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みんなのお願い
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魔法の修行でたくさん魔力を使ったおかげか、ノーマル状態でも前より魔力が見えるようになってきた。魔力が見えるってことは、エリザベスのあの地味な嫌がらせに対処できるようになったってわけ。廊下でバッタリ出くわす度にいつものように足元に絨毯トラップを作るけど、あたしはそれを華麗にかわす。もちろんあたしだってそこまでバカじゃないから、魔力の動きが見えてるけど見えてないように振る舞う。あくまでもたまたま引っかからない偶然を装う。
「また引っかからなかったわ!」
「なんて腹立たしいのかしら!」
いや、アンタらさ、丸聞こえなんだけど。あたしは聞こえないフリもして、普通に普通~に行動するけど心の中だけは本音を言わせてもらうわ。
ザマァァァァァァ! そんなクソみたいな魔法にはもう引っかからないわ! バーカバーカ!
何ならあたしがキャサリンの足元にトラップを作ってやり返してる。エリザベスは自分が発動させたものか他人の魔法なのか分からないらしくて、キャサリンがトラップに引っかかると「キャシー! ごめんなさい!」なんて謝ったりしている。やっぱりコイツら大したことないわ。さらにキャサリンは魔法が使えないのがほぼほぼ確定だわ。あたしはニヤけるのを必死にこらえる。
だけど要注意なのがやっぱり継母の存在だ。あの魔力は桁違いで、継母が視界に入っただけで、ううん、隣の部屋にいるだけで背筋がゾクリと寒くなる。アルが気を利かせてくれて、アルの魔力を抑えるピアスと同じ魔石で目立たないヘアピンを作ってくれた。コレのおかげであたしの魔力が上がっているのはバレていないっぽい。あの継母の魔力を上回るか、せめて同等くらいになるまで修行を続けないとな。
────
「みんなお疲れ~!」
ある日いつものように抜け出してお店に行くと、クロエとエマが窓に張り付いて外を見ていた。
「どしたの? なんかあった?」
「あ……お疲れ様です」
「向かいのお店が閉店するらしくて……」
二人は残念そうに言いながら外を見ている。どうやらお向かいのレストランがあと数日で閉店するらしい。
「あのお店が無くなったら、私たちお弁当作らないとね……」
「え? この辺って他に食べられる場所ないの?」
あたしは長時間お店にいることが少なかったから知らなかったけど、どうやらこの辺ではそのレストランしかランチができる場所がないらしい。みんな生活が苦しいだろうから、ランチのレシートを持って来てくれたら半額補助してたんだけど、お店が無くなったら自分で弁当を作る手間暇と出費が増えてしまう。
「それは困ったねぇ……」
アゴに手を当てて呟くと何やら熱い視線を感じる。クロエとエマがすがるような目であたしを見つめている。
「お母さんから聞いたんですけど……」
「お父さんから聞いたんですけど……」
ハモった二人は顔を見合わせて照れ笑いをしている。どういうことか聞くと、前に料理長に頼んで作ってもらったハンバーガーが食べたいと言う。料理長もクレアさんも一度家で作ってくれたらしく、手軽に食べられるのに美味しくてすっかり虜になったんだとか。さらに二人は続ける。
「本当に毎日でも食べたいって思ったんです!」
「私たちの友人も仕事を探しているんです!」
マ? この辺、働く場所も少ないわけ? って聞くと、魔法が使えない人が働ける場所は競争率が高くて、経験のない若い人ほどなかなか仕事に有りつけないって言うし。さらにその話が聞こえたジェームズとジョンまで「友人が」とか「知人が」って言う。
「……まさかレストランをやれと?」
ニブイあたしでもみんなの言いたいことが分かってそう聞くと、めっちゃ笑顔で頷いてるし。
「待って待って……その前に料理ができる人いるの?」
「あの……僕、料理できます……。こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、僕は接客が苦手で料理をしているほうが向いてると思うんです……」
普段から気の弱そうなジェームズがビクビクしながら話している。あぁ……確かにいつも無理してる感はあったよなぁ……。無理させてストレスで倒れられても困るし……。
「ちょっと待って。一旦この話は保留!」
そしてあたしは二階に駆け上がる。あんまりお客さんの来ない二階は溜まり場みたいになってて、あたしの仲間たちが勢揃いしていた。
「……あのさ、お金ってどれくらいあるかな?」
唐突に真顔でお金の話をしたものだから、みんなにガチで心配される。魔石の採掘で手に入れたお金は持って帰ると危ないからマーズニさんに預けてある。というか、魔法協会から承認されているこの建物は警備会社もビックリの鉄壁の守りで固められているから、この二階の金庫にあたし専用の金庫を置かせてもらってお金を入れてるんだよね。
金庫に近付き手を伸ばすと「まずは話を!」とみんな焦って言うから、さっきのクロエたちの話をすることにした。
「また引っかからなかったわ!」
「なんて腹立たしいのかしら!」
いや、アンタらさ、丸聞こえなんだけど。あたしは聞こえないフリもして、普通に普通~に行動するけど心の中だけは本音を言わせてもらうわ。
ザマァァァァァァ! そんなクソみたいな魔法にはもう引っかからないわ! バーカバーカ!
