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伝説の儀式再び
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「カレン嬢!」
「カレン姫、スイレン王子、隣へどうぞ」
ニコライさんを遮るように、ルーカス王は私とスイレンを手招きする。
ちゃっかり隣に座ろうと思っていたが、あのスイレンが俊敏な動きでルーカス王の隣を陣取った。ニコライさんの隣には座りたくないので、仕方なくスイレンの横に腰を降ろした。
「楽しみですね」
「僕たちも見たことがないからね」
ルーカス王の言葉にスイレンが顔色一つ変えずに答えた。どうやら私とルーカス王の会話を妨害する気らしい。スイレンは、ルーカス王への私の態度が気に入らないようなのだ。
とはいえ、今日は大人たちが楽しみにしている結婚の儀式を見られるのだ。私の意識はどちらかと言えば儀式に向いている。
タデのあの発言により、大人たちはさらにさらにやる気になった。あの日から準備も含め、広場の住居も移民の町の住居も数軒を完成させたほどだ。
移民の町の人たちにも、新しいヒーズル王国民として儀式を見せるべきだとの声が上がり、どうせならルーカス王たちも呼び、親交を深めようということになったのだ。
なので開催場所は移民の町となった。そのため、元々の森の民全員が森の中の墓所を訪れ、今回だけ儀式を森で開催しない謝罪と、新たな民の誕生の報告を亡くなった者たちにした。
そこからは全員がやれるだけの仕事をし、私が『舞台』というものの存在を口走ってしまったがために移民の町に舞台を作り上げた。今日のこの儀式が終われば解体され、木材は移民の町の建築などに使ってもらう予定だ。
そしてお父様とお母様は必要なものを探しに走り回り、おババさんが中心となり衣装まで凝った作りになったらしい。私とスイレンにも衣装は内緒なのだ。
布を染める設備も時間もないことから、じいやまでもがウキウキでテックノン王国から布を取り寄せていたのには驚いた。
そんな大人たちの汗と涙の結晶が間もなく始まろうとしている。ヒーズル王国全国民と、テックノン王国の護衛を含めた数十人が今か今かと舞台に注目していた。
舞台の四隅には細い柱が立てられ、横断幕のように布を張って目隠しをしている。お父様とお母様はその中にいる。
着付けなどを手伝っていたおババさんたち数名が布の中から出てきた。すると近くの男たちが布を取り外した。
舞台の上にはお父様とお母様だけがいる。全体的に白い衣装を着て、頭からレースのカーテンのような布をかぶりしゃがんでいる。表情などは分からない。
「ハァーハッ!」
舞台の真ん前に陣取るじいやが良く通る声で叫ぶと、じいやの周りにいた老人たちが木の枝同士を打ち鳴らしたり、草笛で派手に音を出す。
本来であれば森の民の各村の村長たちが行う行為らしいが、村長が存在しない今、その役割はじいやたちに託されたのだ。
音が鳴り始めると二人は動き始めた。お母様は何かを摘む仕草をし、目の前に置いているカゴに入れる素振りを見せ、お父様は獣を狩るような仕草をしている。
その光景を見て「あ!」と、声を出したのはハコベさんだ。近くに座るハコベさんとタデがこちらを向き、タデがわざわざ来てくれて説明をしてくれた。
「儀式は二人の幼少期、青年期、そして二人の気持ちを表現する」
それは儀式の前に説明を受けていた。
「あれは私たちの結婚の儀式にやったものだ」
私やスイレン、ルーカス王たちにも聞こえるように説明をすると、驚く私たちをよそにタデはハコベさんの隣へと戻って行った。
しばらく同じような動作が続くと、またじいやの声と共に音が鳴る。するとお父様とお母様は立ち上がり、かぶっていた布を放り投げた。純白のワンピースのようなものを着た二人は微笑んでいる。
今回は『映え』を意識した大人たちに良い案はないかと聞かれヘアアレンジを教えたのだが、お母様は長い髪を三つ編みにしておさげにしている。私が前世の世界では幼い子がよくすると説明したので、若さを表現したのだろう。
