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取水口への整備
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タデたちの割っているタッケはお父様たちよりも多い。その分やりやすさと人数の多さからこちらが先に終わると思っていたのに、勝負というものに燃えるお父様とじいやコンビは瞬く間にコツを掴みどんどんと速度を上げ……勝ってしまったのだ。
「私たちの勝ちだぞ!」
「やりましたなモクレン様」
それは晴れ晴れとした笑顔で二人はそう言うが、それを見たタデは「あの二人に常識というものは通用しないのだ」と呟いていた。それに同意せざるを得ない。
次にする作業はとても細長い板状になったタッケの節を取ることである。節の部分をナタなどの刃物で横に削ぐようにすれば簡単に節は取れる。
「みんな手を切らないように気を付けて」
手に布を巻き付けタッケの側面などで手を切らないようにし、私もスイレンも参加して節を落としていく。この地味な作業にもお父様たちは勝負だと盛り上がっている。膨大な数の節取りを全員で終わらせた頃、マッツの伐採を頼んだ者たちが荷車にマッツと昼食を載せて運んで来てくれた。大抵は畑の作業の者たちが建設現場へ運んで来るが、それを頼むのにちょうど良い時間だったのだろう。ただ、茹でたポゥティトゥや生のトゥメィトゥ、そして果実などほとんどゴミの出ないヘルシーすぎる食事なのだが。
食事を終え、これからの力仕事のためにいつもより長めの休憩を取ることとなり満腹となった私はスイレンに寄りかかりうとうととしてしまう。時間にすれば大したことのない時間であろうが、小学生の頃の夢を見た。懐かしいなぁ……と夢の中で夢だと思いながらいるとスイレンに起こされた。
「カレン起きて。作業をするって。もうよだれ出てるよ」
少々嫌そうに自分の服の袖で私の口元を拭いながら起こしてくたスイレンに礼を言い、思いっきり伸びをすると私は立ち上がる。
「さぁみんな。鉄線よりも大変な蛇籠を作るわよ!」
その言葉に大人たちは驚いている。
「あら? 言ってなかったかしら? タッケで蛇籠を作る為に割っていたのよ」
すると近くにいたタデが口を開いた。
「鉄線での蛇籠のように四角には出来ないな。ツルで作るカゴのようにするのか?」
「うーん……ある意味複雑でもっと大きなものになるのだけれど……説明が難しいからやってしまいましょう。ただ私やスイレンだと力が足りないかもしれないから、みんなの力が必要ね」
節を取ったタッケを数本束にし地面に置き、その上に別の数本を置いていき「✱」の形に重ねていく。長くてしなるタッケはそれだけで扱いが大変で大人たちが手助けしてくれる。「✱」の形が完成すると最初に置いたものと平行になるように新たに「✱」を作り、最後に編み込んでいくタッケの束を用意し「✱」を交互に交差させ編み込む。編み始めが特に難しく、編み始めたら木槌などで綺麗な形となるように締めながら編む。
さっきのうたた寝の時に見ていた夢はこの竹蛇籠を作った時の記憶だ。美樹の小学校では地域の伝統などを学ぶ時間がたくさんあった。その中に川の勢いを緩める『大聖牛』を職人に習いに行く時間があった。その『大聖牛』の土台に使われるのが竹蛇籠なのだ。高学年といえども子どもである私たちは二人一組で小さな竹蛇籠を作ったが、その場で職人が二人がかりで本物の蛇籠作りを見せてくれたのだ。大人二人がかりで編み上げる竹蛇籠は芸術品と言っても過言ではない。編み方自体は覚えているし、先程の夢で大型の竹蛇籠の扱い方もしっかりと思い出した。
大人たちを二人一組に分け、まず私が今作ったように底辺を編んでもらう。全員が出来たのを確認し、次に筒となる部分を編んでもらう。今まで地面に広がっていた底面部分を起こして横にするのだが、これもなかなか骨が折れる。そして一人は締め上げ、もう一人は編み込み、筒の部分を回転させながら手も足も体全体を使ってダイナミックに編んでもらう。
「この交差させて出来た穴が、いかに同じ形と大きさで統一されているかが見た目の美しさになるわ。そして全部を編み上げたらこの穴に石を入れるの。タッケを継ぎ足す時は継ぎ目をずらしながらやるのよ」
説明を終えるとウキウキ顔のお父様がタデに声をかけた。
「タデ、一緒に作ろうではないか」
「いや、おそらくこれは同じような力の持ち主同士でやった方が良いと思う。そもそもお前の力に耐えられるのはベンジャミン様くらいだ」
そう言うとしょぼんとしているお父様をその場に残し、タデは二人ずつペアを作っていく。私とスイレンも手伝おうとしたが、怪我をすると大変だからと歪みがないかの確認係にさせられ作業をしているみんなの隙間を縫って歩く。
ただ編むだけ、と思っていた者ほどその作業の大変さに驚いていた。だが森の民である大人たちはその難儀さに燃え、いかに丈夫で美しく作り上げるかで競い合っていた。編み終わりもまた少々難儀で、一組ずつに「ここにこれを差して締めて」とその場で教えるが、飲み込みの早い大人たちはすぐに理解してくれる。