何ならあたしがキャサリンの足元にトラップを作ってやり返してる。エリザベスは自分が発動させたものか他人の魔法なのか分からないらしくて、キャサリンがトラップに引っかかると「キャシー! ごめんなさい!」なんて謝ったりしている。やっぱりコイツら大したことないわ。さらにキャサリンは魔法が使えないのがほぼほぼ確定だわ。あたしはニヤけるのを必死にこらえる。
だけど要注意なのがやっぱり継母の存在だ。あの魔力は桁違いで、継母が視界に入っただけで、ううん、隣の部屋にいるだけで背筋がゾクリと寒くなる。アルが気を利かせてくれて、アルの魔力を抑えるピアスと同じ魔石で目立たないヘアピンを作ってくれた。コレのおかげであたしの魔力が上がっているのはバレていないっぽい。あの継母の魔力を上回るか、せめて同等くらいになるまで修行を続けないとな。
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「みんなお疲れ~!」
ある日いつものように抜け出してお店に行くと、クロエとエマが窓に張り付いて外を見ていた。
「どしたの? なんかあった?」
「あ……お疲れ様です」
「向かいのお店が閉店するらしくて……」
二人は残念そうに言いながら外を見ている。どうやらお向かいのレストランがあと数日で閉店するらしい。
「あのお店が無くなったら、私たちお弁当作らないとね……」
「え? この辺って他に食べられる場所ないの?」
あたしは長時間お店にいることが少なかったから知らなかったけど、どうやらこの辺ではそのレストランしかランチができる場所がないらしい。みんな生活が苦しいだろうから、ランチのレシートを持って来てくれたら半額補助してたんだけど、お店が無くなったら自分で弁当を作る手間暇と出費が増えてしまう。
「それは困ったねぇ……」
アゴに手を当てて呟くと何やら熱い視線を感じる。クロエとエマがすがるような目であたしを見つめている。
「お母さんから聞いたんですけど……」
「お父さんから聞いたんですけど……」
ハモった二人は顔を見合わせて照れ笑いをしている。どういうことか聞くと、前に料理長に頼んで作ってもらったハンバーガーが食べたいと言う。料理長もクレアさんも一度家で作ってくれたらしく、手軽に食べられるのに美味しくてすっかり虜になったんだとか。さらに二人は続ける。
「本当に毎日でも食べたいって思ったんです!」
「私たちの友人も仕事を探しているんです!」
マ? この辺、働く場所も少ないわけ? って聞くと、魔法が使えない人が働ける場所は競争率が高くて、経験のない若い人ほどなかなか仕事に有りつけないって言うし。さらにその話が聞こえたジェームズとジョンまで「友人が」とか「知人が」って言う。
「……まさかレストランをやれと?」
ニブイあたしでもみんなの言いたいことが分かってそう聞くと、めっちゃ笑顔で頷いてるし。
「待って待って……その前に料理ができる人いるの?」
「あの……僕、料理できます……。こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、僕は接客が苦手で料理をしているほうが向いてると思うんです……」
普段から気の弱そうなジェームズがビクビクしながら話している。あぁ……確かにいつも無理してる感はあったよなぁ……。無理させてストレスで倒れられても困るし……。
「ちょっと待って。一旦この話は保留!」
そしてあたしは二階に駆け上がる。あんまりお客さんの来ない二階は溜まり場みたいになってて、あたしの仲間たちが勢揃いしていた。
「……あのさ、お金ってどれくらいあるかな?」
唐突に真顔でお金の話をしたものだから、みんなにガチで心配される。魔石の採掘で手に入れたお金は持って帰ると危ないからマーズニさんに預けてある。というか、魔法協会から承認されているこの建物は警備会社もビックリの鉄壁の守りで固められているから、この二階の金庫にあたし専用の金庫を置かせてもらってお金を入れてるんだよね。
金庫に近付き手を伸ばすと「まずは話を!」とみんな焦って言うから、さっきのクロエたちの話をすることにした。
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******
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