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お泊まり会
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お母様とスイレンには動かないように言い聞かせ、私たちは鼻血を流した被害者たちの鼻に布を突っ込んでいく。ティッシュがないのでアンソニーさんから綺麗な布巾を貰ったが、離れた場所であまりお母様が見えない位置にいるアンソニーさんまで鼻血を出していたのだから呆れるやら驚くやらだ。
「皆さんどうしちゃったのかしら?」
「うん、僕、心配だよ」
動かないようには言ったが、話すなとは言われていないお母様とスイレンが店内を見回しながら会話を始め、スイレンが涙目で「心配だよ」と言った辺りでクジャや店内のおば様たちの鼻からも血が出て来た。やはり双子の姉の目から見ても可愛いスイレンもまたお母様同様にかなりの魔性系のようだ。あのハコベさんまでもが「遺伝って怖いわ……」と呟いていたのを聞き逃さなかった。
食堂であるにもかかわらず病院のような状態になってしまった店内で、まるで医療チームのように鼻血の処置をしていると一人の来客があった。
「カレンちゃん! スイレンくん! ……何だ、何があったんだ?」
「あ! ブルーノさん!」
店に入って来たのはブルーノさんだった。店内の状況を見て困惑しているようだが、スイレンの声に反応しそれは嬉しそうに微笑む。どうやらペーターさんや他の町の人から私たちのことを聞いたようだった。私たちも鼻血の処置を終えたので、ブルーノさんを同じ席に呼び座ってもらった。
「はじめまして。あなたがブルーノさんなのですね。いつも娘たちが泊まらせていただいているようでありがとうございます」
ペコリと頭を下げるお母様を見てブルーノさんは一瞬呆けたが、すぐに笑顔で話し始めた。
「王妃様!? ……いえいえ、私はカレンちゃんもスイレンくんも孫のように思っておりまして。森の民の皆さんとの会話も楽しませていただいておりますしお礼を言いたいのはこちらですよ」
ブルーノさんはそんな嬉しいことを言ってくれた。そしてお母様の魔性の魅力に引っかからず、ヒイラギとナズナさんは「打ち勝った」なんて囁いている。
「もう、みんな王妃様って呼ぶんだから。他の方にも言いましたが、立派なのは子どもたちですし私の夫もなんですよ」
またもやお母様は少女のように顔を赤らめるがブルーノさんは気にする様子もない。
「おお! カレンちゃんとスイレンくんのお父さんにいつか是非ともお会いしたい!」
それを聞いたお母様は嬉しそうに笑う。そこからは私が作り上げてしまった、いつの間にかリトールの町の名物料理になってしまったスネック料理が運ばれて来たので一気に宴会のように盛り上がる。先ほどモズさんが手にしていたスネックを見てしまったスイレンは手が震えなかなか口に入れられないでいたが、私が一瞬の隙をついてスイレンの口にスネックの蒸し焼きを入れると「美味しい!」と顔を綻ばせる。
大人たちはニコライさんが持ってきたワインを飲んだり、クジャが持ってきたリーンウン国の酒を振る舞ってもらう。当然私とスイレンは飲ませてもらえなかったが、リーンウン国の酒は日本酒のような香りがした。
ワイワイと騒いでいるうちにすっかりと外は暗くなり、気付けばアンソニーさんが照明用の松明を壁のトーチホルダーに挿していた。誰かが言い出した「解散しよう」という声で解散の流れになったが、私たちは今回大所帯だ。
「クジャはどこに泊まっているの?」
「ニコライに旅用の馬車に取り付けられる泊まれる客室を作ってもらっておったのじゃ。それに泊まっておる。寝床も広いのでな……カレンよ一緒に泊まらぬか?」
それは俗にいうお泊まり会のようだわ! 嬉しくなり私は即答する。
「うん! たくさんお話しましょう! ……あ、でもお母様たちが……」
それを聞いたブルーノさんが口を開く。
「スイレンくんたちはうちに来たらいいよ」
それを聞いたスイレンは喜び「計算や建築について教えて」とブルーノさんにせがんでいる。お母様たちも「お言葉に甘えて」とブルーノさんの自宅にお邪魔することに決めたようだ。ニコライさんはクジャのように自分の旅用の客室に泊まっているようだ。
────
「わぁ! 中が広い!」
「バの力が強いのでな。ここまで大きくても難なく引っ張ってくれるのじゃ。……して、カレンよ……」
客室の中には油を使ったランプとも呼べないような作りの小さな火が灯っていた。二人きりになるとようやくクジャらしくなったと思ったのに、急にモジモジとし始める。
「スイレンはその……好いてる者などいるのであろうか……?」
私は耳を疑ってしまった。
「……そもそも恋愛に関しては全く知識がないと思っていいわ」
そう言い、私たちが隔離されて育てられてきた話をするとクジャは驚いている。
「まさかクジャが四つも歳下の、しかも私と同じ顔のスイレンに恋をするなんて」
「年齢など関係ない。……いや、あの、こここ恋など……」
真っ赤になり慌てふためくクジャがとても可愛らしい。そして逆に「恋をしていないのか?」などと聞かれてしまう。
美樹は片思いの経験はあった。だけれど学校が終わり次第食材調達に海や川や山へと行っていたのでお付き合いするということまでは考えなかった。中学を卒業してからは家計の為に必死にバイトをしていたので、他の子のように遊んだりサボったりもほぼしないような生活だったので恋愛とは無縁だったのだ。
「……恋……ねぇ……。民たちの生活が楽になったら考えようと思うわ。これって民たちに恋をしているってことかしら?」
