貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
上 下
183 / 366

カレンの持て成し料理

しおりを挟む
 うどんが茹で上がったので一度よせておき、次にスープ作りに取り掛かることにする。私が求める出汁の利いた和風の汁は素直に諦め、醤油ことセウユベースの野菜スープを作る。後からこのスープにうどんを入れるつもりだ。日本人の常識からしたら「え?」とか「邪道だよね?」と言われるものだろうけれど、料理は美味しいものと美味しいものをかけ合わせたら美味しいものが出来るのだ。……多分だけれど。作ったことがないものを作ろうとしているが、想像の上では美味しいと思う。

 この料理を作るために購入してきたコッコの干しもも肉を用意する。料理を開始した時から塩抜きのために水に入れていたものだが、ほんの少し切り取り口に運ぶとまだ完全には塩が抜けておらず、そこそこの塩気を感じるが、その分調味料を減らせば良いのでこのまま使うことにする。私は大雑把なのだ。

 キャベッチ、キャロッチ、セルリン、オーニーオーンのみじん切りと、コッコの干し肉を適当な大きさに切り水と一緒に鍋に入れる。いつもよりも大きな鍋をたくさん使っているので不思議がられ、皆に後で入れる『麺』について説明し、スープの水分を吸うためたくさん水分が必要だと言うと納得してくれた。

 かまどに火を焚べてもらい、それぞれの鍋に目分量で砂糖とセウユを入れる。干し肉から塩が出るのでセウユは少なめにし、隠し味程度にミィソを入れて味見をすると良い塩梅だ。ここで私が手にしたものにざわめきが起きる。

「姫様、それは酒では……」

「うん、そうよ」

 以前一緒にリトールの町へ行った時に飲んだのを覚えていたタラが慌てている。リーンウン国の酒は日本酒のような香りがしたので料理に使えると思い購入したのだ。皆が止めるのを振り切り指先につけて舐めてみるとやはり日本酒のような味がする。それを鍋に入れると悲鳴が上がった。

「絶対に大丈夫だから安心して!」

 騒ぐ皆に落ち着くように言いながら鍋をかき混ぜる。そしてまた味見をすると、それはそれは絶妙な旨さである。目の前にいたナデシコさんとキキョウさんに味見をさせると、目を白黒させ驚いていた。

 お父様たちはまだ戻って来ないので次の料理に取り掛かろうとすると子どもたちに声をかけられた。

「姫様、このポゥティトゥの汁はどうするのですか?」

「ちょうど良かったわ。重要な任務をやってもらおうかしら」

 そう言うとワクワクとする者、緊張する者と分かれたが、何てことはない片栗粉の抽出だ。上澄みを捨て水を足し、底に残る沈殿物を流さないように水が綺麗になるまで繰り返してほしいと頼む。

 次に作るのはかき揚げや天ぷらなどだ。ムギン粉を新しく用意し、千切りにしたキャロッチやオーニーオーン、そして私のイチオシであるキャロッチの葉を混ぜ合わせる。美樹の家では農家からタダで貰っていたが、実は葉のほうが栄養があるので重宝していたのだ。これはかき揚げにし、オックラーやパンキプン、私が名付けたピーマンやししとうは天ぷらにする。
 その準備をしているうちにお父様たちが戻って来るのが見えた。急いで私のオススメである今日の目玉であるポゥティトゥ料理に取り掛かる。すりおろし水気を切ったポゥティトゥに先程作ってもらった片栗粉を混ぜ合わせ白玉くらいの大きさに丸めて少し潰し、それを鍋に入れていくと子どもたちも手伝ってくれたおかげですぐに終わる。エビネとタラにはジンガーをすりおろしてもらう。
 かき揚げや天ぷらを揚げながら、水・砂糖・セウユ・酒でなんちゃって天つゆを作りジンガーを入れてもらう。

 私たちの料理に興味を示したのかペーターさんたちが寄って来るが、見たことのない料理に期待半分、不安半分といった表情をしている。

「もうすぐ出来上がるから座って待っていてちょうだい」

 そう言えばお父様が三人をテーブル席へと案内してくれた。揚げ物で手一杯なのでスープの火加減を強くしてもらい、中にうどんを入れてもらう。完成したものは盛り付け、どんどんとテーブルに運んでもらう。最後に自分の分を持ち、私たちも食事をするためにテーブルへと向かった。

「このスープはたくさんの具材が入っているからそれを楽しんで。この野菜の塊はかき揚げと言って、塩を少しかけて食べるか、このスープに入れても美味しいと思うわ。こっちの野菜の揚げ物はこの汁に浸けて食べてちょうだい」

 三人に説明しているが、皆も食べたことがないものなので大声で全員に聞こえるように説明をする。待ちきれない様子の皆はいただきますをすると一斉に食べ始めた。

「こんなにふんだんに油を使うなんて」

 ブルーノさんはかき揚げをまじまじと見ながら呟き口に運ぶが、サクッとした食感に目を丸くしている。

「これはリーンウン国の調味料ですよね?」

 ジェイソンさんはあまりリーンウン国のものを食べたことがなかったようだが、ものすごい勢いでスープを飲んでいる。

「この細長いものとモチっとしたものは何だ……?」

 ペーターさんはうどんと団子状のポゥティトゥを取り出しまじまじと観察をしている。

「細長いものはムギン粉から作られているわ。美味しいでしょ? そのモチモチしたものはポゥティトゥよ」

 普段ホクホクとした食感のポゥティトゥがこんなにモチモチになるとは思っていなかったようで、料理に参加していなかった全員が驚いている。

「食感も面白いし美味しいのだけれど、とにかく力仕事なのよね……今日頑張ってくれたエビネとタラ、子どもたちに拍手!」

 そう叫ぶと拍手喝采が起き、エビネたちは真っ赤になって照れていた。そしてシャイアーク国の三人はどの料理も美味いと語り出し、手も口も止まらなくなってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。

サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。 人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、 前世のポイントを使ってチート化! 新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。

処理中です...