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私たちはペーターさんの家に泊まらせてもらい、夜はクジャたちのいる部屋で眠らせてもらった。カーラさんがずっと泊まって看病をしていたそうなので、カーラさんを自宅に帰し看病するのを交代したのだ。
幸いにもクジャは精神的に落ち着いたらしく、寝ていても泣き叫ぶことはなかったが、何回か目を覚ましては私がいるかの確認をしていた。
翌日になっても食欲がないと言うクジャと、まだ口内の傷が癒えないモズさんの為にスープやジュースを作った。私が飲みたくて作ったトゥメィトゥのジュースは、特にモズさんが気に入ってくれたようで、なんとお代わりまでしてくれたのだ。
もちろん水分補給と怪我の治療も兼ねてヨーモギの薬草茶も飲ませ、お父様とじいやは傷薬の交換を率先してやってくれる。
「傷は乾燥させては治りが遅くなる」
お父様はそう言いながら処置をするが、私たち以外の人は驚いている。日本でも親より上の世代は『乾燥させてかさぶたを作れ』とよく言っていたが、実は湿らせるのが一番治りが早いのである。この世界でも乾燥させるのが一般的だったようで、実際に自分の傷が治っていく様子を見たクジャは「……すごい……」と呟いていた。
ただ口数は昨日よりも多くなったが、クジャの表情は曇ったままだ。スープを作りに台所に行った時にお父様が口を開いた。
「モズ殿が話せるようになってから、改めて二人に話を聞いたほうが良いだろう」
「おそらくクジャク姫にとって、相当辛いことがあったのでしょう。もう少し落ち着くまで、そのことには触れないほうが良いと思います」
お父様に続きじいやもそう話す。確かにクジャを見ていると、小さな物音にも怯えたり、目を覚ますと私たちやモズさんがいるかの確認をしている。クジャだけに聞くのは酷だろう。
まずは体を治すのが優先だと判断し、その日も傷の手当てや食事の世話をし、二人を刺激しないように安静に過ごさせた。
────
さらに一夜明け、じいやに採取して来てもらったセルリンを存分に煮込んで作った野菜スープを持ち、クジャとモズさんのいる部屋に向かった。
「……ご心配……おかけしました……。ほとんど……傷は塞がったようです……ありがとうございました……」
扉を開けるとモズさんが起き上がっており、本当はまだ完全に傷が癒えずに痛いであろうに、丁寧に私たちに一礼をした。
「モズさん! 無理はしないで。一回座りましょう? まずはこれを飲んで」
モズさんを座らせていると、クジャも目を覚ます。
「クジャ、モズさんが話せるようになったわ。クジャは調子はどうかしら?」
「……大丈夫じゃ……」
「そう、良かったわ。じゃあクジャもこれを飲んでね」
そう言ってクジャを起こし、スープの入った器を手渡す。二人がスープを飲み終わるのを待ち、そして落ち着いた頃に私たちは何があったのかを聞くことにしたのだ。
「クジャ、何があったの?」
そう聞くとクジャは涙ぐみ俯いてしまう。すると代わりにモズさんがゆっくりと話し出した。
「リーンウン国の……王族だけに……奇病が発生したのです……。ですが……クジャク様だけは何事もなく……」
そこまでモズさんが言うと、クジャが重い口を開いた。
「……わらわは……産まれた時よりこの目の色のせいで家臣たちに疎まれていたのじゃ……。『呪われた子』と呼ばれ、民たちにもいつか王家に災いをもたらすと言われ続けたのじゃ……。そんなわらわだけが床に臥すこともなかったのでな……最後に父上が倒れた時に、家臣たちにお前のせいだと袋叩きにされたのじゃ……」
その言葉を聞き、ショックで両手で口を覆ってしまった。さらにクジャとモズさんが話す内容をまとめると、モズさんはクジャを守る為に反撃しようとしたが、クジャがそれを止めたので、モズさんは反撃せずにひたすらクジャの盾となっていたらしい。
「じいの怪我も……わらわの呪いが……」
そう言ってクジャは両手で顔を覆い泣き始めた。咄嗟に私は叫ぶ。
「呪いなんてあるはずがないわ! そんなものがあるなら、とっくにシャイアーク国王は森の民に呪われているわよ!」
それを聞いたお父様も「違いない」と声を漏らした。クジャは私の言葉を聞き、涙を流す顔を上げる。
「必ず原因があるはずよ。クジャ、大丈夫よ、私がなんとかしてみせるわ」
そう言いながらクジャを抱きしめると、クジャはさらに泣いてしまった。その背中をさすりながら、ゆっくりと優しく問いかける。私は医者ではないから専門的なことは分からないが、クジャとモズさんや家臣たちがその奇病になっていないのなら、おそらく伝染病ではない。他に原因があるとにらんだのだ。
美樹は年寄りたちに囲まれて育ったおかげで、やたら病気の話を聞いて育ったのだ。老いるとやはり病気にかかりやすくなる。そして老人たちの家にはなぜか高確率で、一般人にも分かりやすく書かれた医学書めいたものがあるのだ。それを読んで育った私は多少病気への知識があるはずだ。
