貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
上 下
153 / 366

イカダ

しおりを挟む
 今回の目的はタッケの伐採であったが、個人的に必ずタケノコを持ち帰ろうと思っていた私は服の中に忍ばせておいた麻袋を取り出しタケノコを詰め込んでいく。じいやたちはそんな私を見て呆れを通り越して笑っている。最後の一つを袋に詰めた私は大きな声を発する。

「この土地も冒険したいけれど、今日はこれで帰りましょう。一度下にタッケを降ろしてイカダを作るわよ!」

 私の号令でじいやたちはタッケを運び出す。詰め込みすぎて一人で持てなくなってしまったタケノコ入りの麻袋まで下まで運んでくれた。そこでタッケを大体同じ長さに切り、縄で外れないようにきっちりと縛っていく。特に太いタッケは浮力確保の為に下段に数本を等間隔に置き、その上に隙間なくタッケを載せ、最後にその上に載せたタッケと最下段のタッケを縛って固定する。真横から見ると縦、横、縦といった配置だ。さらにイカダの一辺に縄を編み込み引っ張ることも可能にした。
 かなりの本数を使って作られたイカダは浮くことは確実なのだが、初めてのイカダ作りをしたじいやたちは興味津々でイカダを見つめている。なので流れがあまりない場所に浮かべてみることにした。大型のイカダなので相当な重さがあるはずなのだが、筋骨隆々としたじいやたちはその重さをものともせず川へと運ぶ。

「まずは浮かべてみましょう。流されないように注意してね」

 私の言葉でじいやたちはイカダを水に入れる。お互いに押したり引っ張ったりしながら全体を水の中へと入れるとプカプカとイカダは浮かぶ。

「浮かんだ!」

 イカダが水に浮かんだだけでイチビたちは喜び大騒ぎである。

「イチビ、乗ってみたら?というかシャガもハマスゲも同時にどうぞ」

「良いのですか!?」

 イチビたちのはしゃぎ方が増す。私とじいやが川へと入り、流されないようにイカダを押さえる。かなり慎重にイチビたちはイカダに足を乗せ、恐る恐るといった感じに立つ。

「おぉ! 味わったことのない感覚だ!」

「水の上に立っている!」

 三人が立っても全く沈む気配がない。そのことが余計に三人をはしゃがせ、まるで小さな子どもたちを見ているような微笑ましい気分になる。

「じいやも! ほら!」

 じいやにも勧めるとイチビたちはイカダから降りる。そしてじいやもイカダに立つのかと思っていると、意外にも仰向けに寝転がった。

「空が……日の光が気持ち良い……」

 プカプカと水に揺られながら日光浴を楽しみ始めたのだ。聞けば森の中に住んでいる時は、上を見上げれば必ず視界に木々が入る。いつかのんびりと空だけを見たいと思っていたそうだ。

「もうじいやったら。じゃあ人工オアシスにも小さなイカダを作って浮かべましょう。いつでものんびりとすれば良いわ」

 何でもない私の言葉にじいやは幸せそうに微笑んだ。

「さてそろそろ戻りましょうか。みんな荷物を積んで」

 持って来た道具やタケノコを積み込み私たちは全員で川へと入った。しばらく浅瀬が続くので、その間は人力でイカダを移動させる。問題は川の真ん中部分の水深の深い場所だ。ここは泳げる私とイチビが足のつく場所まで泳ぎ、イカダを作る時に編み込んだ縄を引っ張ることにした。大雑把な私は「流されてしまった時はどうにかして」と笑いながら言うと全員に引かれてしまったが。

 初めに私が板子代わりに使ったオール用の細長い板をじいやに渡し、川底に対して杖のように使うようにと細長いタッケをシャガとハマスゲに渡してから私とイチビは泳いだ。一番深い場所を通過し、踏ん張れそうな場所に立ち縄を引っ張る。対してじいやはオールを漕ぐようにし、シャガとハマスゲはなるべく上流側に向けてイカダを操作する。私とイチビは岸側に移動しつつ縄を引っ張り続け、じいやたちもまた川の真ん中を通過するように努力してくれた結果、じいやたちは足がつく場所まで到達しみんなで縄を引っ張ってイカダを岸へと近付ける。この辺りでヒイラギたちも川へ入ってくれて手伝ってくれたのでようやく私たちは岸まで戻ることが出来た。

「みんな! おかえりなさい! 僕、何も出来なくてごめんね!」

 岸へ上がると今にも泣きそうなスイレンが飛びついてきた。

「心配かけてごめんねスイレン。でも無事に帰って来れたわ」

 スイレンの頭を撫でてそう言うとスイレンは口を開く。

「もっと安全に向こうに行けたらいいのに」

「橋をかけたら良いけれど、この川幅だしそれも大変なのよね」

 私の一言にスイレンは食いつく。

「ハシ? それがあれば安全に行けるの? どうやって作るの?」

 どうやらスイレンの建築魂に火がついたようである。

「……落ち着いてスイレン。ものすごく大変な作業になるしまだ水路は完成していないのよ? 次に家を作らなければいけないし。橋の話はまた今度にしましょう」

 苦笑いでスイレンを制すると少し落ち着いたようだ。そこからはみんなでイカダを縛っている縄を外し、ポニーとロバの荷車に積み込んで水路へと向かった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...