貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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地道な作業

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 食事を終えた私たちは作業を再開した。お父様とじいやは人間重機として、ブルーノさんの指示に従って大量の切り出した石を運んでいる。
 いつものように「どちらが早く多く運べるか」という競争が始まったおかげで、とてつもないスピードで作業が進む。

 私はというと、手伝えないと悲しむエルザさんとアニーさんと共にボロ……要するにバ糞の置き場を作る。

「明日にでも囲い用の木材を持って来るから、今日は石で場所を決めましょう」

 エルザさんたちでも持てる大きさの石を使って、場所を分かりやすくする為に印代わりに石を置いていく。

「カレンちゃん……お姫様なのに、バの糞を集めるなんてねぇ……」

 残念そうに、それでいて呆れ笑いでエルザさんはそう言う。

「確かにあの量はね……」

 アニーさんは黒王と松風が出すボロを見て苦笑いだ。
 ポニーとロバの糞は量が多くないが、体の大きな黒王たちは量も回数も多い。

「いつもポニーとロバのも集めているのよ。土と混ぜて発酵させると、肥料にもなるし畑の土がフカフカになるの。この場所に畑を作るなら、どれだけあっても足りないくらいよ!」

 笑顔で二人に説明をすると驚かれた。意外にも、ポニーとロバはリトールの町でそそうをすることが少ない。したとしても、町の人たちが「やっておくよ」と、私たちに掃除をさせてくれなかった。
 エルザさんが言うには、肥料にするという発想すらなく、ポニーたちの糞は町の外に運んで捨てるだけだったらしい。

「ここは砂だらけでしょう? 土を作るのはそれなりに大変なのよ。ここにも小さな森を作りましょうか? 緑があると落ち着くでしょう?」

 なんの気無しに言ってしまったが、それは二人の常識を大きく覆すものだったらしい。

「森を……」
「作る……?」

 二人は作業の手が止まり、ポカーンと口を開いて私を見ている。

「え、えぇと……みんなで試行錯誤をして、そんなに労力もなしに木を増やす方法を見つけたのよ。……今度ゆっくりと森を案内するわね」

 焦って早口になってしまったが、二人は森作りもまた楽しみだとはしゃぎ始めた。上手くごまかせたようで安堵の溜め息を吐いた。
 ちょうどそのタイミングで、ブルーノさんに名前を呼ばれた。

「あぁカレンちゃんいたいた。……何を作っているのかな?」

 ブルーノさんは私たちの作業に興味を示したようだ。

「バたちの糞を貯める場所よ。しばらくは行き来だけでなく、バたちも滞在時間も長くなるでしょう? いつものように肥料と土作りよ」

 笑顔で言えば、ブルーノさんは豪快に笑った。

「さすがはカレンちゃんだ! ……そうそう、浄化設備について話を聞きたかったんだ」

 バ糞置き場をエルザさんたちに任せ、ブルーノさんと共に住居予定地へと移動する。
 お父様とじいやの醜い争い……いえ、活躍のおかげで石の移動は終わり、ブルーノさんのお弟子さんことフランクさんとミースさんが完全復活して指揮を取っている。ハマナスたちはその指示に従って建設作業を進めている。

「こういう形で家を建てようと思っていてね」

 ブルーノさんが言うには、家の正面は水場に向かって作るようで、溝などの排水は家の後ろ側を通るようにして、目立たないように作るつもりらしい。
 ちなみにブルーノさんの家は私たちの広場側、移民の町の一番端に建てるようだ。工房だけでなく、木材を運び込んで製材までもをやるスペースを作ると張り切っている。

「良いと思うわ。お便所も私たちと同じ仕組みにするのよね?」

「あぁ。ベンジャミンさんが持って来た荷物の中にアレがあったよ」

 巨大な荷車の中には、まだ数が揃っていないが便器も入っていたらしい。ニコライさんが順調に量産してくれることを祈ろう。

「さっき、ここにも小さな森を作ろうという話をしてたの。畑はあの辺にでも作りましょう。となると、浄化設備はこの辺からあちら側に向かって作って……」

 何もない地面を見ながら呟いていると、ブルーノさんはニコニコと微笑みながら私を見ている。

「やっぱり姉弟だね。考えている時の癖が一緒だ」

「双子ですもの。でも……お父様には似ていないわよ」

 その言葉を聞いたブルーノさんは一瞬の間のあと、声を出して笑う。あえて言葉にしていないが、似ていると言いたいのだろう……。

「そうだわ……浄化設備だけれど、私たちは川に流れるように作っているわ。ここから川までは相当距離があるし、私たちのオアシスのように水を貯めて池のようにしましょう」

「そうだね。リトールの町よりも乾燥しているし、上手く蒸発すると思うよ。ただそれがどれくらいの量かまでは分からないな」

「お父様とじいやがいれば、巨大な穴なんてすぐに出来るわよ」

 こうして私たちは笑いあった。

 それからは適度に休憩しつつ、住居作りに慣れていない者たちで小石を拾い集めた。ここにも蛇籠を敷き詰めて、浄化設備の護岸工事に使うためだ。

 こうして日暮れ近くまで作業を続け、私とお父様、じいやは広場へ帰ることとなった。
 もちろんお父様とじいやは、鞍もなしに「どちらが先に到着するか!?」とまた勝負を始め、私のことなど頭にないようだ。私はポニーとロバに揺られ、ヒゲシバとエビネと共にのんびりと帰ったのだった。
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