そして私とスイレンが縦にすっぽりと入れるくらいの竹蛇籠が完成した。本当にこの国のみんなは何かを作り上げたりすることの能力が高いことを再認識させられた。
「私たちの勝ちだぞ!」
「やりましたなモクレン様」
それは晴れ晴れとした笑顔で二人はそう言うが、それを見たタデは「あの二人に常識というものは通用しないのだ」と呟いていた。それに同意せざるを得ない。
次にする作業はとても細長い板状になったタッケの節を取ることである。節の部分をナタなどの刃物で横に削ぐようにすれば簡単に節は取れる。
「みんな手を切らないように気を付けて」
手に布を巻き付けタッケの側面などで手を切らないようにし、私もスイレンも参加して節を落としていく。この地味な作業にもお父様たちは勝負だと盛り上がっている。膨大な数の節取りを全員で終わらせた頃、マッツの伐採を頼んだ者たちが荷車にマッツと昼食を載せて運んで来てくれた。大抵は畑の作業の者たちが建設現場へ運んで来るが、それを頼むのにちょうど良い時間だったのだろう。ただ、茹でたポゥティトゥや生のトゥメィトゥ、そして果実などほとんどゴミの出ないヘルシーすぎる食事なのだが。
食事を終え、これからの力仕事のためにいつもより長めの休憩を取ることとなり満腹となった私はスイレンに寄りかかりうとうととしてしまう。時間にすれば大したことのない時間であろうが、小学生の頃の夢を見た。懐かしいなぁ……と夢の中で夢だと思いながらいるとスイレンに起こされた。
「カレン起きて。作業をするって。もうよだれ出てるよ」
少々嫌そうに自分の服の袖で私の口元を拭いながら起こしてくたスイレンに礼を言い、思いっきり伸びをすると私は立ち上がる。
「さぁみんな。鉄線よりも大変な蛇籠を作るわよ!」
その言葉に大人たちは驚いている。
「あら? 言ってなかったかしら? タッケで蛇籠を作る為に割っていたのよ」
すると近くにいたタデが口を開いた。
「鉄線での蛇籠のように四角には出来ないな。ツルで作るカゴのようにするのか?」
「うーん……ある意味複雑でもっと大きなものになるのだけれど……説明が難しいからやってしまいましょう。ただ私やスイレンだと力が足りないかもしれないから、みんなの力が必要ね」
節を取ったタッケを数本束にし地面に置き、その上に別の数本を置いていき「✱」の形に重ねていく。長くてしなるタッケはそれだけで扱いが大変で大人たちが手助けしてくれる。「✱」の形が完成すると最初に置いたものと平行になるように新たに「✱」を作り、最後に編み込んでいくタッケの束を用意し「✱」を交互に交差させ編み込む。編み始めが特に難しく、編み始めたら木槌などで綺麗な形となるように締めながら編む。
さっきのうたた寝の時に見ていた夢はこの竹蛇籠を作った時の記憶だ。美樹の小学校では地域の伝統などを学ぶ時間がたくさんあった。その中に川の勢いを緩める『大聖牛』を職人に習いに行く時間があった。その『大聖牛』の土台に使われるのが竹蛇籠なのだ。高学年といえども子どもである私たちは二人一組で小さな竹蛇籠を作ったが、その場で職人が二人がかりで本物の蛇籠作りを見せてくれたのだ。大人二人がかりで編み上げる竹蛇籠は芸術品と言っても過言ではない。編み方自体は覚えているし、先程の夢で大型の竹蛇籠の扱い方もしっかりと思い出した。
大人たちを二人一組に分け、まず私が今作ったように底辺を編んでもらう。全員が出来たのを確認し、次に筒となる部分を編んでもらう。今まで地面に広がっていた底面部分を起こして横にするのだが、これもなかなか骨が折れる。そして一人は締め上げ、もう一人は編み込み、筒の部分を回転させながら手も足も体全体を使ってダイナミックに編んでもらう。
「この交差させて出来た穴が、いかに同じ形と大きさで統一されているかが見た目の美しさになるわ。そして全部を編み上げたらこの穴に石を入れるの。タッケを継ぎ足す時は継ぎ目をずらしながらやるのよ」
説明を終えるとウキウキ顔のお父様がタデに声をかけた。
「タデ、一緒に作ろうではないか」
「いや、おそらくこれは同じような力の持ち主同士でやった方が良いと思う。そもそもお前の力に耐えられるのはベンジャミン様くらいだ」
そう言うとしょぼんとしているお父様をその場に残し、タデは二人ずつペアを作っていく。私とスイレンも手伝おうとしたが、怪我をすると大変だからと歪みがないかの確認係にさせられ作業をしているみんなの隙間を縫って歩く。
ただ編むだけ、と思っていた者ほどその作業の大変さに驚いていた。だが森の民である大人たちはその難儀さに燃え、いかに丈夫で美しく作り上げるかで競い合っていた。編み終わりもまた少々難儀で、一組ずつに「ここにこれを差して締めて」とその場で教えるが、飲み込みの早い大人たちはすぐに理解してくれる。
そして私とスイレンが縦にすっぽりと入れるくらいの竹蛇籠が完成した。本当にこの国のみんなは何かを作り上げたりすることの能力が高いことを再認識させられた。
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