それに対してお父様も長い髪を活かし、コーンロウとブレイズヘアを組み合わせた、ワイルドなポニーテールにしている。
そんな二人は背中を合わせたり見つめ合ったりと、仲睦まじく会話をしているように見える。するとまたしても「あ!」と声を上げた者がいた。
「「姫! 姫! これ私たちの!」」
振り向いてそう言ったのは、タデたちの隣に座るヒイラギ夫妻だ。楽しそうに嬉しそうに「懐かしい」と二人で話す様子は、舞台の上の二人に似ている。
どうやらお父様とお母様は、親友たちの儀式をオマージュしたようだ。
そしてまたじいやの掛け声がかかると……会場は一変した。
「モクレーン!!」
「レンゲー!!」
まるでアイドルのコンサート会場のような声援が飛び交い、私たち子どもや移民の町の人たち、テックノン王国の皆さんも驚いて顔を見合わせている。
さらに歓声が上がるので舞台を見れば、お父様とお母様は着ていた服を脱ぎ捨てた。なんと下に別の衣装を着ていたようだ。
お父様は上半身裸で、赤いゆったりとしたズボンを履いているのだが、ベルト代わりに巻いている布がギリギリのラインなのだ。何がギリギリかは乙女として口には出せないが、ギリギリのギリギリまで見える鍛え上げられた腹筋に女性陣はメロメロになっている。
そしてお母様はどこの踊り子かと思うほどの、露出の激しいベリーダンサーのような衣装を着ている。ブラのような形の赤い生地には金銀の宝飾品や派手な色の鳥の羽根が飾り付けられ、お母様もまたギリギリを攻める位置でスカートを履いている。と思ったが、スッと足を動かすと太ももが大胆に現れ、会場がやんややんやと盛り上がる。ほぼ裸のようなものだ……。
娘として色々と思うことはあるが、それよりも二人の存在感に目を奪われてしまう。
お母様はゆっくりとしゃがみながら円を描くようにこちらに背を向けると、お父様は最初の儀式に使ったカゴを持ち、お母様の正面へ向かう。そしてお母様はまたゆっくりと立ち上がりながらこちらを振り向き、髪をかき上げた。
おさげにしていた髪は長時間の三つ編みによってウェーブがかり、カゴに入れていたと思われる『クァ』という、桑の実に似た実を艶めかしく噛ると、その果汁を目尻に跳ね上げるように塗り、その唇にも塗った。
真紅の果汁によりメイクしたお母様は、衣装も相まってセクシー極まりない。
とてつもない歓声の中、お母様は誘うように微笑みながら舞台を縦横無尽に舞いながら移動すると、お父様も不敵に笑いながらお母様を追いかける。
……つい先日まで無理だと言っていた二人はどこへ行ったのやら、どう見てもノリノリである。
半裸のようなお母様は、跳ねながら舞いながら舞台を掛け巡るが、そのボンキュッボンなザ・パーフェクトボディをこれでもかと惜しみなく披露している。
お父様もまた荒々しく舞うが、その引き締まった体と筋肉に誰もが、特に女性陣が釘付けになってしまう。
やがてお母様を捕らえたお父様は、お母様の腰を引き寄せる。艶っぽい息づかいが聞こえて来そうな二人のその表情に、会場は静まり生唾を飲む音が聞こえそうだ。
うっとりとした表情のお母様は、自分の衣装から飾りの羽根を外し、お父様の髪にそれらを挿していく。
何を思ったのか、はたまた完全に二人の世界に入ってしまったのか、お母様は片脚をお父様に絡み付けた。会場はもはや無音である。……いけない予感がするわ……。
ハラハラとしていると、スイッチの入ったらしいお父様はその場でお母様を押し倒した。
「ダダダダダメー!! それ以上はダメー!!」
「うわ! カレン!?」
スイレンに覆いかぶさりながら叫ぶと、全ての人間が我にかえったようだ……。お父様とお母様は真っ赤になって慌てふためき、タデとヒイラギを除く全員が色気等々にあてられ次々に倒れてしまった。
そんなタデとヒイラギも「「記録更新……」」とつぶやきすぐに倒れてしまい、私と何が起こったのか理解出来ていないスイレンが皆を手当てしたのだった……。
