255 / 366
カレン、さらに料理を作る
しおりを挟む
私の両手では抱えきれない程のオドリキッコの一部を貰い、さあ広場へ、と思った矢先に桶に入れられたものを見つけた。立ち止まり凝視しているとトビ爺さんに声をかけられた。
「なんだこれも好きなのか? これも昨日処理したやつだ」
うんうんと頷くと、トビ爺さんは桶から一つを取り出した。それはもう茹でてある巨大なタッケノコである。これでもう作るものはほぼ決まった。
「ねぇトビ爺さん、コッコの肉が余ってたりしない?」
「多分ねぇと思うなぁ……それ置いてついて来い」
持っていたオドリキッコとタッケノコを一旦元に戻し、言われた通りに後ろをついて行くとトビ爺さんは叫んだ。
「お~いニワトリ! コッコを潰していいか!?」
「あぁいいぞ~」
一瞬脳が混乱したが、この村でニワトリさんというおじさんがコッコを育てているらしい。寝癖なのか癖っ毛なのか、サイドは清潔感のある短さの髪だが頭頂部だけがモフモフと逆立っている。まさにニワトリのトサカのようだ。
そのニワトリさんの家に行くと、家の裏側部分の広範囲がコッコの飼育場となっており、茶色の羽根のコッコが元気に走り回っていた。
「何羽くらい欲しいんだい~?」
まるでコッコの鳴き声である『コケコッコー』の『コー』の部分のような、間延びした語尾を話すニワトリさんに思わず笑みがこぼれてしまう。
「私個人としては一羽あれば良いのだけれど……クジャや兵たちはまだまだ食べるでしょうし……」
苦笑いでそう言うと、ひとまず四~五羽を捕まえようということになった。
当たり前のように参加しようとすると、二人に「コッコは凶暴だぞ!?」と心配されたが、二人よりも先に一羽捕まえると苦笑いをされつつ驚かれた。
そして広場からは見えない解体する場所にコッコを運ぶと、二人は私に気遣い「あとは二人でやるから」と言っているそばからコッコの首を折ると、二人は呆気にとられていた。
「娘っこ……」
トビ爺さんが呆れてそう言うと同時に、近くに置いてあった刃物でコッコの首を落とすと「手慣れてますね~……」とニワトリさんも軽く引いていた。
三人で同じ作業をし、この村では熱湯に浸けてから羽根をむしると言うが、湯が沸くまでに血抜きの終わったコッコの羽根をむしっていると、二人は呆気を通り越して笑い始めた。
「カレン! どこに行ったかと……それは教えた覚えは……あぁそうか……」
どうやら姿が見えなくなった私を心配して、お父様が探しに来たようである。そしてその娘である私が首のないコッコの羽根をむしっているのに驚き軽く混乱したようだが、前世の記憶があるのを思い出して納得したようである。
お父様も混ざって四人で肉を解体し、欲しい部分を貰って良いと言われたので、モモ肉とレバーと砂肝、そして骨を貰った。
「肉以外なんてどうするんだ?」
「この村では使わないの? うふふ、美味しいものを作るから待っていて。あと、ジンガーとガンリックとナーニーオーンとキャロッチをいただけたら嬉しいのだけれど……」
少し遠慮気味に言うと、ニワトリさんは「待ってね~」と家から食材を持って来てくれた。一度トビ爺さんの家にも寄り、お父様と一緒に全ての材料を持って広場の調理スペースへと戻った。
「おや? ずいぶん時間がかかったねぇ?」
「えぇ、コッコを絞めて捌いて来たの」
近くにいた女性に声をかけられ、ルンルンとしながら答えるとこちらも引いている。この国ではどうやら女性はあまり動物を捌かないようだ。
「じゃあお料理を作るので、調味料をお借りします」
近くに置いてある調味料や食材を使わせてもらい、オドリキッコとタッケノコ、そしてキャロッチとモモ肉を使った炊き込みご飯とおこわを作る。
玄米のびっくり炊きで作る炊き込みご飯なので、最初は普通に炊き、差し水の時に具材やセウユなどの調味料を入れる。おこわは先に具材を調味料と共に煮て、一度蒸したもち米と混ぜて再度蒸す。
鶏ガラはナーニーオーンとジンガーと一緒に煮ながらアクを取り、まずは鶏ガラスープを作る。取り出した鶏ガラから取れそうな肉はスープに混ぜ、そこにモモ肉とオドリキッコにタッケノコ、キャロッチとディーコンは千切りに、ナーニーオーンは斜め切りにして入れ、セウユなどで味を整える。最後にモチを投入する。
そしてレバーと砂肝は細かく切り、ジンガーとガンリックと共に味噌煮にし、汁が少なくなるまで煮詰めて小口切りにしたナーニーオーンとセッサーミンをかける。
「ふぅ……完成したわ!」
私の周りにわらわらと人が集まって来たが、あえて気にせずお盆を用意し、器に炊き込みご飯とおこわ、そして雑煮と味噌煮を盛り付けてオオルリさんのご両親のところへ持って行った。
「お待たせしてしまってごめんなさい。美味しくて体に良いものを作りました。このミィソの煮物は特に体に良いです。毎日は無理でも、たまに食べるともっとお体の調子が良くなると思います」
お二人はこの国の食材で見たことのない料理を作った私に驚いていたが、一口食べると目をひん剥いて感嘆の声を上げていた。
そして私の背後では、勝手に料理を食べ始めた村人や兵たちが叫び声を上げるほど舌鼓を打っているようである。特にニワトリさんの「こりゃ美味い~!」という甲高い特徴的な叫び声は、まさにニワトリの鳴き声のようだった。この村の人たちの胃袋も掴むことに成功したようだ。