こうして私はリーンウン国の生活や風土、食べ物などをゆっくりと聞き出した。
幸いにもクジャは精神的に落ち着いたらしく、寝ていても泣き叫ぶことはなかったが、何回か目を覚ましては私がいるかの確認をしていた。
翌日になっても食欲がないと言うクジャと、まだ口内の傷が癒えないモズさんの為にスープやジュースを作った。私が飲みたくて作ったトゥメィトゥのジュースは、特にモズさんが気に入ってくれたようで、なんとお代わりまでしてくれたのだ。
もちろん水分補給と怪我の治療も兼ねてヨーモギの薬草茶も飲ませ、お父様とじいやは傷薬の交換を率先してやってくれる。
「傷は乾燥させては治りが遅くなる」
お父様はそう言いながら処置をするが、私たち以外の人は驚いている。日本でも親より上の世代は『乾燥させてかさぶたを作れ』とよく言っていたが、実は湿らせるのが一番治りが早いのである。この世界でも乾燥させるのが一般的だったようで、実際に自分の傷が治っていく様子を見たクジャは「……すごい……」と呟いていた。
ただ口数は昨日よりも多くなったが、クジャの表情は曇ったままだ。スープを作りに台所に行った時にお父様が口を開いた。
「モズ殿が話せるようになってから、改めて二人に話を聞いたほうが良いだろう」
「おそらくクジャク姫にとって、相当辛いことがあったのでしょう。もう少し落ち着くまで、そのことには触れないほうが良いと思います」
お父様に続きじいやもそう話す。確かにクジャを見ていると、小さな物音にも怯えたり、目を覚ますと私たちやモズさんがいるかの確認をしている。クジャだけに聞くのは酷だろう。
まずは体を治すのが優先だと判断し、その日も傷の手当てや食事の世話をし、二人を刺激しないように安静に過ごさせた。
────
さらに一夜明け、じいやに採取して来てもらったセルリンを存分に煮込んで作った野菜スープを持ち、クジャとモズさんのいる部屋に向かった。
「……ご心配……おかけしました……。ほとんど……傷は塞がったようです……ありがとうございました……」
扉を開けるとモズさんが起き上がっており、本当はまだ完全に傷が癒えずに痛いであろうに、丁寧に私たちに一礼をした。
「モズさん! 無理はしないで。一回座りましょう? まずはこれを飲んで」
モズさんを座らせていると、クジャも目を覚ます。
「クジャ、モズさんが話せるようになったわ。クジャは調子はどうかしら?」
「……大丈夫じゃ……」
「そう、良かったわ。じゃあクジャもこれを飲んでね」
そう言ってクジャを起こし、スープの入った器を手渡す。二人がスープを飲み終わるのを待ち、そして落ち着いた頃に私たちは何があったのかを聞くことにしたのだ。
「クジャ、何があったの?」
そう聞くとクジャは涙ぐみ俯いてしまう。すると代わりにモズさんがゆっくりと話し出した。
「リーンウン国の……王族だけに……奇病が発生したのです……。ですが……クジャク様だけは何事もなく……」
そこまでモズさんが言うと、クジャが重い口を開いた。
「……わらわは……産まれた時よりこの目の色のせいで家臣たちに疎まれていたのじゃ……。『呪われた子』と呼ばれ、民たちにもいつか王家に災いをもたらすと言われ続けたのじゃ……。そんなわらわだけが床に臥すこともなかったのでな……最後に父上が倒れた時に、家臣たちにお前のせいだと袋叩きにされたのじゃ……」
その言葉を聞き、ショックで両手で口を覆ってしまった。さらにクジャとモズさんが話す内容をまとめると、モズさんはクジャを守る為に反撃しようとしたが、クジャがそれを止めたので、モズさんは反撃せずにひたすらクジャの盾となっていたらしい。
「じいの怪我も……わらわの呪いが……」
そう言ってクジャは両手で顔を覆い泣き始めた。咄嗟に私は叫ぶ。
「呪いなんてあるはずがないわ! そんなものがあるなら、とっくにシャイアーク国王は森の民に呪われているわよ!」
それを聞いたお父様も「違いない」と声を漏らした。クジャは私の言葉を聞き、涙を流す顔を上げる。
「必ず原因があるはずよ。クジャ、大丈夫よ、私がなんとかしてみせるわ」
そう言いながらクジャを抱きしめると、クジャはさらに泣いてしまった。その背中をさすりながら、ゆっくりと優しく問いかける。私は医者ではないから専門的なことは分からないが、クジャとモズさんや家臣たちがその奇病になっていないのなら、おそらく伝染病ではない。他に原因があるとにらんだのだ。
美樹は年寄りたちに囲まれて育ったおかげで、やたら病気の話を聞いて育ったのだ。老いるとやはり病気にかかりやすくなる。そして老人たちの家にはなぜか高確率で、一般人にも分かりやすく書かれた医学書めいたものがあるのだ。それを読んで育った私は多少病気への知識があるはずだ。
こうして私はリーンウン国の生活や風土、食べ物などをゆっくりと聞き出した。
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