そのおかげで、これでもかと言うほどルーカス王のお顔を堪能出来たので棚ぼた気分だわ。
「カレン姫、スイレン王子、隣へどうぞ」
ニコライさんを遮るように、ルーカス王は私とスイレンを手招きする。
ちゃっかり隣に座ろうと思っていたが、あのスイレンが俊敏な動きでルーカス王の隣を陣取った。ニコライさんの隣には座りたくないので、仕方なくスイレンの横に腰を降ろした。
「楽しみですね」
「僕たちも見たことがないからね」
ルーカス王の言葉にスイレンが顔色一つ変えずに答えた。どうやら私とルーカス王の会話を妨害する気らしい。スイレンは、ルーカス王への私の態度が気に入らないようなのだ。
とはいえ、今日は大人たちが楽しみにしている結婚の儀式を見られるのだ。私の意識はどちらかと言えば儀式に向いている。
タデのあの発言により、大人たちはさらにさらにやる気になった。あの日から準備も含め、広場の住居も移民の町の住居も数軒を完成させたほどだ。
移民の町の人たちにも、新しいヒーズル王国民として儀式を見せるべきだとの声が上がり、どうせならルーカス王たちも呼び、親交を深めようということになったのだ。
なので開催場所は移民の町となった。そのため、元々の森の民全員が森の中の墓所を訪れ、今回だけ儀式を森で開催しない謝罪と、新たな民の誕生の報告を亡くなった者たちにした。
そこからは全員がやれるだけの仕事をし、私が『舞台』というものの存在を口走ってしまったがために移民の町に舞台を作り上げた。今日のこの儀式が終われば解体され、木材は移民の町の建築などに使ってもらう予定だ。
そしてお父様とお母様は必要なものを探しに走り回り、おババさんが中心となり衣装まで凝った作りになったらしい。私とスイレンにも衣装は内緒なのだ。
布を染める設備も時間もないことから、じいやまでもがウキウキでテックノン王国から布を取り寄せていたのには驚いた。
そんな大人たちの汗と涙の結晶が間もなく始まろうとしている。ヒーズル王国全国民と、テックノン王国の護衛を含めた数十人が今か今かと舞台に注目していた。
舞台の四隅には細い柱が立てられ、横断幕のように布を張って目隠しをしている。お父様とお母様はその中にいる。
着付けなどを手伝っていたおババさんたち数名が布の中から出てきた。すると近くの男たちが布を取り外した。
舞台の上にはお父様とお母様だけがいる。全体的に白い衣装を着て、頭からレースのカーテンのような布をかぶりしゃがんでいる。表情などは分からない。
「ハァーハッ!」
舞台の真ん前に陣取るじいやが良く通る声で叫ぶと、じいやの周りにいた老人たちが木の枝同士を打ち鳴らしたり、草笛で派手に音を出す。
本来であれば森の民の各村の村長たちが行う行為らしいが、村長が存在しない今、その役割はじいやたちに託されたのだ。
音が鳴り始めると二人は動き始めた。お母様は何かを摘む仕草をし、目の前に置いているカゴに入れる素振りを見せ、お父様は獣を狩るような仕草をしている。
その光景を見て「あ!」と、声を出したのはハコベさんだ。近くに座るハコベさんとタデがこちらを向き、タデがわざわざ来てくれて説明をしてくれた。
「儀式は二人の幼少期、青年期、そして二人の気持ちを表現する」
それは儀式の前に説明を受けていた。
「あれは私たちの結婚の儀式にやったものだ」
私やスイレン、ルーカス王たちにも聞こえるように説明をすると、驚く私たちをよそにタデはハコベさんの隣へと戻って行った。
しばらく同じような動作が続くと、またじいやの声と共に音が鳴る。するとお父様とお母様は立ち上がり、かぶっていた布を放り投げた。純白のワンピースのようなものを着た二人は微笑んでいる。
今回は『映え』を意識した大人たちに良い案はないかと聞かれヘアアレンジを教えたのだが、お母様は長い髪を三つ編みにしておさげにしている。私が前世の世界では幼い子がよくすると説明したので、若さを表現したのだろう。
