245 / 370
筋力アップの効果
しおりを挟む
クジャのお祖母様が歩いてから数日が経った。私は何だかんだ理由をつけてお父様とじいやに作業を頼み、その間は兵たちは今まで通りの自主訓練の期間に入り、こっそりと厨房へお礼を言いに来る兵までいたくらいだ。
「さぁどうぞ」
今は朝食と昼食の間くらいの時間だ。地球よりも時間が長いこの世界では、この時間帯にも何かを食べる。とは言ってもガッツリと食べるわけではなく、おやつのような簡単な軽食を食べる。
今日はアポーの実を出すことにした。先日まではすりおろしていたが、お口の状態がほとんど良くなっているので、歯ごたえを楽しんでもらいたくアポーを選んだ。けれど薄切りにして、歯と歯茎に負担をかけないようにする。
「美味しいわ」
「本当に」
サクッという音を響かせて、オオルリさんもスワンさんも食べてくれる。お二人にお出ししたのに、勧められて私まで摘んでしまったが、酸味と甘みのバランスがよいこのアポーはとても美味しい。
「トビ爺さんの村で作っているアポーですよ」
トビ爺さんは今までも無償で食料を持って来たりしていたそうだが、最近はその頻度が上がっているらしい。
厨房の女中が言うには、オオルリさんとクジャのことはもちろん心配しているが、私のことを気に入ってくれたからだと言う。とても嬉しいことだが、なかなかタイミングが合わずすれ違いが続いていた。
「あぁ美味しかった。さぁ今日はどうかしら?」
先日のスワンさんが歩く姿を見たオオルリさんは、毎日必死に立とうと練習していた。そしてみるみるうちに言葉もはっきりと話せるようになり、回復が著しい。
メジロさんとスズメちゃんは別の仕事でこの部屋にはいないので、私が一人でオオルリさんを支える。
「……よいしょ」
オオルリさんはゆっくりとだが立ち上がった。ここまでは毎回ではないが、何回か成功させていた。問題はここからである。
「よいしょ……」
私はオオルリさんの背後へと回り込み、軽く抱きつくような体勢になる。転びそうになった時に、私が後ろに倒れクッション代わりになれば良いと思ったのだ。オオルリさんは、すり足気味に一歩を踏み出す。
「オオルリさん! 歩いているわ! 頑張って!」
スワンさんも寝台から降り、立ってオオルリさんを励ましている。お父様とじいやに頼んでいるものよりも先に、杖を作ってもらえばよかったと思い始めていると、オオルリさんはさらに一歩進んだ。
「んんっ!」
自身に気合を入れているのかオオルリさんはそんな声を漏らすと、また一歩進む。スワンさんが気を利かせ、オオルリさんの前まで歩いて来るとそのオオルリさんの手を取り「もう少しよ」と励ましているが、二人が転倒してしまったらどうしようかと私は気が気でない。
けれど関係が良好な嫁姑は、一人が応援するとその応援に応えるかのように体に力が入る。そしてハラハラとする私の気持ちに気付かないオオルリさんは、見事にスワンさんの寝台まで歩いたのだ。
「オオルリさん! 歩けたわね! おめでとう!」
「やりました!」
二人は手を取り合い喜んでいるが、こうしている場合ではない。私はそのまま廊下へと小走りで移動する。
「誰か! 誰かー!」
「どうした!? 姫ちゃん!?」
隣の部屋からレオナルドさんが血相を変えて飛び出して来た。辺りを見回し、小さな刃物を構えている。
ジェイソンさんのように、どんなに辛い目に遭ってもじいやから離れたくないのか、レオナルドさんはずっとこの国に滞在していた。そして訓練が中断された今、一応お客様であるレオナルドさんはあてがわれた寝室で休んでいたのだ。
「オ……オオルリさんが歩けたの!」
私の言葉を聞いたレオナルドさんは、戦闘状態の表情から驚きの表情に変わり、そして笑顔へと変わった。
「ついにやったな! 姫ちゃん!」
全身で喜びを表そうとするレオナルドさんは私に向かって走って来るが、その手にはまだ刃物を持っている。
「待って! レオナルドさん! それを仕舞って! ……じいやに見られたら一大事よ!」
最初は私の言葉の意味が分からなかったようだが、じいやという言葉で脳が覚醒したようである。自分の手を見て「うぉぉぉ!」と叫び、腰にある鞘に刃物を仕舞って辺りをキョロキョロと見回し、じいやがいないのを確認すると文字通り胸を撫で下ろしながら溜め息を吐いている。
「……姫ちゃん……内緒にしてくれ……」
「任せて、大丈夫よ」
そう返答すると、今度こそ私たちは喜びのハイタッチを交わした。
「っと、こうしちゃいられねぇな! 城中に知らせて来るぜ!」
そう言い残してレオナルドさんは走り去って行った。そのスピードは最初に見た頃よりも相当上がっている。じいやにしごかれたおかげで、レオナルドさんもパワーアップしたのだろう。
そうこうしているうちに、メジロさんにスズメちゃん、女中たちが集まって来た。そして私からもオオルリさんが歩いたことを報告すると、その場は一気にお祭り騒ぎとなった。オオルリさんとスワンさんは並んで座ったまま、にこやかに手を振っている。
これで今日の昼食は決まった。その準備をしようではないか。私はメジロさんとスズメちゃんにその場を任せ、厨房へと颯爽と向かったのだった。
「さぁどうぞ」
今は朝食と昼食の間くらいの時間だ。地球よりも時間が長いこの世界では、この時間帯にも何かを食べる。とは言ってもガッツリと食べるわけではなく、おやつのような簡単な軽食を食べる。
今日はアポーの実を出すことにした。先日まではすりおろしていたが、お口の状態がほとんど良くなっているので、歯ごたえを楽しんでもらいたくアポーを選んだ。けれど薄切りにして、歯と歯茎に負担をかけないようにする。
「美味しいわ」
「本当に」
サクッという音を響かせて、オオルリさんもスワンさんも食べてくれる。お二人にお出ししたのに、勧められて私まで摘んでしまったが、酸味と甘みのバランスがよいこのアポーはとても美味しい。