そう言うとクジャは呆れながらも「カレンには敵わん」とため息混じりに笑われた。そこからは他愛のない話をし、気付けば二人とも眠りに落ちていた。
「皆さんどうしちゃったのかしら?」
「うん、僕、心配だよ」
動かないようには言ったが、話すなとは言われていないお母様とスイレンが店内を見回しながら会話を始め、スイレンが涙目で「心配だよ」と言った辺りでクジャや店内のおば様たちの鼻からも血が出て来た。やはり双子の姉の目から見ても可愛いスイレンもまたお母様同様にかなりの魔性系のようだ。あのハコベさんまでもが「遺伝って怖いわ……」と呟いていたのを聞き逃さなかった。
食堂であるにもかかわらず病院のような状態になってしまった店内で、まるで医療チームのように鼻血の処置をしていると一人の来客があった。
「カレンちゃん! スイレンくん! ……何だ、何があったんだ?」
「あ! ブルーノさん!」
店に入って来たのはブルーノさんだった。店内の状況を見て困惑しているようだが、スイレンの声に反応しそれは嬉しそうに微笑む。どうやらペーターさんや他の町の人から私たちのことを聞いたようだった。私たちも鼻血の処置を終えたので、ブルーノさんを同じ席に呼び座ってもらった。
「はじめまして。あなたがブルーノさんなのですね。いつも娘たちが泊まらせていただいているようでありがとうございます」
ペコリと頭を下げるお母様を見てブルーノさんは一瞬呆けたが、すぐに笑顔で話し始めた。
「王妃様!? ……いえいえ、私はカレンちゃんもスイレンくんも孫のように思っておりまして。森の民の皆さんとの会話も楽しませていただいておりますしお礼を言いたいのはこちらですよ」
ブルーノさんはそんな嬉しいことを言ってくれた。そしてお母様の魔性の魅力に引っかからず、ヒイラギとナズナさんは「打ち勝った」なんて囁いている。
「もう、みんな王妃様って呼ぶんだから。他の方にも言いましたが、立派なのは子どもたちですし私の夫もなんですよ」
またもやお母様は少女のように顔を赤らめるがブルーノさんは気にする様子もない。
「おお! カレンちゃんとスイレンくんのお父さんにいつか是非ともお会いしたい!」
それを聞いたお母様は嬉しそうに笑う。そこからは私が作り上げてしまった、いつの間にかリトールの町の名物料理になってしまったスネック料理が運ばれて来たので一気に宴会のように盛り上がる。先ほどモズさんが手にしていたスネックを見てしまったスイレンは手が震えなかなか口に入れられないでいたが、私が一瞬の隙をついてスイレンの口にスネックの蒸し焼きを入れると「美味しい!」と顔を綻ばせる。
大人たちはニコライさんが持ってきたワインを飲んだり、クジャが持ってきたリーンウン国の酒を振る舞ってもらう。当然私とスイレンは飲ませてもらえなかったが、リーンウン国の酒は日本酒のような香りがした。
ワイワイと騒いでいるうちにすっかりと外は暗くなり、気付けばアンソニーさんが照明用の松明を壁のトーチホルダーに挿していた。誰かが言い出した「解散しよう」という声で解散の流れになったが、私たちは今回大所帯だ。
「クジャはどこに泊まっているの?」
「ニコライに旅用の馬車に取り付けられる泊まれる客室を作ってもらっておったのじゃ。それに泊まっておる。寝床も広いのでな……カレンよ一緒に泊まらぬか?」
それは俗にいうお泊まり会のようだわ! 嬉しくなり私は即答する。
「うん! たくさんお話しましょう! ……あ、でもお母様たちが……」
それを聞いたブルーノさんが口を開く。
「スイレンくんたちはうちに来たらいいよ」
それを聞いたスイレンは喜び「計算や建築について教えて」とブルーノさんにせがんでいる。お母様たちも「お言葉に甘えて」とブルーノさんの自宅にお邪魔することに決めたようだ。ニコライさんはクジャのように自分の旅用の客室に泊まっているようだ。
────
「わぁ! 中が広い!」
「バの力が強いのでな。ここまで大きくても難なく引っ張ってくれるのじゃ。……して、カレンよ……」
客室の中には油を使ったランプとも呼べないような作りの小さな火が灯っていた。二人きりになるとようやくクジャらしくなったと思ったのに、急にモジモジとし始める。
「スイレンはその……好いてる者などいるのであろうか……?」
私は耳を疑ってしまった。
「……そもそも恋愛に関しては全く知識がないと思っていいわ」
そう言い、私たちが隔離されて育てられてきた話をするとクジャは驚いている。
「まさかクジャが四つも歳下の、しかも私と同じ顔のスイレンに恋をするなんて」
「年齢など関係ない。……いや、あの、こここ恋など……」
真っ赤になり慌てふためくクジャがとても可愛らしい。そして逆に「恋をしていないのか?」などと聞かれてしまう。
美樹は片思いの経験はあった。だけれど学校が終わり次第食材調達に海や川や山へと行っていたのでお付き合いするということまでは考えなかった。中学を卒業してからは家計の為に必死にバイトをしていたので、他の子のように遊んだりサボったりもほぼしないような生活だったので恋愛とは無縁だったのだ。
「……恋……ねぇ……。民たちの生活が楽になったら考えようと思うわ。これって民たちに恋をしているってことかしら?」
そう言うとクジャは呆れながらも「カレンには敵わん」とため息混じりに笑われた。そこからは他愛のない話をし、気付けば二人とも眠りに落ちていた。
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