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地球の偉人に感謝
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移民の町へと戻ると、引くほど驚いた。いや、素直に引いた。お父様の周りには、おびただしい数の杭が置かれている。お父様は一心不乱に杭を作っていたようだ。
「……じいやは畑に向かってもらって良いかしら? あと皆に砂が売れることになった報告と、砂集めをお願いするわ」
「はい、分かりました」
そう言って松風から降りると、松風から荷車を外し黒王の所へ連れて行った。
「じゃあブルーノさん、私たちも行きましょう」
ブルーノさんに声をかけると、ブルーノさんよりも先に反応したのがペーターさんだ。
「さっき少し聞こえたが、実験とはなんだ? 私も行く」
ワクワクとウズウズが、見ただけで分かるようにあふれ出ている。力仕事は出来ないと言い切るペーターさんだ。私たちはペーターさんも連れて、ブルーノさんの工房へと向かった。
────
「スイレンただいま。今はどんな感じかしら?」
「あ、カレンおかえり。今はみんなで羽の設計をしているんだ」
私からすればとてつもなく難しいことだが、スイレンは楽しそうに笑顔で答える。だが、ここでまたペーターさんが口を開いた。
「羽とはなんだ?」
「ほら、これがカレンちゃんが考えて、スイレン君が描いたものだ」
ブルーノさんは、黒板に描かれた大まかな設計図をペーターさんに見せると、ペーターさんの動きが止まった。
「……理解ができん」
その設計図は風車の設計図だ。ペーターさんは見たことも聞いたこともないと言う。
「私たちの広場に水車があるでしょう? あれは水の力を使っているけど、これは風の力を使うものなの」
そう説明するが、ペーターさんはまだ理解ができないと言う。
「風の力を使って水を組み上げるのよ。その為の実験よ」
そう言いながら蛇腹のホースを懐から出すと、スイレンもフランクさんもミースさんも手を止めて、目を輝かせながら私に注目する。
「ブルーノさん、何か細めの棒と、お水をいただいて良いかしら?」
用意された棒に蛇腹のホースを巻き付け、水を張った深皿にそれを斜めに挿し入れる。
「この水はセノーテだと思ってちょうだい。そしてまだここにはないけれど、風車が回り……風車の軸は歯車にするの。それに対応した歯車を取り付けて、クランク機構も取り付けて、このホースが動くようにするの」
身振り手振りで説明をしながらホースをクルクルと回転させると、水に浸かっていない空中のホースの先から水が出てくる。
そうだ。これはアルキメデスポンプなのだ。揚水ポンプともいうが、これを使ってセノーテから水を組み上げる。
あまりにも静かなので顔を上げると、三者三様という言葉があるが、五者五様の驚きの表情をしている。
この反応であれば、観光の目玉としても申し分ないだろうと、思わずニヤけてしまう。
「これなら一度作ってしまえば、風が止まらない限り水を汲み上げ続けるわ。あと、この風車小屋の中の軸にも細工をするから、ムギンを挽いたりいろいろなことが出来るわ」
鼻息荒く、両手を腰にあててそう言うと拍手が起きた。
「「「「素晴らしい!」」」」
「カレンすごい!」
人の少ない移民の町だ。全て手作業で何かをするのは悪いことではないが、出来る限りその負担を減らしてあげたい。
「ただ、この汲み上げ装置の仕組みは分かるのだけれど、どれくらいの水量を汲み上げられるかまでは分からないのよ。
それと、これはただの筒で実験をしたけれど、筒の中に螺旋状に羽をつける方法もあるわ。それだったら木製でも作れるから、ニコライさんの金属加工が無理なら、その時は木で作りましょう」
その言葉に、スイレンたちは力強く頷いてくれた。
「それでね、私は水量の計算は出来そうにないので、皆さんそこはお願いします……」
苦笑いで頭を下げると、工房内に笑い声が響いた。そしてスイレンたちは「そういうことは全部任せて!」と、実に頼もしい発言をしてくれた。
全部を一人でやることは難しいが、苦手なことを手伝ってくれる存在は本当にありがたい。
ブルーノさんも、今後ニコライさんと、どんな大きさにするのか等を話し合ってくれると言う。
「それじゃ私はそろそろ畑を見てくるわ。ペーターさんはここにいる?」
そう問いかけると、ペーターさんはアルキメデスポンプで遊んで……いや、実験を始めた。ここに残るのだろう。
スイレンたちもまた、各種設計に取りかかったので、私は畑へ向かうべく工房をあとにした。
「……姫様……」
外へ出ると、ゲンナリとした表情のじいやがこちらへ向かって来ているところだった。
「? 何かあったの?」
小首を傾げて聞けば、じいやはそっと指をさす。その方向を見ると、お父様は一心不乱に杭を地面に刺しては縄で固定している。その速さはやはり重機ばりだ。
「……」
お父様のやっていることは正しい。だが、いつもの方向音痴も発動され、予定よりもおそろしく広範囲に杭を打っているのだ。
「……モクレン様が刺したものを抜けるのは私くらいでしょうが、あまりにも本数が多すぎまして……。今さら一から直すのも……」
じいやのゲンナリの原因が分かって、私もまたゲンナリしてしまった。
