37 / 65
いろいろ試してみよう
しおりを挟む
さっき火の魔法を使えたあたしは『集まって留まれ』と念じてみる。火は重なり合って炎のようになる。『半分くらいになれ』と念じると、火の半分は魔力の霧となって辺りを漂う。ほー! 面白い! なんかちゃんと使えてるっぽいんだけど!
ただの火と炎の中間くらいになった火の塊を見て思いついた。バカでほとんど学校に行っていなかった凛だけど、姉御や店長に連れられてバーベキューに行ったりしたから燃える原理はなんとなく分かる。バーベキューの火起こしは燃やすものと、何よりも風とその通り道が大事って店長は言ってた。だからあたしは地の魔法で枯れ草を集めて風の魔法で火の元に運び、適度な風を送るように念じると火は炎になる。風のおかげで渦巻く炎を見てさらに閃いた。
魔法への集中力を切らさないように魔徹を抜いて切っ先を前方へ向ける。その魔徹の刃の周りで炎よ渦巻け! なんて念じると、刃の周りに炎が螺旋を描く。
「見てコレ! マックみたいじゃない!?」
そう言って振り向くと三人は棒立ちであたしを見ていた。
「……シンディ、さっきまで魔法、使えなかったよね……?」
「……お嬢様……三つも複合させていますよね……?」
「……やべぇ……俺の剣よりカッコイイ……」
三人は呆然としながらそう呟く。なんかすごいことしたかな? じゃあもっとすごいことしなきゃ! なんて単純に思ったあたしは少し考える。……そうだ、あたしガソスタで働いてたわけじゃん。さすがにガソリンってのはこの世界になさそうだから、ダメ元で『ガスよ、集まって切っ先から噴射!』みたいなイメージを思い浮かべると、いろんな色の魔力が魔徹の先に集まり始める。家庭用のガスだとプロパンと都市ガスしか思い浮かばないけど、天然ガスはいろいろ種類があるもんね。それが『ガス』と一括りに念じたからかいろいろ集まって来たらしい。ガスの魔法があるのが驚きだけど。そしてあたしが念じたように前に真っ直ぐに噴射されたタイミングで『点火!』なんて念じると、とんでもない爆炎となって前方へ飛んで行った。
「……ヤバ」
自分でやったことなのに引いてしまって、恐る恐る後ろを振り向くと三人は拳が入りそうなくらい口を開けている。……やっぱドン引きするよね……。
「……シンディ、ちょっと休憩。座って」
明らかにドン引きしているカータスは草むらに腰を下ろすと他の面々も座り始める。怒られるような気がしたあたしは草の上に正座する。
「……調子に乗りました、すみません」
凛の必殺技『怒られる前に謝る』を発動すると、全員になんで謝るのと聞き返された。
「むしろ、そんなに複合させて、自由に魔法を使えるなんて思ってなかったの。シンディはイメージするのが上手」
「いやはや……四角四面な教え方ばかりだったのを反省するばかりです……」
「シンディ! マジかっけぇー!」
三人ともそれぞれ別の感想をもらしたけど、一応褒められているみたい。なんだか照れくさくなっちゃう。
「ただ、魔法を使うのに慣れてないでしょ? 少し休んで回復。これ大事」
初心者のあたしは自分のことなのにあまり分かんないけど、カータスとマーズニさんが見るところによると体内の魔力が減っているらしい。多分、あたしの体が車で魔力がガソリンで魔法がアクセルみたいなものなのかな? あれ? なんか違う?
「あのね、マーズニさんのような火の魔法を使う人は、火の魔力だけで火力を上げるの。シンディ、それも出来ちゃったでしょ? それに教えてもいないのに、魔法の複合までして威力を上げたでしょ? 実は結構ありえない」
マ? ポカーンとしてカータスを見ると「その顔」と笑われてしまった。
「俺、忍の魔法使いって最初に言ったよね? それって、地の魔法の応用なの。足元にあるものを足音が出ないような硬さにしたり材質にしたり。きっとシンディも出来る」
マ?