それに対してお父様も長い髪を活かし、コーンロウとブレイズヘアを組み合わせた、ワイルドなポニーテールにしている。
そんな二人は背中を合わせたり見つめ合ったりと、仲睦まじく会話をしているように見える。するとまたしても「あ!」と声を上げた者がいた。
「「姫! 姫! これ私たちの!」」
振り向いてそう言ったのは、タデたちの隣に座るヒイラギ夫妻だ。楽しそうに嬉しそうに「懐かしい」と二人で話す様子は、舞台の上の二人に似ている。
どうやらお父様とお母様は、親友たちの儀式をオマージュしたようだ。
そしてまたじいやの掛け声がかかると……会場は一変した。
「モクレーン!!」
「レンゲー!!」
まるでアイドルのコンサート会場のような声援が飛び交い、私たち子どもや移民の町の人たち、テックノン王国の皆さんも驚いて顔を見合わせている。
さらに歓声が上がるので舞台を見れば、お父様とお母様は着ていた服を脱ぎ捨てた。なんと下に別の衣装を着ていたようだ。
お父様は上半身裸で、赤いゆったりとしたズボンを履いているのだが、ベルト代わりに巻いている布がギリギリのラインなのだ。何がギリギリかは乙女として口には出せないが、ギリギリのギリギリまで見える鍛え上げられた腹筋に女性陣はメロメロになっている。
そしてお母様はどこの踊り子かと思うほどの、露出の激しいベリーダンサーのような衣装を着ている。ブラのような形の赤い生地には金銀の宝飾品や派手な色の鳥の羽根が飾り付けられ、お母様もまたギリギリを攻める位置でスカートを履いている。と思ったが、スッと足を動かすと太ももが大胆に現れ、会場がやんややんやと盛り上がる。ほぼ裸のようなものだ……。
娘として色々と思うことはあるが、それよりも二人の存在感に目を奪われてしまう。
お母様はゆっくりとしゃがみながら円を描くようにこちらに背を向けると、お父様は最初の儀式に使ったカゴを持ち、お母様の正面へ向かう。そしてお母様はまたゆっくりと立ち上がりながらこちらを振り向き、髪をかき上げた。
おさげにしていた髪は長時間の三つ編みによってウェーブがかり、カゴに入れていたと思われる『クァ』という、桑の実に似た実を艶めかしく噛ると、その果汁を目尻に跳ね上げるように塗り、その唇にも塗った。
真紅の果汁によりメイクしたお母様は、衣装も相まってセクシー極まりない。
とてつもない歓声の中、お母様は誘うように微笑みながら舞台を縦横無尽に舞いながら移動すると、お父様も不敵に笑いながらお母様を追いかける。
……つい先日まで無理だと言っていた二人はどこへ行ったのやら、どう見てもノリノリである。
半裸のようなお母様は、跳ねながら舞いながら舞台を掛け巡るが、そのボンキュッボンなザ・パーフェクトボディをこれでもかと惜しみなく披露している。
お父様もまた荒々しく舞うが、その引き締まった体と筋肉に誰もが、特に女性陣が釘付けになってしまう。
やがてお母様を捕らえたお父様は、お母様の腰を引き寄せる。艶っぽい息づかいが聞こえて来そうな二人のその表情に、会場は静まり生唾を飲む音が聞こえそうだ。
うっとりとした表情のお母様は、自分の衣装から飾りの羽根を外し、お父様の髪にそれらを挿していく。
何を思ったのか、はたまた完全に二人の世界に入ってしまったのか、お母様は片脚をお父様に絡み付けた。会場はもはや無音である。……いけない予感がするわ……。
ハラハラとしていると、スイッチの入ったらしいお父様はその場でお母様を押し倒した。
「ダダダダダメー!! それ以上はダメー!!」
「うわ! カレン!?」
スイレンに覆いかぶさりながら叫ぶと、全ての人間が我にかえったようだ……。お父様とお母様は真っ赤になって慌てふためき、タデとヒイラギを除く全員が色気等々にあてられ次々に倒れてしまった。
そんなタデとヒイラギも「「記録更新……」」とつぶやきすぐに倒れてしまい、私と何が起こったのか理解出来ていないスイレンが皆を手当てしたのだった……。
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