「……じいや……このままだと移民の町が移民の国になってしまうわ……。そっと軌道修正をお願いするわ……」
そんなじいやは盛大なため息を吐きながら、お父様の手伝いに向かったのだった。
「……じいやは畑に向かってもらって良いかしら? あと皆に砂が売れることになった報告と、砂集めをお願いするわ」
「はい、分かりました」
そう言って松風から降りると、松風から荷車を外し黒王の所へ連れて行った。
「じゃあブルーノさん、私たちも行きましょう」
ブルーノさんに声をかけると、ブルーノさんよりも先に反応したのがペーターさんだ。
「さっき少し聞こえたが、実験とはなんだ? 私も行く」
ワクワクとウズウズが、見ただけで分かるようにあふれ出ている。力仕事は出来ないと言い切るペーターさんだ。私たちはペーターさんも連れて、ブルーノさんの工房へと向かった。
────
「スイレンただいま。今はどんな感じかしら?」
「あ、カレンおかえり。今はみんなで羽の設計をしているんだ」
私からすればとてつもなく難しいことだが、スイレンは楽しそうに笑顔で答える。だが、ここでまたペーターさんが口を開いた。
「羽とはなんだ?」
「ほら、これがカレンちゃんが考えて、スイレン君が描いたものだ」
ブルーノさんは、黒板に描かれた大まかな設計図をペーターさんに見せると、ペーターさんの動きが止まった。
「……理解ができん」
その設計図は風車の設計図だ。ペーターさんは見たことも聞いたこともないと言う。
「私たちの広場に水車があるでしょう? あれは水の力を使っているけど、これは風の力を使うものなの」
そう説明するが、ペーターさんはまだ理解ができないと言う。
「風の力を使って水を組み上げるのよ。その為の実験よ」
そう言いながら蛇腹のホースを懐から出すと、スイレンもフランクさんもミースさんも手を止めて、目を輝かせながら私に注目する。
「ブルーノさん、何か細めの棒と、お水をいただいて良いかしら?」
用意された棒に蛇腹のホースを巻き付け、水を張った深皿にそれを斜めに挿し入れる。
「この水はセノーテだと思ってちょうだい。そしてまだここにはないけれど、風車が回り……風車の軸は歯車にするの。それに対応した歯車を取り付けて、クランク機構も取り付けて、このホースが動くようにするの」
身振り手振りで説明をしながらホースをクルクルと回転させると、水に浸かっていない空中のホースの先から水が出てくる。
そうだ。これはアルキメデスポンプなのだ。揚水ポンプともいうが、これを使ってセノーテから水を組み上げる。
あまりにも静かなので顔を上げると、三者三様という言葉があるが、五者五様の驚きの表情をしている。
この反応であれば、観光の目玉としても申し分ないだろうと、思わずニヤけてしまう。
「これなら一度作ってしまえば、風が止まらない限り水を汲み上げ続けるわ。あと、この風車小屋の中の軸にも細工をするから、ムギンを挽いたりいろいろなことが出来るわ」
鼻息荒く、両手を腰にあててそう言うと拍手が起きた。
「「「「素晴らしい!」」」」
「カレンすごい!」
人の少ない移民の町だ。全て手作業で何かをするのは悪いことではないが、出来る限りその負担を減らしてあげたい。
「ただ、この汲み上げ装置の仕組みは分かるのだけれど、どれくらいの水量を汲み上げられるかまでは分からないのよ。
それと、これはただの筒で実験をしたけれど、筒の中に螺旋状に羽をつける方法もあるわ。それだったら木製でも作れるから、ニコライさんの金属加工が無理なら、その時は木で作りましょう」
その言葉に、スイレンたちは力強く頷いてくれた。
「それでね、私は水量の計算は出来そうにないので、皆さんそこはお願いします……」
苦笑いで頭を下げると、工房内に笑い声が響いた。そしてスイレンたちは「そういうことは全部任せて!」と、実に頼もしい発言をしてくれた。
全部を一人でやることは難しいが、苦手なことを手伝ってくれる存在は本当にありがたい。
ブルーノさんも、今後ニコライさんと、どんな大きさにするのか等を話し合ってくれると言う。
「それじゃ私はそろそろ畑を見てくるわ。ペーターさんはここにいる?」
そう問いかけると、ペーターさんはアルキメデスポンプで遊んで……いや、実験を始めた。ここに残るのだろう。
スイレンたちもまた、各種設計に取りかかったので、私は畑へ向かうべく工房をあとにした。
「……姫様……」
外へ出ると、ゲンナリとした表情のじいやがこちらへ向かって来ているところだった。
「? 何かあったの?」
小首を傾げて聞けば、じいやはそっと指をさす。その方向を見ると、お父様は一心不乱に杭を地面に刺しては縄で固定している。その速さはやはり重機ばりだ。
「……」
お父様のやっていることは正しい。だが、いつもの方向音痴も発動され、予定よりもおそろしく広範囲に杭を打っているのだ。
「……モクレン様が刺したものを抜けるのは私くらいでしょうが、あまりにも本数が多すぎまして……。今さら一から直すのも……」
じいやのゲンナリの原因が分かって、私もまたゲンナリしてしまった。
「……じいや……このままだと移民の町が移民の国になってしまうわ……。そっと軌道修正をお願いするわ……」
そんなじいやは盛大なため息を吐きながら、お父様の手伝いに向かったのだった。
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