「魔法を同時に使うとそれだけ体内の魔力は消費されます。単体で使う分には減りにくいのですよ」
マーズニさんがそう言うから、あたしは立ち上がって普通に歩く。足音に集中すると草を踏む音、土を蹴る音とか普段意識のしていない音が聞こえる。地の魔法を発動させて柔らかい素材になれと念じると柔らかくなったけど、歩き方が悪いのかやっぱり少し音が出ちゃう。
「そんなにすぐに出来ないよ」
カータスはそう笑うけど、なんか悔しいあたしはダメ元で念じてみた。
『海綿みたいなスポンジ状になーれ』
地面の見た目は変わらないけど、足元がモフモフとした感触になる。海綿みたいな感じもするし、綿のような感じでもある。どうやら魔法はイメージの力が大きいっぽい。三人の周りをそのままダッシュすると足音は聞こえない。
「「「嘘だ……」」」
三人の呟きにあたしはふんぞり返って笑う。どうやらあたしは偉大なる魔法使いの一歩を踏み出したっぽい。
ただの火と炎の中間くらいになった火の塊を見て思いついた。バカでほとんど学校に行っていなかった凛だけど、姉御や店長に連れられてバーベキューに行ったりしたから燃える原理はなんとなく分かる。バーベキューの火起こしは燃やすものと、何よりも風とその通り道が大事って店長は言ってた。だからあたしは地の魔法で枯れ草を集めて風の魔法で火の元に運び、適度な風を送るように念じると火は炎になる。風のおかげで渦巻く炎を見てさらに閃いた。
魔法への集中力を切らさないように魔徹を抜いて切っ先を前方へ向ける。その魔徹の刃の周りで炎よ渦巻け! なんて念じると、刃の周りに炎が螺旋を描く。
「見てコレ! マックみたいじゃない!?」
そう言って振り向くと三人は棒立ちであたしを見ていた。
「……シンディ、さっきまで魔法、使えなかったよね……?」
「……お嬢様……三つも複合させていますよね……?」
「……やべぇ……俺の剣よりカッコイイ……」
三人は呆然としながらそう呟く。なんかすごいことしたかな? じゃあもっとすごいことしなきゃ! なんて単純に思ったあたしは少し考える。……そうだ、あたしガソスタで働いてたわけじゃん。さすがにガソリンってのはこの世界になさそうだから、ダメ元で『ガスよ、集まって切っ先から噴射!』みたいなイメージを思い浮かべると、いろんな色の魔力が魔徹の先に集まり始める。家庭用のガスだとプロパンと都市ガスしか思い浮かばないけど、天然ガスはいろいろ種類があるもんね。それが『ガス』と一括りに念じたからかいろいろ集まって来たらしい。ガスの魔法があるのが驚きだけど。そしてあたしが念じたように前に真っ直ぐに噴射されたタイミングで『点火!』なんて念じると、とんでもない爆炎となって前方へ飛んで行った。
「……ヤバ」
自分でやったことなのに引いてしまって、恐る恐る後ろを振り向くと三人は拳が入りそうなくらい口を開けている。……やっぱドン引きするよね……。
「……シンディ、ちょっと休憩。座って」
明らかにドン引きしているカータスは草むらに腰を下ろすと他の面々も座り始める。怒られるような気がしたあたしは草の上に正座する。
「……調子に乗りました、すみません」
凛の必殺技『怒られる前に謝る』を発動すると、全員になんで謝るのと聞き返された。
「むしろ、そんなに複合させて、自由に魔法を使えるなんて思ってなかったの。シンディはイメージするのが上手」
「いやはや……四角四面な教え方ばかりだったのを反省するばかりです……」
「シンディ! マジかっけぇー!」
三人ともそれぞれ別の感想をもらしたけど、一応褒められているみたい。なんだか照れくさくなっちゃう。
「ただ、魔法を使うのに慣れてないでしょ? 少し休んで回復。これ大事」
初心者のあたしは自分のことなのにあまり分かんないけど、カータスとマーズニさんが見るところによると体内の魔力が減っているらしい。多分、あたしの体が車で魔力がガソリンで魔法がアクセルみたいなものなのかな? あれ? なんか違う?
「あのね、マーズニさんのような火の魔法を使う人は、火の魔力だけで火力を上げるの。シンディ、それも出来ちゃったでしょ? それに教えてもいないのに、魔法の複合までして威力を上げたでしょ? 実は結構ありえない」
マ? ポカーンとしてカータスを見ると「その顔」と笑われてしまった。
「俺、忍の魔法使いって最初に言ったよね? それって、地の魔法の応用なの。足元にあるものを足音が出ないような硬さにしたり材質にしたり。きっとシンディも出来る」
マ?
「魔法を同時に使うとそれだけ体内の魔力は消費されます。単体で使う分には減りにくいのですよ」
マーズニさんがそう言うから、あたしは立ち上がって普通に歩く。足音に集中すると草を踏む音、土を蹴る音とか普段意識のしていない音が聞こえる。地の魔法を発動させて柔らかい素材になれと念じると柔らかくなったけど、歩き方が悪いのかやっぱり少し音が出ちゃう。
「そんなにすぐに出来ないよ」
カータスはそう笑うけど、なんか悔しいあたしはダメ元で念じてみた。
『海綿みたいなスポンジ状になーれ』
地面の見た目は変わらないけど、足元がモフモフとした感触になる。海綿みたいな感じもするし、綿のような感じでもある。どうやら魔法はイメージの力が大きいっぽい。三人の周りをそのままダッシュすると足音は聞こえない。
「「「嘘だ……」」」
三人の呟きにあたしはふんぞり返って笑う。どうやらあたしは偉大なる魔法使いの一歩を踏み出したっぽい。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる