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驚きの連続
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王子様のような王様は自己紹介をすると、数歩こちらに向かって進んで来た。それを見たお父様も数歩前に進む。
向かい合った二人を見て、お父様と背丈があまり変わらないルーカス王が高身長なことに気付き、私の胸が高鳴る。
「ヒーズル王国のモクレンだ」
お父様は握手をした後、私たち家族の紹介をしてくれた。私の名前を呼ばれた時に、ルーカス王を見たまま自分の口が半開きになっていたことに気付き、慌てておすまし顔をしたのは言うまでもない。
お父様が全員の紹介をすると、なんとルーカス王はこちらに向かって歩いて来た。また口が開いてしまいそうなのを必死にこらえる。
「レンゲ王妃ですね。はじめまして」
「えぇ。はじめまして」
ルーカス王はお母様の指先だけをそっと握り、見惚れるほどの笑顔で挨拶をした。
お母様はごく普通に笑顔で挨拶をしたが、ルーカス王の後ろについて来ていたお父様は、その二人の手を真顔で凝視している。
「あ……あぁ、申し訳ない。私たちの女性への挨拶の仕方なんだ」
ルーカス王はお父様の痛いほどの視線に気付き、苦笑いで振り返って説明をすると、お父様は「そうなのか」と笑顔で頷き納得したようだ。
そんな小さな嫉妬をしたお父様にお母様は嬉しそうな視線を送り、私はルーカス王に気付かれないうちに、必死に手の汗を服で拭った。
そしてお父様たちと少しの会話を終え、ついにルーカス王が私の前へやって来た。
「やぁカレン姫。ようやく会えたね。噂はかねがね伺っていたよ」
ようやく、ようやく私を本物のお姫様扱いをしてくれる人が現れた。それもこんなにも見目麗しい王様に、破壊力抜群な笑顔で挨拶をされてしまったのだ。
さらにはいつの間にかそっと手を取られ、気付けば私の指先を握っている。
鼻血を吹きそうになるのをこらえながら完全にフリーズしてしまった私に、隣のスイレンが「……カレン?」と怪訝そうな声を発しているが、スイレンに反応が出来ない。……なぜなら、瞬きもせずに一秒でも長くルーカス王を見ていたいからだ。
そんな幸せな瞬間に、辺りにお父様の怒鳴り声が轟いた。
「……む? ……全員下がれ! 早く! 急げ!」
お父様の本気の大声に、辺りは何事かと騒然となったが、理由は私にも分かってしまった。
ピキ……ピキ……と聞きなれない音がし、その方向を見ると地面に亀裂が走り始めた。
あまりのことにただ呆然としていると、みるみるうちに地面がひび割れ…………そして私は落ちてしまった……。
「……カレン姫!? 大丈夫ですか!?」
頭上から声が聞こえ、おそるおそる上を向きながら目を開けると、私の目の前にはルーカス王の顔があった。……そう、落ちたのは恋にだ。
「……は、はい……」
普段の私からは想像も出来ないほど、小さな声で返事をするのが精一杯だった。なぜなら超至近距離に、私を心配そうに見つめるルーカス王の顔があるのだ。
そのルーカス王の首に目立たないようにかけられている木製のネックレスは、香木を使っているのか白檀のような香りがふんわりと漂い私を包む。そして香りだけではなく、実際にルーカス王に抱き締められていることに気付いた。
一気に私の顔は真っ赤になってしまった。
「カレン! 大丈夫か!?」
「姫!」
お父様たちの声にハッとし、ルーカス王の腕の中から周りを確認すると、お父様はお母様を守るように抱き締め、じいやはスイレンを抱きかかえている。
ただし私以外のヒーズル王国民は私よりも後方にいるのだ。お父様の声に反応し、素早く移動したのだろう。
そろりとテックノン王国側を見ると、ニコライさんがヘッドスライディングのような格好をしている。地面にうつ伏せになり、両手はピンと前方に伸び、両足はウサギの耳のようにピョコンと上を向いている。
そのニコライさんと私たちの間には、地面にポッカリと穴が空いているようだ。
ニコライさんよりも向こう側は、慌てた様子のテックノン王国の兵たちや、いななくバたちが見えるが、どうやら怪我人はいないようである。
ニコライさんの姿は不格好ではあるが、誰も怪我をしていないことにホッとすると、そのニコライさんの叫び声が聞こえた。
「王ー! 私のカレン嬢にぃー! 何してるんですかー!!」
ニコライさんの発した「私の」発言にイラつき、頬がピクピクとするのをルーカス王に見られないように下を向くと、頭上からルーカス王の声が聞こえる。
「カレン姫。一応確認したいのですが……ニコライと結婚の約束をしているというのは本当ですか?」
不安そうに問いかけるルーカス王に対して、私たちヒーズル王国民は「はぁぁぁ!?」と、全員がハモった。
それどころかお父様、タデ、ヒイラギの三人はすぐさま落ちている石を拾い、「ふざけるな!」と叫びながらニコライさんにギリギリ当たらない場所にその石を投げ始めた。
「……プッ! よく分かりました。やはりニコライのいつもの妄想のようですね、安心しました。……カレン姫はみんなに愛されているのですね」
自国民が石を投げられているのを笑って見ていたルーカス王の次の発言に、私たちはまた度肝を抜かれた。
「私の従兄弟が、いつもいつもご迷惑をおかけして本当に申し訳ない」
一瞬ルーカス王が何を言っているのか理解できなかったが、その意味を理解した瞬間に私たちはまた「はぁぁぁ!?」とハモった。
「あぁ、やはり何も説明をしていなかったのですね……」
呆れた様子のルーカス王の溜め息が私の髪を揺らす。私はルーカス王に心を奪われパニックになっているし、お父様たちはニコライさんへの怒りや従兄弟という発言にパニックになっている。
そんな空気の中、一人の男がスタスタと私に近付いて来たのだった……。
向かい合った二人を見て、お父様と背丈があまり変わらないルーカス王が高身長なことに気付き、私の胸が高鳴る。
「ヒーズル王国のモクレンだ」
お父様は握手をした後、私たち家族の紹介をしてくれた。私の名前を呼ばれた時に、ルーカス王を見たまま自分の口が半開きになっていたことに気付き、慌てておすまし顔をしたのは言うまでもない。
お父様が全員の紹介をすると、なんとルーカス王はこちらに向かって歩いて来た。また口が開いてしまいそうなのを必死にこらえる。
「レンゲ王妃ですね。はじめまして」
「えぇ。はじめまして」
ルーカス王はお母様の指先だけをそっと握り、見惚れるほどの笑顔で挨拶をした。
お母様はごく普通に笑顔で挨拶をしたが、ルーカス王の後ろについて来ていたお父様は、その二人の手を真顔で凝視している。
「あ……あぁ、申し訳ない。私たちの女性への挨拶の仕方なんだ」
ルーカス王はお父様の痛いほどの視線に気付き、苦笑いで振り返って説明をすると、お父様は「そうなのか」と笑顔で頷き納得したようだ。
そんな小さな嫉妬をしたお父様にお母様は嬉しそうな視線を送り、私はルーカス王に気付かれないうちに、必死に手の汗を服で拭った。
そしてお父様たちと少しの会話を終え、ついにルーカス王が私の前へやって来た。
「やぁカレン姫。ようやく会えたね。噂はかねがね伺っていたよ」
ようやく、ようやく私を本物のお姫様扱いをしてくれる人が現れた。それもこんなにも見目麗しい王様に、破壊力抜群な笑顔で挨拶をされてしまったのだ。
さらにはいつの間にかそっと手を取られ、気付けば私の指先を握っている。
鼻血を吹きそうになるのをこらえながら完全にフリーズしてしまった私に、隣のスイレンが「……カレン?」と怪訝そうな声を発しているが、スイレンに反応が出来ない。……なぜなら、瞬きもせずに一秒でも長くルーカス王を見ていたいからだ。