「トビ爺さんの村で作っているアポーですよ」
トビ爺さんは今までも無償で食料を持って来たりしていたそうだが、最近はその頻度が上がっているらしい。
厨房の女中が言うには、オオルリさんとクジャのことはもちろん心配しているが、私のことを気に入ってくれたからだと言う。とても嬉しいことだが、なかなかタイミングが合わずすれ違いが続いていた。
「あぁ美味しかった。さぁ今日はどうかしら?」
先日のスワンさんが歩く姿を見たオオルリさんは、毎日必死に立とうと練習していた。そしてみるみるうちに言葉もはっきりと話せるようになり、回復が著しい。
メジロさんとスズメちゃんは別の仕事でこの部屋にはいないので、私が一人でオオルリさんを支える。
「……よいしょ」
オオルリさんはゆっくりとだが立ち上がった。ここまでは毎回ではないが、何回か成功させていた。問題はここからである。
「よいしょ……」
私はオオルリさんの背後へと回り込み、軽く抱きつくような体勢になる。転びそうになった時に、私が後ろに倒れクッション代わりになれば良いと思ったのだ。オオルリさんは、すり足気味に一歩を踏み出す。
「オオルリさん! 歩いているわ! 頑張って!」
スワンさんも寝台から降り、立ってオオルリさんを励ましている。お父様とじいやに頼んでいるものよりも先に、杖を作ってもらえばよかったと思い始めていると、オオルリさんはさらに一歩進んだ。
「んんっ!」
自身に気合を入れているのかオオルリさんはそんな声を漏らすと、また一歩進む。スワンさんが気を利かせ、オオルリさんの前まで歩いて来るとそのオオルリさんの手を取り「もう少しよ」と励ましているが、二人が転倒してしまったらどうしようかと私は気が気でない。
けれど関係が良好な嫁姑は、一人が応援するとその応援に応えるかのように体に力が入る。そしてハラハラとする私の気持ちに気付かないオオルリさんは、見事にスワンさんの寝台まで歩いたのだ。
「オオルリさん! 歩けたわね! おめでとう!」
「やりました!」
二人は手を取り合い喜んでいるが、こうしている場合ではない。私はそのまま廊下へと小走りで移動する。
「誰か! 誰かー!」
「どうした!? 姫ちゃん!?」
隣の部屋からレオナルドさんが血相を変えて飛び出して来た。辺りを見回し、小さな刃物を構えている。
ジェイソンさんのように、どんなに辛い目に遭ってもじいやから離れたくないのか、レオナルドさんはずっとこの国に滞在していた。そして訓練が中断された今、一応お客様であるレオナルドさんはあてがわれた寝室で休んでいたのだ。
「オ……オオルリさんが歩けたの!」
私の言葉を聞いたレオナルドさんは、戦闘状態の表情から驚きの表情に変わり、そして笑顔へと変わった。
「ついにやったな! 姫ちゃん!」
全身で喜びを表そうとするレオナルドさんは私に向かって走って来るが、その手にはまだ刃物を持っている。
「待って! レオナルドさん! それを仕舞って! ……じいやに見られたら一大事よ!」
最初は私の言葉の意味が分からなかったようだが、じいやという言葉で脳が覚醒したようである。自分の手を見て「うぉぉぉ!」と叫び、腰にある鞘に刃物を仕舞って辺りをキョロキョロと見回し、じいやがいないのを確認すると文字通り胸を撫で下ろしながら溜め息を吐いている。
「……姫ちゃん……内緒にしてくれ……」
「任せて、大丈夫よ」
そう返答すると、今度こそ私たちは喜びのハイタッチを交わした。
「っと、こうしちゃいられねぇな! 城中に知らせて来るぜ!」
そう言い残してレオナルドさんは走り去って行った。そのスピードは最初に見た頃よりも相当上がっている。じいやにしごかれたおかげで、レオナルドさんもパワーアップしたのだろう。
そうこうしているうちに、メジロさんにスズメちゃん、女中たちが集まって来た。そして私からもオオルリさんが歩いたことを報告すると、その場は一気にお祭り騒ぎとなった。オオルリさんとスワンさんは並んで座ったまま、にこやかに手を振っている。
これで今日の昼食は決まった。その準備をしようではないか。私はメジロさんとスズメちゃんにその場を任せ、厨房へと颯爽と向かったのだった。
51
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした。今さら戻れと言われても、もうスローライフ始めちゃったんで
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。
家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、
優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、
俺は必死に、置いていかれないようについていった。
自分には何もできないと思っていた。
それでも、少しでも役に立ちたくて、
誰にも迷惑をかけないようにと、
夜な夜な一人でダンジョンに潜り、力を磨いた。
仲間を護れるなら…
そう思って使った支援魔法や探知魔法も、
気づかれないよう、そっと重ねていただけだった。
だけどある日、告げられた。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、優しさからの判断だった。
俺も分かっていた。だから、何も言えなかった。
こうして俺は、静かにパーティを離れた。
これからは一人で、穏やかに生きていこう。
そう思っていたし、そのはずだった。
…だけど、ダンジョンの地下で古代竜の魂と出会って、
また少し、世界が騒がしくなってきたようです。
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる