進んでるんじゃね? 家のあの親子を追い出すって問題もあるけどあっちはストレスいっぱい、こっちの仕事関係は楽しい感じ。家でのストレスを仕事で発散しつつ稼ごうじゃない!
「シンディ、明後日のことなんだけどさいつも郊外の魔石洞窟に行ってるんでしょ? 魔法学校の方に行かない? そっちの方が馴染み深くて」
そういえば魔法学校の生徒はその魔石洞窟に入るって言ってたもんね。
「いいけど夜しか入れないんじゃないの?」
「正確には朝までだよ。学校が始まるまでの時間なら大丈夫だし、中にいても門番が知らせてくれるからね」
わー! シンディも授業で行ってみたかっただろうなぁ! うん、行くよ!
「まだ日が昇らないうちからいつも行ってるんでしょ? 当日はここで待ち合わせってことでいい?」
あたしは大きく頷いた。初めての魔石洞窟も、初めてのアルとの採掘も楽しみだなー!
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