そんな幸せな瞬間に、辺りにお父様の怒鳴り声が轟いた。
「……む? ……全員下がれ! 早く! 急げ!」
お父様の本気の大声に、辺りは何事かと騒然となったが、理由は私にも分かってしまった。
ピキ……ピキ……と聞きなれない音がし、その方向を見ると地面に亀裂が走り始めた。
あまりのことにただ呆然としていると、みるみるうちに地面がひび割れ…………そして私は落ちてしまった……。
「……カレン姫!? 大丈夫ですか!?」
頭上から声が聞こえ、おそるおそる上を向きながら目を開けると、私の目の前にはルーカス王の顔があった。……そう、落ちたのは恋にだ。
「……は、はい……」
普段の私からは想像も出来ないほど、小さな声で返事をするのが精一杯だった。なぜなら超至近距離に、私を心配そうに見つめるルーカス王の顔があるのだ。
そのルーカス王の首に目立たないようにかけられている木製のネックレスは、香木を使っているのか白檀のような香りがふんわりと漂い私を包む。そして香りだけではなく、実際にルーカス王に抱き締められていることに気付いた。
一気に私の顔は真っ赤になってしまった。
「カレン! 大丈夫か!?」
「姫!」
お父様たちの声にハッとし、ルーカス王の腕の中から周りを確認すると、お父様はお母様を守るように抱き締め、じいやはスイレンを抱きかかえている。
ただし私以外のヒーズル王国民は私よりも後方にいるのだ。お父様の声に反応し、素早く移動したのだろう。
そろりとテックノン王国側を見ると、ニコライさんがヘッドスライディングのような格好をしている。地面にうつ伏せになり、両手はピンと前方に伸び、両足はウサギの耳のようにピョコンと上を向いている。
そのニコライさんと私たちの間には、地面にポッカリと穴が空いているようだ。
ニコライさんよりも向こう側は、慌てた様子のテックノン王国の兵たちや、いななくバたちが見えるが、どうやら怪我人はいないようである。
ニコライさんの姿は不格好ではあるが、誰も怪我をしていないことにホッとすると、そのニコライさんの叫び声が聞こえた。
「王ー! 私のカレン嬢にぃー! 何してるんですかー!!」
ニコライさんの発した「私の」発言にイラつき、頬がピクピクとするのをルーカス王に見られないように下を向くと、頭上からルーカス王の声が聞こえる。
「カレン姫。一応確認したいのですが……ニコライと結婚の約束をしているというのは本当ですか?」
不安そうに問いかけるルーカス王に対して、私たちヒーズル王国民は「はぁぁぁ!?」と、全員がハモった。
それどころかお父様、タデ、ヒイラギの三人はすぐさま落ちている石を拾い、「ふざけるな!」と叫びながらニコライさんにギリギリ当たらない場所にその石を投げ始めた。
「……プッ! よく分かりました。やはりニコライのいつもの妄想のようですね、安心しました。……カレン姫はみんなに愛されているのですね」
自国民が石を投げられているのを笑って見ていたルーカス王の次の発言に、私たちはまた度肝を抜かれた。
「私の従兄弟が、いつもいつもご迷惑をおかけして本当に申し訳ない」
一瞬ルーカス王が何を言っているのか理解できなかったが、その意味を理解した瞬間に私たちはまた「はぁぁぁ!?」とハモった。
「あぁ、やはり何も説明をしていなかったのですね……」
呆れた様子のルーカス王の溜め息が私の髪を揺らす。私はルーカス王に心を奪われパニックになっているし、お父様たちはニコライさんへの怒りや従兄弟という発言にパニックになっている。
そんな空気の中、一人の男がスタスタと私に近付いて来たのだった……。
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