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いろいろ試してみよう

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 さっき火の魔法を使えたあたしは『集まって留まれ』と念じてみる。火は重なり合って炎のようになる。『半分くらいになれ』と念じると、火の半分は魔力の霧となって辺りを漂う。ほー! 面白い! なんかちゃんと使えてるっぽいんだけど!

 ただの火と炎の中間くらいになった火の塊を見て思いついた。バカでほとんど学校に行っていなかった凛だけど、姉御や店長に連れられてバーベキューに行ったりしたから燃える原理はなんとなく分かる。バーベキューの火起こしは燃やすものと、何よりも風とその通り道が大事って店長は言ってた。だからあたしは地の魔法で枯れ草を集めて風の魔法で火の元に運び、適度な風を送るように念じると火は炎になる。風のおかげで渦巻く炎を見てさらに閃いた。

 魔法への集中力を切らさないように魔徹を抜いて切っ先を前方へ向ける。その魔徹の刃の周りで炎よ渦巻け! なんて念じると、刃の周りに炎が螺旋を描く。

「見てコレ! マックみたいじゃない!?」

 そう言って振り向くと三人は棒立ちであたしを見ていた。

「……シンディ、さっきまで魔法、使えなかったよね……?」

「……お嬢様……三つも複合させていますよね……?」

「……やべぇ……俺の剣よりカッコイイ……」

 三人は呆然としながらそう呟く。なんかすごいことしたかな? じゃあもっとすごいことしなきゃ! なんて単純に思ったあたしは少し考える。……そうだ、あたしガソスタで働いてたわけじゃん。さすがにガソリンってのはこの世界になさそうだから、ダメ元で『ガスよ、集まって切っ先から噴射!』みたいなイメージを思い浮かべると、いろんな色の魔力が魔徹の先に集まり始める。家庭用のガスだとプロパンと都市ガスしか思い浮かばないけど、天然ガスはいろいろ種類があるもんね。それが『ガス』と一括りに念じたからかいろいろ集まって来たらしい。ガスの魔法があるのが驚きだけど。そしてあたしが念じたように前に真っ直ぐに噴射されたタイミングで『点火!』なんて念じると、とんでもない爆炎となって前方へ飛んで行った。

「……ヤバ」

 自分でやったことなのに引いてしまって、恐る恐る後ろを振り向くと三人は拳が入りそうなくらい口を開けている。……やっぱドン引きするよね……。

「……シンディ、ちょっと休憩。座って」

 明らかにドン引きしているカータスは草むらに腰を下ろすと他の面々も座り始める。怒られるような気がしたあたしは草の上に正座する。

「……調子に乗りました、すみません」

 凛の必殺技『怒られる前に謝る』を発動すると、全員になんで謝るのと聞き返された。

「むしろ、そんなに複合させて、自由に魔法を使えるなんて思ってなかったの。シンディはイメージするのが上手」

「いやはや……四角四面な教え方ばかりだったのを反省するばかりです……」

「シンディ! マジかっけぇー!」

 三人ともそれぞれ別の感想をもらしたけど、一応褒められているみたい。なんだか照れくさくなっちゃう。

「ただ、魔法を使うのに慣れてないでしょ? 少し休んで回復。これ大事」

 初心者のあたしは自分のことなのにあまり分かんないけど、カータスとマーズニさんが見るところによると体内の魔力が減っているらしい。多分、あたしの体が車で魔力がガソリンで魔法がアクセルみたいなものなのかな? あれ? なんか違う?

「あのね、マーズニさんのような火の魔法を使う人は、火の魔力だけで火力を上げるの。シンディ、それも出来ちゃったでしょ? それに教えてもいないのに、魔法の複合までして威力を上げたでしょ? 実は結構ありえない」

 マ? ポカーンとしてカータスを見ると「その顔」と笑われてしまった。

「俺、忍の魔法使いって最初に言ったよね? それって、地の魔法の応用なの。足元にあるものを足音が出ないような硬さにしたり材質にしたり。きっとシンディも出来る」

 マ?

「魔法を同時に使うとそれだけ体内の魔力は消費されます。単体で使う分には減りにくいのですよ」

 マーズニさんがそう言うから、あたしは立ち上がって普通に歩く。足音に集中すると草を踏む音、土を蹴る音とか普段意識のしていない音が聞こえる。地の魔法を発動させて柔らかい素材になれと念じると柔らかくなったけど、歩き方が悪いのかやっぱり少し音が出ちゃう。

「そんなにすぐに出来ないよ」

 カータスはそう笑うけど、なんか悔しいあたしはダメ元で念じてみた。

『海綿みたいなスポンジ状になーれ』

 地面の見た目は変わらないけど、足元がモフモフとした感触になる。海綿みたいな感じもするし、綿のような感じでもある。どうやら魔法はイメージの力が大きいっぽい。三人の周りをそのままダッシュすると足音は聞こえない。

「「「嘘だ……」」」

 三人の呟きにあたしはふんぞり返って笑う。どうやらあたしは偉大なる魔法使いの一歩を踏み出したっぽい。
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