「なんだこれも好きなのか? これも昨日処理したやつだ」
うんうんと頷くと、トビ爺さんは桶から一つを取り出した。それはもう茹でてある巨大なタッケノコである。これでもう作るものはほぼ決まった。
「ねぇトビ爺さん、コッコの肉が余ってたりしない?」
「多分ねぇと思うなぁ……それ置いてついて来い」
持っていたオドリキッコとタッケノコを一旦元に戻し、言われた通りに後ろをついて行くとトビ爺さんは叫んだ。
「お~いニワトリ! コッコを潰していいか!?」
「あぁいいぞ~」
一瞬脳が混乱したが、この村でニワトリさんというおじさんがコッコを育てているらしい。寝癖なのか癖っ毛なのか、サイドは清潔感のある短さの髪だが頭頂部だけがモフモフと逆立っている。まさにニワトリのトサカのようだ。
そのニワトリさんの家に行くと、家の裏側部分の広範囲がコッコの飼育場となっており、茶色の羽根のコッコが元気に走り回っていた。
「何羽くらい欲しいんだい~?」
まるでコッコの鳴き声である『コケコッコー』の『コー』の部分のような、間延びした語尾を話すニワトリさんに思わず笑みがこぼれてしまう。
「私個人としては一羽あれば良いのだけれど……クジャや兵たちはまだまだ食べるでしょうし……」
苦笑いでそう言うと、ひとまず四~五羽を捕まえようということになった。
当たり前のように参加しようとすると、二人に「コッコは凶暴だぞ!?」と心配されたが、二人よりも先に一羽捕まえると苦笑いをされつつ驚かれた。
そして広場からは見えない解体する場所にコッコを運ぶと、二人は私に気遣い「あとは二人でやるから」と言っているそばからコッコの首を折ると、二人は呆気にとられていた。
「娘っこ……」
トビ爺さんが呆れてそう言うと同時に、近くに置いてあった刃物でコッコの首を落とすと「手慣れてますね~……」とニワトリさんも軽く引いていた。
三人で同じ作業をし、この村では熱湯に浸けてから羽根をむしると言うが、湯が沸くまでに血抜きの終わったコッコの羽根をむしっていると、二人は呆気を通り越して笑い始めた。
「カレン! どこに行ったかと……それは教えた覚えは……あぁそうか……」
どうやら姿が見えなくなった私を心配して、お父様が探しに来たようである。そしてその娘である私が首のないコッコの羽根をむしっているのに驚き軽く混乱したようだが、前世の記憶があるのを思い出して納得したようである。
お父様も混ざって四人で肉を解体し、欲しい部分を貰って良いと言われたので、モモ肉とレバーと砂肝、そして骨を貰った。
「肉以外なんてどうするんだ?」
「この村では使わないの? うふふ、美味しいものを作るから待っていて。あと、ジンガーとガンリックとナーニーオーンとキャロッチをいただけたら嬉しいのだけれど……」
少し遠慮気味に言うと、ニワトリさんは「待ってね~」と家から食材を持って来てくれた。一度トビ爺さんの家にも寄り、お父様と一緒に全ての材料を持って広場の調理スペースへと戻った。
「おや? ずいぶん時間がかかったねぇ?」
「えぇ、コッコを絞めて捌いて来たの」
近くにいた女性に声をかけられ、ルンルンとしながら答えるとこちらも引いている。この国ではどうやら女性はあまり動物を捌かないようだ。
「じゃあお料理を作るので、調味料をお借りします」
近くに置いてある調味料や食材を使わせてもらい、オドリキッコとタッケノコ、そしてキャロッチとモモ肉を使った炊き込みご飯とおこわを作る。
玄米のびっくり炊きで作る炊き込みご飯なので、最初は普通に炊き、差し水の時に具材やセウユなどの調味料を入れる。おこわは先に具材を調味料と共に煮て、一度蒸したもち米と混ぜて再度蒸す。
鶏ガラはナーニーオーンとジンガーと一緒に煮ながらアクを取り、まずは鶏ガラスープを作る。取り出した鶏ガラから取れそうな肉はスープに混ぜ、そこにモモ肉とオドリキッコにタッケノコ、キャロッチとディーコンは千切りに、ナーニーオーンは斜め切りにして入れ、セウユなどで味を整える。最後にモチを投入する。
そしてレバーと砂肝は細かく切り、ジンガーとガンリックと共に味噌煮にし、汁が少なくなるまで煮詰めて小口切りにしたナーニーオーンとセッサーミンをかける。
「ふぅ……完成したわ!」
私の周りにわらわらと人が集まって来たが、あえて気にせずお盆を用意し、器に炊き込みご飯とおこわ、そして雑煮と味噌煮を盛り付けてオオルリさんのご両親のところへ持って行った。
「お待たせしてしまってごめんなさい。美味しくて体に良いものを作りました。このミィソの煮物は特に体に良いです。毎日は無理でも、たまに食べるともっとお体の調子が良くなると思います」
お二人はこの国の食材で見たことのない料理を作った私に驚いていたが、一口食べると目をひん剥いて感嘆の声を上げていた。
そして私の背後では、勝手に料理を食べ始めた村人や兵たちが叫び声を上げるほど舌鼓を打っているようである。特にニワトリさんの「こりゃ美味い~!」という甲高い特徴的な叫び声は、まさにニワトリの鳴き声のようだった。この村の人たちの胃袋も掴むことに成功したようだ。
42
お気に入りに追加
1,995
あなたにおすすめの小説

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる