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予想外すぎるプレゼント

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「……くっ! ……ぷっ! ……失礼……」

 どうにか笑いをこらえ、涙まで拭いてそう言うルーカス王が目の前にいるのに、私は遠い目をして見つめている。

「……ゴホン! 私からの贈り物です。我が国の優秀な住民をこちらに住まわせてほしいのです」

「ん!? それはだな……ありがたいが……その……」

 ルーカス王の突然の申し出に、お父様がかなり動揺をしている。もちろん私も目を見開く。
 いきなり住民をプレゼントされてしまっても、すぐに住む場所の確保も難しければこの国の秘密の件もある。

 私たちがしどろもどろになっている間に「遠慮なさらずに」と、ルーカス王がカーテンの閉まっているそれは大きな客車の扉を開けた。
 だが開けた扉の中は静まり返り、何かの冗談だったのかと思い始めると、一人の男が降りてきた。

「……先……生。うぷっ……気持ち悪い……」

「ジェイソン!?」

 真っ先に反応したじいやの叫び声を聞いて、ジェイソンさんは青い顔で微笑む。まるでホラー映画のようだ。
 それ以前に、まさかのジェイソンさんの出現に私たちは呆気にとられている。

「「……うぅ……隊長……」」

「もう……隊長では……うぷっ……ない……」

「えぇ!?」

 思わず叫んでしまった。ジェイソンさんと共に国境警備隊をしていたはずの二人が、フラフラと降りてきたからだ。

「え!? どういうこと!?」

「……お久しぶりです……ダミアンです……。妻と子どもと共に……今日からお世話に……なります」

「フレディです……。両親と共に……農業がやりたくて……来ました」

 名前を知らなかったジェイソンさんの部下たちだが、ジェイソンさんが国境へ戻るとすぐに話し合い、つい最近三人でシャイアーク国兵を辞めたそうだ。
 そしてジェイソンさん以外は家族を呼び寄せテックノン王国にしばし滞在し、国境が開通したら私たちを驚かせるために移住したいとニコライさんを通じてルーカス王に頼んでいたらしい。

「ずいぶん揺られたからね。大丈夫かい?」

 ルーカス王は苦笑いでそう言うが、視線はジェイソンさんたちではなく客車の中である。
 気を利かせたサイモン大臣が客車に乗り込み、手を引いて人々を降ろすが見たことがない。ダミアンさんとフレディさんの家族だろう。

「あぁ~……年寄りには刺激が強すぎたねぇ……」

「んん!?」

 客車の中から聞き覚えのある声が聞こえた。あの優しくゆっくりおっとりとした話し方は……。

「エルザさん!?」

 次にサイモン大臣に手を引かれて降りてきたのはエルザさんだ。想像だにしていなかった人物に、私たちは鳩が豆鉄砲をくらったかのような表情になった。

「……ここならリーモンをたくさん食べてくれるでしょう? シャイアークでは人気がないんだよねぇ。それに昔馴染みと一緒に、人生最後の冒険も悪くないわよねぇ」

 乗り物酔いはしていないのか、いつものエルザ節が健在である。ただ最後の言葉の意味が分からず小首を傾げていると、元気に自分から降りてきた人物がいた。

「やぁみんな久しぶりだね。アレはなんだい?」

 そう言って興味津々にセノーテの方へと歩き出した。頭がついていかず呆然としているとスイレンが叫ぶ。

「ブルーノさん!!」

 大好きなブルーノさんが現れたことにより、いつものスイレンに戻ったようだ。抱きつき再会を喜び、手を繋いでセノーテへと向かい、セノーテの説明を始めたようだ。

 ただひたすらに呆然としていた私たちだが、お父様と私が口を開こうとすると、客車からさらに人が降りてくるではないか。

「……」

「えぇぇぇぇ!?」

 無言で、青ざめた無表情で、二日酔いをさらに酷い顔にしたようなその人はペーターさんだった。

「ペーターさん!?」

 私の声に反応し軽く手を上げるが、どうやら激しく乗り物酔いをしているようである。

 ブルーノさんはスイレンと共にセノーテに夢中だったので、一番元気そうなエルザさんに話を聞いてみた。
 どうやらブルーノさんもペーターさんも、この世の楽園と思っているこの土地を終の住処と決めたようなのだ。何がなんでも移住しようと、ジェイソンさんたちと結託したらしい。

「新しい町長はねぇ、カーラの旦那なんだよぉ」

「はいぃぃぃ!?」

 エルザさんはコロコロと笑うが、次の町長はカーラさんを推す人が多かったらしい。なんとなく分からないでもない。
 けれど「あたしは店が忙しいんだよ!」と、代わりに旦那さんを無理やり町長にしたらしい。きっとカーラさんは裏ボス的な感じで上手く町をまとめるだろう。

「あとねぇ、ブルーノの弟子が完全に伸びているんだよぉ」

 その言葉と同時くらいにサイモン大臣が応援を呼び、兵士が頭と足を持って客車から人を運び出した。
 私たちはその見覚えのある顔に「あ!」と叫ぶが、ピクリとも反応しない。……まるで屍のようだ。

「フランクとミースは、どうしてもブルーノと離ればなれになるのが嫌だったらしいよぉ。二人とも繊細だったんだねぇ」

 そう言ってエルザさんはまた笑う。そもそも「お弟子さん!」といつも呼んでいたので、初めて名前を知ったのだ。

 スイレン以外のヒーズル王国民がざわめく中、テックノン王国の兵たちが拍手を始めると、ルーカス王も眩い笑顔で拍手を始めた。
 ……どうしましょう……断ることなんて出来ない雰囲気だわ……。辺りを見回すと、スイレン以外は白目をむいていた。便乗して私も白目をむくことにするわ……。
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